Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

大企業トヨタの直参と陪臣

2009-12-24 09:15:42 | 経済一般
トヨタが下請けへの支払いを一律で3割カットするというニュースが話題となって
いる。こういう下請けイジメはどこの大手でもルーチンとして存在しているが、
一律で、しかも3割というのは結構えげつない。

こういう流れの中では、本来は自社内の効率化で捻出すべき
原資まで、コストとして下請けに押し付けられることになる。

トヨタ本社の管理部門にいるノンワーキングリッチが肥え太る一方で、
モノ作りの現場はどんどんやせ細っていくわけだ。

これが、世界でも類を見ないほどの、企業規模による格差を生み出すアングルだ。
僕が常々「日本型雇用は身分制度で、メリットがあるのは二階部分の正社員だけ」
と言っているのはこういう理由による。
少なくとも市場が正しく機能するよう規制緩和すれば、脂肪に高値はつかないから、
(長期的には)役割に見合った適正な分配がなされるはずだ。

たまに「中小企業の中にはリストラや賃下げなどの違法行為を平気で行なう企業がある」
というようなことを言う人がいるが、ちょっと違う。
リストラや労働条件の不利益変更が出来ないという判例は、それらを全面的に禁じて
いるわけではなくて、「経営上の必要性」といった合理的な事情があれば認められる
とする。
そういった下請け企業は金が無いから賃下げやリストラをせざるを得ないわけであって、
合理的な事情はびんびんに存在している。(争う余地はあっても)違法とは言い切れない。

「金がある大手は、あくまで日本型雇用を守りなさい。でも下請けはそういった大手を
下支えしなければいけませんから、大目に見ますよ」
日本の雇用法制には、企業のカースト制度を裏付けるダブルスタンダードが埋め込まれて
いるような気がしてならない。

企業規模や雇用形態によらず、最初から現実的で明文化された文言を一律適用し、
(性差や年齢といった理由での)違法解雇のみを禁じる方が、ずっと合理的で民主的
だと思うのだが。
そういう意味では、“流動化”などと言わずに「規制の明文化」なんて言ったほうが
受け入れられやすいかもしれない。

先日の営業部門世界再配置のニュースとあわせて考えると、トヨタは恐らく新興国
への進出を本格化させるつもりだろう。そして、彼らが買える水準にまで、コスト
の引き下げは今後も続くだろう。もともと「乾いた雑巾」と呼ばれるくらい絞っていた
わけだから、事実上の廃業に追い込まれるところも多いのではないか。

これまでアメリカというリッチな上客のおかげで目立たずにすんだが、企業規模、
雇用形態による格差の拡大は今後も加速していくはずだ。
また、モリタクか誰かが「新自由主義のせいだ!」とか言い出しそうなのであらかじめ
言っておくが、これらは日本型雇用が生み出す格差である。

もちろん、完全な自由競争下でも格差は残るが、そこには希望があり、副産物として
イノベーションも生まれる。
身分制度は恐らく、上位の怠惰と下位の絶望以外は何も生まない。

最新の画像もっと見る

35 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (台湾逃亡中)
2009-12-24 10:03:06
プリウスの値下げ販売を決定した時も、トヨタさんの値引きのお願いが、かなりあったと、デンソーさんこう、ボヤいていたそうです。連結決算なんだから、意味ないじゃん、と。

大企業さんには、普遍的に「下請けは生かさず殺さず」と言う思想が、ありますから。正に、身分制とは、そういう事でしょう。

自動車業界の給料の高さは、群を抜いていますし、ノーワーキングリッチが社内にごろごろしているのは、この業界のヒエラルキー(それも頂点に近ければ、近いほど。)に身を置いていた経験がある人なら、知っていると思います。係長クラスで、年収が1000万近いとか、ザラですもんねぇ。大したことしていないのに(苦笑)。更に、そういう人たちの多くが、バブル入社組みだったりしていて、それこそ、末期症状ですよ。
そして皮肉なのは、彼らよりも派遣の技術者の方が、優秀な場合が多い事でしょうかね(苦笑)。まぁ、この場合の派遣の技術者は、所謂通常の派遣ではなく、特定派遣と言われる、名ばかり正社員の人達が殆どですが。
姑息な既得権者 (Unknown)
2009-12-24 11:14:50
とにかく日本の既得権者の醜悪さは見るに耐えません。

