シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

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iPod を支えた iTunes ~ アップル社を創り、追い出され、戻った男の伝記6

2015年11月02日 | アート/書籍/食事
上左から初代 iPod (2001年)。 iPod mini 第1世代 (04年) とそれに搭載された 1インチの HDD。  iPod shuffle の第4世代 (10年)。 下左から iPod nano 第1世代 (05年)、第2世代 (06年)、第3世代 (07年)。 iPod touch 第5世代 (07年)。 第6世代 iPod classic (07年)。
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iPod の大ヒットは、ハードとしての魅力だけがその要因ではありません。 それを活用するためのインフラ整備がありました __ iPod より前にリリースされた iTunes がその内容を拡大していったからです。 その変遷を辿ると、これをジョブズ以外の人がなし得たかと考えると、できなかったと思いますね。
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2001年1月 ジュークボックスソフト iTunes をリリース。
2001年10月 携帯音楽プレイヤー iPod を発表。
2001年11月 iPod をサポートする iTunes をリリース。 iPod を発売。

2003年10月 Windows 対応 iTunes をリリース __ ウィキペディアから。

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iPod ユーザーが新曲を入手するには、CD を買うかオンラインでダウンロードするしかありません。 後者の場合は、ファイル交換や海賊盤などの薄気味悪い世界に踏み込むことも多かったのです。 また 従来の音楽業界も様々な海賊盤に苦しんでいました。

2002年1月 ソニー音楽部門はユニバーサルと協力し、月額制の音楽配信サービスを始めます。 AOL タイムワーナー/ベルテルスマン/EMI はミュージックネット社を創設し、双方のグループも相手側に楽曲のライセンスを与えず、音楽勢力は二分されます。 どちらもストリーミングできるが 曲を手元には置けず、契約期間が終わると曲を楽しめなくなるというものでした。

ジョブズは iTunes ストアを作り、デジタル化した楽曲を販売できるように説得します __ このサービスは市場の 5% でしかないマッキントッシュのみが対象だからと (この提案が “クセ者” だったことが後で分かります ※)。 提案は1曲 99セントという衝動買いできる価格にし、レコード会社の取り分は 70セント。 また 最大の争点はアルバム単位でなく、1曲単位としたことです。 レコード会社は人気曲2~3曲に10曲ほどを繋ぎ合わせてアルバムにすることで収益を上げていたからです。

2002年3月 ジョブズは AOL タイムワーナーを説得すると、ユニバーサルの攻略に向かいました。 レコード会社だけでなく、デジタル配信にはアーチスト本人の許諾が必要だったり、アルバム曲をバラ売りできない契約が多かったから、ジョブズは有名ミュージシャンも承諾を取り付けて歩きます。

2003年4月 SF コンベンションセンターで ジョブズは iTunes ストアを発表しました。 ストア責任者は6ヶ月で 100万曲が売れると予想しましたが、現実は6日で達成してしまいます。

2003年7月 ソニーはソニーコネクトという、iTunes と同じように楽曲をオンラインで販売し、ソニーのポータブル音楽プレーヤーで再生できるようにするサービスを立ち上げましたが、3年で終了してしまいます。
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ジョブズとの交渉に時間の大半を費やしてきた ソニーの音楽部門トップが、2003年4月 クパチーノ経由で東京へ向かい、出井 CEO やストリンガー北米ソニー社長や 200人のマネジャーを前に最新型の iPod を取り出し、「これがウォークマンキラーだ。 君たちならもっといいものが作れる」と発破をかけます。

ところが ハード、ソフトそれぞれに素晴らしい部門を抱えていたはずのソニーが、部門毎の独立採算制を採用していたために iPod を超える製品を作れませんでした。 アップルはいい意味でドンブリ勘定だったので、部門毎の損益を気にする必要がありませんでした。 また ソニーは “共食い” を心配していたのです __ デジタル配信するとレコード部門の売上が減ると。

これに対し ジョブズは共食いを恐れない。 iPhone を出せば iPod の売上が減るかも、iPad を出せばノートブックの売上が減るかも、と思っても突き進む。「自分で自分を食わなければ、誰かに食われるだけだからね」__ いずれにしろ ソニーが逃がした魚は大きかった!
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“宿敵” マイクロソフト (MS) はアップルにどう対抗したかというと__Windows Media Player やデジタル著作権管理技術のライセンスを他社に与えようと考えました。 これに対し ジョブズはアップルの FairPlay を機器メーカーにライセンスせず、iPod でしか使えないようにします。
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FairPlay (フェアプレー) は、QuickTime マルチメディア技術に内蔵され、iPod、iTunes、及びiTunes Store によって使用されている デジタル著作権管理 (DRM:Digital Rights Management) 向けに、アップル社が名付けた名称である。 iTunes と共に iTunes Store から購入したそれぞれのファイルは FairPlay と同時にエンコードされている。 また同社の携帯音楽プレーヤー・iPod シリーズはこの方式のファイルをスムーズにシンクする (ウィキから)。
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そういうやりかたは、アップルが次第に市場を失って行くと予想する専門家が多かったのです、80年代の PC と同じように __「アップルが今後も独自アーキテクチャーにこだわるなら、iPod はいずれニッチ製品となるだろう」(クリステンセン教授/ハーバードビジネススクール)。 MS のゲイツも同じことを主張しますが、これらの予想は当たりませんでした。
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最初の iPod の派生商品は、2004年発売の iPod mini です (冒頭写真上左から2つ目)。 初代 iPod よりも一回り小さい名刺サイズで、容量が小さいのに価格はほぼ同じだった __ 初代 iPod は 5GB で当初 $399 が02年には $299 値下げされたのに対し、2004年発売の iPod mini は 4GB で $249 で発売されました。

