Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

本当に日本の解雇規制は緩いのか

2010-01-29 15:58:42 | 人事
モリタクがまた妙なことを言っている。もうこの人はほっといても良いのだけど、僕のこと
を意識した反論くさいし、何よりこういうのを野放しにするのはやっぱり教育上よろしく
ないと思うので、ここは一つ後輩として介錯してやろうと思う。

彼はOECDの雇用統計を元に、「日本の解雇規制は厳しくない」と述べる。
確かに、このデータを見ると、ドイツやフランス、そしてオランダなどよりも日本の
ポイントは低く、ヨーロッパ諸国よりは解雇しやすいと思うかもしれない。

だが、この「雇用保護の厳格性」(Strictness of employment protection)を文字通りに
受け取ってはならない。
以前も述べたとおり、この数値は以下の3つの指標を総合したものだ。
1. 手続きの不便さ
2. 会社都合解雇の場合の告知期間と補償額
3. 解雇の難しさ

法律上は、一ヶ月前の告知で一か月分の賃金さえ払えばいつでも誰でも解雇可能となって
いるわけで、総合ランキングだと日本のポイントが低くなるのは当然だろう。
だがそんな風に解雇される労働者は稀だ。
要するに、判例によってそもそも解雇自体が認められにくい制度になっているので、2番が
手厚くなっていないというだけの話だ。

よって、議論すべきは3番となる。
ちなみに、この指標での日本の順位は、最新データである2008年度版
ではOECD加盟30カ国中第一位。
栄えある「先進国で一番正社員が解雇しにくい国」となっている。

「日本の解雇規制は厳しくない」どころの話ではないのだ。※

さらに言えば、後半で森永はこうも続ける。

ところが現実には、中小企業や零細企業では、社長が
「お前は気に入らないからクビ」ということが少なからずある。
明らかに法律違反なのだが、実際に起きているのだ。


例によって例のごとく、日本型雇用の一階部分、大手の踏み台にされる中小企業を引き合いに
出して、「正社員も苦しんでいる!」と言ってみせる。
当たり前だろう。どんな制度であろうと、雇用調整はなされる。問題はそれが規制によって
一部の下請け企業、特定の雇用形態の労働者に集中し、資源と人員の効率的な配分が
なされていない点にあるのだ。

以上のような話は雇用問題を語る論者にとっては常識で、もっといえば、実社会で働いた
経験のある人間なら肌で感じているに違いない。
僕には森永が、こうした事実を理解していないとはどうしても思えない。

もしここを見ているテレビ局の人がいるなら、お願いしたいことがある。
あなた方に公共心があるのなら、もうこの男は金輪際使わないで欲しい。
どんなに我々が正論を吐いても、この男はお金儲けのために電波で嘘を撒き散らして
しまう。
獨協大も教育機関としての自覚があるなら、こんな嘘つきを教壇に立たせるべきではない。
確かに、大学の名前を売ってはくれるはず。
でもそれ以上に大切なものを、この男は売り叩いているのだから。



リンク先の「Individual dismissal of workers with regular contracts」項参照のこと。
  生データについては同じリンク先にあるExcelシート参照。

連合が「Yes」と言えない理由

2010-01-28 10:56:25 | 世代間問題
終身雇用という一つの箱舟の中で、日本に労使という対立軸は存在しない。
経営者は実質的にはサラリーマンであり、会社の永続的発展を願う従業員は、欧米の労働者
よりはるかに物分りがよい(持ち株会なんかがあれば株主でもあるわけだ)。

はっきり言うが、春闘なんて時間の無駄なのでやらないほうがいい。
日産みたいに前年度の業績に応じて人件費の原資を決めるルールを作ったほうが、
人事も労組も楽で良いだろう。
というか、実際には他の大手もそうやって決めてるわけだし。
とはいえ、ニュース報道における古賀さんの以下のコメントだけは、おそらく本音だろう。
「定昇をやめるということは、先輩の賃金カーブに届かないということ、つまり実質的な
賃下げになってしまう。絶対に受け入れられない」