奴等は改革して欲しくないので既得権を指摘
されると脊髄反射で論点すり替えてはぐらかしてきます。

使い古されたすり替えの手法は

1.新自由主義叩きや階級闘争史観にすり替え小泉、竹中、経団連等への憎悪を煽る

2.努力不足だと精神論にすり替える

3.デフレが悪い、有効需要が不足しているだのとケインズ請負の統制経済学を持ち出してきてはぐらかす。    

日本は権威主義者、社会主義者が多いのでこれで簡単
に丸め込んできました。
大半の政治家や左派や保守の評論家、マスコミも既得権擁護のすり替えに加担しています。
Unknown (ライムライト)
2009-12-24 11:15:48
>素材や部品の仕様、設計などを全面的に見直す
>安価な素材への切り替えを進める

としているわけですから、直接、工賃3割カット!
ということではないと思います。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20091222k0000e020013000c.html

他のソースでも、

>一部で過剰品質になっていた部品について、「価格帯に応じた必要最低限の品質」(幹部)への切り替えを進める。

となっているわけですから、低価格帯の車にはそれに見合った部品を、といったところでしょう。

命を預かる自動車メーカーとして正しいかと言われると正直わかりませんが、適正品質で快進撃を上げているサムスンを見習った、と考えれば妥当な戦略ではないでしょうか。
見えない部分の良さは矮小化されてしまいますから。
ムチとムチ (Unknown)
2009-12-24 11:21:24
「一律3割カット」だけでなく、
「それができた所には受注倍増&むこう3年間の契約と、1ヶ月単位で代金前払い」
なんかのアメも用意してくれないと、ムチだけでは現場はやせ細る一方ですね。

そういえばこんな噂もありましたね。
「フジ制作費75%カットで下請けの社長が自殺していた」
http://zarutoro.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/75-09e4.html
75%なんて、冗談だよね?
流動化第賛成 (中高年)
2009-12-24 11:37:33
城さんの「雇用の流動化を進めるべき」との考えは、若者の雇用機会を奪い、世代間格差を生んでいる現状を改善するために必要だとの認識の上に生まれたものだと思います。
私が城さんの考え方に共感をしたのは、別の観点からでした。
私事ですが、私は現在42歳で、様々な事情から転職を何度もしてきました(大企業→ベンチャー数社)。
その経験から、昔の大企業の仲間がロクに働かずに高級取りであるにもかかわらず、自分が厳しい環境下で簿給であることに疑問をいだきました。より良い環境で働こうと転職活動をしても、大企業でのそれなりのポストは、能力と関係なく既得権者に椅子を全て押さえられているため、入り口すら閉ざされている状況だったからです。
確かに若者が職にありつけないことは大きな問題です。
しかし、家族を支えなければならない中高年が、一度、レールから外れると復活できない問題も深刻です。
若者はまだ対処(結婚しない、子を作らない、家買わない、消費しない)のしようがありますが、現在、独りで家族を支えざるを得ない中高年男性が職を失った(失わざるを得ない)場合は悲劇です。
「雇用流動化=企業に自由裁量を持たせる」は、私のようなある程度のキャリアのある中高年には問題解決につながる話なので大賛成です。
でも、経験のない(能力のない)若者の問題は解決しないように思います。
したがって、①雇用流動化のための様々な施策(大前提として必須)、②国が給与補償を行う新卒者の3年間インターン義務化、の二つをすれば良いのではと思います。
若者が3年も働けば立派なキャリアができます。後は実力次第、オジサンたちと同じ土俵で競争原理に任せれば良いのではないでしょうか。
「イジメ」というより「リアクション芸」 (Ts)
2009-12-24 12:46:58
記事内容について異論はありませんが、トヨタや御手洗キヤノンはそんなにワルかなぁという気はします。

