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城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

好き嫌い 22.9.10

2022-09-10 15:28:58 | 面白い本はないか
 昨日朝小雨の中、傘を差し城台山に出かけた。戻ってきて、2階で小田嶋隆「超・反知性主義入門」(昨日県図書館で借りてきたばかり)の本を読んでいたら、家内が深刻そうな顔をして、「お父さん、どこか怪我していない。キッチンの床に血らしいものが付いているよ」と。早速、見に行ったら、血痕がかなり残っている。よく見ると、赤い豆粒のようなものがあった。自分の足をチェックしたら、そこには出血の跡が残っていた。やられた!!明らかに山ヒルにやられた跡で、豆粒はヒルの亡骸だった。3600回、12年以上登っているけれど今までヒルにやられたことはなかった。付近には沢はないので、鹿かイノシシが運んできたものであろう。やはり雨の日には、ヒルはどこでもいると思って、注意したほうがよい。

 ところで誰でも好き嫌いはある。政治家の言動には基本的に無関心なことが多いが、安部さんについては、反安部の立場に立つ著者の本をここ10年以上にわたり読んできたこともあり、気になる人物であることは間違いない。安部さんについては、女性による戦犯法廷についてNHKの番組編集に介入したあたりから自民党の右派として知ることになった。もちろん個人的に嫌いであっても、安部さんが国や国民のために良いことをしてくれていたなら政治家として評価しないわけにはいかない。特に国葬ともなると政治家としての安部さんを勉強した方が良いと思って、今回アジア・パシフィック・イニシアティブ「検証 安倍政権ー保守とリアリズムの政治」(文春新書)を買って読んでみた。
この本は、中北浩爾一橋大学大学院教授を始めとした大学の先生によって書かれている。そして安部、菅、岸田さん等54人へのインタビューの結果が織り込まれている。この本の内容を思い切り要約すると意外なことに安倍政権を評価する論考が多いことがわかる。

 書評ではバランスが取れた本とあった

 長期政権になった理由として、中北教授は、①首相官邸を中心に政府与党を含む求心力が強いチームを構築した、②安部首相の政治的リアリズムー右派の政治家であり、それゆえ心情を同じくする政治家や言論人、団体、有権者の強固な支持を受けていた。同時に第一次政権の反省を踏まえて、理念よりもプラグマチックな政権運営に努めた。政権の性格として、政治姿勢は保守そのものでありながら、政策は多分にリベラルな色彩を帯びるケースもあり、評価を難しくしているとしている。安部政権の特徴は、何よりも戦略と統治のありようにある。国のあるべきビジョンを明確にし、積極的にアジェンダ(このアジェンダ、看板の書き換えが頻繁に行われたように思われる)を設定し、それを能動的に遂行しようとした。その過程では現実主義的かつ実務的な取り組みを旨とした。

 個別の政策ではまずアベノミックス。前例のない金融緩和と財政支出と規制緩和などであったが、途中の二回の消費税の引き上げなど必ずしもリフレ派の意向にそってはいなかったが、いまだに2%に物価上昇率は実現できていない。欧米ではコロナ後の反動(大幅な金融緩和と財政支出の反動)によりインフレが進んでいるが、日本の物価は2%まで上がっていない(欧米との金利差、日本の衰退?などにより円安が進んでいる。)。非正規労働者の雇用は増えているが、賃金はなかなか上昇せず、相変わらず消費は弱いままである。TPPではアメリカが離脱後も、アメリカ抜きの交渉を進め妥結した。結果日本のFTA(自由貿易協定)でカバーされる貿易量は増大した。

 海外では外交・安全保障政策に対する評価が高い。韓国では政権への批判が最後まで強かったが、中国では退陣に際し、中日関係は近年、正常な軌道に戻り、新たな発展を遂げた(おじさんには外交辞令にしか聞こえないが)。選択的夫婦別姓制度についてはアジェンダとして取り上げなかった(支持母体である右派が支持しない)一方で、女性活躍できる環境を整える(「ウーマノミックス」というらしい。人口が減る中で経済を回すためには女性の活躍が必要という少し功利的な政策?)ことに傾注した。また10%の消費税率の引き上げとバーターで幼保無償化を実現した。安部さんが最も実現したかった憲法改正(妥協の末「自衛隊の明記」という一点に絞った)だったが、2012年の野党時代に自民党がまとめた憲法改正案(おじさんには随分復古的、時代錯誤的な改正案にしか思えないが)を支持する党内外の勢力があり、実現できなかった。

