Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

週刊プレイボーイ最新号

2010-10-27 16:01:48 | work
今週号の週刊プレイボーイの特集『だからキミらは就職できないんだ』にコメントしているのでご報告。

僕はちょこっとコメントしているだけなのだが、全体的によくまとまっていて、単純な氷河期
ではなく、新卒採用という価値観自体がシフトしつつあるという現状を上手く取り込めている。

たとえば、「学歴の希薄化」がそうだ。
この点について、ジョブウェブの佐藤孝治氏の分析する受験エリートの弱点が秀逸すぎる。
「社会人とのコミュニケーションが苦手」
「暗記は得意だが、主体的に物事を考えない」
「自分のPRポイントがわからない」
「志望動機が語れない」
「何がしたいのかわからない」
そして氏は「東大生なんて全国暗記我慢大会の勝者でしかない」と切り捨てる。

ちょっと残酷かもしれないけど、採る方からすると、これはまったくもってその通りだと思う。
もちろん受験エリート全員がそうではないけど、入試突破時点で人間として歩みを止めて
しまっている若者が実に多い。

一方で、特集は複数の内定を手にする学生についても取り上げている。
彼らはいずれも、何か目的があって大学生活を送り、目的を持って就職活動を行ったという
共通点がある。まさに、上記の弱点の真逆なわけだ。

これから就職活動するという学生はもちろん、上記の弱点に心当たりがあるという若手ビジネスマン
にもおススメしたい。

正社員のジレンマ

2010-10-23 10:27:46 | 人事
連合が非正規雇用の待遇向上を正規以上に打ち出したそうだ。
まあ、電話相談窓口よりは一歩前進と言ってもいいだろう。
ただ、具体的にどれくらい引き上げるのか、具体的な目標が含まれていないので、
即効性は薄いだろう。

一方、Ronzaでも、コテコテの“大企業悪玉論”でお馴染みの竹信さんが、
同一労働同一賃金について述べている。

日本の労働市場には、同一価値労働同一賃金を図るモノサシがない。
終身雇用の会社人間を基本としてきたため、会社を越えて職務の価値を
計る仕組みが発達しなかったからだ。


ようやく構造的な問題についても勉強してくれたようだが、氏もここでばったり
思考停止してしまい、後半は何を言っているのかまったくわからない。

本気で同一労働同一賃金をやろうと思ったら、方法は一つしかない。
たとえば現状、朝日新聞が竹富さんと同じ学歴、年齢の女性を採用しようとしたら、
1500万以上払わないといけない。
だから、雇うのは22歳のピチピチの男の子がメインで、そこから外れる人は非正規
として雇用するわけだ。
というわけで、年齢、学歴によらない流動的な処遇を労使で決めていただくのが、唯一
同一労働同一賃金への道筋である。
そのための基本法でも作って、その流れを後押しする以外にないだろう。

ただ、そうすると当然、一千万以上貰っている正社員の中には、どかんと下がる人も
出てくるわけだ。連合の「とりあえず言ってみました的なスローガン」にせよ、
竹信さんの支離滅裂な作文にせよ、その向こうには正社員のジレンマが透けて見える。

終わってみれば、貧困ビジネスへの情熱しか感じられなかった『情熱大陸』

2010-10-18 10:51:53 | その他
先週の月曜日、テレ朝のスーパーモーニングで世代間格差特集が組まれ、若者マニフェスト
からも2名ほど出演した(小黒、高橋)。
その際に、堀紘一氏が森永卓郎に言ったセリフが印象的だった。
「あなたみたいに年収一億円稼いでいるくせに貧乏人の味方ぶるのは卑怯だ」

たぶん、モリタクと堀氏の年収はそんなに差がないと思われる。
でも、二人の立ち位置は180度違う。
簡単に言ってしまえば、会社作って雇用を生み出すことで自身も豊かになったのが堀氏。
一方、この国から雇用を無くすことで自分だけ肥え太ってきたのがモリタクということだ。

