Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

ブログを真面目に書き始めた理由

2009-07-31 10:11:20 | その他
doblog時代から見ている人は気づいていると思うが、実は最近、ブログの更新頻度を
上げている。
以前は週に2,3回だったが、今は一応、週5回が目標だ。
理由は、真面目にブログを盛り上げた方が、(少なくとも僕のテーマの場合)
紙よりも情報発信効果があるのではないかと気づいたから。

雑誌というのはそれぞれの得意分野ごとに非常に読者が限定されていて、なかなか
幅広いピーアールが出来ない(幅広い読者層を持っていた情報誌はいまや絶滅状態)。
しかも若年層はいまひとつ雑誌を読まない。
たとえば東洋経済なんて、格はピカイチだが、
「どれくらいの20代が読んでいるのか」という根本的な疑問は常に感じていた。

いや、経済誌はまだいい方だ。
論壇誌なんて洒落になってなくて、平均読者が65歳以上なんてのも珍しくない。
毎回飽きずに第二次大戦特集なんてやってる雑誌はある意味考えていて、
あてにならない団塊ジュニアよりも団塊世代に特化して囲い込みに走っているわけだ。
こういう雑誌にエネルギーを割いてもしょうがない。
僕が何書いたって読み飛ばされるのがオチだろう。

そこへいくと、Webはいい。
敷居が低いし間口も広いし、なんといっても字数もコードもない。
「あと10文字追加してください」だの「城さんこれまずいですよ」だの
言われない。
頑張って一万v/日くらいにすれば、下手な週刊誌に書くよりも影響力は強いはず。

ということで、最近はちょこちょこ更新するようにしている。
おかげさまで、最近は閲覧者数も7000/日を越え、多い日は一万に届くようになった。

そういえば、漫画家の佐藤秀峰氏がオンライン直販を開始するらしい。
Webでゼロからスタートするのはハードルが高いかもしれないが、紙で実績を
積み上げた人がWebに移るのであれば、新たなビジネスモデルを築けるのではないか。
氏がどこまで影響力を高められるか。今後とも注目&応援していきたい。

経済財政白書報道に見る保守とリベラルのバカ比べ

2009-07-30 10:25:27 | 経済一般
先週発表された平成21年度経済財政白書について、各社の報道の差が面白い。
たとえば産経新聞ではこう報じている。

非正規雇用が増加した背景として初めて、高齢化以外に
「労働法制の改正」を原因にあげた。麻生政権はこれまで
「小泉構造改革」で生じた“ほころび”の修復を掲げてきたが
白書の表現ぶりは
「行き過ぎた規制緩和が格差拡大を助長した側面もある」
と暗に認めた形だ。


これは大間違いだ。
「労働法制の改正」は「もう正規雇用は雇えない」というニーズの結果であって
原因ではない。本末転倒とはこのことだ。
ちなみに法改正してなかったら、請負やパートが増えていたか、失業率が上がって
いただけの話だ。
「労働法制の改正」という結果をいくらいじっても、原因は無くせないのは小学生
でもわかるロジックだろう。

まあ、百歩譲ってここまではいい。解釈によってはそう読めなくも無い書き方が
されているし。
この記事で最大の問題は後半部。
少なくとも白書のどこにも
「行き過ぎた規制緩和が格差拡大を助長した側面もある」
なんて書かれちゃいないのだ。

実際には、まったく逆である。

小泉政権の5年間にほぼ重なる02~07年において、実際には賃金格差は縮小している
こと、そしてその理由は失業率の1%近い改善にあると明記されている(236p)。
よく言っているように、小泉政権は(正社員の既得権にメスを
入れられなかったため)100点満点とは言えないものの、規制緩和で
格差を縮小させたのであり、野党が言うように労働再規制なんて
バカなことをやったらまた以前の失業率に戻るだけだ。

まあ、雇用労働者内での賃金格差だけは縮小するかもしれないが。

そして総論として、格差縮小の最大の特効薬は景気拡大であり、就業形態の多様化は
失業率を抑制できると明確に述べている(279p)。

ついでに言うと、非正規雇用の拡大は先進各国共通の現象であり、相対的にそれが
少ないのは、雇用規制の少ない英米であるとする分析も併記されている。
これも以前から指摘されている話だが、正社員の処遇見直しが可能なら、わざわざ
好きこのんで非正規雇用なんて使わない。
当たり前のロジックだ(なぜか日本のメディアは伝えようとしないのだが…)。