 最後に反安部の論客を紹介する。今年急逝した小田嶋隆著「日本語を取り戻す」から引用する。この著者は、新型コロナ禍の中にあって安部さん、菅さんどちらも言葉を扱うはずの政治家が言葉を発しないことにあきれかえる。メルケル、ジョンソン、あのトランプさえテレビ演説を行い国民に対し理解を求めた。一方、日本の国の政府の人間は、テレビの画面に出ることを極力避けようとしている。記者会見では質問を打ち切るし、臨機応変な記者との受け答え自体をあらかじめ拒絶している。さらに安部氏の政治手法にいらだつ理由として、私の目から見て、政治家というより扇動家(アジテーター)に見えるからなのだと思っていると。「日本を取り戻す」「戦後レジームからの脱却」などを叫ぶのだが、その内容がはっきりしない。安部さんは保守を自認しているが、このスローガンから見ると保守ではない。これ故に安倍政権への支持率が若年層において高い理由となっている。安倍政権は外交と経済をしくじり、政治的に失敗しただけではない。より重要なのは、彼らがこの国の文化と社会を破壊したことだ。

 日本で反政府の立場で発言し続けることの徒労感はますます強くなるばかりである。この著者が急逝したのもこのせいかもしれない。
 政府べったりの主張をしているのは楽であることは間違いない。

 私は、小田嶋氏の言っていることに全て賛成するわけではないが、国会の委員会で首相でありながら低級なヤジを飛ばしたり、立ち会い演説会で反安部の聴衆を批判するような度量のない人間がするようなことをしたことに失望するのである。かなわないことであるが、多くの国民が尊敬できる(もちろん主張や考えが違っていたとしても)政治家であって欲しかったと思うのである。

バラの秋剪定 22.9.5

2022-09-05 14:03:39 | バラ、クレマチス等
 台風が接近中である。予報によると日本海を進む予定であるから、中心からは外れているが、強い雨や風には注意が必要である。朝6時頃、トマトの雨除けをばらし、ナス、シシトウ、ピーマンの収穫と枝を支柱に結びつけた。ナスが大きくなると、裂果してしまう。雨ばかり多いせいなのかよく分らない。このため少し小さいが、裂果する前に収穫した。一方、米なすは好調でなりつづけており、実が大きいので枝が折れそう。これも早めに収穫する。
 城台山に散歩の後、昨日の剪定に続き、今年最後の追肥を行った。剪定の模様から話しを進める。
<剪定前>

 まだ花が咲いている 蕾、新枝もたくさん出ている このまま放っておいても良いが、そうすると9月中に全て咲いてしまうし、花も小さい

 ジーンレックス(イングリッシュローズ) 今年3回目?

 今年は雨が多いせいか背丈が高いバラが続出
<剪定>
 秋の剪定は背丈の三分の一程度カットすると書かれている。ただし、私の本ではつるバラ、ブッシュ系のバラは剪定しないとなっている。しかし、これだとブッシュ系のイングリッシュローズは剪定しないことになってしまう。これでは踏み台に載らないと花は見えないし、台風などによる強風に弱い。このため背丈の高いものはかなり剪定した。問題は葉が少ないバラで、これらは葉をできるだけつけて剪定した。

 前のアンブリッジ・ローズとその後のエブリン(いずれもイングリッシュローズ)毎年葉が著しく落ちる。これらは少しだけ剪定した。

 剪定後 花や蕾、新枝はほとんど切除

 背が伸びていたギー・サヴォア(フレンチローズ)、タッチ・オブ・クラス、グラハム・トーマス(イングリッシュローズ)などはかなり切った

 そして今日、株から30cm程度離してぐるりと溝を掘り追肥(150g)を行った。鉢はそのへりに少し溝を掘り50g程度肥料を投入した。以上で秋の剪定作業は終わりである。10月頃、果たしてきれいな秋バラが咲いてくれるであろうか。

 
 クレマチス ジョセフィーヌ 最近花がたくさん咲いてくれない

狼の義ー新犬養木堂伝を読む 22.9.4 

2022-09-04 19:52:18 | 面白い本はないか
 8月10日NHKBSプレミアムで再放送された昭和の選択「立憲政治を守れ!犬養毅"憲政の神様”の闘い」を見ていた時、出演者に堀川惠子さんが出ていた。「狼の義ー新犬養木堂伝」の作者という紹介だったが、検索すると数々のドキュメンタリー賞を受けていた。どの作品も読んでいない。そこでまずは、この木堂伝から読んでみることにした。県図書館で借りてみると、分厚く470ページもあった。読むのが遅いので、少々時間はかかったものの本日読み終わった。まずは、あとがきを読んでみた。この本は、林新と堀川惠子の共著となっているので、このような伝記物で共著というのはあまり見たことがなかったのだが、あとがきにそのわけが書かれていた。二人は夫婦であり、林氏が10年あまり資料を集めて書き始めたのだが、半ばで病に倒れ、その遺言で堀川氏が書き継ぐことになった。


 あとがきでこの本に込めた思いを書いているので引用する。本書の執筆は、犬養と古島(古島一雄 私も今回初めて知ることになったジャーナリストで、後に衆議院議員になった。犬養を支えた人物である。政界を引退してからも吉田総理の指南役として活躍した。)の二人を通して、近代日本における立憲政治の中で本当の保守とは何か、真のリベラルとは名何かという問いを突き詰める旅となった。昨今、政党政治は混迷の度をいよいよ深め、犬養が何より大切にした政治家の倫理も崩壊の危機に瀕している。私欲を排し、国家の行く末を真剣に考え、命を削る覚悟で政界を生きている政治家は、果たして何人いるでしょうか。

