先日のエントリですが、どうも、普段僕が接している良識ある市民の皆さん
(民間企業の第一線で活躍するビジネスマン)と比べるとだいぶ感覚的にずれている方
がおられるようで、一部誤解を招いたかもしれないので、もう少し簡単に書き下して
おこうと思います。
以前も書いたとおり、日本のツケをこれ以上将来に先送ることは不可能なので、5年以内に
消費税でいえば10%代半ばくらいには増税されるはずです(中期的には消費税30%相当が必須)。
となると、多くの国民はたぶん相当フラストレーションがたまるはず。
大衆は常に分かりやすい(かつ自分は無関係な)敵を求めているので、必ず怒りの矛先が
どこかに集中するはずです。
普通、こういうときに真っ先にやり玉に挙げられるのは経営者とか資本家なのですが、今回は
関係ないので省きます。一部には日銀をあげる人もいますが、(是非はともかく)大衆には
どういうメカニズムで彼らが悪いのか理解できないと思うので、これもパスでしょう。
では、怒りの矛先はどこに向かうのか。恐らく、それは公務員でしょう。
2年前、あるシンポジウムに出席した際の話。増え続ける社会保障給付をまかなうために
増税するしかないという話題が出たところ、ある閣僚経験者がこんなことを言い出しました。
「皆さん!公務員の人件費を半分にすれば、社会保障も財政再建も出来るんです!」
僕の感覚で言うと、そりゃいくらなんでもやりすぎなんですが、会場は一番わいていましたね。
たぶん、消費税引き上げのタイミングで、公務員人件費は主要政党の草刈り場になるでしょう。
「我が党は3割カットいたします!」
「いいえ、我が党は思い切って4割カットしてみせます!!」
共産党とか社民党といったマルクス系泡まつ政党も、さすがに階級闘争史観じゃ援護しにくい
でしょう。
だって、この場合は搾取階級=国民ですから(苦笑)
公的資金投入後のJAL労組に対して見せたような、非常にあっさりとした対応に終始すると思われます。
というわけで、今後の中期的なトレンドとしては、公務員の賃金はほっといてもどんどん下げられる
はずです。で、唯一の武器は転職市場へのアクセスしかないという話を書いたんですけど、
脊髄で反応しちゃう人にはわかんないみたいですね。
もちろん「もともと終身雇用という特権を持たず、クビになるリスクを織り込んでいる他国の公務員」
と比べて云々するのは、まったくもってナンセンスです。
これから彼らは、終身雇用の本当の恐ろしさを思い知ることになるでしょう。
担当する仕事は以前と何ら変わらないのに、ある日突然、給料が下がる。それも毎年、下がり続ける。
合理的な説明もなく、個人の努力で挽回することもできない。
市場価格を持たない人間は、組織と運命を共にするしかありません。
終身雇用の不条理さは、色々な人が様々な場で訴えてきたことです。
自らの身をもって経験することで、彼らも雇用問題を構造的に考えるよい機会になるんじゃないでしょうか。
まあ一般国民的には、身動きできないように縛りつけといてゴリゴリ削るというのがおトクなわけで、
僕はどっちでもいいかな。
別に公務員じゃないし。
追伸:
一応、日本は自由主義経済なので、世の中のすべてのものは市場価格で決まっている。
買い手と売り手の折り合う価格という意味だ。これは賃金も同じ。サービスの買い手である国民が
値下げしろと言えば下げるしかなく、イヤなら転職するしかない。サービスと価格の折り合ったところ
に、適正価格が形成されるわけだ。
そこに「いくら支払われるべきだ」とおかしな“べき論”をつけた結果、派遣切りという人災が拡大
したわけで、いい加減おバカな空論こねてないで現実を直視しなさい。