Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

正社員のジレンマ

2010-10-23 10:27:46 | 人事
連合が非正規雇用の待遇向上を正規以上に打ち出したそうだ。
まあ、電話相談窓口よりは一歩前進と言ってもいいだろう。
ただ、具体的にどれくらい引き上げるのか、具体的な目標が含まれていないので、
即効性は薄いだろう。

一方、Ronzaでも、コテコテの“大企業悪玉論”でお馴染みの竹信さんが、
同一労働同一賃金について述べている。

日本の労働市場には、同一価値労働同一賃金を図るモノサシがない。
終身雇用の会社人間を基本としてきたため、会社を越えて職務の価値を
計る仕組みが発達しなかったからだ。


ようやく構造的な問題についても勉強してくれたようだが、氏もここでばったり
思考停止してしまい、後半は何を言っているのかまったくわからない。

本気で同一労働同一賃金をやろうと思ったら、方法は一つしかない。
たとえば現状、朝日新聞が竹富さんと同じ学歴、年齢の女性を採用しようとしたら、
1500万以上払わないといけない。
だから、雇うのは22歳のピチピチの男の子がメインで、そこから外れる人は非正規
として雇用するわけだ。
というわけで、年齢、学歴によらない流動的な処遇を労使で決めていただくのが、唯一
同一労働同一賃金への道筋である。
そのための基本法でも作って、その流れを後押しする以外にないだろう。

ただ、そうすると当然、一千万以上貰っている正社員の中には、どかんと下がる人も
出てくるわけだ。連合の「とりあえず言ってみました的なスローガン」にせよ、
竹信さんの支離滅裂な作文にせよ、その向こうには正社員のジレンマが透けて見える。

天下りが無くならない理由

2010-08-12 10:02:47 | 人事
天下り廃止は、民主党から共産党まですべての政党が掲げる目標だ。
有権者の支持、(官僚以外の)実務者層の支持もある。ある意味、これほど争点のない
政策目標も無いはずだ。

にもかかわらず、なぜ天下りは90年代から一向に無くならないのか。
それは「天下り廃止=日本型雇用の完全否定」となるためだ。
入省年次による職能給を
全廃して、職務給ベースに切り替えつつ、各ポストは流動化して抜擢・降格を実施する。
専門的なポストについては大学、シンクタンク等からのヘッドハンティングも進め、人材の
最適化を図る。
要するに、僕が普段言っている雇用流動化を霞が関の中でまずやってみてね、ということだ。
こうなると途端にハードルは跳ね上がってしまう。
これが、天下り廃止をやるやると言いつつ誰も出来ない理由である。

ただし、天下りを辞めさせるだけでいいならもっと簡単な方法はあって、出世の芽の無くなった
官僚をラインから外し、参事でも担当部長でも何でもいいから適当な肩書を与えて定年まで
囲っておけばよい。給料は、最終到達ポスト+αくらいなら文句も出ないだろう。

もちろんその分の人件費は増えるわけだが、わけのわからない独法を増やされて、わけの
わからないう予算をばしばし付けられるよりは、そっちの方がはるかに安上がりなはずである。
民間大手だって似たようなことはやっているのだから、個人的にはそれくらいOKかなと思って
いる。

そして予想通りその路線でお茶を濁そうとした民主党だが、なんと人事院にダメだしされた
らしい(笑)
「仕事も無いのに一千万以上も払えるか」というロジックだそうだ。
やっぱり窓際の中高年官僚なんて仕事してないって認めてるわけですね。
さすが人事院。容赦ない。

まあこのご時世、国民が高給での飼い殺しを認めるかというと微妙だし、たぶんみんなの党
あたりは格好の攻撃材料と見なして批判キャンペーンを展開するはず。
結局、日本型雇用という問題の本丸にがっぷりよつで向き合わない限り、天下りなんて無く
せないということだ。そしてそれは民主党には絶対に不可能なことだろう。
(みんなの党に出来るかどうかも怪しいが)

