Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

半値になっても儲かる「つみたて投資」

2010-12-28 20:53:19 | その他
半値になっても儲かる「つみたて投資」 (講談社プラスアルファ新書)
星野 泰平
講談社


「自分年金プロジェクト」の星野氏の新刊に寄せ書きをしたのでご報告。

財政が持続不可能な領域に突入してしまった日本は、少なくとも現役世代からすると、年金も
医療も将来あるかどうか分からないという「メチャクチャ小さな政府」状態だ。
特に年金なんて、積立金の取り崩しを始めてしまった以上、財政がもっても何らかの形で
将来の給付は見直さざるを得ないはず。
とすると、老後に必要だと言われている生活費2千万にプラスする形で、我々は何らかの手段
で資産形成を自力で図らないといけないわけだ。

「そんな金も資産も時間もないよ」という人に向けて、比較的低リスクでの投資を可能とする
のが“つみたて投資”である。

毎月一定額を積み立てるつみたて投資は、一括投資に比べてリターンでは劣るものの、
リスクを分散化できるというメリットがある。著者の以下の指摘は重要だ。

これから資産を作ろうと考えている方にとって、最高の投資は「自己投資」です。
特に若い人はお金が無い分、時間という資産を持っていますので、それを最大限に活用し、
様々なことに挑戦するのが、最も収入アップにつながるでしょう。
ですから、投資を始めるタイミングや投資後の値動きに気を取られて仕事に集中できない
ことは、最も避けなければならないことです。
(中略)変えることができない「過去」や、どうなるかわからない「未来」に気を取られ過ぎず、
「今」に集中し、最大限努力するのが大切です。


良くも悪くも、これからの日本は、キャリアも社会保障も、自分で設計しなければならない
時代が来るだろう。
後者を考える上で、リスクも手間も少なく済ませたいという人に、本書は格好の入門書となるはずだ。

分かっちゃいるけどやめられない

2010-12-22 19:33:50 | 経済一般
ダイヤモンド・オンラインの対談・後半部が公開された。
その最後に出てくるアンケートで、なんと53%の人が
「日本のホワイトカラーの生産性はとても低い」と回答していて驚いた(当初は57%だった)。
大した仕事してないのが自分なのか、それとも周囲の誰かなのかは分からないが、少なくとも
多くの人は、問題の本質にうすうす気づいているということだろう。

ところで、多くの人が「おかしい」と気付いていながら、相変わらず日本の日常生活は従来通り
に回り続けている。少なくとも職場で「ぶっちゃけ大した仕事じゃないよね」とか
「これって意味なくない?」とか言う人はあまりいないと思われる。
みんな、とりあえずは一生懸命に仕事をし、残業もし、そして春には新人も配属され、
「これっておかしいよね」と過半数の人が感じている輪の中へ入っていくのだろう。
これは結構凄いことではないだろうか。

少なくない数の人が疑問を感じつつも運営されている組織って、他に何があるだろうと色々考えて
いて、ふと若者マニフェスト策定委員会のメンバーである高橋氏の話を思い出した。
彼は東西ドイツのそれぞれの小学校に通った経験がある変わり種なのだが、彼がいた時期、
つまり崩壊寸前の東ドイツの小学校では、授業の多くが形骸化し、教室に来ないで自習ばかりに
する教師が何人もいたそうだ。
西側の授業と比べると、なんとも異質に見えたらしい。

みんなが心の底では疑問を感じつつも、一見すると平和に流れ続けている職場というのも、
外部からきたアウトサイダーが見れば、同じような違和感を感じるのかもしれない。

ちょうど先日、日本生産性本部が2009年度版のOECD加盟国の労働生産性比較調査結果を発表した。
日本はOECD加盟33カ国中、さらに一つ順位を落として22位。
みんなが見て見ぬふりを続ける限り、この順位が下げ止まることは無いだろう。