もうちょっと読み込みましょうよ産経さん。
そういう意味では、北海道新聞の編集委員は、読解力にかけては産経より上らしい。

 白書は非正規労働や所得の格差にも焦点を当てている。社会問題化
している重い課題だ。問題なのは、派遣労働などの「多様な就業形態」
が失業者を減少させるとして、非正規労働の拡大を容認している点だ。
 経営者にとって非正規労働者は使い勝手のいい労働力といわれてきたが
今回の不況ではまさに雇用の調整弁となった。安全網もないままに職も
住まいも失った人は数多い。
 白書は「景気回復が最大の格差対策になる」と強調する。しかし2002年
から5年以上にわたった景気拡大期に非正規労働者が増え続け、働く人の
3分の1にもなった。この事実をどう考えるか。



まあ、頭の悪さはどっちもどっちだが(笑)





増税は早ければ早いほどいい。

2009-07-28 14:32:05 | 経済一般
最近、東大の伊藤元重先生がアクセル全開だ。素晴らしい。
日曜日の読売新聞一面『地球を読む』にも登場、こちらでは具体的に増税にまで
踏み込んでいらっしゃるので簡単に紹介したい。

増税が景気にどう影響するかは、大きくわけて2つの考え方がある。
一つは(やや古い考えだが)単純に消費が落ちるのだから増税はマイナス効果しかなく
赤字国債で当面はしのぐべきだとする。

一方で、どのみち赤字国債は将来的な増税で償還しないといけないのだから
消費には中立であるとする考え方だ。

どちらがいいか議論はあるが、財政出動の対象を国民のニーズの強い社会保障に限れば
一定の消費刺激効果はあるから、増税のマイナスを相殺するのではないか。
つまり、増税回避でツケの先送りするよりも、増税で構造自体を変えろという論旨だ。
もちろん、安易なバラマキではなく、実質破綻状態の社会保障や財政再建に使途を
限るべきとする。

個人的な感想を言えば、現在の財政状況で12000円貰おうが子供手当てを
増やされようが、全然嬉しくはない。「わあー!やったー!ばんばん消費しよう!」
なんてこれっぽっちも思わない。※

というより、どうせ我々団塊ジュニアが年金や医療の受け手に回る30年後
までは確実に財政は維持不可能なので、せいぜい貯金しておこうと思うだろう。
同じような考えの人の方が多いのではないか。

そう考えると、思い切った最終的な規模での消費税の引き上げが
理想だろう。もちろん、構造改革も待ったなしだ。

4年間先送りすれば8兆円ほど、4年後の日本の負担が増えるだけである。※
お金持ちの高齢者は泣いて喜ぶかもしれないが、30年後に野垂れ死にする
団塊ジュニアは増える一方だ。

そういう意味では、現在の各政党は
「団塊ジュニア野垂れ死に競争」を競っているようなものだ。

もちろん、それ以降の世代も、この流れをぶち壊さないかぎり未来はない。


※とはいえ、道路から少子化対策にまわしてくれている民主党案は一定の評価に
 値すると思われる。

※五年の財政改革先送りは25年後の破綻確立を5%引き上げるとの試算もある。
 (「ギャンブルとしての財政赤字に関する一考察」2006.小黒)

雑感@サンプロ

2009-07-27 15:03:40 | その他
昨日のサンプロでの雑感を少々。

いきなり余談から入るが、控え室で見ていた与謝野さんと藤井さんの対談が
非常に興味深かった。同じ“バラマキ”ではあるのだが、両者の違いは鮮明に
出ていたと思う(産業上位か、消費者重視か)。
財源という問題と霞ヶ関がどう動くかという問題はあるにせよ、民主案の方が
好感は持てた。

さて、後半である。
率直に言うと、期待が高かった分、もっとも失望したのは自民党だ。
石原さんなんて同一労働同一賃金の話題が出ると「能力で差があるのは云々」
と言ってたけど、ひょっとして共産主義の一種と勘違いしてないか。
まさかとは思うが、自民党と言うのはびっくりするくらい雇用に関心が無い政党
なので、ありえると思う。というか、大丈夫か自民党。