昨夜のTBS『情熱大陸』が典型だが、メディアは今も昔も「強欲な金持ちと貧しい弱者」
という構図が大好きだ。当然だろう。
「連合のせいで非正規雇用労働者はこんなに苦しんでいます、格差是正には解雇規制の緩和
しかありません」なんてやったら視聴者の反発を招きかねないし、何より制作会社に丸投げ
しつつ安全圏からストまでやってる自分たちは何なのって話になる。

だからそういう水戸黄門的アングルで出演者を組もうとするが、現実はそんなに単純な構図
ではないから、なかなかマッチする出演者がいない。特に、ある程度政治や経済に明るい専門家
となるとなおさらだ。そこに、モリタクの付け入る隙があったのだろう。
「弱者に優しく視聴者に心地よい話しかしない経済アナリスト」という芸風を開花させた彼は、
メディアの描くシナリオ通りの役を見事に演じ続けてきた。

僕も出演したテレ朝のサンプロでは「派遣法改正に携わった当事者」という肩書で颯爽と登場し
「あれは間違いだった。大企業は内部留保でいくらでも正規雇用できる」とぶちあげ、議論を
3段階くらい低レベル化することに多大な貢献をしてくれた。
昨夜の番組では「オモチャ購入に一億円以上使った」と豪語しつつ、
「お金持ちは働かずに稼ぐ人たちだ」と切って捨てていた。
そんな人間に「ぜんぶお金持ちが悪いんです」なんて隣で言われたら、堀さんじゃなくても怒るだろう。

まあ、そんなこんなで今も正規雇用と非正規雇用のダブルスタンダードは変わらず、それどころか
派遣法の規制法案まで準備されつつある状況だ。これでまた、数万人が職を失うことになる。
ほとんどすべての実務者が反対し、というか派遣労働者の多くも反対しているにも関わらず、
それが実現してしまうほどの世論を形成してきたという意味で、僕は電波芸人とメディアの罪は
重いと思う。
「テレビなんてもうバカしか見てないからいいじゃないか」という人もいるだろうけど、
そういうバカをどんどん底なしのバカにしている点は、やっぱり批判されるべきだと思う。

そういう意味では、スーパーモーニングの後半で、モリタクが都内中央区にオープンした
オモチャ博物館が紹介されていたのは、何とも皮肉な話だ。
虚構のシナリオを演じた虚構のヒーローによる、オモチャという虚像の博物館というわけだ。
オモチャのコレクションだけで3000万円。「博物館用のビルも買いたい」とあちこちで
言っていたから、ひょっとしたらビル丸ごと買ったのかもしれない。
いやあ、儲かってますなあ、森永先輩。
氏のメディアでのご活躍でどれくらい失業者が増えたのかはわからないけれども、
とりあえず博物館の受付で一人か二人くらいは雇用が増えたわけだ。

ちなみにこのノベルティミュージアム、うちから徒歩2分の近所なので訪問してみたところ
入口にはテレビ局などからの花輪がたくさん飾ってあった。派遣労働者やフリーターの
ユニオンは、菊の花でも贈ってやったらどうか。
「金持ちの貧乏踊り」が見透かされはじめていると知れば、モリタクも少しは大人しくなるだろう。


いくら金をばらまいても、社会に需要が無い以上はどうしようもない

2010-10-15 10:27:45 | 経済一般
週刊 東洋経済 2010年 10/16号 [雑誌]
クリエーター情報なし
東洋経済新報社


今週号の東洋経済「本当に強い大学特集」、僕もコメントしているので少しだけフォロー。
いつも言っているように、日本の教育システムと企業の間には、深い深い断絶が存在する。
年功序列で終身雇用ということは、下っ端を雇って何十年もかけて組織内で育成すると
いうことだから、専門性など必要ないためだ。極論すれば、入学時点で大学の役目は
終わっていることになる。

