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原発問題

原発事故によるさまざまな問題、ニュース

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<「マスクを付けない」役場の人たち> ※9回目の紹介

2015-10-26 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。9回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 「マスクを付けない」役場の人たち

 2012年12月12日、私たちは、岡部町長のご好意で、富岡町の見学をすることができました。

 富岡町は当時警戒区域で、一般の人間は立入禁止でしたが、手続きをした上で富岡町の町役場の方と一緒なら入ることができるのです。

 当時、富岡町の町役場全体が、郡山に避難して、臨時の町役場を作っていました。(私たちは郡山の線量が非常に高いことを、自分たちが持っていった線量計で測って、身をもって知っています。しかし、その郡山に避難せざるを得ないとは、富岡町の線量の高さが想像できます)。

 郡山から古殿町まで車で3時間近くかかります。

 そこから富岡町まで、さらに2時間近くかかる。それなのに、郡山から、富岡町町役場総務課の主幹兼課長補佐の菅野利行さんと、総務課管財係の堀川新一さんが来て下さいました。

 私たちは防護服を着、マスクもして、放射線に対する防護態勢を整えました。

 『美味しんぼ 福島の真実編2』の富岡町の場面で、菅野さんも堀川さんもマスクをしていますが、あれは画家の花吹アキラさんが、思いやりで掛けさせたのであって実際は菅野さんも堀川さんも防護服はおろか、マスクも付けないのです。いつものままの服装でした。

 富岡町に行ってわかりましたが、大変な放射線量です。それなのに、防護服を着ず、マスクも付けない。これは、どういうことなのか、心配になりました。

 そういえば、飯舘村の村役場に行ったとき、村役場の人が「自分は事故以来マスクなどしたことがない」と誇らしげにいいました。

 村の人が安心するように「マスクをしない」のだそうです。

 菅野さんたちも、そういう意図があったのか、あるいは慣れてしまったのか、諦めてしまったのか、ここは理解の行かないところでした。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/27(火)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える

 


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<線量計の数値がころころ変わるのはなぜか> ※8回目の紹介

2015-10-22 22:04:43 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。8回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 線量計の数値がころころ変わるのはなぜか

 空気中を浮遊している放射性微粒子の存在を私は身をもって体験しました。

 いわき市の海岸でも、福島市の中心でも、線量を測定していると線量計の数値がころころと変わる。

 最初は、線量計が安物だからだと思いました。よく見かけるロシア製の黄色い小型のものよりは高級な国産のものですが、それでも携帯電話機程度の大きさで、検出器と線量計本体が別になっている高級なものとは違います。

 こんなに数値が見ているうちにころころ変わるのは、この線量計が不安定なのだろうと思いました。

 ところがあるとき、福島市のホテルの前で線量を測定していたときに、あるものの存在に気がついて愕然となったのです。

 あるもの、とは何か。

 それは風、です。

 その日、福島のそのホテルの前は風が強かった。

 それで、風の向きと強さで、線量計の数値が変わることに気がついたのです。

 線量計の数値がころころ変わるのは、線量計が不安定だったからではなったのです。

 風の向きと強さが変わると、線量計を取り巻く周囲の放射性微粒子の分布が変わるからだと私は気がつきました。

 私の福島取材の同行していた人間が「福島第一原発の方向から風が吹いてくると線量計の数値が上がるみたいだ」といいました。

 私は「それは気のせいだろう」といましたが、「いや、待てよ」と思い直しました。2012年の段階で、福島第一原発からは毎時1000万ベクレルを超える放射性物質が放出されていたのです(東京電力が2012年9月25日に発表した数値)。

 であれば、福島第一原発の方向から風が吹いてくると、放射性微粒子の数が増えて線量計の数値が上がる、ということはあり得ます。

 私はこの風の向きと強さで線量が変わることを体験して、福島の人々の放射線被曝の実状を認識することができたのです。

 この私の認識が間違っていないことが、北海道がんセンター名誉院長、西尾正道氏の著書『正直ながんの話』(旬報社刊)の166~167頁を読んで確認できました。

 そこでの記述をまとめると、

 <<2013年7月南相馬市原町の某小学校前で、10日間大気を吸着させたフィルターをデジタル現像した結果、多くの放射性微粒子が確認された。

 また、筑波の気象研究で事故後の大気中に浮かんでいるちりを取り集めた研究では、セシウムを高い濃度で含む不溶性の球場微粒子が多数認められている。>>

 福島の人たちは単一の放射線源ではなく、大地、建物、植物、そして大気、という身の回りの環境すべてに存在している放射性微粒子から被曝しているのです。

 いい変えれば、放射線源に取り囲まれて生活している。福島にいる限り放射線被曝から逃れることはできない。

 これは、耐え難く恐ろしいことですが、今の福島の現実なのです。
 
 福島の人々の放射線被曝の実状なのです。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/26(月)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える