職務給や年俸制の企業と違い、一般的日本企業の雇用契約においては
「誰がどれくらい貢献していくら支払うか」というコスト管理の概念が完全に欠落している。
だから同一労働同一賃金を実現しようとしたって、出来るわけがない。
誰がいくらの仕事をしているのか、人事にも管理職にも誰にもわからないためだ。

ではまったく報酬に関する契約が存在しないかといえば、あるにはある。それが
「後で出世するから生涯賃金で見れば世代間の不公平は生じないよ」
という年功序列的価値観だ。賃金カーブで言うなら
「あなたもこのラインをなぞって、先輩みたいに昇給しますよ」ということになる。
もちろん、これは「暗黙の契約」なので明文化はされてはいないが、日本型雇用の唯一の
正当性の根拠と言っていいだろう。

連合として定昇凍結を認めるということは、彼ら自身が既得権の
正当性を否定し、日本型雇用 の崩壊を認めることになる。

これだけはそうやすやすとウンとは言えないはず。
とはいえ、逆さにして振っても無いものは無いのであって、最後はなし崩し的に受け入れる
しかないだろう。

メディアも、そして若い組合員の多くも、定昇の見送りが意味することは深くは考えない
だろう。だがその日は、連合が正式に「50代が逃げ切るために2,30代を切り捨てた」という
記念日となるはずだ。


※実際には00年前後に個別の企業で凍結されている。また、35歳以降は業績連動性にして、
 平均的に昇給を抑制する仕組みに変えている企業がほとんど。新著で書いたとおり、
 サラリーマンの40代以降賃金カーブが過去10年低下し続けているのはこれが原因。

新連載開始のお知らせ

2010-01-27 21:54:42 | work
中吊りを見て思い出した。
今週より、週刊SPA!にて連載を開始したのでご報告。

選挙のマニフェスト特集が結構評判良かったようで、今回の運びとなった。
いやあ、何でもやってみるもんですねぇ。

本当はもう週刊誌連載は懲りていたのだけど
「何書いてもいいですよ」というお話につられてしまった。
というわけで何書くか自分でもまだはっきりとはわかりませんが、一つだけ言えるのは
東洋経済では書けない様なこといっぱい書こうということかな、うん。


※タイトル、内容等は手にとって確認してください。

キンドル後の出版業界

2010-01-25 15:19:03 | その他
キンドルが著者印税70%を提示して話題となっている。日本人は紙が好きなので日本で定着
するかどうかは疑問だけど、旬な情報という点に価値のある経済書・ビジネス書などでは
普及するかもしれない。
というわけで、仮に電子書籍が普及した場合の影響について考えてみた。他人事ではないし。

結論から言えば、出版社自体が消滅することは無いと思う。
既存の出版社の最大の役割はマーケティングで、その強さ(書店の棚面積と言い換えても良い)
が著者に対するPRとなっている。この部分は確かに電子化で消えてなくなるのだけど、彼ら
には配本以外にもいろいろな役割がある。

1.編集力
持ち込んだ原稿がそのままの形で本になるわけではない。というより、ビジネス書などでは
自分で書く著者のほうが少ない。ばらばらとめくれば、テープ起こしか直筆かはすぐにわかる。
もっとも、彼らは情報の専門性や視点に価値があるので、文章はプロに任せるというのは
合理的ではある。実際にはいろいろ忙しいだろうし。
ちなみに僕自身はそういうところは変に潔癖症で、他人が書いたモノに自分の名前がつくのは
イヤなので、全部仕上げてから持っていくことにしている。

2.品質保証能力
全部とはいわないが、それなりの格のある出版社は独自のフィルターで原稿チェックしている
ので、出版社の名前には一定の品質保証効果がある。
たとえば。
「日本国のバランスシートはぜんぜん余裕があるので債務残高は心配ない」
とか言われても、人並みな知性のある社会人なら
「なんで俺の資産を勝手に計上してんだよ、いまどき天皇陛下の赤子かよ」
と冷静なツッコミをするはず。
というわけで、まともな出版社はこういうのははじくから知識人のタイムラインには
引っかからず、アマゾンで注文したのを読んでみて「なんじゃこりゃ!?」とびっくり仰天
するリスクは今のところない。※

