Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

「世代間格差ってなんだ」

2010-06-16 20:49:17 | 
世代間格差ってなんだ (PHP新書 678)
高橋 亮平,小黒 一正,城 繁幸
PHP研究所

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今週末発売予定の新刊についてお知らせ。
昨年作成した「若者マニフェスト」をバージョンアップし、雇用、財政、社会保障、
政治参画の各分野について3名の著者が解説したものだ。各政党の前回マニフェスト及び
その後の政策スタンスについての採点も収録してある。

雇用については「7割は~」を読んだ人には重複するかもしれないが、他の分野は世代間格差
を考える上で格好の入門書になっているのでおススメしたい。
特に財政・社会保障は専門家の手による解説なので、これを理解しておけば一通りの議論は
こなせるだろう。

合わせて、6月26日に以下の政策シンポジウムにも出席するのでご報告。
もちろん、我々のマニフェストについても触れる予定だ。

政策ダイアローグ(後援 城西国際大学)
6月26日(土) 14:30~17:30  城西国際大学 東京紀尾井町キャンパス
政治不信と若者たち / 政治をいかに経営するか / 政治をどう変えるか

「7割は課長にさえなれません」目次紹介

2010-01-16 14:27:26 | 
7割は課長にさえなれません
城 繁幸
PHP研究所

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本日、新刊が発売になる。※
というわけで簡単に目次を紹介。

第一章 年齢で人の価値が決まってしまう国
第二章 優秀な若者が離れていく国
第三章 弱者が食い物にされる国
第四章 雇用問題の正しいとらえ方
第五章 日本をあきらめる前に
エピローグ

第一章:年功序列という世界で日本だけの奇妙なカルチャーが生み出す様々な弊害について
述べる。このカルチャーにおいては、20代前半に人生最大の勝負どころがやってくるため、
うかうか寄り道なんてしていられない。
といって、勉強しすぎても、レールから弾き出されることになる。
そして、卒業年度に求人が少なかった人たちは“一階部分”に押し込まれる。

第二章:日本の雇用法制では既得権の見直しが行なわれないため、人件費抑制は昇給抑制と
いう形で行なわれる。つまり賃金カーブは時間をかけてゆっくりと低下するわけだ。
これを予想した若手から流動化していくことになる。日本人の若手でさえそうなのだから、
まともな外国人はよりつかない。
高度人材から見て、日本の労働市場は世界44位という魅力しかない。

第三章:本来、安定した仕事よりもハイリスクな仕事の方が高時給であるべきだが、実際
にはそうなっていない。それは日本の労働市場が自由主義ではなく身分制度だからだ。
自由競争は社会に活力を生むが、規制は活力を削いでしまう。
日本型雇用を守り続けた結果、政府の債務残高以外は低迷し続けている日本を見れば、
それは明らかだろう。

第四章:従来の価値観は一度ゼロリセットする必要がある。
たとえば氷河期世代に対して「自己責任だ」という保守派も「資本階級が悪い」という共産党
も、どちらも日本型雇用主義者という点で変わらない。
テレビや新聞といった大手メディアも、この違いが理解できているとは言えない。
特にテレビ局に対しては、おススメの番組構成を提案してある。

第五章:本書を通じて主張していることの総括。
日本型雇用、つまり終身雇用というのは2階建てであり、一階部分の人間にとって維持する
メリットなど最初から無い。実は、我々は少数派ではなく多数派である。
問題は、このことに多くの人が気づいていないことだ。

本書は、2つの流れが同時並行で進む形となっている。
一つは、本ブログや過去2冊の新書と変わらないロジックの話。
そしてもう一つは、ある町のある一家を中心としたストーリーだ。
“エピローグ”というのは、多くの人が気付いたら・・・というifの話である。
それは確かに仮定の話に過ぎないが、理論的に不可能というわけではない。
少なくとも超国家主義や計画経済なんかよりは、ずっと身近なものである。

※でも店頭に並ぶのは大型店以外は来週かな。

『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』

2010-01-11 13:08:39 | 
今週末発売予定の新刊『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想
についてご報告。