週刊エコノミスト 12/21号

2010-12-15 19:30:52 | work
エコノミスト 2010年 12/21号 [雑誌]
クリエーター情報なし
毎日新聞社


特集「日本再生の処方箋」に労働市場の規制緩和について寄稿。

振り返れば、リーマンショックは日本にとってもターニングポイントだったように思う。

学生の就職人気企業ランキングはバブルの頃と変わり映えせず、
(というか最近までJALがトップ10常連だった)
バブルの頃すら減らなかった財政赤字は不況の今もやっぱり増えているし、社会保障の
世代間格差は鳩山さんのバラマキでさらに拡大し、70代と20歳未満でついに一億の大台にのった。
少子高齢化も抜本的なメスは容れられぬまま、団塊ジュニアはピークアウトしつつある。
米国の住宅バブルという宴が終わって明らかとなったのは、こういうなんともお寒い現実だ。

一方で、企業の人事戦略には激しい動きがある。たとえば新卒採用がそうだ。
これまではなんだかんだ言いつつも、どこかで日本に期待している向きがあって、採用の現場を
見ていても「なんとかして予定数は採りたい」と言う熱意のようなものが感じられた。
年功序列組織を維持するためには、絶対に若い血が一定数は必要だからだ。
だから赤字でも採用活動に予算はたくさんついたし、最後は妥協して数を優先するなんてことも
珍しくなかった。
でも、今はそういった熱意も妥協もあまり感じられない。
むしろ、合否の水準が明確に引かれていて、白か黒かの二者択一だという空気がある。

要するに、企業が日本を見限ったのだろう。
過去最低の新卒内定率や海外採用強化、英語公用語化といった動きは、すべて同じ流れの一端
だと思われる。

この動きは別のアングルからも見て取れる。
解決策は、規制緩和によって企業の投資意欲を刺激する以外にない。
たとえば解雇のコストを下げれば、単純に企業は雇用を増やすだろうし、将来的な業績低下を
予想して既存人件費を抑制しているのなら、短期では賃上げの余地もある(結果的に内部留保も減る)。

そういうプロセスをすっ飛ばして「国内に投資しないなら内部留保に課税するぞ」と脅しをかける
なんていうのはバカの骨頂で、企業の海外移転を加速させるだけだろう。

『「終身雇用・年功序列」は崩れ始めた! “安定”を失った日本人はどう転進すべきか』

2010-12-13 21:04:54 | work
ダイヤモンド・オンラインにて

城繁幸×石黒不二代 対談【前編】
「終身雇用・年功序列」は崩れ始めた!
“安定”を失った日本人はどう転進すべきか


掲載中。後編は後日。かなり過激なことを(お互い)話した記憶があるので、
後編でどこまでフォローされているか今からちょっと楽しみ。

雑感@労働規制の現状と歪み

2010-12-10 10:48:59 | work
先月、東京地裁で労働部の判事の皆さんと勉強会を行ったので、簡単にご報告。

僕の話は、だいたいいつも通りの内容。日本企業における現在の労務戦略および、法制の
影響について。事業内容により、負担できるコストはあらかた決まってしまう。
そしてそれは、グローバル化で各国共通の数字に収れんしつつある。
こういう状況で規制強化は歪みしか生まず、全体のパイが減るだけだという内容だ。

こういう判決が出ちゃったりするご時世なので、「裁判所は何をやってるんだ」と思っている人
も多いとは思うが、彼らはあくまで判例や法律を運用する側の人なので、各自の裁量で
動かせる部分は少ない。実際、議論してもいたって通常のバランス感覚を持っている。
(じゃなきゃ、僕を講師になんて呼ばないだろう)
むしろ、規制一辺倒の日弁連あたりに比べれば、企業内部のメカニズムを学ぼうとする点で
はるかに柔軟で前向きだと言える。

ところで、いろいろと話をする中で、いくつか論点も見えてきた。以前から知っていた話も
合わせて以下にまとめておきたい。

・実際には、既に金銭解雇が主流である

某党のケースのように「解雇→訴えられる→和解金で手打ち」という流れが主流で、
事実上の金銭解雇という流れは存在している。「終身雇用が基本なのよ!」と叫んでみても
無いものは無いのだから仕方がないですよね、福島みずほさん。