 


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<福島の現実 地域を分断した「特定避難勧奨地点」> ※7回目の紹介

2015-10-21 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。7回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 地域を分断した「特定避難勧奨地点」

 私は、2012年6月に霊山町小国で、おぐに市民放射能測定所事務局長の菅野昌信さん、福島大学准教授の小山良太先生、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任助教の石井秀樹先生にお会いして霊山地域の現状をうかがいました。

 霊山といえば、本章の最初に書いたように、私が福島と出会った特別のところです。

 私は霊山に特別の思いを抱いているので、小国は私にとっては、霊山神社の下にある町、という感じです。小国の人にとっては余計なお世話でしょうが、私にとっては霊山という名前だけで深く感じてしまうのです。

 霊山町を訪ねたのは、私にとって特別の場所である霊山が、あろうことか、原発事故によってかなり厳しく汚染されたと聞いたからです。

 その時伺った話をまとめます。

 「国は、小国を含む伊達市内4地区について、年間積算推計値が20ミリシーベルトを超えると推定された地点を「特定避難勧奨地点」と設定した。この制度は、行政区全体ではなく住居単位で指定されたもので、避難は全世帯が強制ではなく自由意志である(「だて市制だより」2011年7月7日発行より抜粋)」

 「今年、小国地域は、作付け制限区域に指定されてしまった。作付け制限とは、計画区域及び計画的避難区域、また、2011年度米の調査において500ベクレルを超過した数値が検出された地域が指定される制度である」

 作付け制限区域に指定されると、米の生産はできなくなります。

 そこで、小山先生たちは試験作付けをしているのです。

 試験田で栽培した米は収穫後、販売はもちろん、自家用として食べることもできません。

 単に、栽培した米の放射能を測定するための試験田なのです。

 試験栽培の作付けは出荷用でないことを明確にするために、その田の持ち主の農家ではなく、生産法人に委託します。ただ、栽培中の管理は農家が担当する仕組みになっています。

 収穫しても、販売はおろか、自分で食べることも許されないなどと、農家にとってどんなに辛いことでしょうか。


 その時伺ったことでちょっと辛すぎることがあります。

 それは、前に書いた「特定避難勧奨地点」の問題です。

 これが、地域単位ではなく、住居単位で決められたのが厳しかったと、皆さんおっしゃいました。

 菅野さんの話では

 「『特定避難勧奨地点』に指定されると、一人あたり月10万円が出る。その他に固定資産税や健康保険料が減免され、市県民税が免除、介護保険料も無料となる。そのため、ある方が試算したところ、7人家族だと年間1000万円くらい違うという。

 住居単位なので、隣の家は指定されたが、我が家はされなかった、という格差が生じて、いろんな弊害が出ている」

 しかも、

 「『特定避難勧奨地点』に指定された家の隣の土地で農業をしても問題にならない。さらに、避難している先が辛いからといって、家に戻ってきても、『特定避難勧奨地点』は取り消されない。小さい子供がいる家が優先的に『特定避難勧奨地点』に指定されたりするという、指定する側の恣意的な面などもあって余計複雑になり、地域の中でもずいぶんコミュニティが壊れたり、あるいは祭りがなくなったりしている」

 もう一つ納得がいかないのは、
 
 「年間19ミリと20ミリで差があるのだろうか。20ミリだったら駄目だけど、19.9ミリならOKでは何の意味もないのではないか」

 という疑問が起こるのも当然で、それが、地域の人々の間に不和を招くということでした。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/22(木)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<福島の現実 大臣が「ゴーストタウン」といった町> ※6回目の紹介

2015-10-20 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。6回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介


