昨日 日曜日昼前 衆院選の投票所へ行ったら、何と行列が出来ていた。 ここでは30年ほど同じ投票所へ行っているが、行列を見るのは初めてだ。 それだけ 多くの人がこの国の行く末に大きな関心を持っているということだろう (早くいうと “現政権には愛想を尽かした” と?)。
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日本の通貨 円はリーマンショック後 円高基調となり、今は 1ドル=80円 超えの状態が続く。 具体的には 2009年秋に民主党政権が誕生してからの3年間は、1ドル=95~75円 の間を推移した超円高時代だったといってもいい。
この春2月に 日銀の白川総裁が 1% の事実上のインフレ目標発言を機に一時 円安方向に為替が動いたが、効果は長続きせず 再び 80円 を切る円高に戻ってしまった。
その後 11月末になって衆院選の機運が高まると、安倍自民党総裁の 2% インフレ目標発言が注目を浴び、再び円安方向へと為替が動き始めた。 衆院選が実施されれば、最も首相の可能性が高い政治家の発言だから、マーケットが反応したのも当然だろう。
円高は本来 歓迎すべきことだが、世界中の資金の一時避難先となっていたという要因はあまり歓迎すべきことではなかった。 折しも リーマンショック後の米金融危機と欧州金融危機が重なり、世界の投機資金が比較的安全とされる円に集まってしまった。 いわば 世界の海が荒れ狂い、資金を満載した船が安全な港の日本へ逃げ込んだようなもの。
そしてまた世界の資金は新たな避難場所を求めて、例えば 豪ドルなどへ移動しつつあり、日本の港には代わりに 発電燃料を積んだ船が入港し、貿易赤字が増えるだろう。 それも円安の要因になるが、多くの輸出企業は手取りの円が増え 短期的には歓迎だろう。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
「円安後追い、収益押し上げ 企業の想定為替レート」(12月17日 嶌峰 義清/日経ビジネス) _ ※追加1へ
「安倍総裁まず大型補正予算 “物価目標へ日銀人選”」(12月17日 産経) _ ※追加2へ
「円高是正策、違い鮮明ーー自民、外債基金を創設 民主は急騰時のみ介入 第三極、産業構造の転換訴え」(12月15日 日経) _ ※追加3へ
「超円高の元凶 “小出し緩和”… “無力で無策” なら日銀は無用以下」(9月30日 田村秀男/編集委員/産経) _ ※追加4へ
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
以上
※追加1_ 企業の想定為替レートは実勢レートを後追いする。 日本の金融緩和と米景気の回復で円安・ドル高に向かう。 想定以上の円安が利益を膨らませ、株価押し上げ要因になる。
企業が業績計画の前提とするのが、想定為替レートだ。 通常は実勢レートを後追いする形になり、円高局面では甘めの為替想定が、計画よりも収益を目減りさせる。 これは円安局面でも同じで、決算を締めてみると厳しめの想定レートが利益を増やすことになる。
企業の想定レートは、現時点で 1ドル=79円 から 80円 程度だ。 これに対し 実勢レートは、一時 82円 台まで円安が進んだ。 自民党の安倍晋三総裁による金融緩和策への言及をきっかけに、円安・ドル高の動きが鮮明だ。 では 円安の流れは今後も続くのだろうか。
今に至るまでの円高の流れを作ったきっかけは、2007年8月の「パリバショック」だ。 仏大手銀行の BNP パリバが傘下にあるファンドの解約を凍結したことで、米国のサブプライムローン問題が発覚し、株式や為替の市場が大混乱に陥った。 根底にあったのが、米住宅価格の下落だ。 そこから長期的には円高・ドル安のトレンドが続いた。 米住宅市場が回復しなかったからだ。
しかし 足元の米住宅価格は上昇に転じている。 株価上昇による資産効果も相まって 米国の家計のバランスシートは、調整が進んできた。 実際に今年のクリスマス商戦は堅調に進んでいる。「財政の崖」の問題が横たわっているが、富裕層への増税を除けば、民主党と共和党は歩み寄れる。「財政の崖」に対する不透明感が払拭されれば、米景気の回復が実感できるようになる。
