Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

規制で失業率が上がりますと言いながら規制しようとする妙な人たち

2009-12-30 12:01:24 | 経済一般
ほとんどの経済学者やエコノミストは、雇用規制を強化したところで失業率が上がる
だけで、このご時勢で派遣規制なんてやったら十万人単位の失業者が出るぞという
警告を発している。いつも言っているように、規制で予算は増やせないのだ。
別に学者じゃなくても、実社会で働いた経験があれば、それくらいはわかるだろう。

ところが世の中には「規制で失業率を抑制できる」という単細胞が多くて、そういうのは
「派遣さんが可哀そうだから派遣を無くしてしまえばいい」ということを平気で言う。
代表者は連合などの正社員労組、社民・共産といった既存左派だ。

僕は今まで、こういう人たちは単純に頭が悪いだけで、分かりやすく説明すれば
わかってもらえるだろうと、いかに平易にメカニズムを説明するかに腐心してきた
のだけど、ふとこんな記事を見つけて失笑してしまった。
以下、連合の長谷川総合労働局長が、民主党の緊急雇用対策本部(本部長=菅直人)
に、今年2月に提言した内容だ。

3月には派遣労働の3年以上雇用した場合の正規雇用への
切り替え問題も加わり、さらに雇用を失う人が増える。


要するに、「(3年ルールという規制強化で)失業者が増えますよ」と提言している
わけで、なんだ、連合さんはよくわかっておられるじゃないですか。
ああ、バカらしい。

ついでに言っておくと、「派遣労働者を3年雇用したら直接雇用にしないといけない」
という3年ルール回避のせいで、便乗的に解雇された派遣労働者は少なくない。
こんなことは人事の人間ならみんな知っている常識だ。
なんてことをいうと、単細胞はまた
「本来は正社員として雇われるべきだ、だから企業が悪いのだ」
なんて“べき論”を言うのだろうけど、僕に言わせれば、リミットのある人件費の
流動化を認めずに規制強化を誘導した、共産党をはじめとする(当時の)野党の
皆さんの方が極悪きわまりない。

さらに言えば、こういう現実を報じないメディアにも責任はある。
僕が知る限り、この点について触れたのは、今年頭に
「最大の雇用対策は3年ルールの凍結だ」とNHKラジオで述べた政策研究大学院の
八田先生くらいだ。

それにしても、「規制強化で失業率アップ」という事実認識をしっかり持ちつつ、
規制強化を推進する連合にとって、
派遣労働者の雇用なんてぶっちゃけどうでもいいんだろうな。
どうせ組合員じゃないし、非組の追放で組合組織率は結果的に引き上げられるだろうし。
後は野となれ山となれといったところか。

そういう提言をされ嬉しそうに自分とこのサイトにアップまでする民主党というのは、
単なる連合のロビー団体か、そうじゃないとしたらよほどの阿呆だ。

「良い就職先」とはどこだろう

2009-12-28 14:58:44 | 採用
良い就職先について、ちょっとだけ考えてみた。

7,8年前、僕がまだサラリーマンをやっていた頃、後輩にそういった質問をされて、
(国際競争が無いから)その時は「新聞社」と答えたが、いまや斜陽産業の代表に
なってしまった。

5年ほど前、何かのインタビューで同じ質問をされた際は「テレビ局」と答えたが
TBSは数年前から新卒は別会社採用だし、日テレなんて新しい賃金規則に切り替えた。
(もちろん、賃下げが目的だ)

結局のところ、今後数十年間、この日本において安定的に成長するという会社は
ないのだろう。メディアのような規制産業なら潰れはしないだろうが、日本経済
自体がほとんどゼロ成長な以上、(どんなに弄ってもベースは年功序列なので)今から
入っても良い目は見られないはず。

ただし、こういう悲観的な視点は、「新人として日本型雇用の世界に入る」という
積み上げ式で考えたものだ。1年か2年ごとの短いスパンでの出来高払い式なら、
いくらでも割に合う働き方は可能である。
逆に言えば、これから社会で(やりがいにせよ報酬にせよ)そこそこのものを得ようと
思ったら、そういう出来高払い式で行かないとダメだろう。

そこで、これから社会に出る人には3つ選択肢がある。

1.出来高払い型
まず、一年目から年俸制のベンチャーや外資に行って勝負すること。
そこまで行かなくても、労組のないユニクロやリクルートなども悪くない。
個人的に労組がある会社は、中高年男性正社員に貢がされてポイされる可能性が高い
のでオススメはしない。

