*『世界が見た福島原発災害』著者:大沼安史
「第3章 NRC秘密報告」を複数回に分け紹介します。4回目の紹介
福島原発災害は、東電、原子力安全・保安院など政府機関、テレビ・新聞による大本営発表、御用学者の楽観論評で、真実を隠され、国民は欺かれている。事実 上の報道管制がしかれているのだ。「いま直ちに影響はない」を信じていたら、自らのいのちと子供たちのいのち、そして未来のいのちまで危険に曝されること になってしまう。
本書は、福島原発災害を伝える海外メディアを追い、政府・マスコミの情報操作を暴き、事故と被曝の全貌と真実に迫る。
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**『世界が見た福島原発災害』著書 「暴露された「フクシマの真実」」の紹介
前回の話:『世界が見た福島原発災害』第3章 NRC秘密報告 ※3回目の紹介 <大きなダメージが起きうる>
そして報告書は、「使用済み核燃料プール」(複数形)に、これまで想定している以上の損傷が起きているかもしれない、との不吉な判断を示してもいる。
「炉」及び「プール」の危機的な状況を描き出した報告書は、NRCとしての日本政府に対する「勧告」も記している。勧告は2つ。
①格納容器内への窒素ガスの注入で、爆発を引き起こしかねない酸素と水素を追い出す、②炉心の「臨界」ー連鎖反応を抑えこむために冷却水にボロン(ホウ素。非常に大きな中性子吸収断面積を持つ)を注入する。
この、すでに(遅くとも)3月26日時点で行われたNRCの勧告に従い、東電が最も危機的な「1号炉」に対し、窒素注入を開始したのは、4月6日夜のこと。
これひとつとってみても、NRC秘密報告書の信憑性と、それが描く「フクシマの真実」の危機的な姿が納得できる。
さて、このNRC秘密報告書を実際に執筆したのは日本に派遣されたNRCの「原子炉安全チーム」の専門家たちだ。報告書によれば、米エネルギー省、GE、米国の非営利団体である「電力研究所」など関係機関からの情報も参考にして、まとめたものだという。
ここで1点、注意しておかねばならないのは、こうした関係機関の中に、「日本原子力産業協会」が含まれることだ。
この社団法人には業界・学会のトップが名を連ねている。原産協会がNRCのチームの情報源のひとつだとすると、「フクシマの真実」を早いうちから知っていた可能性がある・・・・。
以上が、ニューヨーク・タイムズがスクープ報道した「NRCフクシマ秘密報告書」の中身だが、内容紹介を敢えて過去形ではなく現在形で書いたのはもちろん、これが現在も進行中のことであるからだ。
しかし、それは未来においても続いていくことである。状況がさらに悪化することも否定できない「現在」が、この先、ずっと続いていく・・・。
ニューヨーク・タイムズは、この米原子力規制委「秘密報告書」に対する、「憂慮する科学者たち」のデイビッド・ロクバウム博士のコメントを載せている。
日本でも使われているGE社製原発の開発にもかつて携わったことのある原子力エンジニア出身の博士は、同紙に対して、こう語っていた。
「私はこれまで、森を抜け出てはいないが、少なくとも森の外れにはいる、と考えていた。しかし、報告書はまったく違ったことを描き出している。状況はもっと悪いことを示している。このままでは、もっと大きなかたちでダメージが起き得る」
博士は「森」のメタファーで、現在進行中の「フクシマの危機」を語っているが、この場合の「森」は、命を育てる、緑ゆたかな恵みの森ではなく、「死の灰」という名の悪魔が潜む恐ろしい「森」のことだ。
博士の言うように、私たちは「フクシマ」という、世界で最も危険な「核の森」の奥で、迷い続けているのだ。どこに出口があるか、いつ出口を見つけられるか判らない状態で、迷い続けているのだ。どこに出口があるか、いつ出口を見つけられるかわからない状態で、さ迷い続けているのだ。
そして今、その「核の森」のあちこちでウラニウムが、プルトニウムが燃えている。燃えて蒸気とともに死の灰を噴き上げている。プルトニウムさえ飛ばしている。放射能の汚水を大量に垂れ流している。
「フクシマ」という「核の森」が、いつ何時、一気に燃え上がりかねない状況の中で、私たちは生きて行かねばならないのである。
※「第3章 NRC秘密報告」の紹介は本日で終了します。
引き続き『被爆医師のヒロシマ』著者:肥田瞬太郎 の紹介を始めます。8/26(水)22:00に投稿予定です。