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原発問題

原発事故によるさまざまな問題、ニュース

『死の淵を見た男』<~1号機、爆発~ 海水注入への道> ※34回目の紹介

2016-03-29 22:19:02 | 【吉田昌郎と福島第一原発の500日】

 *『死の淵を見た男』著者 門田隆将 を複数回に分け紹介します。34回目の紹介

『死の淵を見た男』著者 門田隆将

「その時、もう完全にダメだと思ったんですよ。椅子に座っていられなくてね。椅子をどけて、机の下で、座禅じゃないけど、胡坐をかいて机に背を向けて座ったんです。終わりだっていうか、あとはもう、それこそ神様、仏さまに任せるしかねぇっていうのがあってね」

それは、吉田にとって極限の場面だった。こいつならいっしょに死んでくれる、こいつも死んでくれるだろう、とそれぞれの顔を吉田は思い浮かべていた。「死」という言葉が何度も吉田の口から出た。それは、「日本」を守るために戦う男のぎりぎりの姿だった。(本文より)

吉田昌郎、菅直人、斑目春樹・・・当事者たちが赤裸々に語った「原子力事故」驚愕の真実。

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**『死の淵を見た男』著書の紹介

第13章 1号機、爆発

 海水注入への道  P215~

 自衛隊の郡山駐屯地から”命綱”ともいうべき消防車をいち早く福島第一原発に持ってきて、そのまま給水活動を続けていた渡辺秀勝曹長ら自衛隊の面々も爆発に遭遇した。

「ちょうどその時は、私が免震棟に戻っていました。部下5名が交代でまた一号機に注水するため、東電の方と現場に向かっているところでした。出発して間もなくドーンっという、階段とか壁とかが、割れてしまうような音がしました」

 渡辺は、その音をこう表現する。

「自分は大砲屋なもんで、一門じゃなくて十門くらい並んだ火砲を一気にドーンと撃ったような感じに聞こえました。私のいた玄関右の待機室のちっちゃな30センチくらいの窓から外を見たら、白い煙とか、破片とかが、ボワーッときて、外が真っ白になりました。免震棟の中は、もう、バタバタバタバタって、すごい状態になりました」

 渡辺は部屋を飛び出したが、部下に連絡をとる手段がなかった。あちこちから、

「落ち着け、落ち着けっ」

 そんな声が聞こえた。

「自衛隊さん、連絡とれますか!」

 東電の人間にそう問われたが、渡辺は、「連絡とれません!」というほかなかった。間もなく外で作業していた人たちが次々、免震棟に飛び込んできた。

「爆発した!」「爆発したぞっ」

 作業員は、そう叫んでいる。黄色い作業着や白のタイベックをきている人もいる。なかには、白いタイベックが血で赤く染まっている人もいた。

(部下は大丈夫か・・・)

 そう思いながら、渡辺はただちに彼らの救護に入った。

「なにか硬いものはないですか!」「あてるものを探してください」「雑誌があれば、それを紐でしばってください」「紐がなければハンカチとかで代用してください!」

 渡辺は、そこにいる東電の人間に次々と指示を出した。

「(免震棟の)入口が二重になっているんですけど、そこから、がーっと人が入ってきましたからね。誰も救護の経験がなさそうだったので、自分らはそういう訓練をやってますから、すぐケガ人の処置に入りました。ケガ人の服を脱がせたり、カッターで切ったり、足を怪我している人には、そのへんにある段ボールや紐を利用して怪我の部分を固定したり、いろいろやりました」

 だが、気になるのは、自分の部下たちだ。渡辺は、彼らが心配でならなかった。

 やがて、部下たちに同行している東電の人間と無線で連絡がつき、全員無事であることがわかった。しかし、

「一緒に行ったその東電の人が、飛んできた瓦礫に胸をやられ、怪我をしたと言っていました。東電側のやりとりで、部下たちが大丈夫だというのが伝えられたんです」

 (「海水注入への道」は、次回へ続く)

※続き『死の淵を見た男』~吉田昌郎と福島第一原発の500日~は、

2016/3/30(水)22:00に投稿予定です。

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日


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