複数の人から「アレは見ておいた方がいい」とアドバイスされたので
例の事業仕分けを見学してきた(16日午前)。
というわけで、以下簡単にルポ。
場所は市ヶ谷にある財務省の研修センターだ。
なるほど、こんなところにも財務の仕切りを感じてしまう。
「全然普段着でいいですよ」と言われたのでジーンズにミリタリーパーカーで
行ったら過激派かなにかだと思われたのか、厳重にセキュリティ検査をされる。
会場(というか体育館)は3会場に別れ、それぞれ同時並行で進められる。
僕が見学したのは午前の三つだ。
(1)高年齢者職業相談室運営費
(2)関空補給金
(3)キャリア教育※
入り口で渡されるイヤホン無しでもいいが、中には小声の人もいるので、付けた方
がいい。
最初の仕分けでは、厚労省が矢面に立たされる。財務省スタッフの論点説明の後、
委員がてきぱきと質問をぶつけていく。
「ハローワークとの違いは?」という質問に対して、いまひとつ要領を得ない
厚労省の回答。当たり前の話で、「ハロワだけでは実力不足だから」なんてこたえ
ようものなら、職業紹介自体を自治体へ移管してしまえと言われるので、モゴモゴ
と誤魔化すしかないのだ。
といって、昭和40年代に設置され、オンライン化もされず、紙中心の相談室への
ニーズなど多いわけがなく、結局、最後は「利用者数も減っていく中、独自性など
の検討をしているのか」という問いに対して「…していません」という回答を
引き出されてジ・エンド。実に手際の良い流れだ。
続いて、隣の国交省の仕分け会議へ移動。ガラガラだった厚労省と違い、立ち見が
列をなしている。そして会場でのやり取りもピリピリしたものを感じる。
それもそのはず、空港整備事業、関空補給金など、まさに旬なテーマがずらりと並び、
かつ金額も他とは桁違いだ。主な流れとしては。
「国交省側の予測の甘さのツケを、税金で補填するのはおかしいのではないか」
「昭和50年代の経済成長率などで予測した結果です」
「既に90億払い続けている補給金を160億にして、それで黒字化する見込みは?」
「空港利用料の値下げによって、発着回数を増やすことで対応したい」
ここで、財務省主計局の参加者がすかさず突っ込む。
「我々の試算では、値下げで発着回数は増えませんが」
仕分け委員や橋下知事が言うように、これは関空だけの問題ではない。伊丹、神戸
の両空港との関係を含めて抜本的な見直しをしない限り、赤字は増えることはあっても
減ることはないはずだ。ということで、予算が凍結されたのは報道の通りである。
さて、以下は気づいた点。
初日の報道を見ていると、仕分け委員の質問がなんだかずれているような印象が
あったが、僕が見た限りではそういったズレはほとんど感じられなかった。
むしろ、的確に質問を繰り出していたように見える。
恐らく、初日については絵的に面白そうなものが選ばれたのではないか。
(ただし、学術系のものならトンチンカンな質問が出そうではある)
財務省は資料を作るだけかと思っていたが、要所要所で適時援護射撃を撃っていた。
要するに、官僚側が“官僚用語”で煙に巻こうとすると、「ちょっと待った」と
議論の軸を戻してくれるわけだ。特に、国交省側が困惑している様子が遠目からでも
よくわかった。
仕分け対象には、とりあえず点数稼ぎで出してきた数合わせ用の事業と、以前から
削りたくて仕方のなかった本命事業が、明らかに混在している。
これは単純に、予算額と会場の空気を見ればすぐわかる。
たとえば、「高校でのキャリア教育推進プラン」なんて予算3億。会場も関空事業
とは違って空席も目立つし淡々と進む。
要するに本丸以外はどうでも良いのだけど、全省公平に見直すよというパフォーマンス
なのだろう。
総括として、良かった点。
典型的な年功序列型組織である官僚機構には、軌道修正という機能が完全に欠落し
ているということがよく分かった。
昭和40年代に作った事業を「理由は自分達でも分からないけど辞められない」と
いうのはもはや末期症状だ。
今回の基準を類似事業にも適用し、来年度以降もびしびし絞っていくと言っている
わけだから、(財務省的な基準であるにせよ)とりあえず一定の歯止めをかけられた
のは評価すべきだと思う。
ちなみに、財務省が分かっていながら予算を削れなかった理由は、自民党の族議員
の存在だ。小泉さんですら手を焼いた族議員を、霞が関から一掃したわけだから、
やはり政権交代は必要なのだ。
一方で、既に穴も見えていた。
「たった3億円の見直しを議論しても意味が無い」という声はその通りだと思う。
今年は潰せても、来年以降はどうか。鳩山さんのいうように、民主党(+財務省)が
がっちり手綱を握って、すべての無駄を潰せるだろうか。
僕はそうは思わない。必ず、何らかの形で無駄は残されるはずだ。
結局のところ、官僚自身に「組織肥大以外のインセンティブ」
を与える公務員制度改革が必須なのだ。
そして、そういう方向性は残念ながら民主党からは見えてこない。
自民党が更正してくれればいいのに、総裁が自転車でこけたことくらいしか
ニュースにならないのでもうダメだろう。
わけのわからない新党も出来るそうだし、二大政党制の実現までは、
もうしばらく時間がかかりそうだ。
※三つ目は時間的に全部はヒアリングできなかったので詳細はパス