内定取消! 終わりがない就職活動日記間宮 理沙日経BP社このアイテムの詳細を見る |
内定取り消しに追い込まれてしまった女子学生のルポ。日経BPで連載していた著者のものだ。
基本的には以前書いたとおり、“ツケ”はどこかで誰かが払わないといけないので、
「二か月分の基本給+取消証明書」のような明確なルール化をしてしまった方が良い。※
誰が悪いというよりも、そういう合理的な判断をしないまま、ただ「頑張れ!諦めるな!」しか言って
こなかった政治も司法も経営も労組もみんなに責任がある。
そういう意味では、どことなくそういった社会の矛盾をえぐり出す旅のように読めなくもない。
何の変哲もない女子大生が、ある日突然、内定辞退の強要という理不尽な目にあう。
「おまえなんて辞めちまえ!いらねえんだよ!」「そ、そんな…」
彼女は仲間を集め、大学就職課という頼れるバックアップも手に入れ、悪の黒幕たる人事担当者に挑む。
激しい戦いの末、ようやく彼女らは悪に勝利する。だが、残ったのは一枚の謝罪文のみ。
「すいませんでした、やっぱり内定出します」なんて事にはならない。その余裕が無いから取り消したわけで。
というか、今さら本人たちもイヤだろう。
ハリウッド映画的に言えば、敵味方の屍が累々とする中、「俺たちはいったい何のために戦ったんだ!?」
みたいな一抹の寂寥感を感じさせてくれるエンディングだ。いや、それだけ良く出来たルポですよ。
というわけで、やはり争いは非効率だということで、ルール化は必要だろう。
しかし。本書に出てくる企業の人事担当取締役は、なぜにここまでマッチョなのか。
「内定取り消しなんてしちゃいけないんだ、だから辞退に追い込むんだ」というコンプライアンス意識が
高い人なのはわかるけども、ここまでしちゃうと逆に高リスクだ。
恐らく、企業としてギリギリの瀬戸際にある会社なのだろう。
実は、内定取り消し理由の25%は倒産である(厚労省発表)。「業績の悪化」と倒産でほぼ100%。
50人以上の内定取り消して3カ月後に潰れた日本綜合地所のように、三途の川の手前でうろうろしているような
会社が大半だと思われる。
こういう状況で「取消企業の社名公開」なんてやられたら、売り掛け金や債権の取り立てが一斉に来て
間違いなく川を渡る羽目になる。ということで、人事部には人事部なりに焦っていたのではないか。
根本にメスを入れないまま、規制のみで押さえつけようとすれば、歪みは必ず形を変えて、より立場の弱い
部分に顔を出す。大手から中小へ、正社員から非正規、若者へ。22歳の女性というのは、もっとも
歪みの押しつけられやすい存在と言える。
本人がこういった経験をばねに、構造的な課題にまで理解を深めてくれることを祈りたい。
※それでも、新卒カードは失うことになるが。
①翌年の採用人数を一人少なくして調整もできない/したくない。
②離職率の高い部署に配属して自発的に辞めさせるのもできない/したくない。
③その他グレーな雇用調整手段がない。
ような変な(?)本当に余裕のない(?)会社なので、内定取消されなかったら幸せだったのか?とても疑わしいですよね。
なぜ「女子」学生なのか? 現状では女は10年間限定のお嫁さん候補、雇用調整弁、会社の手足etc.であって(これはこれで問題です)、男子学生が取り消しされたほうが影響大じゃないか。
流動化論者は「やっぱ新卒一発勝負は弊害デカく効率低いな」と思うだけだし、規制脳は「こんな悪徳会社バンバン取り締まれ!」(無論取り締まった際の悪影響は完全スルー)と思うだけで、結局世の中の仕組みがよくわかるようにはならんでしょ。
そういうわけで、この本の企画については(たとえそこそこ売れたとしても)ギモンです。
あとは、会社の失点になるからでしょうか。
「俺たちゃ、間違ってないんだぁ。」とやりたいのでしょう。
このブログ読者ならご存じの方が多いでしょうが、根本原因は新卒偏重と極端な青田刈り。この手の議論では、かつてあった就職協定の話が完全無視なんですよね。
新卒で内定取消しされると、解雇に相当するので損害賠償として慰謝料をもらう権利があります。(判例より)
>「二か月分の基本給+取消証明書」のような明確なルール化をしてしまった方が良い。※
仮にこうするなら、内定取消された人は新卒同等として企業に扱うことを義務化しないとだめですね。
慰謝料と謝罪文よりで得たものより、内定取り消されたことによる現行の日本の雇用システムで新卒正規雇用のスタートラインに立てないことで一生を失うことが大きです。新卒でリスタートを許さない雇用システムは見直さないと、学生と企業側両方にとってWin- Winの関係にならないと思います。今は、企業側が圧倒的に強いです。
それとちょっとこのブログの趣旨から外れますがニッポン人はホントに世界の嫌われ者なのか?
作者柳沢有紀夫新潮文庫で一般のオーストラリア人が意外とか簡単ぶつかった時などににアイムソーリーと言うみたいな事が書いてありました。実際に本を読むと新しい発見がありますよ。
もちろん新卒カードを失う若者がダメージ大だが。
社会にとっても不幸なシステムとしか言いようがない。
いずれにしても銭が必要な世界である。
あとはこねである。
ホント普通の人々には状況は酷い、そして大半が普通の人である。
わが国は法的に整備されているが内実は空っぽという世界がアル。
内定取り消しは一応契約違反だから、ソレ相応ノが常識だが、それはない。それを法律違反として、頑張っても法的秩序が維持されるかと異なる。
鳩山氏の金の動きに対して警察が機能しないのは、それの逆の現象である。
男女平等賃金も其れで、いずれ女は結婚して止めていくという前提で組まれていたが、ご時世で、退職まで働くようになったが、民間はそれではやれないから、それなりのことをしているが、あるところは異なる。さてそのとき、定年まで女子の賃金体系で男もすればそれは持つが、逆で男の賃金体系にするから、それはつぶれる。それが迫っているがそれを認めない。
で、企業は新卒就職のリスクを理解する。したがって
もうバブル崩壊と共に終わったこのシステムにしがみ
つくことがなくなる。
そう持っていくのが一番いいのでは?
それでも一部の企業は相変わらず新卒一括採用にし
がみついて、それがホワイト企業だったりするので
根本解決にならないという意見が出そうですが。
>なぜ「女子」学生
この本自体がフェミニストに毒されている可能性も
ありますね。実態は、男性のほうが酷いのに。
男性で無い内定だと、フリーターやニートとして収入
のみならず、色々なところで差別されていきます。
婚活だって、女性はフリーターでも堂々とできますが
、男性でフリーターで婚活なんてほとんど無理でしょ
う。
一見シリアスに書いているつもりでも、女子学生とい
う設定で何とか「パロディ」も加えている。それによ
って、何とか本当の内定取り消しの悲惨さを隠蔽して
いるんではないですか?