  大臣が「ゴーストタウン」といった町

 私がお会いしたときに、根本さんは75歳でした。とっくに現役を退いてもいい年齢です。その年齢で、原発事故のあとの試験田をご自分で栽培なさる。

 大変じゃありませんかと私が尋ねると、根本さんはさらりと、「まあな、俺の人生の仕事でしょ」とおっしゃいました。

 なんという、凄い言葉だ。

 私も、こんなことをいってみたいものだと、しみじみ思いました。

 根本さんには、その年の秋にも、この試験栽培の結果を伺いに上がりました。

 根本さんの家にお邪魔したあと、私たちは小高の町を通りました。

 私は今までこんな異様な光景を見たことがありません。

 地震の影響で損壊した家は数軒ありましたが、ほかは外見上なんともない家が道の両側に立ち並んでいます。整ったきれいな町です。

 しかし、人が一人もいないのです。

 ある大臣が、小高を見て、「死の町、ゴーストタウンだ」といったのが問題になり、「福島の人を傷つけた」と新聞やテレビで叩かれ、ついに辞職を余儀なくされました。

 私はその大臣がどんな人なのか知りませんが、その大臣の言葉は真実を語っていると思いました。

 これはまさにゴーストタウンだ。

 そうとしか、いいようがない。これをなんと表現すればいいのか。

 新聞やテレビはこの実状を伝えたのでしょうか。

 一つの町がゴーストタウンになっている実状を伝えずに、隠すことが福島の人たちのためだというのでしょうか。

 福島の負の部分を押し隠すことは、かえって福島の人たちのためにならないと私は思います。

 どうやら、福島の実状を語ることはタブーなのです。

 福島を語るときには、何にも問題はない、上手く行っていると美化して語らないと、大臣でもクビになるのです。

 車も通らないのに、信号機だけが赤、青、黄と点滅し続ける。

 実に不気味な光景でした。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/21(水)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<福島の現実 原発に反対したら、危険人物> ※5回目の紹介

2015-10-19 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。5回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介


 原発に反対したら、危険人物

 汚染度の高い地域に行くと、もっと厳しいことになりました。

 2011年の11月には立ち入り禁止だった南相馬市の小高区が、警戒区域解除後に避難指示解除準備区域に再編されて立ち入り可能となったので、2012年5月10日に、福島県有機農業ネットワークの前代表だった根本洸一さんをお訪ねしました。

 避難指示解除準備区域というのはわかりづらい言葉ですが、立ち入ることはできるが、そこに夜宿泊することはできない、というものです。

 電気もない、上下水道も働かない。夜、泊まりたくても泊まれない。生活することのできない環境です。

 だから「準備区域」などというわかりづらいことをいうのでしょう。

 根本さんは有機農業一本で生きてこられた方です。

 その根本さんのお話は大変に衝撃的でした。

 30年前に根本さんの属している農協で、原発反対の署名運動をして、それが通った。すると、そのとき農協の理事長だった根本さんに地元の実力者から「そんなことやったら、あなたの家はつぶれますよ。息子さんは就職できない、嫁さんはもらえない」といわれた。

 当時は、地元の有力者のツルで就職するのが普通だったそうです。

 根本さんはお子さんが3人いますが、それなら地元の世話にならず自力が生きていけるようにと、奨学金はもらいましたが、3人とも大学を卒業させて、地元の世話にならず自力で就職できた。

 原発事故以前は、原発に反対する人間は危険人物だったそうです。

 「ここで原発に反対するのは、大変なことだった。私は危険人物なのな」

 と根本さんは笑っておっしゃいましたが、今になって私も、原子力村といわれる勢力に少しでも反対の意見をいうとどんな目に遭うか、よくわかるようになりました。

 しかし、私のように外部から物を見て何かいう人間と違って、現実に福島第一原発が目の前にある根本さんは、30年前から反原発を主張してきて、周囲から強い圧力を受け続け、お子さんの教育もご自分の主張を通すために方針を決めて生きてこられた。自分が正しいと思ったことを貫きとおす、人間としての本当の芯の強さに、私は深く心を打たれました。

 2011年から2013年まで福島を取材して歩いて、辛いことばかりでしたが、根本さんと出会えたことが、私があきらめかけていた人間としての希望を失わずに生きる道を改めて教えてくれたと思っています。

 根本さんとはこのあと、2011年の秋にもお会いしますが、このときも2012年の秋にお会いしたときも、相馬市に避難していて、そこからご自宅に通う生活をしておられました。

