Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

書評『私が自民党を立て直す』

2010-08-02 12:39:57 | 書評
私が自民党を立て直す (新書y)
河野 太郎
洋泉社

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自民党の若手~中堅議員のホープである河野氏の新刊。

「正直に申しまして、今日ここにお集まりの皆さまは、国民が現在自民党に対してかなり
根強い不信の念を持つようになっていることに、あまり気づいておられないかもしれません」

という実にタイムリーなセリフから本書はスタートする。
ところでこのセリフ、最近のものではなくて1989年の党大会における曽野綾子氏の来賓挨拶だ。
自民党という組織は、20年前からポスト冷戦における存在意義が無いと指摘され、そして
20年間それを作ることが出来なかったわけだ。

著者は下野をむしろ好機ととらえ、この機に自民党の新たな理念を作るべきだとする。
その理念とは、小さな政府と健全な競争を背景とした経済成長であり、地方分権や新たな
セーフティネットの構築も含まれる。

主な論点のみ書きだしておこう。
・規制緩和によるサービス産業の生産性向上
・アジア諸国、特に韓国との速やかなFTA締結
・法人税引き下げ、空港、港湾等のインフラ整備。
・消費税引き上げをともなう税制の抜本改革

世代間格差にもかなりのページを割いて言及している。
たとえば基礎年金の保険料方式から消費税方式への移行について。
国民年金は現在4割が未納だが、未納者の多くは将来、生活保護になだれ込んでくると
思われる。このままでは「真面目に年金を払った人より多くを受け取る」というねじれ現象
がありふれた光景になるだろう。
ついでにいうと、その費用は消費税としてみんなで負担することに
なるだろうから、払った 人はもう一回、乏しい老後の生活費の
中から負担させられるわけだ。

ならば今のうちから皆で薄く、それも高齢者にもお願いして負担してもらった方が合理的だ
というのは明らかだろう。

個人的に面白いと感じた政策は「大学入試の一元化」だ。
二次試験を廃止して、共通試験と論文や面接、高校時の成績での選抜に切り替えれば
不毛な受験競争は回避でき、多様な人材を確保できる。
合わせて卒業時の共通検定試験を導入すれば、大学教育の質を底上げできるはずだ。
付け加えるなら、それによって私立校と公立校の格差も一定程度は是正できるだろう。
いつも言っているように、今の時代に重要なのは「受験で何点取ったのか」ではなく
「大学で何を学んだか」である。

編集の腕が良いのか本人の筆が立つのかは分からないが、非常に読みやすい内容に仕上がって
いる。
彼の政策スタンスはとてもオーソドックスなものなので、日本の課題を考える上での入門書
としてもおススメだ。若者マニフェストのスタンスにももっとも近いかもしれない。

ただし、それはあくまで政治家個人の話。自民党という大所帯を通ってマニフェストになる頃
には、だいぶその色も薄れてしまう。彼は日経ビジネス誌のインタビューで
「自民党再生には10年かかる」と述べていたが、恐らく本心だろう。

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21 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
以前シンポジウムで (スターチスの花言葉)
2010-08-02 19:57:28
去年加藤秀樹さんの 構想日本のシンポジウムで司会役の加藤秀樹さん自らが河野太郎さんの行った 事業仕分けは民主党の行ったものより評価出来るとおっしゃっていました。
あくまでも去年のシンポジウムで現在は どうなっているか分かりませんが
自民党所属で世襲議員の中で河野太郎さんはまともな政治家ではないでしょうか?
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Unknown (hosoya)
2010-08-02 20:53:45
確かに法人税は下げるべきでしょうね。
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元祖仕分け人 ()
2010-08-02 21:24:34
河野グループの行った仕分けの事務手法は、かなり民主版の仕分けに受け継がれているそうだ。ちなみに本人曰く、注目度で負けたのは「華が無かったから」だそう。

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Unknown (皇帝ペンギン)
2010-08-02 21:38:51
河野太郎ガンバレ!
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Unknown (放蕩息子)
2010-08-03 01:21:34
自民党再生するまでに日本経済は崩壊してるのかな。
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Unknown ()
2010-08-03 02:14:35
福田、麻生政権の時代にもっと河野太郎代議士とか山本一太代議士のような中堅、若手や現場からの意見を率先してフィードバックにかけてうまく対応してれば2009年衆議院選挙のような大惨敗ではなくもっと良い下野、意味のある下野ができたろうに・・・