一方で 日本の金融政策は一段と緩和する方向になる。 2014年に消費増税が予定されていることもあり、政権の枠組みがどうなろうと、緩和の流れに進む。 本来は金融緩和と併せ 需要を作り出す政策がなければ景気押し上げへの影響は限られるが、それでも円に対する売り圧力にはなる。 米国は景気回復でドル高傾向になるため、円・ドル相場は 1ドル=90円 から 95円 の方向へと進む。
この動きが、輸出企業の業績にプラスに働く。米国の回復という直接要因に加え、為替相場が円安に振れ 輸出採算が好転する。 決算を締めたら想定レートよりも円安になるケースが増えて、来年は企業業績が市場の想定を上回る「サプライズ決算」が増えるだろう。
● 日経平均は 1万3000円も ●
円高修正と企業業績の回復は、株式市場にとって もちろんプラスだ。 輸出企業は日本の代表的な銘柄が多いため、日経平均株価への寄与度も大きい。 最良のシナリオなら2013年に日経平均は、1万3000円 を目指せるだろう。
ただ リスクはある。 円安になれば海外から輸入している資源の価格が上昇し、企業にとってコスト増になる。 モノやサービスなど肝心の実需を創出できなければ、日本は物価が上昇しながら 景気が悪化するスタグフレーションに陥る可能性も否定できない。
生産能力と需要のギャップをいかに克服できるか、新政権には企業や個人の資金需要が増すような実需を創出できる政策を期待したい (構成:阿部 貴浩)。
……………………………………………………
※追加2_ 自民党は新政権の発足直後、経済再生へ向け対策を打ち出す。 まず 2012年度補正予算の編成に着手する。 安倍晋三総裁は16日夜、テレビ各局のインタビューで、規模について「大型の補正になっていく」と明言した。 来年4月に任期満了となる日銀総裁人事については「物価目標に賛成していただく方になっていただきたい」と述べ、政権公約の 2% の物価目標達成へ人選を進める見通しだ。
新政権がまず手掛けるのは緊急経済対策の策定と、その裏付けとなる今年度補正予算、13年度予算の編成だ。 来年1月中に緊急対策を閣議決定し、1月召集の通常国会に補正予算案を提出。 補正成立後、2月中にも来年度予算案を国会に提出する日程が有力となる。
緊急対策は防災・減災に重点を置いた公共投資が中心になる。 補正の規模について安倍総裁は、「13年度予算の成立が遅れるので、暫定予算の期間も含めて大型の補正予算になっていく」と指摘。 連立を組む公明党は 10兆円 規模を主張している。
自民は衆院選の公約で建物の耐震化や緊急輸送道路の整備を10年間で強力に推進する「国土強靱化」を打ち出し、来年度予算以降も公共投資に予算を積極的に配分する方針。 国土を災害から守ると同時に、需要の創出で景気を下支えする。
デフレ脱却へ向け、日銀との連携強化による大胆な金融緩和も進める。 具体的には、政府と日銀が政策協定 (アコード) を結んで消費者物価の前年比上昇率 2% を目指す物価目標を設定し、積極的な金融緩和を行うよう求める方向だ。
安倍氏は、日銀の白川方明総裁の後任人事の人選に着手し、目標達成を促す考え。 また 民主党政権下で休眠していた政府の「経済財政諮問会議」を復活させる方針を記者団に明らかにし、日銀総裁にも出席を求めるとした。
日銀の政策運営への関与を強めるために日銀法改正も視野に入れている。 中長期的な経済成長につなげる成長戦略では、産業の競争力強化に軸足を置く。 5年間の集中改革で、法人税の大胆な引き下げなどに取り組む構えだ。
自民党の政権復帰決定に、経済界からは期待の声が相次いだ。 経済同友会の長谷川閑史代表幹事は、「決断・実行する政治に転換することを望む」とのコメントを発表。 日本商工会議所の岡村正会頭は、「強いリーダーシップで難局を打開してほしい」と要望した。 個別政策では、切れ目ない経済対策や、環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP) 交渉参加の早期決断を求めた。
……………………………………………………
※追加3_ 日本経済の実力以上に進んだ円高の是正策も衆院選の争点になった。 自民党は、官民で外国債券購入基金を創設し、積極的に為替相場に働きかける案を提唱した。 一方 民主党は急激な円高に限り、為替介入で対抗する従来の路線が軸だ。 第三極は円高に強い産業構造への転換を訴える。 相場に働きかける対策か、時間をかけた体質転換か。 各党の違いが鮮明になった。