ただし、その額が非常に幅広く、大手ほど多額になる傾向がある。これでは裁判所に
持ち込まれるまでコストが分からないから、企業としては極力リスクを回避する必要がある。
逆に、和解に持ち込んでも小額しか採れない中小零細の従業員の場合、費用を考えて事実上の
泣き寝入りというケースが多いはず。企業規模に限らず守れる範囲で明文化すれば、訴訟費用
を考えることなく誰にでも適用できることになる。

現状は上に厚く下に薄いという結果になっているわけで、現状の雇用法制には
格差拡大のメカニズムが内包されていると言える。


・労働訴訟は急激に増加しているが、実はそのほとんどが非正規雇用関連

雇用調整の必要な業務のみを切り離し、非正規側に集中させているのがよくわかる。
正規雇用制度を守るためのリスクヘッジだ。
「新時代の日本的経営」は、良くも悪くも設計通りに機能している。
ただ、長期雇用のメリットなるものは存在しなかったようで、日本経済は絶賛低迷中ではあるが。

・一部のIT系や外資等、ルーチンとしての処遇引き下げが機能している業種は、訴訟も解雇も少ない。

年俸をカットされたり昇給昇格を据え置かれた人間は、だいたいよりよい処遇を求めて転職する
ので、解雇するまでもなく流動化する。新興企業の中にはこのメカニズムで新陳代謝を維持して
いる企業
も既にある。
既存大企業も恐らく30歳あたりで幹部候補選抜が始まるだろうから、そこで漏れた人間は
「昇給据え置き→買い殺しに嫌気がさして流動化」と言う流れが、今後は一つのトレンドになるかもしれない。

「ビジスパ」オープンのお知らせ

2010-12-03 15:42:10 | その他
12月1日に新しい有料メールマガジン配信サービス「ビジスパ」がオープン
しました。

ビジスパは、ビジネス系デジタルコンテンツのニーズに応えるため、厳選された
ビジネスリーダーが生み出す質の高いビジネスコンテンツをメールマガジンとし
て配信するサービスです。

【メルマガタイトル】『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法

「これって常識?それとも、うちの会社、やっぱり変?」終身雇用の日本では、
なかなか会社の外は見えません。出世のマナーから時には喧嘩の仕方まで、メディ
アではおおっぴらに言えない裏情報まで交えつつ、隔週でお届けします。

第2、第4金曜日配信で月額315円です、興味ある方は購読いただければ幸いです。

このビジスパ、将来的には電子書籍への展開も視野に入れているそうです。
電子書籍は、これからどうなっていくか楽しみな分野なだけに、今後、どう展開
していくのか、期待しています。

・「ビジスパ」サービス概要(サイトより)
ビジスパ(Business Spice)は、向上心と情報感度の高いビジネスパーソンの
ためのビジネスジャンルに特化した有料メルマガ配信サービスです。
厳選されたビジネスリーダ―によって生み出される質の高いビジネスコンテン
ツをメルマガとして配信します。

執筆陣にはコンサルティングファーム ローランド・ベルガー会長、遠藤 功氏、
ブリヂストン、パルコ社外取締役 元コーンフェリー会長、橘・フクシマ・咲
江氏、元ライブドア社長の堀江 貴文氏等ITや経営、キャリア等のスペシャリ
ストが名を連ねており、ここでしか読めないメルマガほとんどです。



■■講演会のお知らせ■■
この「ビジスパ」さんのサービス開始を記念して、1月17日(月)に講演会が開催
されます。

この講演会で私も講演することとなりました。
「未来型ビジネスパーソン ~新たな環境の中でどう『ビジネス』と向き合うか~」
というテーマで30分の講演をします。

私のほかにもこのビジスパさんの執筆陣から高城幸司さんが登場予定とのこと、
ビジスパ会員(登録無料)になればどなたでも無料で参加できるので、ぜひお越しください。

使い分け要素:ITジャーナリストの松村太郎さん、元コーンフェリー会長の橘・
フクシマ・咲江さん、元リクルートで現セレブレイン社長高城幸司さん(ファシ
リテータ)と私の4名が登場の予定です



