*『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。16回目の紹介
美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲
何度でも言おう。
「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」
これは”風評”ではない。”事実”である。
2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。
「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」
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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介
ベーター線の測定に国が乗り出さないのはなぜか
私が2011年から2013年まで、福島を回って、多くの福島の放射線汚染についての問題を伺ってきましたが、その間に内部被曝の問題を持ちだした人は、たった一人だけでした。
福島の人たちは、内部被曝について考えたこともないのではないか、あるいは、考えないようにしているのか、そのどちらかだと思います。
体内に放射性物質を取り込む経路としては、食べ物によって消化器経由で取り込むのと、呼吸によって鼻腔、喉、気管、肺経由で取り込むのと、この2つが主なものでしょう。
手や体が放射性物質に接触することで体内に取り込むこともありますが、ここでは、簡単にするために、呼吸によるものと飲食によるものの2つの場合に絞ります。
まず呼吸による放射性物質の体内取り込みを考えます。
第3章にも書きましたが、福島を汚染しているのは、福島第一原発が爆発したときに放出された放射性微粒子です。
この放射性微粒子は様々な場所にあります。
地面に落下している物の場合、その地面を掘り起こしたり、歩いたり、走ったりすることで土埃をかきたてれば、土埃と一緒に舞い上がり、それを呼吸するときに吸い込みます。
空中を浮遊している物もあります。
そういう放射性微粒子を吸い込んだ場合、鼻腔、喉、気管、肺の粘膜に放射性微粒子は付着します。
放射性微粒子は直径が2~3マイクロメートルほどの極めて小さいものです。
我々が通常線量計で測定しているのはガンマー線です。
セシウムはベーター線も出しますが、ベータ線は原子から放出されるときに与えられたエネルギーによって、飛距離が違います。(この辺の核物理学は面倒なので省略します)。セシウム137のベーター線が、最大のエネルギーを与えられたときの飛距離が、大体4メートル。平均的にはとてもその最大値に及ばず、1メートルから1.5メートル以内に留まるし、電磁波であるガンマー線と違って電子の流れなので、測定しづらいのでしょうか、普及型の線量計でベーター線を測定できるものは滅多にありません。
そのせいであまりベーター線については真剣に考えられていませんが、体内に入った場合非常に厄介であることは、第3章に書いたとおりです。
セシウムはガンマー線を大量に放出しますが、ベーター線も放出します。
第3章の、私が鼻血を出した理由について、思い出して下さい。
私は国がベーター線について、何一ついわないのは大きな問題だと思います。
国が一般的に使うように推奨している線量計は、ガンマー線しか測れません。ベーター線を考慮に入れたくないのです。
私はベーター線について国が口を閉ざしているのは、ベーター線の線量まで発表したら、原発推進の国の方針を保てなくなるからだと思います。
邪推かもしれませんが、国は現在の福島の状態を安全だと主張したいばかりに、ベーター線を測らないように指導しているのではないでしょうか。
そもそも、国の推奨しているシンチレーション方式の線量計ではガンマー線しか測れません。
ベーター線の内部被曝の影響の強さを考えると、ベーター線もきちんと測定するべきです。
(次回は「鼻血問題を無視するのは「科学的」な態度か」を紹介します)
※続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、11/10(火)22:00に投稿予定です。
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