彼らは、市場を歪める低レベルな法制度に上手く対応しているだけでしょう。自社で正社員を雇ってやると妙なリスクを抱え込むことになる、だから

・子会社を作ってやらせる
・海外に工場移転する
・下請けに委託する
・派遣を受け入れる
・請負会社を工場に入れる
・契約社員を雇う
・バイトを雇う

なんだ、いくらでも抜け道があるじゃないか(笑)。

こんな状況で「直接vs間接雇用アングル」で議論を混乱させる人って、単なるおバカさんか批判の矛先を他所に向けたい脂肪分なんでしょうね。


話はそれましたが、現在の製造業のノンワーキングリッチは学歴的にも最上位ではないし、真のワルはノンワーキングリッチの影に隠れていると思いますよ。
Unknown (バーナムJr)
2009-12-24 12:55:00
2008年の夏まではトヨタ関連会社はこの世の春を謳歌していましたが今後は10年程前にパナソニック、富士通、ソニーなどの電機業界が行った正社員の大規模なリストラがトヨタ関連会社でも行われるのでしょう。大手の場合、地方にある工場は軒並み閉鎖で、国内の本社工場に生産業務を集中させたり中国などの海外生産移転が益々進のでしょうか。中小零細は倒産する会社も多くなるでしょうね
こういう時代からこそ雇用の流動化が進むようにしたりするなど今までの「終身雇用」という幻想を軸にした雇用政策を180度転換させる必要があるのに民主党の政策は今までの雇用政策の延長だし、ダイヤモンド社の今年の経済書で中谷巌氏の駄本が5位にランキングするなど救いようのないことが続いています
大企業の絶対性 (就活を二回経験したもの)
2009-12-24 12:56:39
就活生は下請け、子会社に行くなですね。一時の決定で一生奴隷の身分に縛られる。

採用コンサルタントの人が就活の時、中小企業にも目を向けましょう。就活生はブランドに縛られるな、と軽々しく言ってますがこの構造を知ったら、口も開けないでしょう。
3割カットはきついな… (松本孝行)
2009-12-24 14:13:48
下請けには平気で3割カットなんて言えるんですね。まぁ実際に現場で頭を下げる購買担当は心苦しいでしょうけど。
3割の給与削減なんてトヨタ社内でやろうとしたら、組合から何から全員反対するでしょうからね。結局下請けが割を食う状態というのは昔から治らないようですね。

規制緩和して、独自技術を持つ中小企業がメーカーを選ぶなんてことができるようになって欲しいモノです。地方分権と同じで、系列に入っておきたいという自主性のない下請けも多いでしょうけど。
Unknown (Unknown)
2009-12-24 14:25:18
>就活生は下請け、子会社に行くなですね。
現状ではすごく難しいけれど、どちらかというと「日本企業に行くな」と言いたいです。日本の中小企業は大企業に食い物にされるために存在しているし、かといって大企業に行っても飼い殺しにされて、技術も経験も身につかないまま、十年~二十年したら放り出されることになりそうだから。

>中小企業にも目を向けましょう。就活生はブランドに縛られるな、と軽々しく言ってますがこの構造を知ったら、口も開けないでしょう。

これはその通りだと思います。
知人から聞いた話だけど、みかか系列の子会社のなんとかの………みたいな派遣会社の人が、「最近うちから送った人物も精神を病むことが多くて(最近の若者は精神が弱くて)困る。」みたいな話をしていたと聞きました。それって本社の労働環境が糞なだけなのでは?
そしてそれはここだけの話ではなく、日本企業のあちらこちらで見られることなんでしょうね。これが一部上場企業というのだから驚きです。