天下り根絶するためにはとりあえず捨扶持の人件費がいるのだけど、「人件費2割削減!」
とマニフェストに書いてしまっている民主党。
一般公務員の給料をじわじわ削る一方で、高給取りの窓際族なんて増やせるわけがない人事院。
そして、職員は残業地獄なのに日本型雇用死守なんて白書書いちゃった厚労省。
霞が関にはいろいろなジレンマが満ち満ちている。



人生にもクライマックスシリーズは必要

2010-04-22 12:32:26 | 人事
ビジネスマンの精神科 (講談社現代新書)
岩波 明
講談社

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先日、某紙の編集委員と話していて、ふと会社内のメンタル・トラブルの話題となった。
なんでも地方支局に顔を出すと、4人も休職者がいて驚いたそうだ。記者20人だから実に2割。
それも、全員2,30代の若手らしい。
「いったいどういうことなんでしょうか……」と困惑していたが、無理もない。

その新聞は過去、何度も、“うつ”などのメンタルトラブルの増加は、「IT社会のストレス」だの
「ノルマや過重労働」だのが原因だという論調を張ってきた。
だがこれらは誤りだ。週休二日制の浸透やITの普及で、むしろ日本人の年間総実労働時間は
(長期的には)減少傾向にある。そもそも、東京の政治部ならともかく、地方支局で過労というのは
あまり聞かない。
そしてとても重要なことだが、新聞崩壊とかなんとか言われているが、新聞社の平均賃金は
腐ってもメーカーよりは高く、それくらいの若手でも800万くらいは貰っている。

つまり、「全然恵まれた労働環境なのに、なぜわが社の社員はこうもバタバタ壊れるのか」
という点に困惑しているわけだ。

とはいえ、理由自体ははっきりしている。
30代前半までに、「本社出世コース」と「地方ドサ回り兵隊コース」に分けて
後は30年間放置プレイなんて硬直的な人事制度こそが原因だ。


30過ぎの若手に「おまえあと30年間消化試合だから。あ、でも仕事は手抜くなよ」というのは
やっぱり無理があるのだ。消化試合を無くすには、社内にクライマックスシリーズを導入しないとね。

この点について、精神科医の岩波明氏が興味深い指摘をしている(狂気という隣人)。
氏の同僚である医師が、数年の間に5人も自殺したこと、そして、よく指摘される「医師の過労」
といった問題が、この場合はあてはまらないことを述べた上で、一つの“仮説”を示す。

自殺を考える以前に、あるいはうつ病の状態になる以前に、すでに彼らは
生きていくこと自体に希望を失っていたのではないか?そしてまたこのことが、
最近増加している自殺者たち、あるいは自殺しようと考えている多くの人々に
あてはまるのではないでしょうか。


僕の感覚からすると、この指摘がもっとも現場に当てはまる気がする。

ちなみに、冒頭の編集委員さんには「もうちょっと簡単な対策はないですかね?」と聞かれたので
もっと簡単な対策も提案しておいた。
それは、最初から「正社員でありさえすれば満足だ」という人材を採用することだ。
高い収入はもちろん、やりがいや社会の公器たらんというような情熱も持っていない層だけ採れば、
そこまでの惨状にはならないだろう。
要は、最初から仕事を消化試合だと思っているタイプを採るわけだ。

「そんなのじゃ仕事は回らないよ」というのであれば、システム自体にメスを入れるしかない。
飲めば一発で直る処方箋なんて存在しないのだ。


※精神科医の著作にはいい加減なものも多いが、氏は数少ない「信頼できる書き手」だ。
 「ビジネスマンの精神科」は、メンタルトラブル対策の重要性を理解する上でも有用なハンドブックだろう。

本当に日本の解雇規制は緩いのか

2010-01-29 15:58:42 | 人事
モリタクがまた妙なことを言っている。もうこの人はほっといても良いのだけど、僕のこと
を意識した反論くさいし、何よりこういうのを野放しにするのはやっぱり教育上よろしく
ないと思うので、ここは一つ後輩として介錯してやろうと思う。

彼はOECDの雇用統計を元に、「日本の解雇規制は厳しくない」と述べる。
確かに、このデータを見ると、ドイツやフランス、そしてオランダなどよりも日本の
ポイントは低く、ヨーロッパ諸国よりは解雇しやすいと思うかもしれない。