2.割り切り型
「正社員であるだけで幸せじゃないか」というようなモチベーションの人もいるだろう
が、日本企業の雇用環境は世界的に見て最悪なので、そんなところで一兵卒として
働くメリットなんてない。雇用保証だけが目的なら、田舎の市役所にでも行くといい。
自治労さまバンザイの民主党が国家破綻のその日まで、全力で守ってくれるはず。

3.有事即応型
渡邉氏の言うように、イニシアチブをとってキャリアを設計しておくこと。
要するに、転職しようがしまいが、何があっても対応できるように、市場価値を意識
して働くということだ。
もっとも、結局どこかの時点で(1)に転進しないと“終身雇用型サラリーマン”と
何も変わらないわけで、そう考えるとタイミングの違いにすぎないと言えるかも。

こう考えていくと、20代の分化はそれぞれのタイプで説明がつく。
戦コンや外銀に殺到するエリート学生は(1)に、“草食系”と呼ばれる若者は(2)に
該当するはずだ。(3)はもっと幅広く存在するが、極端なケースが“カツマー”だろう。

すべての人にとって先行き不透明な時代ではあるけど、少なくともどの道を行くか
選べる20代というのは恵まれているかもしれない。

ポスト鳩山がとても心配だ

2009-12-26 09:14:08 | その他
鳩山さんの献金問題で、とりあえず本人が責任を認めつつ謝罪という形になった。
個人的には辞任しなきゃダメだとまでは思わないし、何より日本にはそれどころ
じゃない問題が山積だ。

ただ、じゃあ鳩山さんが首相であり続けて、「それどころじゃない問題」を解決して
くれそうかというと、この人からはそんな様子は微塵も感じられないわけで、
要するに「どっちでもいい」状態である。まあ、頑張ってください。

ところで、仮に参院選前に辞任したとして。
そもそも「問題を解決してくれそうな人」が与党内にいるのだろうか。

そういえば先週のテレ東・週刊ニュース新書で、田原氏と田勢氏がポスト鳩山予想を
していたが、両者が共通で挙げていたのは、なんと亀井静香。
「需要不足はバラマキでカバー」というトンデモ政策の老人だ。
いまどき自民党にもいませんよそんな人。

それにしても。
小沢さんにせよ亀井さんにせよ、「政権交代!」をキャッチフレーズに成立した新政権
のキーパーソンが、自民より自民党らしいというのは皮肉な話だ。
まして、自民から「使いもんにならないから」といって捨てられたお下がりが
首相とか民主の幹事長になったらもう笑うしかない。
でも、こういう政権交代をあと何度か繰り返さないと、中身のある二大政党制は確立
しないのだろう。

そう考えると、亀井内閣総理大臣のもと、100兆円規模の予算を数年組んで
ハイパーインフレでもなんでも起こしてもらうのもありかもしれない。
なんとかとハサミは使いようというが、今の政権にはそれくらいの可能性しか
感じない。

日本の論点2010

2009-12-25 13:25:51 | work
日本の論点 2010

文藝春秋

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日本の論点2010に寄稿したのでご報告。かれこれ3回目かな。
「日本の論点」と銘打たれた本に書かせていただけるのは嬉しいのだが、
人選はイマイチ良く分からない。
ちなみに今年のテーマは「会社の人事制度」だ。あんまり論点にはなってないような。

で、なぜか「新卒一括採用の弊害」について、社会学の本田由紀先生が書いている。
謎だ……。

大企業トヨタの直参と陪臣

2009-12-24 09:15:42 | 経済一般
トヨタが下請けへの支払いを一律で3割カットするというニュースが話題となって
いる。こういう下請けイジメはどこの大手でもルーチンとして存在しているが、
一律で、しかも3割というのは結構えげつない。

こういう流れの中では、本来は自社内の効率化で捻出すべき
原資まで、コストとして下請けに押し付けられることになる。

トヨタ本社の管理部門にいるノンワーキングリッチが肥え太る一方で、
モノ作りの現場はどんどんやせ細っていくわけだ。

これが、世界でも類を見ないほどの、企業規模による格差を生み出すアングルだ。
僕が常々「日本型雇用は身分制度で、メリットがあるのは二階部分の正社員だけ」
と言っているのはこういう理由による。
少なくとも市場が正しく機能するよう規制緩和すれば、脂肪に高値はつかないから、
(長期的には)役割に見合った適正な分配がなされるはずだ。

たまに「中小企業の中にはリストラや賃下げなどの違法行為を平気で行なう企業がある」
というようなことを言う人がいるが、ちょっと違う。
リストラや労働条件の不利益変更が出来ないという判例は、それらを全面的に禁じて
いるわけではなくて、「経営上の必要性」といった合理的な事情があれば認められる
とする。
そういった下請け企業は金が無いから賃下げやリストラをせざるを得ないわけであって、
合理的な事情はびんびんに存在している。(争う余地はあっても)違法とは言い切れない。