同価格で小容量ものを買いたい人はいないだろうとジョブズは開発中止に傾きましたが、開発チームを率いるファデルは、「ジョギングやジムで便利だ」とジョブズを口説いたようですね。 事実、mini はフラッシュ内蔵小型プレーヤーを圧倒、iPod が市場を独占します。 mini 発表から18ヶ月でアップルのシェアは 31% から 74% まで急上昇しました。
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2004年1月 アップルは iPod mini を発表した。 これは記録容量が 4GB、価格が $249 である (15GB 第3世代 iPod を $50 だけ下回る)。 評論家は高すぎると酷評したが、圧倒的な人気となり、米国のアップルストアでは発売してから このモデルの在庫を数ヶ月間 確保することが難しく、また日本などの米国外での販売開始が延期されるという事態になり、発売後数ヶ月は入荷すら困難な状態であった。 また 当時はマイクロドライブ単体 (HDD) よりも安価だったため、内部のマイクロドライブを取出し転用、あるいは転売する目的で購入する層も存在した。

マイクロドライブは、日立 GST が製造および販売していた、1インチ径の HDD である。 Type II のコンパクトフラッシュ (CF) カードと同じ寸法の筐体に、組み込んだ製品 (ウィキから)。

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2005年2月 $249 の 6GB 版が追加され、4GB 版は価格が改定され $199 となりました。 2005年9月 後継機種の iPod nano が登場し、それにより iPod mini 生産は終了となります。
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iPod shuffle も画期的でした。 ジョブズが「スクリーンをなくせ」というのです。 聴きたい曲はどうやって探すのかと尋ねるファデルに、「探す必要はない。 ランダム再生すればいい。 記憶されているのは、ユーザーが選んだ曲ばかりだ。 なら 気分じゃない曲をスキップするボタンがあれば十分だろう」と応えます。

2007年 アップルの売上の半分は iPod でした。 2003年4月にサービスを開始した iTunes ストアは大きく成功し、初年度の販売曲数は 7000万曲、2006年2月には 10億曲を突破、2010年2月には 100億曲に達します。

さらに 安全な買い物ができるようにと、アップルは、アマゾン/ VISA /ペイパル/アメリカンエキスプレスなどのサービス会社と協力して、電子メールアドレスやクレジットカード情報を提供した顧客のデータベースを構築しました。 その結果 雑誌の定期購読をアップルのオンラインストアで取り扱うことが可能となります。
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当初は iTunes Music Store という名前が示す通り 音楽配信のみだったが、現在では映画やミュージックビデオ、テレビ番組、Podcast、iPod 向けゲーム、iPhone・iPod touch・iPad 向けアプリケーション配信、映画レンタルなど様々なサービスを提供している。 2010年11月からは iTunes Store Japan でも映画配信が開始された (ウィキから)。
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最後にもう1つ iPod 絡みで伝えたいことがあります。 それは、iPod と iTunes を Windows 対応 としたことです。 もっとも すんなり、これらがアップル社内で決まったのではありませんでした。

最初 ジョブズは反対しますが、側近4人が iPod を Windows マシンでも使えるようにと何ヶ月も説得します。 販売シナリオが幾つも作られ、どれも iPod の販売増を打ち消すほど Mac の販売が落ち込まないという結果が出たことでジョブズも降参します。

そして Windows マシンでも iPod を 使えるなら、音楽管理ソフトとして Windows 用 iTunes も作るべきか否か? ジョブズは「やるならちゃんとしろ」といい張り、Windows 用ソフトなど作ったことのないアップルは、最初 社外から取り入れようと6ヶ月苦闘しましたが、最後はアップル自身で開発します。

Windows 用 iTunes を作るとなると、音楽会社との交渉もやり直すことになります。 各社が iTunes に参加したのは、マッキントッシュという小さな宇宙でしか使えないといわれていたからです ()。 強く反対したのはソニーでしたが、その頃には他のレーベルは iTunes ストアに満足しており、新しい条件を受け入れてしまうのです__ソニーも降伏するしかありませんでした。

2003年10月 SF でジョブズは、「Windows 用 iTunes は、恐らく過去最高の Windows アプリだ」と基調講演で発表します。 ジョブズの辞書に “控えめに述べる” という言葉はないんですね。
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そして もう1つ、超小型 iPod を見ると、ガム2~3枚ほどの容積に充電池や回路を全て内蔵していますが、その中にデジタルアンプが入っています。 デジタルアンプは丁度この頃普及してきた新しいアンプの形態で、それ以前は効率の悪いアンプでした。

MPU や電子メモリはかなり小さくすることが可能ですが、アンプだけは発熱を伴うため 小型化さえすればいいというものではありませんでした。 しかし 高効率のデジタルアンプを採用することで、放熱を考慮する必要はなくなり、かつ充電池の放電持続の長時間化にも貢献しています。

リチウム電池やデジタルアンプがなかったら、すぐに電池切れを起こして 始終充電しなくてはならず、使い勝手のよくない超小型 iPod となり、人気とはならなかったかもしれません。 色々な技術、インフラが iPod 人気を支えているのですね。


__以上が iPod を支える、インフラの話しです。 またデータが貯まったら第七弾を載せたいと思います。


以上

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