だが、この「雇用保護の厳格性」(Strictness of employment protection)を文字通りに
受け取ってはならない。
以前も述べたとおり、この数値は以下の3つの指標を総合したものだ。
1. 手続きの不便さ
2. 会社都合解雇の場合の告知期間と補償額
3. 解雇の難しさ

法律上は、一ヶ月前の告知で一か月分の賃金さえ払えばいつでも誰でも解雇可能となって
いるわけで、総合ランキングだと日本のポイントが低くなるのは当然だろう。
だがそんな風に解雇される労働者は稀だ。
要するに、判例によってそもそも解雇自体が認められにくい制度になっているので、2番が
手厚くなっていないというだけの話だ。

よって、議論すべきは3番となる。
ちなみに、この指標での日本の順位は、最新データである2008年度版
ではOECD加盟30カ国中第一位。
栄えある「先進国で一番正社員が解雇しにくい国」となっている。

「日本の解雇規制は厳しくない」どころの話ではないのだ。※

さらに言えば、後半で森永はこうも続ける。

ところが現実には、中小企業や零細企業では、社長が
「お前は気に入らないからクビ」ということが少なからずある。
明らかに法律違反なのだが、実際に起きているのだ。


例によって例のごとく、日本型雇用の一階部分、大手の踏み台にされる中小企業を引き合いに
出して、「正社員も苦しんでいる!」と言ってみせる。
当たり前だろう。どんな制度であろうと、雇用調整はなされる。問題はそれが規制によって
一部の下請け企業、特定の雇用形態の労働者に集中し、資源と人員の効率的な配分が
なされていない点にあるのだ。

以上のような話は雇用問題を語る論者にとっては常識で、もっといえば、実社会で働いた
経験のある人間なら肌で感じているに違いない。
僕には森永が、こうした事実を理解していないとはどうしても思えない。

もしここを見ているテレビ局の人がいるなら、お願いしたいことがある。
あなた方に公共心があるのなら、もうこの男は金輪際使わないで欲しい。
どんなに我々が正論を吐いても、この男はお金儲けのために電波で嘘を撒き散らして
しまう。
獨協大も教育機関としての自覚があるなら、こんな嘘つきを教壇に立たせるべきではない。
確かに、大学の名前を売ってはくれるはず。
でもそれ以上に大切なものを、この男は売り叩いているのだから。



リンク先の「Individual dismissal of workers with regular contracts」項参照のこと。
  生データについては同じリンク先にあるExcelシート参照。

福島正則に学ぶ部下のマネジメント

2009-11-13 10:31:39 | 人事
先日の「新人をライン応援に」という話に続き、トヨタがヤマハから応援まで受け
入れているようだ。

もっとも、この手のことは良くある話で、00年前後には電機もトヨタへ応援を
出していた。派遣元は余剰人員を遊ばせずに日銭が稼げるし、派遣先は短期の需要
を後腐れ無しに賄える。実に合理的なワークシェアリングだといえる。

問題は「守られるのが既に正社員という地位を手にしている者だけ」
である点だ。


考えてみれば、実に不思議な話だ。自社の非正規雇用を切り捨てつつ、わざわざ
よそから正社員さまを借りてくるのだから。

ふと、江戸時代初期の大名・福島正則のエピソードを思い出した(名将言行録より)。
領内の酷政にたまらず陳情に来た農民達を捕まえて、正則はあっさり処刑してしまう。
その時のセリフがなんともすかしている。
「俺の部下は俺のために命を張っている。それに比べてお前たちは年貢も払おうとせず
なんという言い草だ」(意訳)
そして、それを見て士気を高めるマッチョな家臣団一同…。

要するに、戦国大名出身の福島正則にとっては、同じ階層の家臣こそ守るべき身内
であり、その下の領民というのは、搾取と切り捨ての対象に過ぎないわけだ。
農民にとってはたまったものではないが、武士階級にとって正則は良い雇用主である。
そして、やってることはそのまま、現在の大手労使と同じだろう。
まさに身分制度である。