タイトルは大きく変わっているが、
「若者はなぜ3年で辞めるのか」
「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか アウトサイダーの時代」
に続く新書3冊目にして、三部作の最終回だ。

元々は、2作で終わる予定だった。現状提示が中心の一冊目に対し、処方箋として
の2冊目という位置づけだ。年功序列がイヤなら転職すればいい。実に簡単な話だ。

ただし、それだけでは足りないのではないかと考えて作ったのが今回の3冊目になる。
このご時勢、個人ですいすい泳ぎ回れる人間は限られている。
なにより、このままだと日本自体が凋落する一方だろう。
前作が個人のキャリアへの処方箋とするなら、
今回は社会への処方箋という試みだ。


そういう意味では、(新書ではないけど)昨年の「1%の賃下げが~」とスタンス
は似ているかもしれない。ただ、今回は幅広く理解してもらえるよう、“ある工夫”
がしてある。

「自分のキャリアアップ以外に興味は無い」という人は、勝間さんの本を読んだ方が
御利益があるだろう。
「正社員でいられるだけで幸せ」という人は、ずっと足元だけを見て生きるといい。
(ただし、この先なにがあっても文句は言わないことだ)

断言するが、ポストが増えず40歳以降の昇給が頭打ちである以上、
これからもサラリーマンの賃金は下がり続ける。
“氷河期世代”という言葉は消えていくかもしれないが、氷河期自体はデフォルトとして
定着するだろう。
そういう状況を変えるべきだと感じているすべての人におススメしたい本だ。

クビ切り不要!?

2009-05-03 11:04:21 | 
クビ切り不要! (Voice select)
Voice編集部
PHP研究所

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『Voice』誌の注目された論を集めた新刊に、僕の「労組不要論」も収録されているので紹介。
これもオムニバスなのではあるが、それなりに書き手を選んでいるので整合性がある。
先の本がフェーズ1で騒いでいるとすれば、この本はほぼフェーズ2でまとまり、政策に
ついて触れている。

ただタイトルの“クビ切り不要論”というところに若干無理がある。
というのも、首切りというのは雇用調整しないとやっていけない会社がやるものであって
そういう会社に「クビキリ不要ですよ」という処方箋は物理的にありえない。
無理なものをやれというと精神論しか出てこないというのは、大戦以来の日本のお家芸である。
しょっぱなの丹羽さん(伊藤忠会長)伊丹さん(東京理科大)対談はまさにそれで、結局
「絆を大切にしよう」という美しいが身の無い響きのスローガンに落ち着く。

余談だが「(雇用維持と企業存続の両立は)物理的に無理なので税金で何とかしてください」
と言っているのが今の電機だ。
50代はもろ手を挙げて賛成だろうが、それ以下の世代は近い将来、何らかの形で負担
することになるから取られ損である。これも世代間格差の生産装置だ。

だが、一番の注目は中谷巌の『北欧型「転職安心」社会』。
なんと、フレクスキュリティに言及しているではないか。
グローバル化で終身雇用は文字通りには維持できないから、流動化と再就職支援をセットで
やって労働力の移動を促進しろという論旨だ。
これはそのまま、構造改革派のいう労働ビッグバンそのものだ。
というか、僕が言っていることをオブラート5枚くらいで包むと、そうなる。
めんどくさいから包まないけど。

フォローすると、中谷氏と言う人は90年代構造改革派のブレーンの一人で、昨年
『資本主義はなぜ自壊したのか』という本を出して決別を宣言。あちこちで話題となった人だ。
本自体には特にコメントする価値は無い。米国型の構造改革はダメですね、日本は
日本の伝統に基づいた和の精神でやっていきましょうという、保守派の守旧派に見られる
論法に過ぎない。経済にしろ雇用にしろ、現状の諸問題はすべてそのご自慢の日本型
システムが破綻しかけている結果に過ぎず、それをどうするのかというビジョンは皆無だ。

