女と女と井戸の中
1997
Samantha Lang サマンサ・ラング
もの凄く力のある監督さんだと思います。
普通にやったら三流サスペンスになってしまいそうな本を、情緒面だけを描くことに特化して映像に落とし込んでいます。
しかし、作品としてはそれほど面白いモノにはなっていなかった。
それはプロットの話。
監督はそのプロットから抽出しまくって本作のようなスタイルに落とし込んでいます。
制作サイドはこんなもん売れるのかとヒヤヒヤしたんじゃないでしょうか。
本編ですが、ある親子の話です。
親と娘の心の交流が一切無い。有るように見えて無い。無いように見せて有るように思わせるも、やっぱり無い。
あったとしても上っ面。
全てお互いを思いやったという自己満足のすれ違い。
同時に、オーストラリアという文化的に遅れているという背景を上手く使っています。
母の好む宗教的な音楽と娘の好きなガールズバンドの対比がそのまま親子関係に。
昨日見た「さよなら、さよならハリウッド」ではアレンと息子のジャズvsパンクという図式がありましたが、これは成熟してしまうとお互いに歩み寄れる部分がある。
しかし、本作の背景ではそこまでの成熟はない。
かなり邦画に近い感覚で見られます。
オーストラリア映画と言うことで景色があまりにも異色なので外国映画なのですが、この映画のエッセンスは邦画に必要な部分だと思います。
画作りも相当こだわっている。大げさすぎるかもしれませんが、あまり見たことのない風景の連続。
娯楽としてはあまり面白くないかもしれませんが、画面がブラックアウトした瞬間に監督の思惑が見える映画です。
ある意味、文芸作品です。
デートで観る映画じゃありませんが、好きな人は好きなんじゃないでしょうか。
ハラハラドキドキのサスペンスじゃありません。
私は好きです。もう一度は観ませんが。
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