身分制度を崩すには、特権的身分保証を取り上げるしかないという点は、今も昔も
変わらない。現代の特権とは何なのかは、もう一々言わないけれど、
“友愛”とか“リベラル”という言葉が本気で好きなら、今の自分たちが特権階級
よりだということくらいは知っておくといい。

トヨタに学ぶ「日本型雇用の守り方」

2009-11-01 08:39:08 | 人事
そうきたか、という印象だ。
トヨタが一年目の新人を製造ラインに配置するらしい。

トヨタは現在、期間従業員の採用を再開して生産ラインの繁忙に
対応している。ただ10年春以降の需要が見極めづらいため、
期間従業員の採用を増やす代わりに新入社員を一時的に工場に
応援要員として派遣することにした。
新入社員は9月まで工場や販売店で研修していた。


製造ライン研修というのは(事務系は含まない等の違いはあれど)大手メーカーなら
どこでも見られる。今回はそれを全新人にし、期間も三ヶ月と拡大するものだ。
ちなみに僕も長野でシリコン洗ったことがある。

トヨタとしては、プリウスの需要増が財政出動による“先食い”であることを
良く理解しているのだろう。本来なら期間工や派遣と言った非正規雇用で対応する
のだろうが、数ヵ月後に解雇すれば、また盛大にバッシングされるのは目に
見えている。実際、某政党などは手ぐすね引いて待ち構えているはずだ。
そんな罠にのこのこ飛び込んでいくほどトヨタはバカではない。

大卒総合職を製造現場に回すことに違和感を感じる人も多いと思うが、終身雇用
を前提に、あらゆる職をローテさせるのは日本型雇用のお家芸だ。
重要なのは「トヨタの正社員」という身分であって、
「何の仕事をしているのか」ではない。

そういう意味でも、今回のトヨタの対応は実に日本らしい雇用対策である。
椅子に座っていない人間にとっては、何の慰みにもならないだろうが。

以前、安易な規制では失業率は改善せず、せいぜい正社員の残業が増えるだけだと
述べた。かわりに新人の研修期間が増えたわけだ。
新政権は、ついでに「新人のライン研修禁止」という法律も作ってみてはどうか。

野村證券には初任給350万と1,000万の2種類いるらしい

2009-10-09 10:17:13 | 人事
週刊SPA今週号を読んでいて思わず笑った記事がある。
金融業界特集で、野村證券の新人についての話だ。

ご存知の通り、今年の野村の新入社員には、野村證券から内定をもらった人と、
旧リーマンブラザーズから内定をもらった人の2種類が存在する。

で、問題はそのお給料なのだが、後者は前者の三倍もらっているらしい(笑)
しかも初任給1000万超なのに家賃補助まで100%支給されるとか(野村は寮のみ)。
待遇差に野村側の社員が不満を持っているという話はちょくちょく聞くが、
まさか新人でもこれだけ差がついているとは思わなかった。
「2年間は待遇を維持する」という条件で買収したため、内定者の新人も旧規定が
適用されたのだろう。

もっとも、野村自体は「リーマン側に人事制度をあわせる」と明言しているから、
フレーム自体が見直されることは無いだろう。営業部門など数値に直結しやすい
部門を中心に完全な年俸制に移行し、管理部門などルーチンワーク主体の部門は
旧来型の制度という風に、分化していくものと思われる。

もちろんいいことだけではなくて、リスクもある。リーマン型新人は終身雇用では
なく特定社員という名の契約社員だ。それでも、今後はそちらがメインになるはずだ。
いつも言っているように、年功序列賃金というのは、要するにその世代内での平均額だ。
なので「自分は平均よりは優秀だ」と思う人間はリーマン型に集まり、そう思わない人
は旧来型に残るだろう。