彼の主張を若者視点で言えば、
君たちは我々老人を支えるために、未来なんか捨てて下支えしろ、となる。

そういう著書の出し方をしておいて、ある程度の読者リテラシーの予想される誌面では
上記のような主張をするというのは、はっきりいってずるいでしょ中谷さん。
そりゃ御本人はいろんなメディアに引っ張りだこになったろうが、その負の影響を
考えたことがあるのだろうか。
週刊金曜日からVoiceまで、彼の言説は現状維持を望む守旧派に向けて、盛大に
垂れ流されている。あと数年で逃げ切れる世代にとって、中谷氏はマルクスや田中角栄
よりもご利益のある免罪符だ。

そういえば、先週の週刊文春でも、トンデモ精神科医の香山リカが性懲りも無く
「ホリエモンが台頭する一方で、格差が拡大した」と改革批判を繰り広げ、
「中谷先生もそれを悔いてザンゲしているのよ!」とちゃっかり理論武装に使っている。
というか、なんでホリエモンが上場したら格差が拡大するのか。
若年層の格差でせっせと商売しているのは、香山リカ本人だろう。

この手の印象論でしか語れない門外漢は、具体的な事例は何一つ示せないので
説得力は皆無なのだが、中谷イズムがブレンドされることで、オバちゃんのヨタ話
も信じてしまう人がいるかもしれない。

そういう氏の二枚舌ぶりを鑑賞する上でも、有益な一冊である。
途中から脱線してしまったが、書評だけで新書一冊書けそうなくらい充実。

雇用崩壊

2009-04-27 10:14:16 | 
雇用崩壊 (アスキー新書)

アスキー・メディアワークス

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すっかり忘れていた。
雇用に関するオムニバス本の紹介。
7人の論者が参加し自論を展開、僕も二番手に登場する。

はっきりいうと、僕はこの手のオムニバス形式が好きではない。
全体の方向性に従って論が選ばれ、さらに一定のリンクが保たれているのなら良いが
たいてい各々が好き勝手に自論を並べるだけなので、本としての統一性に欠けるのだ。
そもそも、「幅広い意見を収録する」という意味が全く理解できない。
ラーメン特集やるならともかく、政策については正論は一つのみ。
あとは阿呆かまがい物であるのだから、企画段階で切り捨てるべきだ。

もし「有名人をいっぱい並べておけば売れるだろう」という発想なのであれば、それは
作り手の怠慢である。

というわけで最初はお断りしたのだが、出なきゃ出ないでマル経崩れのオンパレードに
なっても困るので、インタビュー形式で出させていただいた。
(もっとも八代先生が登場してびしっと締められているので杞憂だったが)
語っている内容はごく一般論なので、ブログや新刊を読んでいるという人には退屈かも。
まあお暇でしたらということで。

少し内容も紹介しておくと、まず前半三人は読む価値がある。後半は典型的な
「大変だ~大変だ~」論でしかないのでいまひとつ。
そういうものすべてに価値が無いとは言わないが、もうそれを言う段階はとっくに
過ぎていて、今は対策を議論している最中だ。ちょっと時期を逸しているのではないか。

まあそれでも初見の人もいるだろうからルポ的な価値はあるとしても。
小林美希の正社員擁護論はちょっと見過ごせない。
たとえば、「介護業務は正社員でもこんなに大変です、だから正社員はもっと
保護しましょうね」と言われて、どれほどの人が納得するだろうか?
介護の賃金が低いのは構造的な問題であり、雇用規制とは無関係だ。
そもそも、なぜ日本全国から介護を引っ張り出してまな板に載せるのか。
まずは自分が飯を食っているメディアを取り上げて
「新聞記者もこんなに大変です」と言ってみろといいたい。


はっきり言うが、一部のメディアは雇用の流動化論に対して強いアレルギーを持っている。
そういうメディアにとって、いまどき正社員擁護論をぶってくれるフリージャーナリストは
貴重な存在だ。その立ち位置を狙っているのなら、“ジャーナリスト”などという肩書きは
とっとと外すといい。