ああ。でも大惨敗したからこそ自民党が生まれ変わらないとという危機感が党のすみずみにまでいきわたったのかもしれないな。うーん。

河野太郎、山本一太、小泉進次郎あたりが頭角を出せるような風土に改革できないのなら自民党は再生できないだろうな。

麻生太郎元総理未だに三橋貴明氏に期待かけてるところあるし・・・どうもあれはなあ・・・
財政危機をもっと深刻に捉えて欲しい・・・
まあ、安倍元総理の美しい国へよりかはマシだと思うけど。

【J-NSC】麻生太郎最高顧問 突撃インタビュー(2010.7.30)
http://www.youtube.com/watch?v=uOiHSAZNqoo&feature=player_embedded#t=15m00s
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そうですね (スターチスの花言葉)
2010-08-03 07:22:28
過ぎ去ったことより 未来の方が大事ですよね。ラジオ番組で以前河野太郎さんが まだ幹事長になる前の民主党の枝野さんに事業仕分け一緒にやりましょうとよびかけたのにまだ実現 してないみたいですね。民主党の事業仕分けは民主党の支持率アップにつながったのに対して河野太郎さん達がやった事業仕分けは自民党の支持率には特に影響を与えなかったみたいですね。河野太郎さんの著書は機会があれば読んでみたいです。今ちょうど学生の方は夏休みの時期ですね。私は最近竹内薫さんの戦う物理学者を読みました。科学者達のエピソードをまとめた本です。キューリー夫人のエピソードに感動しました。科学者の世界で真に実力者が適切に評価されなかったことやキューリーさんが夫を馬車の事故で無くしたあと国からの援助を断って子供を育てたことや夫なきあと奥さんのいる男性と交際していたこと子供向けの伝記にはキューリーさんの娘さんが自分の母親を神格化したために不倫のことは書かれなかったことやはり完璧な人間なんていないんだと思いました。すいません脱線してしまいました。とにかく河野太郎頑張って下さい。
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大学の入学定員を2~3倍増せよ (かくせいⅢ)
2010-08-03 13:43:41
≫大学入試の一元化」だ。二次試験を廃止して、共通試験と論文や面接、高校時の成績での選抜に切り替えれば、不毛な受験競争は回避でき、多様な人材を確保できる。

ウソですよ。2次試験が受験競争になっているのではなくて、センター試験も偏差値の競争ですよ。

問題は、勉強していないのに入試の難しさで大学のランクが決まり、就職試験にそのブランドが通用することではないでしょうか。

学園紛争のときに東大が学歴社会の悪の象徴だと言うことで、入試が出来ない年がありましたが、東大を否定しても代わりの大学が登場するだけの話です。

入試競争が全く不毛だと思いませんが、大学に入って勉強等しないシステムは根本的に変えるべきでしょう。ITの技術が進歩したのですから、入学させる大学の定員を2~3倍に増やして、卒業させる定員の目安を今の定員に設定し、授業を含めて勉強しないと卒業できないようにすれば良いと思います。

教室のサイズが定員を決めているのですが、ITで他の場所でも授業が受けられるようにしさえすれば定員の増は可能でしょう。

授業についていけるかどうかの能力判定の試験だけをやればよく、その試験は入学資格判定試験であるレベル以下を落とす目的でやれば良いと思います。
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Unknown (JJF)
2010-08-03 17:22:35
サービス産業の生産性って何だろう?
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生産性って (senna-pro)
2010-08-03 23:53:13
>サービス産業の生産性って何だろう?

会計的な表現でいうと、「(労働)生産性=付加価値(≒限界利益)÷従業者数」ですよね。
したがって、おおざっぱにいうと
1.同じ従業者数でヨリ儲ける
2.同じ儲けをヨリ少ない従業者数で達成する
のいずれかとなる。

でも何故か「生産性を上げる」というと、2の方ばかり意識され、今以上に馬車馬の如くこき使われるイメージが強い気がする。
本当に重要なのは1で、理想的には、椅子にふんぞり返って人差し指を一回動かすごとにザクザク金が入ってくるようなシステムを作ることだと思う。

じゃあどうするかというと、お客が大枚払ってくれるような(あるいは払わざるを得ないような)新しいサービスを考案するしかない。無論それが今のビジネスの延長線上にあるとは限らない。

と書くと、すごい当たり前の話になってしまうんだけど、経済学的文脈で「生産性」とか「イノベーション」とか出てくると何やら高尚な話になってしまうんですよね。
でも、経済学の教科書をいくら読んだところで生産性向上のアイデアが生まれるとは思わない(経営学の教科書ならまだしも)。結局のところ、みんなが自分のリアルなビジネスの中で知恵を絞るしかないと思う。
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