色々あってすっかり紹介するのを忘れていたが、あらためて紹介。
テレ朝スーパーモーニングの人気コーナーで様々な社会問題を取材してきた著者による
分かりやすい日本の課題の解説本。
こちらのテレ朝版と考えるといい。
放送を元にまとめているので、若干バランスに偏りがある(公務員のムダ関係が多い、
その割に本丸である公務員人事制度改革に触れていない)ものの、全体として上手く
まとまっている。
ちなみに、僕自身、最終章の処方箋編で、社会保障改革について解説させてもらっている。
若者マニフェストで提言しているように、世代間格差を解消し、かつ持続性を維持するには
できるだけ速やかに事前積立方式に移行するしかない。
一言で言えば、自分たちの世代の分を今から積立て、現高齢者の分は薄く長く負担する
というものだ。
現状、年27兆円が社会保障関係費として一般会計から支出されている。つまり、国債という
形でツケが先送りされているわけだ。しかもその額はこれから先、毎年1兆円ずつ増加する。
復興費用は国債で長期負担するのが筋だという意見があるが、逆に言えば、こういった
経常的な支出は絶対に国債に頼ってはいけない類のものだ。
要するに事前積立と言うのは、そういうなし崩し的なツケの先送りを辞めさせ、身の丈に
合ったフレームを作ろうよということである。
ところで、日仏の出生率比較のパートが興味深い。
実は、夫婦が希望する子供の数では、フランスよりも日本の方が多いのだ。
それが実現しない理由は明らかで、日本の社会保障が高齢者ばかりに偏っているから。
GDP比で比較すると、フランスの少子化・子育て関連支出が3%なのに対し、
日本はたった0.8%でしかない。
ただし、民主党の子供手当のように、大赤字垂れ流しながら行う一時的なバラマキには
まったく意味が無い(自分たち名義のカードで奢ってもらって喜ぶアホはいないだろう)。
財政から社会保障まで、トータルで受益と負担のバランスをとりつつ、その上で他の先進国並みに
女性の社会進出を進めて、子育てコストを下げるしかないのだ。
そう考えると、少子化対策や社会保障改革、財政再建というのは、すべてつながった一連の
大手術だというのがよくわかる。そして、残された猶予は少ない。
まあ少なくとも、こういう読みやすくて良心的な本が現時点でいろいろ世に出ているわけだから
後になって「ホント嘘だったんだぜ~国債も年金も安全です~」
なんて歌うのは無しだろう。