 この本は、とっつきにくいこの時代(明治から昭和)をよりわかりやすくするために、小説的な方法で書かれている。このおかげで大部であるにもかかわらず、読みやすい本となっている。この本は、昭和27年米寿となった古島を祝う席で犬養について思い出を語るという形式で始まる。犬養は、慶應義塾に通っていたのだが、実家が貧しく、郵便報知新聞に原稿を寄せて学費を稼いでいた。そのとき勃発した西南戦争に文章がうまいからということで、アルバイトながら戦地に放り込んだ。今なら従軍記者と呼ばれるのだが、当時は「戦地探偵人」、他の新聞社の記者は後方で記事を書いていたのに対し、犬養は泥んこになりながらも前戦から記事を送り続け、これが民衆の間で大評判となった。この戦場で出会った将軍たち、三浦梧楼(駐韓公使として閔妃暗殺に関わったくらいしか知らないのだが、山県ぎらいであり、なかなか骨太の人物)や谷干城について詳しく書かれている。西郷隆盛への思い断ちがたく、後年隆盛の墓を訪れている。

 明治23年(1890年)にいよいよ帝国議会が創設され、政党を中心とした政治が動き出す。大隈重信を代表とする改進党に犬養は加わる。一方の自由党は板垣退助。この民選がわの両党と政府との闘いは激しい。どちらにも議会政治というものが理解出来ていないから、政府による買収、院外団の壮士による暴力など日常であった。改進党は、進歩党、憲政本党、国民党、革新倶楽部と名前を変えていくが、ほとんどは万年野党の地位にあり、指導者の犬養の金銭に潔癖、信念に忠実ということが災いして所属する議員も少数。政友会との合同では、木堂が貧乏に耐えかねて変節した、あるいは政友会から金をもらい党(革新倶楽部)を売ったと批判された。この合同のあと犬養と古島は政友会を去るのだが、総裁の田中義一が亡くなったことから、犬養にお鉢が回ってくる。このとき犬養74歳。そして若槻内閣の後継として犬養に大命が下る。早速中華民国に密使を派遣する(亡命中の孫文と深く関わった)が、軍部及び軍部寄りの外務省に阻まれ、関係回復はできなかった。満州国の承認を認めず、軍と対立し、1932年5月15日5・15事件で暗殺された。この後、政党政治が復活することはなかった。

 犬養はいつも高利貸しに追われていた。自分のためではなく人のために使った金のためである。藩閥の中心にいた山県や伊藤などの門をくぐったことはない。犬養の天敵となった原敬とはこの点大きく違う。原は山県とうまくつきあいながら政友会を大きくした。こうした芸当を犬養はできなかった。借家生活から抜け出したのは、70歳に成り、勲一等旭日大綬章を受け、終身大臣待遇となり、740円の年金が支給されるようになり、初めて自分の家を建てた。最後に関わりのあった重要な人物として、井上毅(こわし)と植原悦二郎をあげよう。井上からは密偵を送られ、その行動が逐一井上に報告されていた。井上は帝国憲法、皇室典範、教育勅語、軍人勅諭にかかわった。しかし、頑迷な国家主義者ではなく、ドイツ式の立憲体制を志向した。植原は、明治大学教授などを経て、犬養に心服して、政界に入り、戦中は東条英樹に非戦論を説くなどして、冷や飯を食ったが戦後吉田内閣で日本国憲法の制定に深く関わった。

 以下はおまけ。戦前、国葬となった人物で皇族や旧藩主以外を列記してみる。さらに出身の藩、死亡理由等を括弧書きで示す。
 ◯大久保利通 (薩摩藩、暗殺)
 ◯岩倉具視  (公家)
 ◯三条実身  (公家)
 ◯伊藤博文  (長州藩、暗殺)
 ◯大山巌   (薩摩藩、陸軍大将)
 ◯山県有朋  (長州藩、元老)
 ◯松方正義  (薩摩藩、元老)
 ◯東郷平八郎 (薩摩藩、海軍大将)
 ◯西園寺公望 (公家、元老)
 ◯山本五十六 (長岡藩、海軍大将)
 そして戦後、吉田茂と安倍晋三(予定)である。吉田茂の国葬を決めたのは佐藤栄作、吉田は妻の父が牧野伸顕(その父が大久保利通)であるから長州と薩摩両方と関係が深い。阿部晋三はもちろん長州である。戦前、戦後を通して、藩閥政治は今も生きていると思ってしまうのである。ただし、国葬とはなっていないのだが、国費が支出されているものが意外と多い。

 戦後のことなどで犬養の他に現職中に暗殺された原敬、浜口雄幸はいない。藩閥政治の時代とはいえ、安部さんには悪いが、政治家の資質を考えた場合、随分不公平だと思わず思ってしまう。