「金がある大手は、あくまで日本型雇用を守りなさい。でも下請けはそういった大手を
下支えしなければいけませんから、大目に見ますよ」
日本の雇用法制には、企業のカースト制度を裏付けるダブルスタンダードが埋め込まれて
いるような気がしてならない。

企業規模や雇用形態によらず、最初から現実的で明文化された文言を一律適用し、
(性差や年齢といった理由での)違法解雇のみを禁じる方が、ずっと合理的で民主的
だと思うのだが。
そういう意味では、“流動化”などと言わずに「規制の明文化」なんて言ったほうが
受け入れられやすいかもしれない。

先日の営業部門世界再配置のニュースとあわせて考えると、トヨタは恐らく新興国
への進出を本格化させるつもりだろう。そして、彼らが買える水準にまで、コスト
の引き下げは今後も続くだろう。もともと「乾いた雑巾」と呼ばれるくらい絞っていた
わけだから、事実上の廃業に追い込まれるところも多いのではないか。

これまでアメリカというリッチな上客のおかげで目立たずにすんだが、企業規模、
雇用形態による格差の拡大は今後も加速していくはずだ。
また、モリタクか誰かが「新自由主義のせいだ!」とか言い出しそうなのであらかじめ
言っておくが、これらは日本型雇用が生み出す格差である。

もちろん、完全な自由競争下でも格差は残るが、そこには希望があり、副産物として
イノベーションも生まれる。
身分制度は恐らく、上位の怠惰と下位の絶望以外は何も生まない。

週刊 ダイヤモンド 2010年 1/2号

2009-12-22 11:16:30 | work
週刊 ダイヤモンド 2010年 1/2号 [雑誌]

ダイヤモンド社

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今年も、週刊ダイヤモンドの年末新年合併号に寄稿。
2010年の雇用情勢についての展望だ。

成長戦略の無い現政権では椅子は増えず、流動化も進まないから
学生と非正規雇用労働者、失業者には厳しい時代が続くという内容だ。
自分で書いていて思うのだけど、全然明るい話題が無いな(笑)
いや、僕が悪いんじゃなくて、それだけ政策が迷走しているわけだ。

とはいえ、去年も結構暗い話だったので、何か良いことはないかと考えてみた。
「おお、そういえば一つだけあるじゃないか」
ということで、来年、雇用情勢において期待しているたった一つのことを
最後に述べておいた。

頑張れユニクロ

2009-12-21 11:23:43 | 経済一般
先日、食事のついでに銀座のユニクロに行った際の話。
土曜日というのもあるが、まあすごい混雑ぶりだった。
そして気付いたのが、客の3割程度が海外からの旅行者という事実だ。

新興国で作ったものを日本で、新興国の旅行者にお金を出して買ってもらえると
いうのは、結構すごいことではないか。

日本製品は北米を筆頭に中産階級以上の富裕層をターゲットとしてきた。
アメリカの内需先導型(というか過剰消費依存型)経済が頓挫した以上、これからは
新興国向けの比重を増やすしかないという点に、異論のある人はいないだろう。
そしてそれは日本企業がとても苦手な分野だ。
束になってもサムスンに勝てない家電はもちろん、あのトヨタが焦っている理由も
これである。

そう考えると、ユニクロは悪どころか、ちゃんと新たな成長モデルを提示している
21世紀型優良企業だ。

それにしても、ユニクロにはちょっと思い入れがある。
僕がまだ中学生の頃、近所に、中国の田舎で作らせたTシャツやパンツを一山に積んで
売っている安売り店があった。Tシャツは一回洗うと伸び伸びになるようなものが
多くて、中学生ですら行きたがらないような店だった。その店の名はユニクロである。
十年くらい経って、東京に進出してきた時は驚いたが、ちょっと嬉しくもあった。

地方にはもともと「良い大学→大企業」という昭和的な選択肢は少ない。
そういう中からこそ新しい変化は起きるのかもしれない。

アラサーの天国と地獄

2009-12-18 10:50:12 | 世代間問題
今週の東洋経済がなかなか濃い。
中でも渡邉正裕氏の「大企業30代のキャリアの磨き方」が出色だ。

今でも日本企業の社内制度はあまり変わってはいないので、会社任せだと旧式の
“終身雇用型サラリーマン”になってしまうリスクが高い。
これは長時間残業、有給返上、滅私奉公といった特技はあるが、21世紀の現在は
いまいち市場価値が低い。そうなると会社にしがみつき、ずっと足元だけを見て
生きる人生が20年以上続くはめになる。