民主党政権の3年3カ月で円相場は 20円 近く円高・ドル安が進んだ。 2008年9月のリーマン危機や欧州危機を背景に円高が加速し、11年10月末には 75円32銭 と史上最高値を更新した。 10年9月には6年半ぶりに政府・日銀が円売り介入を再開。 民主党政権下の介入は4回に及んだ。
足元では円高の動きは一服しているとはいえ、円高是正策は衆院選の大きな争点の一つ。 円高の是正が進み、全体として企業業績が浮上すれば、脱デフレの第一歩になるとみられているためだ。
選挙公約をみると 政権与党の民主党と最大野党の自民党は目先の円高を是正する対症療法を掲げた。 為替相場に積極的に働きかけるかどうかに違いがある。
為替介入によって円高に対抗してきた民主党。 選挙公約では「過度の円高、為替相場の急激な変動に対しては断固たる措置を講じる」と記した。 投機的で急激な円高の動きが出た時に限り、政府・日銀が介入する。 これまで通り守りの姿勢を継続する方針を示した。
さらなる金融緩和や、政府と日銀の関係強化に加え、円高是正でも積極的な対策に踏み込んだのが自民党だ。 公約には、「官民協調外債ファンド」の創設を掲げた。 政府・日銀と民間が共同で基金をつくり、海外の債券を購入して円安に誘導するという構想。 岩田一政元日銀副総裁が提唱している「財務省・日銀による 50兆円 規模の外債購入構想」をベースにしたといわれている。
外国債券を買うためには、外為市場で円を売って、ドルやユーロなどの外貨を買う必要があり、円高を直接是正できる効果がある。 その手法は政府・日銀の為替介入と同じで第二の為替介入ともいえる手段だ。
ただ 構想実現には法改正が必要。 政府が基金に出資する際、外国為替資金特別会計 (外為特会) から資金を調達する。 特別会計法では、外為特会の資金は外国為替の売買にのみ充てると定めており、円資金の基金への出資は認めていない。 法改正できたとしても、事実上の為替介入とみなされて主要国の反発を招くと財務省は警戒する。
日銀の基金への出資自体は首相・財務相が認めれば可能だ。 だが 日銀法によれば、日銀は同法に定められた業務以外はできない。 為替相場の安定は、財務省の専管事項であり、日銀の金融政策には含まれない。 為替を動かすことが目的の基金には出資が認められない可能性がある。
第三極は日本の産業構造を改革し、円高に強い体質をつくるよう訴えている。 ただ 円高是正の効果が出るには時間がかかる。 日本維新の会は綱領「維新八策」で、「為替に左右されない産業構造」「所得・サービス収支の黒字化重視」を掲げる。 円高を背景に直接投資を拡大し、海外からの収益を増やすような産業構造の改革を掲げる。
日本未来の党は行政の規制・ムダを無くし、内需主導で国民所得を増やせば円高の是正につながるとしている。 ただ 具体的な処方箋は示していない。 みんなの党は円建て貿易を増やすなど「円の国際化」をめざしている。
……………………………………………………
※追加4_ 表向きは円高に「憂慮」を口にしてみせる日銀の白川方明総裁が「金融緩和」策を追加するたびに、円高は是正されるどころか逆に進行することをご存じだろうか。
何よりの証拠は、日銀統計のデータにある。 2008年9月のリーマン・ショック直前は 1ドル 108円台、09年7月 日銀が重い腰を上げて市場からの国債買い上げを前年比で増やし始めると同 95円台、日銀が「資産買い入れ等基金」なるものを創設した10年10月は同 80円台に上昇した。 この「基金」とは日銀の帳簿上に特別枠を設け、お札を発行して国債などの金融資産を買い上げるプログラムのことで、日銀式「包括緩和」の目玉である。 ことしは9月の 10兆円上積みを含め4度も買い入れ基金上限を改定し、80兆円に引き上げたが、円は 77円台まで上昇した。
日銀は、「金融政策を用いて直接的に為替相場に影響を与えることは一切考えていない」(山口広秀副総裁) とにべもない。 半導体、家電、自動車など日本の主力産業の競争力を弱体化させ、企業の国内への投資意欲を失わせ、若者の雇用機会を奪う超円高に対して無力と開き直り、無策で通すつもりなら、日銀は無用以下であろう。