というような機能がまったくない直接取引市場というのもなくはないだろうが、普通に考え
れば、そういったノウハウを持つ既存出版社が進出するはずだ。
よって、大手と中小零細出版社という共存関係は今後も続くと思われる。

ただし、両者の力関係は激変するだろう。
既に一定の知名度と実力のある書き手は上記の役割なんていらないわけで、取り分の多い
インディーレーベルから出版するだろう。逆に、良いものはあるが書きなれていない専門家
や知名度に欠ける新人は、大手経由で発表するはず。
要するに、
インディー:大物+雨後のたけのこ
大手系  :準大物、学術系、新人デビューモノ
といった区分けになる気がする。従来の逆だ。
もちろん、大手も大物を囲い込むために価格競争に巻き込まれるだろうから、どちらに
転んでも著者にとって悪い話ではないだろう。

ついでに言っておくと、大物とはいえ書いている時間のない書き手向けに、編集やゴースト
の請負業が活発になるだろう。従来から「大手の実力のある編集者」が独立する話はあった
が、この流れはいっそう進む気がする。いずれにせよ、ガラパゴス状態だった大手出版の
年功序列制度は、完全に崩壊するはずだ。

※モリタクみたいに、あえてそういう内容の本を書いて、リテラシーの低い人達に売りつける
という戦略は、マーケティング戦略としてはクレバー。

親子就活

2010-01-24 11:55:50 | 書評
親子就活 親の悩み、子どものホンネ (アスキー新書)
中村昭典
アスキー・メディアワークス

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毎年そうだけど、今年も就活本シーズンである。
いろいろ出ているが、“親子”というユニークな観点でまとめたのが本書だ。

親世代にも実感できるようにバブル期と比較しつつ、現在の就職活動をまとめていく。
就職活動というのは普通は一回しか経験しないものだから、何年経っても自分の時の固定観念
でロックされがちだ。結果、現在の就活とずれてしまうリスクがある。
予断だが、僕が見た最大のずれは、東大の就職イベントで就活に悩む後輩に対して
「東大生ならどんと構えていればいい」と自信満々で語っていた痛いOBだ。
もうそんな時代じゃないですから。

そこまでいかなくとも、50歳以上であれば、情報はアップデートする必要があるだろう。
その点、本書は理想的な入門書である。

僕が特に気に入っているのは、本書が企業内の変化にも言及している点。
成長時代の終焉、非正規雇用を活用した業務の切り分け、中途採用などの(一定の)流動化
によって新卒一括採用は終焉しつつある。
確かに景気変動の影響は依然として新卒採用に大きな影響を持つが、ただ好況を待っている
だけではキャリアパスは開かれない時代だ。

後半、親と子の関係について章が割かれる。
既に大学に親がついてくる程度では誰も驚かないだろうが、現実では会社に親がついてくる
時代だ。企業もそれを意識して、父兄向け説明会まで始める企業もある。
著者は必ずしも親の介入を全否定はしない(じゃなきゃこんな本は書かない)。
むしろ安易な「お前の好きにしろ」は責任放棄だとする。
その言葉は互いを理解した上での最後のきめ台詞だという考えには、全面的に同意したい。


「大きいことは良いことだ」の象徴だったJAL

2010-01-20 12:48:36 | その他
JALが破綻してしまった。JALというのは不思議な会社で、10年くらい前からダメだダメだと
いわれ続けて、それでもなぜか就職先としては常に人気があるという変な会社だった。

このランキングだと05年は首位ですから(文系)。
人事同士でランキングの話になると「JALの何がいいんだろうね?」という会話をよく
していた気がする。
MyNewsJapanでも、ほとんど何一つ良いことが書かれていない。ここまでな企業も珍しい。

僕自身も振り返って思うのだが、JALというのは、「大企業に行っとけば間違いない」的な
昭和的価値観の一つの象徴だったような気がする。
「ナショナル・フラッグ・キャリアなんだから、最後は生き残るんだよ」的な、
そんな気もするけど、良く考えたら何にも根拠の無い価値観だ。

たとえば90年代、今働いている会社とJALに内定を貰っていたとして、「行かないよJALなんて」
と自信を持って言えたという30代がどれくらいいるだろうか。
ちなみに、僕は言い切れません(笑)