民主党は、ある意味もっとも予想通りの反応をしていた。
一言でいうと“板ばさみ”。懸命に話題を変えようとしているのがありありと
感じられた。松本さんは人が良いのだが、あまりああいう場には向いていないかも。

共産党は相変わらず「悪代官が小判を溜め込んでる」的発想なんだけど
いい加減現実を見ろよといいたい。というか、内部留保がキャッシュで溜め込んでるなんて
赤旗以外言ってないだろう。赤旗以外の新聞も読め(毎日・東京新聞除く)。

社民党はあんなもんだろう。
公明・国民新党は全然印象がないが、政策が薄いというよりキャラが薄かったか。

最後に「子供手当てなんて掴み金だ」と公明が言ったら
「定額給付金に賛成しといて何を言うか」と民主が切り返したのは笑った。

総括すると、やはり腹の探りあいというか、痛いところはお互い隠しつつ
見栄えの良い話に終始するという部分は大きいと思う。
これは朝生の時も感じたことだが、はっきりいえば議論ではなくアピールだ。

ただし、この出来レースは、ガチンコをしかけるメンバーが一人でもいると
成り立たない。第三極を目指すグループは、この路線で行くと意外に衆目を
集められるかもしれない。
お世辞と自己ピーアールでなく、ビジョンとそのための政策を語れる人。
小泉政権が若年層の支持を集めた理由は、それだと考えている。

まあ、昨日のメンバーの中にはいないかな(笑)

サンデープロジェクト 

2009-07-24 10:50:08 | work
7月26日(日)10時~ 出演予定。

テーマはまだ確定ではないものの、雇用政策について、主要6党が議論する模様。
僕は後ろでコメントする役目のようだ。
SPAの連載もあるので非常にタイミングがいい。
前回のように前に座るわけではないので、そんなに持ち時間はないだろうが、
矛盾点にはガンガン突っ込んでいきたい。

もう一度書いておくが、僕は実効性のないアリバイ政策や、ツケの先送りにしか
ならないバラマキは一切評価しないのであしからず。

それにしても、(連載にも書いたことだが)今日現在で国民新党以外マニフェスト
未発表というのは非常にいただけない。
できてない自民党はもう論外だが、民主も出し惜しみしないでとっとと発表すべきだ。
まあ、遅れても問題化しないということは、真面目に読んでいる人が少ないという
ことなんだろうが…。


大学と既得権

2009-07-23 12:23:17 | その他
東洋経済今週号。扉ページの『経済を見る眼』で、一橋大の齊藤誠先生が
とても素晴らしいコラムを書いておられる。

なんでも一橋大学教員の再雇用制度による定年延長について、氏は一人で
「再雇用制度断固反対」のビラをたててハンストまでやったらしい。
氏が、自らも関係するであろう教員の再雇用制度の導入に反対した理由はこうだ。

しかし、国からの交付金が年々減らされている国立大学法人に
あって、高齢教員を大学組織に残すという決定は、若い研究者の
雇用を抑制することに即座につながる。 (中略)
研究の第一線に残ることが難しい60代の研究者が国立大学に
本当に必要なのか真剣に考えるべきだろう。


氏は同様に、GMや日本航空を例に出し、ベテランへの厚遇は若い人間から機会を
奪い、組織を活力を削ぐことにつながると説く。

まったく同感である。
連合や“自称”労働者政党の人間は、氏の爪の垢でもせんじて飲むべきだ。

ところで、中高年のノンワーキングリッチが既得権を正当化する時は、
必ず“階級闘争”という旗印を(知りもしないくせに)借りてくるが、大学の先生方は
どういう旗を掲げているのだろう。
まさか「学長は資本階級」なんてバカなことは言わないだろうし。

という点が長く疑問だったのだが、某国立大では、ベテラン教授のポストを守る
ために、学内で実施したアンケート調査を参考にしたという。
各学部に「何歳くらいが一番良い研究をしているか」というアンケートを自分達に
行い、「50歳以降」という回答がもっとも多かったのだそうだ。
こういうのを本当のお手盛りというのだろう。

若い会社、老いる会社

2009-07-22 12:00:22 | その他
大企業にも、老いていく会社といつまでも若い会社がある。
前者の代表を69歳の社長を抜擢した日立とすれば、後者はリクルートだろう。

リクルートというのは不思議な会社で、組織外とはもちろん、内部でも
一定の流動性を持っていて(つまり処遇の見直しがだいたい半期ごとにおこなわれる)
結果的に極めて高いレベルで新陳代謝を維持できている。