同じ中央銀行の米連邦準備制度理事会 (FRB) や欧州中央銀行 (ECB) は、お札を継続的に増刷する量的緩和政策 (QE) に邁進する。 FRB は資産を「リーマン」前に比べ3倍に増やしたが、まだ足りず13日には第3弾の QE に踏み切った。 ECB の資産も2倍以上に達し、さらにスペインなどユーロ圏問題国の国債を無制限に買い上げる。 対照的に 日銀は資産を 30% 弱しか増やしていない。 米欧はお札増刷によるドル安やユーロ安への誘導意図を否定するが、いわずもがなだ。 市場であふれるドルやユーロに比べ、日本円供給量は少ない。 希少価値の円が高くなるのは当然の帰結だ。
日銀幹部は、「中央銀行の資産規模を対国内総生産 (GDP) に比べると、当方は米欧よりも大きく金融緩和している」と量的緩和を拒否し、米欧に比べて極めて遅く、米欧の後を追って小出しに追加緩和する政策を自己弁護する。 国際的な円の投機筋は日銀の緩慢さにつけ込む。
円資産を買って差益を荒稼ぎする投機筋の多くは、ロンドンを足場にする米欧/中東/中国などの投資ファンドである。 その投資対象は主として日本国債で、対日国債投資とともに円相場が上がる。
日銀は「着実な基金増枠」を宣言して、投機筋以上の規模で国債を買い増すのだから日本国債の相場は着実に上昇する。 外国からの対日国債純投資は昨年12月 年間ベースで 21.3兆円 に上った後、徐々に下がり始め、円相場はいったん下落基調に転じた。 ところが 日銀による国債保有は今年3月ごろから急増し始め、その増加規模は5月以降 外国の対日国債投資を上回る。 円相場は再び円高基調に回帰した。 投機勢力はぬれ手であわとばかり、円高と国債価格上昇のダブルでもうかる。 日本には「企業労使のコスト削減等の努力の限界を大きく超える」(豊田章男トヨタ自動車社長) 円高がのしかかる。
日銀を政策転換させる道は、もはや政治にしか残されていない。 自民党は総裁選で各候補が力説した日本再生実現に向け、日銀が超円高是正を達成するのに十分かつ大胆で明確な量的緩和政策に踏み切るよう決断を迫るべきだ。
以上
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日本の通貨 円はリーマンショック後 円高基調となり、今は 1ドル=80円 超えの状態が続く。 具体的には 2009年秋に民主党政権が誕生してからの3年間は、1ドル=95~75円 の間を推移した超円高時代だったといってもいい。
この春2月に 日銀の白川総裁が 1% の事実上のインフレ目標発言を機に一時 円安方向に為替が動いたが、効果は長続きせず 再び 80円 を切る円高に戻ってしまった。
その後 11月末になって衆院選の機運が高まると、安倍自民党総裁の 2% インフレ目標発言が注目を浴び、再び円安方向へと為替が動き始めた。 衆院選が実施されれば、最も首相の可能性が高い政治家の発言だから、マーケットが反応したのも当然だろう。
円高は本来 歓迎すべきことだが、世界中の資金の一時避難先となっていたという要因はあまり歓迎すべきことではなかった。 折しも リーマンショック後の米金融危機と欧州金融危機が重なり、世界の投機資金が比較的安全とされる円に集まってしまった。 いわば 世界の海が荒れ狂い、資金を満載した船が安全な港の日本へ逃げ込んだようなもの。
そしてまた世界の資金は新たな避難場所を求めて、例えば 豪ドルなどへ移動しつつあり、日本の港には代わりに 発電燃料を積んだ船が入港し、貿易赤字が増えるだろう。 それも円安の要因になるが、多くの輸出企業は手取りの円が増え 短期的には歓迎だろう。
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「円安後追い、収益押し上げ 企業の想定為替レート」(12月17日 嶌峰 義清/日経ビジネス) _ ※追加1へ
「安倍総裁まず大型補正予算 “物価目標へ日銀人選”」(12月17日 産経) _ ※追加2へ
「円高是正策、違い鮮明ーー自民、外債基金を創設 民主は急騰時のみ介入 第三極、産業構造の転換訴え」(12月15日 日経) _ ※追加3へ
「超円高の元凶 “小出し緩和”… “無力で無策” なら日銀は無用以下」(9月30日 田村秀男/編集委員/産経) _ ※追加4へ
