大日本人
2007
松本人志
最低の『映画』です。
・・・が!松本人志は紛れもないお笑いの天才です。
そういえばガキの頃、毎週土曜日の「夢で逢えたら」を毎回録画していました。「浪速の浴衣兄弟」何度も観ました。
実家には120分テープにLPモードで録画したテープが10本はあります。
多分、この作品には松本人志の悪意と善意の両方あるのだと思います。
買いかぶりかもしれませんし、本人の意向とは全く違うかもしれませんが。
インタビュー記事とか一切読んでませんし。
自分はコメディアンであって映画監督ではないということを大げさにアピールしたのではないのでしょうか。
「コメディアンが畑違いの映画撮ってんじゃねぇよ」という外野の言葉をあっさりと黙らせる。
「金はいくらでも出すし、カンヌ獲っちゃうかもよ?」という企画側の思惑に対して「やっても良いけど責任はそっちがとれよ」というやりとりが感じられます。
松本人志はコメディアンで、映画人ではないし、映画は好きだけど、映画を作る側の人間ではない。
多分、松本人志本人は映画は好きだけれども、自分は映画をやるべき人間ではないと思っているのではないでしょうか。
けれども、周りの金儲けしたい人間がはやし立てる。
そういう企画を立てた人間を社会的窮地に追い込むまでの最低の映画を撮ろうとしたのではないでしょうか。
10億円という邦画では希に見る巨額の制作費と、マスコミを挙げてのPR。
さんざん金を使わせて出来上がった『映画』は最低のフィルム。
デカイスクリーンで上映された『コント』。
無理矢理『映画』に迎合しないで自分の持つボキャブラリーで勝負する。
フィルムに焼き付けたのは芸人松本人志の生き様だったのではないでしょうか。
お笑いの枠を外し、文芸の枠も無視した彼にしかできない『芸』。
『映画』に迎合してしまった北野武にもなしえなかった境地。
役者としての北野武は随分と壊してくれましたが、監督としては『映画』の枠に収まっています。
まだ「監督ばんざい」は観ていませんが、もしかしたら同じベクトルなのかもしれません。
「よく分からないものはとりあえず良いと言っておこう」病への良薬では。
本作を観てこの程度の感想しか持てない自分が凡百の人であるということを思い知らされました。
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未見ですが、なんか落ちそうでどうもモチベーションが上がりません。