もちろん、瀬戸際から奇跡の復活を遂げるリクルートみたいな企業もあるけど、そういう
ところは元々ビジネスモデル的には良いものを持っていたわけで、JALはきついのではないか。

それにしても、バブル全盛の90年当時のランキングを見ると、あまり現在と変わっていない
のが気になる。「それだけ社会が安定している」のなら言うことはない。
が、「衰退している」のだとすれば、由々しき問題だ。


官僚たちの夏2010

2010-01-18 11:00:10 | 経済一般
昨年、TBSで放映された「官僚たちの夏」というドラマがある。
面白くて毎週見ていたのだが、途中からいまひとつの出来だったように思う。
というのもほぼ毎週、
外圧→「それじゃ日本の産業はどうなるんだ!」と通産局長ブチ切れ→気合で乗り切る
のワンパターンで、まあ水戸黄門風の定型ドラマと考えると悪くは無いけど、ちょっとねぇ
という感じだったから。

特に凄かったのは、「自動車産業を守るために規制を残せ」と叫んでいた翌週に
「(繊維産業のために)自由貿易の灯りを消すな」と同じキャラが叫んでいたこと。
なんだかジャイアンみたいだ。

まあでも、テレビ局としても毎週見せ場をつくらないといかんのだろうと、長い目で見て
あげていた。

ところが。文春の今週号に、経産省前次官の北畑氏の景気予測が掲載されているのだが、
これがもう完全に「官僚たちの夏」丸出しである。
まず氏は「夏には景気が回復する」として、その根拠を述べていく。
金融システムにダメージが少ないこと、原油価格の低下と続いて、
なぜか「外資系資本の撤退」があげられている。
曰く、「企業の姿勢が株主万能主義から、従来の健全な日本型経営に戻る」からだそうだ。

株主万能主義なんてあったっけ?とか、じゃあ昔の株式持合いが健全なのかとかいう疑問は
置いておいて、問題はその後だ。
氏は今後の戦略としてモノ作り重視や環境技術育成をあげるのだが、最後に円高対策として
「積極的にM&Aをしかけて海外展開を図れ」と締めくくる。
「外資が来るのはイヤだけど、我々はどんどん行かせてもらいますから」というのは
少なくとも今の時代、経済大国となった日本には許されないだろう。

自由貿易体制を前提に成長戦略を練るという遺伝子が、彼だけではなく経産省自体に存在
しないとしたら、“夏まで”どころか、10年は景気回復しそうにない。

「7割は課長にさえなれません」目次紹介

2010-01-16 14:27:26 | 
7割は課長にさえなれません
城 繁幸
PHP研究所

このアイテムの詳細を見る


本日、新刊が発売になる。※
というわけで簡単に目次を紹介。

第一章 年齢で人の価値が決まってしまう国
第二章 優秀な若者が離れていく国
第三章 弱者が食い物にされる国
第四章 雇用問題の正しいとらえ方
第五章 日本をあきらめる前に
エピローグ

第一章:年功序列という世界で日本だけの奇妙なカルチャーが生み出す様々な弊害について
述べる。このカルチャーにおいては、20代前半に人生最大の勝負どころがやってくるため、
うかうか寄り道なんてしていられない。
といって、勉強しすぎても、レールから弾き出されることになる。
そして、卒業年度に求人が少なかった人たちは“一階部分”に押し込まれる。

第二章:日本の雇用法制では既得権の見直しが行なわれないため、人件費抑制は昇給抑制と
いう形で行なわれる。つまり賃金カーブは時間をかけてゆっくりと低下するわけだ。
これを予想した若手から流動化していくことになる。日本人の若手でさえそうなのだから、
まともな外国人はよりつかない。
高度人材から見て、日本の労働市場は世界44位という魅力しかない。

第三章:本来、安定した仕事よりもハイリスクな仕事の方が高時給であるべきだが、実際
にはそうなっていない。それは日本の労働市場が自由主義ではなく身分制度だからだ。
自由競争は社会に活力を生むが、規制は活力を削いでしまう。
日本型雇用を守り続けた結果、政府の債務残高以外は低迷し続けている日本を見れば、
それは明らかだろう。