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※追加1_ 企業の想定為替レートは実勢レートを後追いする。 日本の金融緩和と米景気の回復で円安・ドル高に向かう。 想定以上の円安が利益を膨らませ、株価押し上げ要因になる。
企業が業績計画の前提とするのが、想定為替レートだ。 通常は実勢レートを後追いする形になり、円高局面では甘めの為替想定が、計画よりも収益を目減りさせる。 これは円安局面でも同じで、決算を締めてみると厳しめの想定レートが利益を増やすことになる。
企業の想定レートは、現時点で 1ドル=79円 から 80円 程度だ。 これに対し 実勢レートは、一時 82円 台まで円安が進んだ。 自民党の安倍晋三総裁による金融緩和策への言及をきっかけに、円安・ドル高の動きが鮮明だ。 では 円安の流れは今後も続くのだろうか。
今に至るまでの円高の流れを作ったきっかけは、2007年8月の「パリバショック」だ。 仏大手銀行の BNP パリバが傘下にあるファンドの解約を凍結したことで、米国のサブプライムローン問題が発覚し、株式や為替の市場が大混乱に陥った。 根底にあったのが、米住宅価格の下落だ。 そこから長期的には円高・ドル安のトレンドが続いた。 米住宅市場が回復しなかったからだ。
しかし 足元の米住宅価格は上昇に転じている。 株価上昇による資産効果も相まって 米国の家計のバランスシートは、調整が進んできた。 実際に今年のクリスマス商戦は堅調に進んでいる。「財政の崖」の問題が横たわっているが、富裕層への増税を除けば、民主党と共和党は歩み寄れる。「財政の崖」に対する不透明感が払拭されれば、米景気の回復が実感できるようになる。
一方で 日本の金融政策は一段と緩和する方向になる。 2014年に消費増税が予定されていることもあり、政権の枠組みがどうなろうと、緩和の流れに進む。 本来は金融緩和と併せ 需要を作り出す政策がなければ景気押し上げへの影響は限られるが、それでも円に対する売り圧力にはなる。 米国は景気回復でドル高傾向になるため、円・ドル相場は 1ドル=90円 から 95円 の方向へと進む。
この動きが、輸出企業の業績にプラスに働く。米国の回復という直接要因に加え、為替相場が円安に振れ 輸出採算が好転する。 決算を締めたら想定レートよりも円安になるケースが増えて、来年は企業業績が市場の想定を上回る「サプライズ決算」が増えるだろう。
● 日経平均は 1万3000円も ●
円高修正と企業業績の回復は、株式市場にとって もちろんプラスだ。 輸出企業は日本の代表的な銘柄が多いため、日経平均株価への寄与度も大きい。 最良のシナリオなら2013年に日経平均は、1万3000円 を目指せるだろう。
ただ リスクはある。 円安になれば海外から輸入している資源の価格が上昇し、企業にとってコスト増になる。 モノやサービスなど肝心の実需を創出できなければ、日本は物価が上昇しながら 景気が悪化するスタグフレーションに陥る可能性も否定できない。
生産能力と需要のギャップをいかに克服できるか、新政権には企業や個人の資金需要が増すような実需を創出できる政策を期待したい (構成:阿部 貴浩)。
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※追加2_ 自民党は新政権の発足直後、経済再生へ向け対策を打ち出す。 まず 2012年度補正予算の編成に着手する。 安倍晋三総裁は16日夜、テレビ各局のインタビューで、規模について「大型の補正になっていく」と明言した。 来年4月に任期満了となる日銀総裁人事については「物価目標に賛成していただく方になっていただきたい」と述べ、政権公約の 2% の物価目標達成へ人選を進める見通しだ。
新政権がまず手掛けるのは緊急経済対策の策定と、その裏付けとなる今年度補正予算、13年度予算の編成だ。 来年1月中に緊急対策を閣議決定し、1月召集の通常国会に補正予算案を提出。 補正成立後、2月中にも来年度予算案を国会に提出する日程が有力となる。
緊急対策は防災・減災に重点を置いた公共投資が中心になる。 補正の規模について安倍総裁は、「13年度予算の成立が遅れるので、暫定予算の期間も含めて大型の補正予算になっていく」と指摘。 連立を組む公明党は 10兆円 規模を主張している。
