城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

複雑な世の中 20.12.6

2020-12-06 21:20:19 | 面白い本はないか
 アメリカ大統領選の結果は判明したものの、まだしばらくは混迷しそうだ。そして、韓国との関係も複雑にもつれ、とても簡単には解決しそうもない。国内問題でも、維新の会の掲げる大阪都構想も否決はされたものの、まだ続きがありそうである。少子化問題でも政府の掲げる出生率1.8など到達できそうにないばかりか、目標達成のための政策に少々手詰まり感があるように思える。要するに各課題について、それをもたらした様々な要因があり、少しの弥縫策では到底解決することができないということである。これをすればすぐに事態が解決するなんてことはポピュリストの発言や単なる無知の政治家や評論家の戯言しかならないことに我々庶民は注意しないといけない。この頃いろんな本を渉猟していて感じるのは、庶民が正しく物事を判断できるような参考書を見つけることがますます難しくなっているのではないか。頭も時間も限られている庶民であれば、正しい判断の基準となるような本と出会うことが本当に必要である。

 5日土曜日昼過ぎから貝月山に避難小屋から登った Eさんが作った山名板(標高が書いてある)

 アメリカの大統領選を見ていると国民の政治への参加という点においてトクビルが指摘しているような草の根の政治参加の根強さに驚く。しかし、一方で候補者によるネガティブキャンペーンに多大な影響を受けていることも事実である。果たしてこのような誹謗中傷が国民の利益になるとは思われない。ではいつからこうした傾向が激しくなったのだろうか。久保文明・金成隆一著「アメリカ大統領選」(岩波新書)のスティーブン・レビッキーハーバード大学教授とのロングインタビューに出てくる。1970年代アメリカの二大政党は文化的、人口統計学的にとても似通っていた。いずれも白人のキリスト教徒が大半を占めていた。しかし、その後の50年間に三つの根源的変化が起こった。①公民権運動により、南部の白人が民主党から共和党に大移動した一方で、新たに選挙権を得たアフリカ系アメリカ人の大半は民主党員となった。②ラテンアメリカからさらにはアジアから大量の移民が来て、移民とその子孫の大半は民主党員となった。③それまで両党に支持が半々に分かれていたエバンジェリカル(原理主義の)キリスト教徒が80年代のレーガン政権以来、圧倒的に共和党支持となった。こうした三つの変化の結果、両党の違いが大きくなった。民主党は都市で暮らす世俗的で教育を受けた白人、ラティーノやアジア系、アフリカ系というエスニックマイノリティ、性的少数者。共和党はほとんどがキリスト教徒で、白人キリスト教徒の支配的な社会的地位の失墜を煽った共和党指導者(選挙にどんな手段を使っても勝つという考えの)。アメリカの全般的な経済的地位の低下、さらにはデジタル経済化などによる中間階層の没落(低所得層と高額所得層への二極化)さらには移民政策による人口構成の変化(近い将来白人の人口が50%を割る)などがこれらの変化をもたらした。

 伊吹山 琵琶湖が光って見える

 次に韓国との関係。新聞の広告欄で容易に気づく嫌韓・嫌中の雑誌や本の氾濫、さらにはネットで繰り広げられるそうした言説。一体、このような中で様々な課題が解決できるであろうか。かつての近衛首相の「国民政府を相手とせず」声明と同じように韓国を無視しようという声が高まっている。特に強制徴用についての韓国最高裁の判決は日本ばかりでなく、韓国政府の立場を非常に難しくしている。日本は日韓基本条約で既に解決済みとの一点張りでその後の貿易の制限まで踏み込んだ。こうすれば韓国は考え直すだろうとの目算があったのであろうか。そうした中でも水面下での様々政府間交渉は行われているであろうと希望的観測をしているが、両国の国民感情というのが解決を余計に難しくしている。松竹伸幸著「日韓が和解する日」(かもがわ出版)は、韓国の求めているのは韓国併合の違法性=植民地支配の違法性を問題にしていることを強調している。欧米諸国も過去の植民地支配を違法とは認めていない状況の中で韓国が世界を動かし、日本国民ばかりでなく世界の国々にその違法性を訴えなければならないと言っている。文大統領はマンデラにならなければならないと。

 金糞岳

 最後に少子化対策。90年代のエンゼルプラン以来、様々な少子化対策を政府は行ってきた。初期はどちらかというと保育所の整備とか育児休業制度の整備に重点が置かれた。しかし、20年以上経過しても、少子化が改善する兆しはない。今言われているのは、男女ともの未婚化の増加である。ではなぜ未婚化が進んでいるのであろうか。まずは、低所得の若者が増え、将来に対する不安があるであろう。欧米(イタリア、スペインなどラテン系の国を除く)では高校を卒業すると自立を求められ、親の家を出る、そして、生活のリスクを低くするため、同棲する。政府でも家庭政策(住宅政策、育児支援等、様々な家庭の形があることを前提としている)が手厚くこうした若者を支援する。日本やラテン系の国では親の家に卒業後も住むことを選ぶのがリスクの低減となる。そして家庭政策は薄く、同棲カップルに対する支援も少ない。また、日本では結婚し、子どもを持つことが将来の親にとってかなりのリスクを持つ。まずは父親が協力しない子育て(父親は忙しすぎる)、教育費が高い(公共の教育支出が少ない)、さらに離婚しなければならなくなった時に陥る貧困(片親家庭の貧困率は非常に高い)がある。こうした様々な要因が未婚化につながってくる。この問題を解決することは相当に難しいと考えざるを得ない。山田昌弘著「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか」(光文社新書)が参考となる。

 国民の分断をもたらすような問題として、さらに移民、難民の問題がある。移民の問題は欧米において右派政党の興隆をもたらしたし、イギリスではEU離脱につながった。果たして、日本の分断は進むのであろうか。中間階層が今後没落し、一部のエリート層と底辺層の二極化が進むかもしれない。そして、その底辺層の支持を受けた新たな政党が生まれるかもしれない。
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