■松村 太郎さん:ジャーナリスト・企画・選曲。慶應義塾大学SFC研究所上席
所員(訪問)。ビジネスブレイクスルー大学講師、嘉悦大学非常勤講師。
テクノロジーとライフスタイルの関係を探求。モバイル、ソーシャルラーニン
グ、サステイナビリティ、ノマドがテーマ。

■橘・フクシマ・咲江さん:1991年に世界最大手人財コンサルティング会社コー
ン・フェリー・インターナショナルに入社。日本支社社長、会長を務め、2010
年8月アジア・パシフィック地域最高顧問に就任と同時にG&S Global Advisors
Inc.を設立し、代表取締役社長に就任。コーン・フェリー米国本社の取締役を
12年間務め、花王、ソニー、ベネッセ等日本企業の初の女性独立取締役を歴任。
現在はブリヂストン、パルコの独立取締役。キャリアに関する著書多数。その
他、コーポレート・ガバナンスも含めて広く執筆・講演活動も行っている。

■高城 幸司さん:実践的なマーケティング戦略と人材戦略との融合により、営
業力の強化や売れる組織づくりの鉄則について説く。また、管理職を対象とし
た“部下の信頼を高めるための極意”や、“将来を担うリーダーの育成”“新
しい事業を生み出すヒント”“若手ビジネスパーソンの勉強法について”など、
幅広いテーマを持つ。

【講演会概要】
日時:2011/1/17(月) 18:20~20:40(開場18:00)
会場:大手町サンケイプラザ 3F 301号室

東京都千代田区大手町1-7-2(地下鉄大手町駅下車A4・E1出口直結)
TEL: 03-3273-2258

定員:200名(ビジスパ会員限定)

「未来型ビジネスパーソン ~新たな環境の中でどう『ビジネス』と向き合うか~」

18:00 開場
18:20 開会のあいさつ
18:30~19:00 ご講演第1部 松村 太郎様
19:00~19:30 ご講演第2部 城 繁幸様
19:30~20:00 ご講演第3部 橘・フクシマ・咲江様
20:00~20:10 休憩
20:10~20:40 パネルディスカッション
ファシリテータ:高城 幸司様
パネリスト:橘・フクシマ・咲江様、城 繁幸様、松村 太郎様
20:45 閉会

参加費用:無料(ただし、ビジスパ会員登録(無料)必須)

週刊エコノミスト12/7

2010-12-03 10:50:07 | work
エコノミスト 2010年 12/7号 [雑誌]
クリエーター情報なし
毎日新聞社


今週号、巻頭の“フラッシュ”に新卒採用市場について寄稿。
雇用調整にくわえ“新卒バブル”崩壊の波も直撃している分、就職氷河期以上の就職難に。
とりあえず、もう内定率が回復することはないと思われる。

もっとも、新卒バブルが終わったということは正社員バブルもそのうち終わるわけで、
内定取れなかったからといって、そんなに落ち込む必要はない。
地方だろうが中小企業だろうが契約社員だろうが、身につけられるものを身につけておくといい。

日本の論点2011

2010-12-01 18:55:01 | work
日本の論点2011
文藝春秋編
文藝春秋


また今年も「日本の論点」に書いたので紹介。
内容はいつもの主張の総括的な内容で、雇用のミスマッチや就職難、空洞化の解決
には、終身雇用にメスを入れるしかないという話。
その観点から言えば、民主党は前進どころか後退していると言わざるを得ない。
(まあ自民が与党でも前進しているとはあまり思えないけど)

それにしても、これだけ“論点”にピックアップされるということは、良くも悪くも
それだけ雇用への関心が高いということなのだろう。
確かに、普通に考えれば、過去最低の新卒内定率や英語の社内公用語化といった現象が
すべて繋がっていることに気付くはず。
今のところ騒がしいのは学生や非正規雇用といった周辺部だけだが、正社員という本体に
大波が押し寄せる日は遠くないはずだ。