自民は衆院選の公約で建物の耐震化や緊急輸送道路の整備を10年間で強力に推進する「国土強靱化」を打ち出し、来年度予算以降も公共投資に予算を積極的に配分する方針。 国土を災害から守ると同時に、需要の創出で景気を下支えする。
デフレ脱却へ向け、日銀との連携強化による大胆な金融緩和も進める。 具体的には、政府と日銀が政策協定 (アコード) を結んで消費者物価の前年比上昇率 2% を目指す物価目標を設定し、積極的な金融緩和を行うよう求める方向だ。
安倍氏は、日銀の白川方明総裁の後任人事の人選に着手し、目標達成を促す考え。 また 民主党政権下で休眠していた政府の「経済財政諮問会議」を復活させる方針を記者団に明らかにし、日銀総裁にも出席を求めるとした。
日銀の政策運営への関与を強めるために日銀法改正も視野に入れている。 中長期的な経済成長につなげる成長戦略では、産業の競争力強化に軸足を置く。 5年間の集中改革で、法人税の大胆な引き下げなどに取り組む構えだ。
自民党の政権復帰決定に、経済界からは期待の声が相次いだ。 経済同友会の長谷川閑史代表幹事は、「決断・実行する政治に転換することを望む」とのコメントを発表。 日本商工会議所の岡村正会頭は、「強いリーダーシップで難局を打開してほしい」と要望した。 個別政策では、切れ目ない経済対策や、環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP) 交渉参加の早期決断を求めた。
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※追加3_ 日本経済の実力以上に進んだ円高の是正策も衆院選の争点になった。 自民党は、官民で外国債券購入基金を創設し、積極的に為替相場に働きかける案を提唱した。 一方 民主党は急激な円高に限り、為替介入で対抗する従来の路線が軸だ。 第三極は円高に強い産業構造への転換を訴える。 相場に働きかける対策か、時間をかけた体質転換か。 各党の違いが鮮明になった。
民主党政権の3年3カ月で円相場は 20円 近く円高・ドル安が進んだ。 2008年9月のリーマン危機や欧州危機を背景に円高が加速し、11年10月末には 75円32銭 と史上最高値を更新した。 10年9月には6年半ぶりに政府・日銀が円売り介入を再開。 民主党政権下の介入は4回に及んだ。
足元では円高の動きは一服しているとはいえ、円高是正策は衆院選の大きな争点の一つ。 円高の是正が進み、全体として企業業績が浮上すれば、脱デフレの第一歩になるとみられているためだ。
選挙公約をみると 政権与党の民主党と最大野党の自民党は目先の円高を是正する対症療法を掲げた。 為替相場に積極的に働きかけるかどうかに違いがある。
為替介入によって円高に対抗してきた民主党。 選挙公約では「過度の円高、為替相場の急激な変動に対しては断固たる措置を講じる」と記した。 投機的で急激な円高の動きが出た時に限り、政府・日銀が介入する。 これまで通り守りの姿勢を継続する方針を示した。
さらなる金融緩和や、政府と日銀の関係強化に加え、円高是正でも積極的な対策に踏み込んだのが自民党だ。 公約には、「官民協調外債ファンド」の創設を掲げた。 政府・日銀と民間が共同で基金をつくり、海外の債券を購入して円安に誘導するという構想。 岩田一政元日銀副総裁が提唱している「財務省・日銀による 50兆円 規模の外債購入構想」をベースにしたといわれている。
外国債券を買うためには、外為市場で円を売って、ドルやユーロなどの外貨を買う必要があり、円高を直接是正できる効果がある。 その手法は政府・日銀の為替介入と同じで第二の為替介入ともいえる手段だ。
ただ 構想実現には法改正が必要。 政府が基金に出資する際、外国為替資金特別会計 (外為特会) から資金を調達する。 特別会計法では、外為特会の資金は外国為替の売買にのみ充てると定めており、円資金の基金への出資は認めていない。 法改正できたとしても、事実上の為替介入とみなされて主要国の反発を招くと財務省は警戒する。
日銀の基金への出資自体は首相・財務相が認めれば可能だ。 だが 日銀法によれば、日銀は同法に定められた業務以外はできない。 為替相場の安定は、財務省の専管事項であり、日銀の金融政策には含まれない。 為替を動かすことが目的の基金には出資が認められない可能性がある。