この断絶の深さを端的に示しているのが、大学への入学者に占める社会人の割合で
OECD平均の21.3%に対し、我が日本国は1.8%に過ぎない。

要するに、大学というものがまったく社会に貢献していないわけですね。国も大人も若者に
「もっと勉強しろ」と言い続けているけど、当の大人がこれじゃあ説得力がないでしょう。
大学にいくら予算をつぎ込んでも、この状況は変えられない。だって、学問自体への需要が
ないのだから。せいぜい建物や施設が豪華になり、職員の給料が上がる程度の話だろう。
抜本的解決には、勤続年数ではなく能力で評価する仕組みの導入が必須である。

それがないがゆえに、キャリア戦略上もっとも重要な30代に穴をあけて大学進学する人間
などいない(そもそも離職してしまうと再就職できる保証がない)。
企業派遣で海外留学させてもらって帰ってきても、別に評価されるわけでもないから
外資に転職することになる。
そして、学生も入学時点でゴール到達だとばかりに遊びほうける。やはり勤続年数が重要で
あるがために、女性は就労と育児がトレードオフになってしまうため、結果的に少子化になる。
新卒でこけてフリーターになった人間は、ずっとその後もフリーターにロックされてしまう。

日本の直面する課題のかなりの部分は、この「勤続年数で人を評価する仕組み」に由来する。
まあ、ある程度リテラシーのある人なら、薄々感づいているとは思う。
でも、この問題はあまりにも根っこが深すぎる。

というわけで、財政も厳しいことだし、思い切って文系学部への公的助成はゼロにして、
理系の上位校だけ手厚くすればいいんじゃないか。
文系は入試だけやって「東大法学部、入学有資格者」なんてカード持たせてすぐ就職させた方が
長い目で見て本人の能力は向上すると思われる。

雑感@小沢さん起訴

2010-10-09 12:09:59 | その他
小沢さんが強制起訴された。それ自体は別にどうこう言うつもりはないのだけれども、
一連の流れを見ていて抱いた感想をいくつか。

少し前になるが、小沢事務所が様々なセンセイ方に講演を頼んでいたというニュース
ネットで話題となった。政党が専門家に講演を頼むこと自体は普通のことだ。
ただ、以下の二点が気になった。

まず、相手が大谷さんとか二木さんとか小倉事務所とか、何の専門家なのかイマイチ
よくわからない人達だったこと。
別に変な人達とは思わないし、面白そうだから僕も話を聞いてみたいなあとは思うけど、
その辺のビジネスマンなどよりはるかに忙しい政治家がわざわざ呼び出して
いったい何の話を聞くんだろうか、というのは正直疑問に感じたことをおぼえている。

そして二点目は、その講演料である。
僕自身もたまにこうした政治絡みの勉強会にはお呼ばれするので相場は知っている
つもりだが、こういう政治の場で実務者が講師を務める場合のお礼というのは、
だいたい“足代”ということで、タクシー乗って往復して、ご飯一回食べるくらいの
お値段である(もちろん企業に提供する場合の金額とは全然違う)。
それが、小沢事務所の発注した講演だと、なぜか50万円にまで跳ね上がっている。
この手の仕事でこういう金額は、ちょっと聞いたことがない。
もちろん、政治だろうがNPOだろうが、料金は一律だという人も中にはいるだろうし
それでもよいので是非お話をというケースもあるだろう。
ただ、繰り返すが、上記の人達はそういう風には見えない。

この2点の疑問なのだが、今回の強制起訴に際しての一部文化人センセイ方の熱き
援護射撃ぶりを見るに、まあつまりは、そういう趣旨だったということだろう。
一応フォローしておくと、これは賄賂とか買収なんて大それたものではない。
正当な講演料の範疇だ。そもそも、毎日のようにワイドショーに露出している文化人の
センセイ方からすれば、50万なんて大した金額ではないだろう。
それでも、わざわざ礼を尽くして迎えられ、ポンと何10万か払われれば、人間悪い気はしないはず。