リスクが高い方がリターンが大きいのは当たり前の話だし、競争力の必要な部門に
そういった制度を導入することは正しい。この流れはいたって正常な進化だ。

そういう意味では、「低リスク高リターンな人たち」が
「高リスク低リターン」の上にどかっと居座る現状は、資本主義的
にはもちろん、民主主義的にも明らかにおかしい。

これに似た体制というのは、封建制度における身分制くらいだ。

長期雇用の価値をどう判断するかで意見は分かれるだろうが、心情的には、
非正規雇用という身分制度に依存するトヨタ型にはどうしても違和感を感じて
しまう。というわけで、野村の人事制度改革には注目している。


重要なのは、天下り廃止のその先だ

2009-09-28 10:48:19 | 人事
先日の番組。
雇用問題はまあオマケみたいなものだったけど、その他で
いくつか興味深いコメントが見られた。
特に天下りに関する議論では、各党の価値観が明確に現れていたと思う。

天下りの禁止については、あそこまで言い切る以上、抜本的な見直しを
進めるのだろう。
ただし、世耕氏が言うように、重要なのはその先のプランだ。
文字通りに天下りを禁止するのであれば、「30代で局長に抜擢」
するような完全実力型の人事制度に切り替え、組織内の流動性
を大幅に高めないと話にならない。

つまり、能力のない人間はバンバン降格するという欧米ホワイトカラー並みの
実力主義が必要となる。

言っちゃあなんだけど、「小泉改革で格差が拡大した」とか「全員正社員にすべき」
なんて今どき真顔で言っているような人たちに、そういうセンスがあるとはとうてい
思えない。
「官僚や政治家はお金のためだけにやる仕事ではない」
という松原仁氏の意見は一つの理想だが、古今東西問わず、集まる人材の質は報酬額に
比例して決まるものだ。

かつて、多くの人間が大企業を目指したのは、生涯賃金で見ればそれが魅力的だった
からだ。近年、外資や医学部の人気が高まったのは、若者の気質が変わったわけでは
なく、単に年功序列の期待値が低下した結果にすぎない。
「最近の若い者は辛抱が足らん、目先の利益しか考えていない」なんてトップの意見は
制度改革をさぼる言い訳でしかないし、少なくともエリートは、そんな精神論を
聞く耳もたないだろう。

というような民間の経験を、与党にはしっかり踏まえていただきたい。
ダメ企業ならとっとと潰れてもらって構わないのだけど、国の屋台骨の話だからね。

そうそう、ついでに言っておくと、天下りという蛇口を閉めっぱなしで放置する
だけでも、人材は集まることは集まる。
志望動機を聞かれて、
「官僚達の夏が面白かったからです」とか
「安定してそうだから」とか言っちゃうような人でよければ、
心配しなくても毎年受けに来てくれるだろう。


なので、そういうのを数年で鍛え上げて戦力にするような研修システムと人事制度
を構築できるなら、このまま行くというのも手ではある。
流動化の方が簡単だと思うけど。


その他、メモ。

・「新制度の最低保証年金はいつから満額支給?」との問いに、全員てんでんばらばら
 で回答する連合軍(しかも皆違う)。まあマニフェストなんて、立案者以外は
 その程度の扱いなんだろう。
・浅尾慶一郎(みんなの党)は要注目かも。
・亀井亜紀子(国民新党)はお父さんそっくり。

日本型雇用の生の味

2009-09-24 18:56:43 | 人事
天下りという闇に、いよいよメスが入ることになりそうだ。

厚生労働省所管の独立行政法人「高齢・障害者雇用支援機構」が
同省天下りOBらの年収を委託費で保証していた問題で、政府の
行政改革推進本部事務局が18日までに、同機構の調査を始めた
ことがわかった。


年収保証までしていたというから、闇はずいぶんと深いだろう。
それにしても、雇用改革にまったく手をつけず格差や貧困を放置したまま、
「高齢・障害者雇用支援機構」の名の下、税金を垂れ流してこういうことを
やっていた厚労省というのは、救いようが無い組織だ。

もっとも、同様のことは各省庁にも存在する。
組織の成長拡大しない官庁にとって、天下りは年功序列制度を維持する大動脈だ。
それがストップすれば、数年で回転していたポストに、下手をすれば定年まで
居座ってしまうハメになり、以前から指摘してきたように、若手~中堅にとっては
絶望的な状況になる。
彼らもようやく、そのリスクを危惧しはじめたようだ。

