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映画【ビッグ・フィッシュ】

2008-03-08 23:30:03 | 映画
 
 
ビッグ・フィッシュ
2003
Tim Burton(ティム・バートン)


面白可笑しい作り話だけを話す父と、それに困惑し続けた息子。
それがきっかけで息子は父と距離を置く。
父は空想のお話を話し続ける。
しばらくの時間が経ち。
死にかけた父は息子を前にしていまだ作り話を話す。
息子が父の死の淵で父をと話す言葉とは。

傑作です。
問答無用です。

本作をしてファンジーと現実の境界線を求めるのは全くの愚問。
ファンタジーとは人間の中にあるモノで、それは想像力がもたらすもの。
もしかしたら人との関係の中で初めて生まれるモノかもしれません。
人間関係で最も重要なのは『相手のことを感じる』という想像料。
誰かへ届けたいという想いこそがファンタジーであって、一人で夢想する空想は幻想に過ぎない。
そう考えると、誰かへの到達を想った作品は全てファンタジーであるということになる。
表現=ファンタジー。
コミュニケーションの手段は全てファンタジー。
結構良いこと言えた感アリですが、如何でしょう。



ティム・バートン節のグロテスクなクリーチャーが舞い踊る映画。
決して幸せなファンタジーではないはずのファンタジー場面。
しかし、この物語を終曲で素晴らしいファンタジーにしてしまうラストの素晴らしいシークエンス。

本作は、実は1シチュエーションでの物語だったのだと最後に気付きました。
父と息子の人生の回顧録であって、死の淵にある父への冥土の土産の様な息子の言葉が本作の全てです。
映画としての画面の作りは全く違いますが。そこにそれまでの画面が結実する感覚は凄まじい。

ある種の伏線回収モノと言ってしまっても過言ではありません。
しかし、この回収の仕方は尋常ではないグッと来る話に帰結。

この映画のラストシーンはそれまでの豪華な映像に比べて異常なほどに地味。
しかし、父が息子に語ってきた人生(生き方)を観てきた本作の鑑賞者にとって、これほど素敵なラストはありません。


お涙頂戴モノかもしれませんが、いくらでもくれてやりましょう。


恥ずかしながら初見でした。
未見の方、これは『xxxx年最高傑作』とか煽ってくる凡百の映画を観るより先に是非ともご覧下さい。

映画【華氏451】

2008-03-08 02:23:57 | 映画
 
 
華氏451
1966
Francois Truffaut(フランソワ・トリュフォー)


禁書焚書が徹底された近未来を描いたレイ・ブラッドベリ原作のSF小説をトリュフォーが映画化。
ただの大げさなSFに走らず、センチメンタルな作品です。
ラストシーンは「これは本当にSF作品か?」と思うほどの美しさ。
しかし、この美しさをもってこそのSFなんですね。
ちなみに、本作のタイトルである「華氏451」というのは紙に火が発火する温度。


あるはずのない世界を見せてくれるのが映画です。
その中でもSF作品が最も映像に比喩的な美しさが求められるものです。
これは好き。
傑作です。

お話としてテーマの面白さも、映像のクオリティも昨今の映画に全くひけをとりません。
もちろん、「トランスフォーマー」あたりの無内容アクション映画と比べてではありません。
見た目の派手さということではなく、物語の突拍子の無さ。
しかし、そこにいる人間の想いで映像に色を付ける。
これが映画というものですか。


66年制作と言うことで、ロケは全て当時の建物だと思うのですが、それが何故か焚書の世界が似合うモダン建築。
ポストモダン以前の全てを合理化しようとしていた世界の片鱗が垣間見えます。
ゴダールのSF作品「アルファヴィル」も同じく65年のパリで撮影されています。
SFには既に過ぎた世界への回顧という趣も持つという発見がありました。


それにしてもラストシーンは美しさと言ったら・・・。