実際、危機に際して、右から左までこれだけの論陣が張られるわけだから、費用対効果
は素晴らしい。平時にこれだけ効果的な手を打っておくわけだから、小沢さんというのは
やっぱり金と人の使い方が上手いのだと思う。
机の引き出しから百万円を出してポンと渡していたという田中角栄にそっくりだ。
とかく昭和の遺物的に語られることの多い角栄型政治だが、40年近くたった今でも、
それにビンビンに反応してしまう人間の本質的な部分は、ほとんど変わっていないのだろう。

最大の「消える高齢者」予備軍は団塊世代

2010-10-04 16:03:43 | その他
夏以降、全国で「消えた高齢者問題」が話題となっている。
その背景には、よく言われるように、核家族化や都市化といった社会の変化があるのは
間違いないが、実は雇用問題も無関係ではない気がしている。

というのも、たとえば大手企業などを定年退職した後で、燃え尽きちゃった人の話をしばしば
聞くからだ。
僕の知っている人でも、海外支社長まで勤めたのに、朝から酒浸りになっちゃった人もいる。
その時は単に「やること無いんだろう」くらいにしか思わなかったが、考えてみれば、
仕事以外にやることないという人生も凄い。
そういう人の存在が、どうしても消えた高齢者と被って見えてしまう。

そういう意味で、
文藝春秋10月号『「消えた高齢者」無縁社会の泥沼』(上原善広)
とても興味深い事実を示唆してくれている。
もともと消えた高齢者問題のルポなのだが、“団塊”という言葉が一つのキーワードに
なっている。横浜市の民生委員の言葉は予想外だった。
「団塊世代というのは地域活動に参加しない。これはどういうことなんだか、
他の地域でも そうらしい」


家族がばらばらになったり所在不明になっちゃう老人もいるけれども、世代として異質
なのは、むしろその下の団塊だということだ。

ちなみに、この民生委員の黒田氏は78歳。自身の活動についてもこう懸念している。
「問題は継いでくれる世代があまりに少ないということ。60歳前後の
団塊世代が入らないから、このままでは70代からいきなり30代に
依頼しなければいけないかもしれない。60歳くらいの人は
サラリーマン育ちが多いでしょう。だからプライドが高いんだ」


彼らが異質なのは、日本史上で初めて、地域や家族という共同体から、終身雇用という名の
会社ムラに軸足を移したからだ。定年後の彼らの活躍に期待しているNPO等も多いが、
会社ムラで滅私奉公してきた人間に、いきなり地域ムラに参加しろというのは、意外と
ハードルが高いのかもしれない。

さて、最近の若者は組織に馴染まないとか転勤したがらないといった指摘が割と目立つが、
個人的にはそれでいいと思う。終身雇用なんてあるように見えても存在しない、あるいは
全然割に合わないシロモノになり果てているわけで、組織と一心同体化する必要などなくて
まあ日銭を稼ぐ手段程度に考えておけばよい。
それが世界標準の労働というものだ。

もし本気で仕事に一身を捧げたいと願うのであれば、与えられる仕事に満足するよう
言い聞かせるのではなく、それに値する仕事を自分で探すことだ。

ちなみに、地域も家庭もかえりみず、会社に滅私奉公した末に待っているものはなにか。
同記事には、東京郊外のニュータウンを中心に活動する「事件現場清掃会社」高江洲代表の
コメントも掲載されている。
「孤独死するのは55~65歳くらいの、団塊とその少し後ぐらいの世代が目立ちますね」
家族という地盤があればまだいいが、それすらなかった企業戦士の行く末は哀れなものだ。

個人的には、20代の多様化には期待している。恐らく、団塊ジュニアもある程度は多様化
しているように思う。僕の同期でも「家庭なんて放置して、何が何でも会社一筋」
というのは皆無で、サラリーマンやってる奴はみんなボチボチ派ばかりだ。
良い意味でも悪い意味でも、会社というムラも希薄化しつつある気がする。