 私が2012年5月10日のお訪ねしたときには、避難先から自宅に通って試験栽培として稲作をしておられました。

 試験栽培とは、その土地で稲を栽培して、どれだけ安全な米がとれるかを試験するものです。

 根本さんの利益には一切なりません。国に委託されての仕事です。

 私は、根本さんが携わっておられる上耳谷の生産組合の試験田を見学させていただきました。その試験田は全部で10アールの田が4枚。

 私たちが見学したとき、その試験田の空間線量は、毎時0・65~0・73マイクロシーベルトでした。その数値を見て、根本さんは、

 「2011年9月頃の文科省の発表では毎時1・2くらいはあったから、その頃から比べると下がったんだなあ」

 とおっしゃいました。

 その時、少し高いところから見た、試験田周辺は無惨は姿でした。

 どこの田も、田と田の間のあぜ道の存在がかろうじてわかる程度で、一面に雑草がはびこっていて、これがかつての美田とは信じることもできない荒れ果てた野原でした。

 田畑というものは、人間が毎日手塩にかけなければその存在が成り立たないものなのだということを、痛切に感じました。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/20(火)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<福島の現実 福島の海をけがし続ける大量の汚染水> ※4回目の紹介

2015-10-16 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。4回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介


 福島の海をけがし続ける大量の汚染水

 2014年現在、事故から3年以上経っても漁業は動き出せないままです。

 福島第一原発が今の状態で、あのように汚染水を流し続けているのでは、漁業の回復は何年先になることかわかりません。福島第一原発を完全に廃炉にするまで、汚染水が海上に廃棄される状況が終わるとは考えられないのです。

 2008年度「漁業センサス」によると、福島県の漁業就業者は、1743人(内女性は111人)。大雑把にいって、

 45歳~49歳 約10%
 50歳~54歳 約13%
 55歳~59歳 約17・5%
 60歳~64歳 約13%
 65歳~69歳 約8%

 という構成になっています。

 常識的に一つの原子炉を廃炉にするのには30年から40年かかります。その間に汚染水漏れなどの事故が全く発生しないということはあり得ないのではないでしょうか。安倍首相がIOCの総会で、「福島原発の汚染水は0.3平方kmの範囲内で完全にブロックしている」といったあと、何度汚染水が漏れ出したことか。

 今まで使っていた応急の汚染水タンクは鋼版をネジで締めて作ったもので、作った会社の社長が「2、3年しか持たない間に合わせのものだ」といっていましたが、さすがに2014年からは溶接して作ったタンクを、海上から第一原発の港に運び込んで、それに今のタンクから汚染水をうつすそうです。作業員の話を聞くと、とりわけ問題なのは、1号機から3号機までメルトスルーした原子燃料がどこにあるかもわからない現状で、それを冷却し続けるために水をかけ続けなければならないことだそうです。

 さらに、2014年8月25日に大変な事実が明らかになりました。

 東京電力は、現在も毎日80億ベクレルの放射性物質が福島原発から海に流れていることを発表したのです。東京電力によると、福島第一原発から放出されている放射性物質はストロンチウム90が50億ベクレル、セシウム137が20億ベクレル、トリチウムが10億ベクレルというすさまじいもので、これが、2014年8月現在も、そして今も、毎日海中に放出されているのです。

 2014年9月7日には、もっと途方もない事実が明らかになりました。2014年5月での10ヶ月間に、福島第一原発の港湾内に出たストロンチム90とセシウム137が計約2兆ベクレルに上がる可能性が高いことが、東電の資料などでわかったというのです。

 何か東電は人ごとみたいに報告書を出しますが、それでは2014年5月以前は、どうなのですか。そしてそのあと、現在はどうなのですか。

 それについて何も言及しないのは、2014年5月の10ヶ月前に突然漏れはじめたのではなく、計算してみたら、この10ヶ月で2兆ベクレルになったということでしょう。そして、それに対する対策も何も発表されていないのだから、現在も、毎月2000億ベクレルの汚染水が港湾に流されているのでしょう。港湾は、船が出入りできなければならないという構造上、常に外洋に向かって開いています。この毎月2000億ベクレルのストロンチウム90とセシウム137は外洋に流れ出ていくしかありません。

 ともかく毎日80億ベクレル、毎月2000億ベクレルの汚染水が福島の海に流れ出しているのです。福島第一原発の汚染水処理は、もはや手を付けられない段階にまで来てしまっているということでしょう。

 (日本の食物の安全基準は、セシウム137だけで決められています。ここにストロンチムも入れるべきでしょう。ここまで大量にストロンチウムを放出しているのに、魚1キログラム100ベクレルのセシウム137だけでは、意味がありません。ストロンチウムも加えるのが当然でしょう。こんなごまかしを続けて一体何になるというのですか)