たった1%の賃下げが99%を幸せにする 雇用再生へのシナリオ

2009-04-03 10:18:04 | 
たった1%の賃下げが99%を幸せにする
城 繁幸
東洋経済新報社

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新刊の紹介。
『たった1%の賃下げが99%を幸せにする 雇用再生へのシナリオ』
来週頭頃には書店に並び始めると思われる。

ベースとなっているのは、07~08年にかけて週刊東洋経済に連載したもの。
単行本にまとめる作業に加え、連載終了後の半年の間に社会・経済情勢が激変したため、
あれもこれもと筆を加えているうちに09年になってしまった。

まあ、その分かなり濃ゆい内容に仕上がっていると思われるので、問題意識のある方には
読み応えのある内容だと思う。

【強くオススメしたい人】
・卒業時期で人生が決まるのはおかしいと感じている氷河期世代の人
・男性社員との間に『ガラスの天井』を感じている女性
・同じ仕事内容なのに、正社員との給料較差に疑問を感じている非正規雇用の人
・硬直しきった人事でポストが空かず、閉塞感にさいなまれる3、40代
・これから社会に出て行くことに不安を抱いている学生諸君
・フリーター系の労組に加盟しているが、憲法改正反対のデモをしても雇用問題は
 解決しないんではないかと感じている人。
・会社にしがみつくことに疑問を感じ始めた中高年
・もう単純に、今の日本はなんでこんなに生きにくいんだろうと感じている人

【取り扱いに注意が必要な方】
・赤旗を定期購読している。
・経団連の事務所の奥にはでっかい金庫があって、200兆円も小判が溜め込まれて
 いると信じている。
・再来年あたり、森永卓郎がノーベル経済学賞をとるような気がしている。
・福島みずほは今でもマドンナだと思う。


リストラされたけど、子供11人育てた男の物語

2009-03-24 14:30:54 | 
リストラや倒産というのは、転職がまだまだ一般的ではない日本社会にとって
人生の一大転機と言えるだろう。
本書は、ガチガチの終身雇用が崩壊し、人生ゼロリセットされた男の物語である。

時は幕末。主人公は一橋慶喜の近習。
影武者の役目も果たすため、羽織る羽織は主君とお揃い。
先祖伝来の終身雇用職である。
ちょんまげと二本ざしという違いはあるが、下級旗本なんてまるっきりサラリーマンだ。
直参という格は高いが給料は安い、(現体制の中では)安定性だけは抜群という点で
大企業のサラリーマンに似ているかもしれない。

だが、維新の嵐とともに体制自体が崩壊し、終身雇用(というか先祖代々雇用)も
終焉を迎える。
「武士の権利を守れ!」といって既得権を擁護してくれる労働組合や
左派政党はいないので、様々な特権はゼロリセットだ。

藩士たちはいくつかの選択肢を与えられる。
1.藩をやめ、新政府に就職する
2.民間で起業する
3.賃下げされても構わないので、やっぱりこれまでどおり殿のお側に置いてください

普通に考えれば1、血気盛んな若手なら2という感じだろうが、主人公や同僚たちの
多くはしっかり3を選んでしまうのだ。このあたり、なんとも日本的な発想だと
思うが、当然、数年後の廃藩置県で彼らはみな路上に放り出されることになる。

ところが、主人公の凄いところはここからだ。
彼はそこからめげることなく、民間や役所へ就職し、50歳を超えて起業も経験している。
それも、11人の子供を抱えながらだ!
幕府の小役人のどこにこういうバイタリティが残っていたのか不思議な気もするが、
社会全体がゼロリセットされる中で、国の隅々にまで新たな活力が湧き上がった
ということだろう。維新とは、価値観も含めた一つの革命だったのだ。

考えてみれば、幕府260年の身分制度の中から、近代日本は再生したわけだ。
たかだか戦後60年の昭和的価値観から覚醒できないはずは無い。
それにはもうちょっとの刺激が必要だとは思うが。