しかも、成果主義で下がるのは若手の賃金であり、昇給ピークは40代前半に低下する
から、従来の中産階級のような生活水準はとても期待できない。

そうならないための指針としてよく出来ていると思う。
興味を持った人には本書をお奨めしたい。

ついでに言っておくと、00年前後、苦労して正社員内定を手にしたにも関わらず、
第一氷河期世代の離職率が上がったのは、こういった事実に若者自身が気付いた
からだ。リクルートの人間なんかには分からないだろうが、大企業の社内には
バブル世代という飼い殺しの見本みたいな可哀相な人達がいて、あれを生で見ると
結構な衝撃だ。

というわけで、本特集は30前後の正社員で、キャリアを選べるだけの能力のある人
には格好のアドバイスだろう。要するに「がっついた若手ビジネスパーソン」向けの
処方箋である。

ところで、そうでない人はどうすべきだろうか。
同じ号の冒頭、一橋の齊藤誠先生は
「先進国で国民全部を幸せにするような成長余地などない。
だから労働市場などを規制緩和して既得権益を崩し、
効率的な再分配をするしかない」

と説く。
“そうでない人”向けの処方箋がありえるとすれば、これしかない。
それは僕自身のテーマでもある。

ただ、奇しくも掲載されている連合・古賀会長のインタビューを読む限り、彼らが
それを受け入れる余地は今のところ無さそうだ。

というわけで、今週号には、アウトサイダーとして成功するもの、旧秩序のインサイダー
としてもがくもの、そしてそこに入れないまま底辺で苦しむグループがぎゅっと凝縮
されて、なんとも濃い内容になっている。
「僕には今、坂の上の雲が見えますよ」と笑顔で語る人間と、
「生まれた時代が違うだけで、なぜこうも待遇が違うのか」と嘆く人間が同じ特集に
いるわけだ。

もはや総中流なんて幻想だ、という現実を認識したいなら、20代はもちろん、上の
世代も読んで損はない。

赤旗も諸君もただの老人向けエンタメ

2009-12-17 09:32:41 | その他
よく言っているように、労働力不足や少子化対策としては、雇用の多様化と
流動化が必要だ。要するに、女性やフリーター、中高年という
(全然少数派じゃないのに)マイノリティ扱いされているグループにも
働きやすい環境を作れという話だ。

いたって常識的な内容だと思うが、時々反論も受ける。
たとえば以前、大企業の幹部さまからこんなことを言われてしまった。
「共働きは道徳上良くない。やはり女性は家庭に入るべき」
バカらしいので質問しなかったけど、3年で辞める新人や高齢フリーターについて
聞かれれば、きっと彼はこんな風に答えたはずだ。
「我慢が足りない、努力が足りないから」

最近気付いたのだが、こういう保守的な価値観の人もリベラルも、実は同じものを
違うアングルから眺めているだけではないか。
彼らの視線の先には、新卒で正社員として定年まで働く労働者がいて、それがすべて
の価値観の軸になっているのだろう。付け加えればその労働者は男性で、もちろん
日本人で、一家の大黒柱で、マイホームとマイカーを買うことも理想なのだろう。

だから、そのレールに乗りそびれた非正規雇用は、その理由が“自己責任”であれ
“資本家の陰謀”であれ、彼らの理想像からずれた異形であり、
「とりあえず規制してしまえ」となってしまうのだろう。

もちろん、彼らの理想像自体にムリがあるため、どっちにしたって現状が改善される
ことは無いのだが。
現在、社民党と国民新党が奇妙なほど雇用政策で一致しているが、ここに共産党が
入ったところで、結果は同じだ。道はどこにも続いていない。

そういえば以前、赤旗の記者に「若者が3年で辞める原因は何でしょうかね?」
と逆質問してみたら、「最近の若者はこらえ性がないから」と実に保守的な答えが
返ってきて笑った。
いまだに階級闘争が忘れられない赤旗も、いまさら大東亜戦争特集組んでる論壇誌も、
老人向けエンターテイメントという点で同じである。

『ducare』 Vol.2 2010 Winter

2009-12-15 17:07:01 | work
『ducare』 Vol.2 2010 Winter

日本経済新聞出版社

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日経の教育季刊雑誌デュケレの2号目が出たようなのでご報告。

最近、創刊号と同時に潰れる雑誌がやたら多いので、
無事に二号が出てくれて僕としても嬉しい。

教育というのは、基本的に社会のニーズによって変わって行くものなので、
今の教育も過渡期にあると思われる。
二極化に見られるように、大学に入って何を身につけるか、そして実社会で
どう役立てるかが重要なのであって、個人的にはもう受験勉強なんて時代じゃない
だろうと思っている。

というわけで、若干大きな話を連載中。