その結果、彼らは常に他社が想像できないような一手を先に打ってくる。
新卒採用が収益の柱だった時に、中途採用、中でも第二新卒に力を入れる。
紙媒体が主力の時に、Webサービスを立ち上げる。
R25のような無料媒体を成功させるetc。
こういうのはみな、古い価値観を切り捨てねば出てはこなかったサービスだ。

ただ、得意分野がある以上、苦手分野も当然ある。
実務面での日本型雇用の弊害といった部分が、まるで知らない世界であるだけに
いまひとつ理解できていない人が多いのだ。

たとえば、「中高年の活用法」といったテーマでWORKSで特集が組まれると、
いかにしてモチベーションを引き出すか、そのためにどういう研修が必要かといった
ソフト的視点は非常に強い。
だが、そのためにはポストや処遇の見直しが必須であり、どうやってそれをクリア
するかというハード的観点は非常に弱い(というか、欠落している)。
良くも悪くも全員同じスタートラインで競争できている組織なのだろう。

日本企業では自由競争が行なわれておらず、そもそも同じスタートラインにすら
立っていないからどうにかしろという話を僕はしているので、実は彼らとは似ては
いるけど全然違う話をしているわけだ。

同様の傾向は、外資やベンチャー畑を長く歩いてきた人にも見られるものだ。
彼らはきわめて優秀なのだが、突き詰めると「自分でなんとかしろ」的なスタンスであることが多い。
雇用問題ではなく、キャリア問題として処理されてしまうリスクは考慮すべきだろう。

とはいえ、個人問題化できてしまうバイタリティは素直に凄いと思う。
「自分で何とかしようぜ」と言って、実際に自分でなんとかしているわけだから。
単に最初からそういう人がそういう会社に集まっているだけなのか。
それとも、そういうバイタリティを養うシステムがあるのか。
どちらにせよ、リクルートOBの活躍を見ていると、そういうバイタリティが
誰にでも求められる時代になりつつあるのは確かなようだ。

週刊SPA! 短期集中連載のお知らせ

2009-07-21 11:14:17 | work
今週号の週刊SPA!より、総選挙まで短期集中連載を行なうことになったので
ご報告。
テーマはずばり、「マニフェスト評価」だ。

現在、解散前に各党がマニフェストを作成して有権者にアピールするという流れが
定着しつつある。ところが、きちんと並べて評価している人と言うのは、新聞記者
にもなかなかいない。
いや、確かに一部の組織でマニフェスト採点なるものは実施しているのだけど、
いかんせん若者視点というものは非常に薄く、我々が普段感じている現実との間に
ギャップが生じてしまっている。

というよりも、「高齢者の医療一割負担なんてぬるすぎる」と言ってくれる
お人好しの組織なんてないのだろう。
それは我々自身が主張しなければならないのだ。

ということで、だいたい一ヶ月ほどを目安にSPA出張の予定である。
キーワードは“世代間格差の是正”および
“持続可能な社会”の二つだ。


既得権にメスを入れない改革などありえない。
同時に、ツケの先送りももはや許される状況にはない。
現役世代にとっては、構造改革路線の貫徹以外に未来はない。

「弱者に暮らしよい生活を!」
などと言うのはもちろん自由だが、この二つの視点が欠けたマニフェストは
一切評価しないのであしからず。
空虚なフレーズやかび臭いイデオロギーでしかビジョンを語れない政党も、
国政の場に立つ資格はない。

実は現在、若手有志で集まり、若者マニフェストを作ろうと活動している。
30代を中心に、現役の政治家から官僚まで、第一線で活躍中の幅広い人材が参加
してくれている。
選挙までに出せるかは微妙だが、秋までには新書という形で世に出したいと思っている。
ただ、目の前で無視される形で総選挙が進むのも悔しいので、今回の企画でささやかな
プレッシャーをかけたいと考えた次第だ。

今回の連載内容自体はマニフェストとある程度リンクはするが、あくまで僕個人の判断
がベースとなっており、文責はすべて城繁幸に帰属することは明記しておく。

BUG

2009-07-19 13:06:18 | その他
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昔から、世の中には妙な電波を受信してしまう人というのがいる。
いわゆる電波系という人たちだ。
同時に、自分には受信能力は無いのだけど、受信力のある人を介して受信できる
ようになってしまう弱電波体質の人もいて、こっちは結構多い。