もっとも、それ自体は別に珍しいことでもない。
飼い殺しも空手形も、民間では10年以上前から起きている話である。
そういう日本型雇用の矛盾を、天下りというトリックでごまかし続けてきたわけだ。

ただ、官庁では以下の二点で、民間より悲惨な地獄絵図になると思われる。

・大手のように天下り先が無い

民間大手には“グループ企業”という名の天下り先がある。
商社のように特にグループ企業の多い業種であれば、組織がゼロ成長でも結果的に
年功序列は維持出来るケースもある。
これが完全になくなるわけだから、「課長以上昇格者は26%」という大手の数値
を下回る可能性が高い。

・組織体制や業務プロセスが昭和的で、長時間残業が恒常的

中央省庁は平均的に忙しい。特に質問主意書などでつるし上げられている部署など
月100時間超の残業はザラである。
僕の経験上、人というのは“希望”を失った途端、業務量やプレッシャーに対する
免疫が激減する。つまり、報酬システムが崩壊し、ただの3K職場に成り下がる
ことで、回っていた業務も回らなくなるはずだ。
具体的に言うと、メンタルトラブル等でバタバタ倒れる官僚が続出するんじゃないかな。
大変ですね、霞が関も。

まあ、そういう警告を何年も前から色々な論者にされているのに、
「日本は従来どおりの長期雇用で行くべきだ」と言い続けてきたわけだから、
少なくとも厚労省については自業自得だろう。どうにでもなるがいい。

長妻&仙石コンビに、わけのわからない独立行政法人を全部潰されて、
人事がガタガタになって、職員がバタバタ倒れても、仕方ないよね。
だって、自分たちがそれを良しとしてきたんだから。

そういえば「城さんの主張は財界よりだ」と言っていた木っ端役人もいたけど、
今回は財界も新自由主義も関係ない。
“天下り”というインチキを取り上げられただけだ。

「日本型雇用は素晴らしい!これからもこれで行きましょう!」
と天下に向けて公言してきたお役人には、
がっぷり四つで、日本型雇用の生の味を味わっていただきたい。
きっと悲鳴を上げるくらい気に入ると思うよ。


未知との遭遇

2009-09-17 10:05:38 | 人事
さて、新内閣の誕生である。
みずほちゃんを食品担当とか消費者担当に配流するあたりは人事的センスを
感じるのだけど、やはり最大の問題は亀井さんだろう。

今回の総選挙で、国民新党は勝った訳ではない。
代表と幹事長が揃って落選している点からも明らかなように、彼らの主張が
支持されたわけではないのだ。
ちなみに、若者マニフェスト策定委員会での政党マニフェスト採点で、
僕は国民新党の財政・社会保障政策にほとんどゼロ点をつけている。

その国民新党が与党となり、あろうことか、彼らの最大の主張である郵政問題担当
のポストを手にしたのだから、本当に政治というのは不思議なものだ。
そもそも、民営化に反対しているエコノミストなんて一人もいないはず。※
時代に逆行する金融・郵政改革担当の誕生だ。

もっとも、意外な収穫もあった。
総理による国策捜査発言の撤回だ。

それから、西松建設に対して、「国策捜査」という言葉を1度使った
次第でございますが、私は2度は使わなかったつもりでございます。
すなわち、一度使ったことに対する、ある種の反省の思いを含めて、
その言葉を遠慮している所でございますので、そのような立場を
ご理解頂きたい。


要するに「あれは選挙用のパフォーマンスでした」と認めたわけだ。
いや、全然いいんですけどね。だって、もともとそんなヨタ話を本気で信じてたのは
ミラーマンとかモリタクとか、そっち系の人だけなので。
できればこの調子で
「郵政民営化見直しも派遣禁止も、全部パフォーマンスでした」
と言っていただきたい。

良い方向にマニフェストを見直す分なら、いくらでもぶれて構わないですよ、鳩山さん。


※森永卓郎は僕の中では芸人枠なので未カウント。
 芸風でいうと“左の鳥肌実”みたいなものだ。