第三極は日本の産業構造を改革し、円高に強い体質をつくるよう訴えている。 ただ 円高是正の効果が出るには時間がかかる。 日本維新の会は綱領「維新八策」で、「為替に左右されない産業構造」「所得・サービス収支の黒字化重視」を掲げる。 円高を背景に直接投資を拡大し、海外からの収益を増やすような産業構造の改革を掲げる。
日本未来の党は行政の規制・ムダを無くし、内需主導で国民所得を増やせば円高の是正につながるとしている。 ただ 具体的な処方箋は示していない。 みんなの党は円建て貿易を増やすなど「円の国際化」をめざしている。
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※追加4_ 表向きは円高に「憂慮」を口にしてみせる日銀の白川方明総裁が「金融緩和」策を追加するたびに、円高は是正されるどころか逆に進行することをご存じだろうか。
何よりの証拠は、日銀統計のデータにある。 2008年9月のリーマン・ショック直前は 1ドル 108円台、09年7月 日銀が重い腰を上げて市場からの国債買い上げを前年比で増やし始めると同 95円台、日銀が「資産買い入れ等基金」なるものを創設した10年10月は同 80円台に上昇した。 この「基金」とは日銀の帳簿上に特別枠を設け、お札を発行して国債などの金融資産を買い上げるプログラムのことで、日銀式「包括緩和」の目玉である。 ことしは9月の 10兆円上積みを含め4度も買い入れ基金上限を改定し、80兆円に引き上げたが、円は 77円台まで上昇した。
日銀は、「金融政策を用いて直接的に為替相場に影響を与えることは一切考えていない」(山口広秀副総裁) とにべもない。 半導体、家電、自動車など日本の主力産業の競争力を弱体化させ、企業の国内への投資意欲を失わせ、若者の雇用機会を奪う超円高に対して無力と開き直り、無策で通すつもりなら、日銀は無用以下であろう。
同じ中央銀行の米連邦準備制度理事会 (FRB) や欧州中央銀行 (ECB) は、お札を継続的に増刷する量的緩和政策 (QE) に邁進する。 FRB は資産を「リーマン」前に比べ3倍に増やしたが、まだ足りず13日には第3弾の QE に踏み切った。 ECB の資産も2倍以上に達し、さらにスペインなどユーロ圏問題国の国債を無制限に買い上げる。 対照的に 日銀は資産を 30% 弱しか増やしていない。 米欧はお札増刷によるドル安やユーロ安への誘導意図を否定するが、いわずもがなだ。 市場であふれるドルやユーロに比べ、日本円供給量は少ない。 希少価値の円が高くなるのは当然の帰結だ。
日銀幹部は、「中央銀行の資産規模を対国内総生産 (GDP) に比べると、当方は米欧よりも大きく金融緩和している」と量的緩和を拒否し、米欧に比べて極めて遅く、米欧の後を追って小出しに追加緩和する政策を自己弁護する。 国際的な円の投機筋は日銀の緩慢さにつけ込む。
円資産を買って差益を荒稼ぎする投機筋の多くは、ロンドンを足場にする米欧/中東/中国などの投資ファンドである。 その投資対象は主として日本国債で、対日国債投資とともに円相場が上がる。
日銀は「着実な基金増枠」を宣言して、投機筋以上の規模で国債を買い増すのだから日本国債の相場は着実に上昇する。 外国からの対日国債純投資は昨年12月 年間ベースで 21.3兆円 に上った後、徐々に下がり始め、円相場はいったん下落基調に転じた。 ところが 日銀による国債保有は今年3月ごろから急増し始め、その増加規模は5月以降 外国の対日国債投資を上回る。 円相場は再び円高基調に回帰した。 投機勢力はぬれ手であわとばかり、円高と国債価格上昇のダブルでもうかる。 日本には「企業労使のコスト削減等の努力の限界を大きく超える」(豊田章男トヨタ自動車社長) 円高がのしかかる。
日銀を政策転換させる道は、もはや政治にしか残されていない。 自民党は総裁選で各候補が力説した日本再生実現に向け、日銀が超円高是正を達成するのに十分かつ大胆で明確な量的緩和政策に踏み切るよう決断を迫るべきだ。
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