両者が出会ってしまい、化学反応を起こしてしまう話を描いたのが本作だ。
人生に倦んでいる一人の女と、どこか陰のある一人の男が出会ってしまったことに
より、徐々に歯車が狂っていき、物語は想定外の結末を迎える。

その狂う様子をよりによってエクソシストのフリードキンが描くものだから、
(気持ち悪いという意味で)完成度の高い映像に仕上がっている。
間違っても恋人や家族と見る映画ではない。

さて、話は変わるが、最近ネットの功罪についていろいろと議論されることが多い。
いろんな可能性を秘めているのは事実だが、結局は低レベルな使われ方に終始し、
新たな価値は生み出せないのではないかといった内容だ。
個人的には、“罪”の部分の筆頭は、電波系同士の出会いだと考えている。

そういう人同士がWeb上で妙なネットワークを作っているのを見ると、まるで
リアルBUGを見ているようないやーな気分になる。
普通に健全な文化的な人生を送れるはずだったのに、
Webのおかげで頭がゆるゆるになっちゃったんだなあと考えると
確かにWebは罪作りだ。


ちなみに、常識という枠組みからフリーな存在である電波には、右も左もない。
「コミンテルンの陰謀だ」とか「郵政民営化はユダヤ人の陰謀である」とか
「9.11はアメリカの自演である」とか…。

もし、1gでも「いやありえるかも」と感じている人がいれば、本作を見ることを
お勧めする。自分を客観視するきっかけくらいにはなるだろう。
「主人公たちは間違っていない!」と思ったら、とりあえず病院へGO!だ。

最低賃金1000円は可能か

2009-07-17 10:23:26 | 経済一般
民主党が「最低賃金1000円化」をマニフェストに入れた件について。
結論から言うと、現状では弊害の方が大きいだろう。

いつも言っているように、人件費の総額は法によっては変えられない。
たとえば、ある会社が法改正により、結果的に「時給を1割引き上げるべし」と
なってしまったとすると、

(1)価格に転嫁する
(2)社員の人件費を見直すことで、捻出
(3)非正規雇用カットや新卒採用の抑制で帳尻

三つのうちのどれかのプロセスが発生することになる。
当然、現状の日本においては(2)は難しい。
国際競争下で一方的な価格転嫁は難しい(できたとして、低所得者支援の意義は?)
ということで(3)が間違いなく主流になると思われる。
「仕事は誰がやるのだ」と思う人もいるかもしれないが、担い手のいなくなった仕事
については、既存社員の残業か海外発注でまかなわれることになる。

もっとも、絶対にダメかと言うとそうでもなくて、景気が良い時、かつ既存社員の
処遇見直しが可能な状態であれば、一定の再分配効果は見込めると思う。
一部の議員が「ニューディール時に最低賃金引き上げが景気回復に有効だった」
と言っているようだが、アメリカは流動性が高いから上を削って下に回すという
効果も期待できるのであって、日本でやっても失業率が上がるだけだ。
(ただ失業率も景気も改善しなかったので効果があったかは疑問だが)

ということで、最賃引き上げは時期尚早だろう。
ついでにいうと、一連の「派遣法の規制強化」も、上記の図式とまったく同じだ。
流動化無しでそんなことをやっても、規制バカの自己満足にしかならない。

この人災は、隣国で現実に起こっている出来事だ。
いや、わざわざ海の向こうに目を向ける必要も無い。
某政党が「3年たったら何が何でも直接雇用」と規制強化の流れに持っていったため
慌てた企業による“サブプライム便乗切り”が、
国内でも相当数発生していると思われる。


ところで、上記のようなアングルはなんら目新しいものではなく、エコノミストや
官僚の間では常識だ(モリタクと厚労省除く)。
民主党の労働関係の議員もよく承知しているはず。
ではなぜ、彼らはマニフェストに入れたのか。
そっちの方が票が取れると踏んだのだろう。
一部の論者や経済誌が多少騒いだところで、泣いて喜ぶ規制バカの方が多そうだから
トレードオフしちゃったわけだ。
均しく選挙権の保障された民主主義体制下では当然の選択だ。
結局は、彼らをそう振る舞わせた我々有権者にツケが回ってくるのだろう。