NANA(ナナ)
2005
大谷健太郎
150%原作の力で、-100%があらゆる力関係でスポイルされまくったアウトプットが本作ですね。
イヤ、好きですよ。この映画。
ヘタに音楽を絡めない少女漫画作品であったのならと惜しい気持ちです。
物語自体はベタな女の子世界で、宮崎あおいの恋敵の行動が全てオチになるという驚異の演出。
2回目以降の登場シーンではほとんど出オチ。
最高だったのは、終電間際の階段で女がコケるシーンでの台詞。
小泉「なんで走るの分かってそんな靴履いてくるんだよ!」
女「わざとだよ・・・」(やや震え気味の声で)
爆笑です。
まさか現代に於いてこんな台詞回しを見せてくれるとは。
このクオリティは「東京ラブストーリー」での関口(有森也実)を彷彿とさせます。
しかし、その部分で魅せてくれても音楽が絡んでしまうとドン引き。
もったいないですね。
音楽なんて視聴者個人の趣味が一番出てしまうところなので危険すぎる小道具です。
多分、原作からしてパンクバンドという設定なのでしょうが、映画化するにあたってそれをロックバンドに変えることはやっぱりできなかったんでしょうか。
見終わって思ったのは「音楽関係ないじゃん」ということでしょうか。
原作を読んでいないので失礼かもしれませんが、これって吉田秋生の名作漫画「BANANAFISH」(バナナフィッシュ)でのアッシュと英二が2人のナナになっているお話ですね。
同姓に対して恋愛にも似た感情でお互いをフォローしまくる。
実際の音が流れない漫画でしか成立しないんでしょうね。
最近よく思うことが、たかだか2時間程度の映画の場合、描きたいことは絶対に一つに絞らなければいけなくて、そのテーマを助けるための背景であればフィクション当然で事実をねじ曲げてしてでも作り込まなければいけない。設定を小道具化して、そこに対しては下手な勘ぐりを抱かせてはいけない。
本作で上手かったのは小道具・衣装があまりにも女の子ワールド。アレで女の子が萌えるのか謎です。
立ち入ってはいけない男子禁制の世界。
ところで、漫画の「BECK」(漫画)は多分映像化してはいけなかった作品では。未だにアニメ観てません。怖くて。あちらは完全に音楽無くしては成立しないお話ですし。
宮崎あおいがもしこの作品が初主演であったら、その辺のCMアイドルと同じくお飾りとしての役しかつかなかったかもしれません。
今までの映画の中での立場を全く無視した起用に腹も立ちます。アレじゃ実在しない美少女です。かわいらしい笑顔満載でソノ筋としては楽しめますが、今まで培ってきた「むくれ面芸」が台無し。中学生のような棒読みモノローグは健在なのが救いです。
そして大谷監督の起用はどんな意図があったのでしょう。
PFF上がりで「アベックモンマリ」を撮った作家性ゴリゴリの監督にオファーする内容じゃ無いと思います。
大谷監督はどちらかと言えば大げさなエッジのある芝居を撮るのが上手い監督さんだと思うのですが、それが生きていない。
ライブシーンなんて酷い有様。やっつけ感満載。
正確なスタッフィングをして脚本をもっと練ればもっと良い映画になっただろうなと思うともったいない限りです。
「何も解決しないでも女の子はその瞬間を生きていける感」を最前面に出さないエンディングであってほしかった。
この思考が蔓延すると男の立場が完全に無い。少女漫画原作なのでやむを得ないのかもしれませんが。
宮崎あおい側のナナがボロクソな過去を成長しないまま悶々と引きずって欲しかった。
2に期待します。
結構ボロクソに書いていますが、本質的にこういう話が好きですよ。
原作お持ちの方がいたら貸してください。
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私、映画は見てませんし、原作も立ち読み程度ですが、
原作は「思ってたのより大したもんじゃないや。ほんとに超人気作品なの?」という感じでした。
軽ーくりぼん読者だったので、矢沢あいは好きな方ですが、それでもそんな印象。
漫画のままで良かった気がします。。。
というか、宮崎あおいが出ているとあれば。
原作ありきの映画化は難しいね。
この映画が人気作品と言われたのはそう言わざるを得なかったマスコミさんのおかげ。
正直、宮崎あおいのPVとしても失敗だと思いますよ。