第四章:従来の価値観は一度ゼロリセットする必要がある。
たとえば氷河期世代に対して「自己責任だ」という保守派も「資本階級が悪い」という共産党
も、どちらも日本型雇用主義者という点で変わらない。
テレビや新聞といった大手メディアも、この違いが理解できているとは言えない。
特にテレビ局に対しては、おススメの番組構成を提案してある。

第五章:本書を通じて主張していることの総括。
日本型雇用、つまり終身雇用というのは2階建てであり、一階部分の人間にとって維持する
メリットなど最初から無い。実は、我々は少数派ではなく多数派である。
問題は、このことに多くの人が気づいていないことだ。

本書は、2つの流れが同時並行で進む形となっている。
一つは、本ブログや過去2冊の新書と変わらないロジックの話。
そしてもう一つは、ある町のある一家を中心としたストーリーだ。
“エピローグ”というのは、多くの人が気付いたら・・・というifの話である。
それは確かに仮定の話に過ぎないが、理論的に不可能というわけではない。
少なくとも超国家主義や計画経済なんかよりは、ずっと身近なものである。

※でも店頭に並ぶのは大型店以外は来週かな。

新卒神話の終焉が意味するもの

2010-01-15 12:46:56 | 採用
12月時点の内定率が96年以降で過去最低を記録した。
73%といっても、この時期になると(進学や留年等で)戦線放棄した人が母数から抜けるため
就職できない学生の実数はもっと多いはず。

ただし、求人倍率的には“元祖氷河期”の方がよっぽど低い。
最低は00年卒業者に対する0.99。本年卒業予定者は1.62と、求人倍率だけを見れば氷河期とは
いえない数字だ。
つまり、求人は出しても内定は出さない企業が増えたということになる。

この事実は、新卒採用のトレンドが、過去10年の間に大きく変わったことを示している。
90年代半ばまで、「まっさらで従順でポテンシャルがありそうな子」であれば、どこかに
引っかかることは可能だった。現在はそういった資質に加えて、各社がそれぞれに必要な素養の
有無を判定しているわけだ。
企業によって全然違うので一概には言えないが、代表的なものはコミュニケーション能力、
表現力といったもので、「マニュアル型」の対極のイメージと言っていい。

このトレンドは今後さらに進化するはずなので、内定率は今後も大きくは回復せず、企業に
必要とされる人材とされない人材の二極化は続く。
「良い大学=大きな企業=幸せな人生」という昭和的価値観は、少なくとも入り口においては
既に崩壊したと言っていいだろう。

「バラマキは何も産まない」というコンセンサス

2010-01-13 10:14:45 | 経済一般
月刊Voice2月号の「大討論会 デフレ地獄脱出への処方箋」が面白いので簡単に紹介。
まあこの手の座談会というのは取り合わせの妙を楽しませようと妙なのが混じるのだけど
今回も菊池英博という「消費税をゼロにして国債ばんばん刷って公共事業しろ」という
トンデモ(これでも一応学者らしいが…)が参加している。

財政政策自体は日本のような先進国においては効果が無いし、世界的に見てもいまどき
そんな論文はないとする飯田泰之氏に対し、菊池氏はこう食い下がる。
「経済というのは結果です、私はビジネスマン出身だからそう断言できる。結果が
よければいいのです。したがって、歴史に学ぶことが一番大切です」

こいつは歴史は見えても90年代は記憶に無いらしい。ぼけてるのかな。
この老人に対する飯田氏の返答は実に模範的なので、若手なら記憶しておいて損はない。

「私がというよりも、専門家のなかではかなり共有されている理解かと
思います。財政の主な役割は、公共財の供給や再分配ツールに転換させる
必要がある。現在の日本にひきつけるならば、貧困問題への対応や規制改革
にともなう激変緩和に使うべきもので、景気浮揚に割り当ててはいけないと
思います」


多少の違いはあれど、こういう方向性についてのコンセンサスはとっくに成立している
わけだ。
「内国債だから破綻しない」なんて珍論を言うのは脳が凝り固まった老人か、
“商売繁盛”的なお札をバカに売りつけたいブルーオーシャン戦略家だけなので、
若者は無視しておいて構わない。