 こういう状況では、福島の前浜の海が汚染から解放され、漁業を復活できるのはいつのことになるのか見当もつきません。

 福島の漁業就業者の中で一番多いのは、50歳~54歳、55歳~59歳、60歳~64歳までの方たちです。5年後、10年後、15年後に漁業ができるようになったとして、そのとき何人の方が漁業に戻れるでしょうか。

 早く漁業を再開したい漁業関係者の方たちの気持ちはよくわかるのですが、こういう状況を知ってしまうと、「もうじきだ、もうじきだ、がまん、がまん」とはいえなくなってしまうのです。
 
 漁業再開を待って働き盛りの人たちが、貴重な人生の時間を無にしてしまっているのです。

 それにしても、安倍首相はIOCの総会で、世界を前にしてなんという大嘘をついたのか。


続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/19(月)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<福島の現実 海に入ることさえ禁じられた砂浜> ※3回目の紹介

2015-10-15 22:00:37 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。3回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介


 海に入ることさえ禁じられた砂浜

 いわき市の塩屋崎は上に建つ灯台も美しいし、その下に広がる砂浜も日本の砂浜にしては、さらさらと足に心地よい素晴らしさ。

 夏には海水浴客で賑わったということで、海水浴客を見張る塔が幾つも立っています。アメリカやオーストラリアの浜辺のように、海水浴客の安全を見張る用意が整っている。本当に美しい浜辺です。

 そのあたりは「薄磯」とよばれています。

 その浜辺で、「薄磯採鮑組合」の、組合長鈴木孝史さんと副組合長の阿部達之さんにお話を伺いました(この辺のことは『美味しんぼ 福島の真実編1』に掲載されています)。

 鈴木さんは実は、福島のサーファーとしての開拓者であり、ご自身もサーフィン道具の店を持っておられる、サーファー仲間では有名な方です。

 その鈴木さんと阿部さんのお話はえらく豪儀な物でした。

 その組合の名前の通り、お二人はアワビ漁をしておられるのですが、なんといっても利益が上がったのが「ウニの貝焼き」だったそうです。

 ホッキ貝の殻にとれたばかりのウニを盛ってそれを焼く。

 それを、市場に持って行くと、1個2000円で売れたそうです。

 市場価格で2000円ということは、消費者はそれより高い値段を貝焼きに支払っていたということです。それだけ、ウニの貝焼きは価値があった。

 アワビの方は、干しアワビを作る人に売るのですが、一番高いのは一個9000円で売れたそうです。2000円だの9000円だの、聞くだけで凄い話です。

 で、いったい、そのアワビやウニはどこでとったんですかとお尋ねすると、すぐ目の前の磯をあごで示して、

 「あの磯です」という。

 私は横須賀の秋谷という海辺の街に住んでいるので、「磯」という言葉の重さを知っています。目の前の陸続きの磯もあるし、浜から離れたところにある岩礁も磯と言います。

 磯は、私の住む秋谷でも、海の幸の宝庫という意識が強い。海草も育つし、その周辺に魚もたくさんいる。海辺近くの人間にとって、「磯」という言葉は特別の響きを持つのです。

 鈴木さんと阿部さんがあごで示した磯は、浜辺から、300メートルくらいしか離れていない。そんな間近なところにある磯で、毎年大量のアワビとウニがとれたのだそうです。

 まるで、目の前に宝の山があるようなのものです。

 しかし、原発事故以来、アワビやウニをとることはおろか、海に入ること自体禁止されてしまったといいます。

 私が尋ねたときは11月で季節はずれでしたが、毎年海水浴客で賑わった浜辺も、原発事故以来、海に入ること自体禁止されていては海水浴客も来るわけがない。鈴木さんが大好きなサーフィンも海に入ることを禁止されているから、サーファーも来ない。

 鈴木さんのサーフィン用品の店も大打撃です。

 それ以前に、目の前の磯に宝物があるのに、そこに入っていけない。

 お二人にとっては、生計を立てる重要な道を絶たれてしまったのです。

 お二人は、激することもなく、嘆きの言葉を発するわけでもなく、淡々と自分たちの現況を話して下さった。そのお二人の淡々とした様子がかえって私の心を締めつけました。

 その時お二人にお話を聞いていた場所の線量は、0.6マイクロシーベルト。

 灯台下は0.75マイクロシーベルト。灯台下の吹きだまりでは、1.65マイクロシーベルト(以下すべて、線量は一時間当たりで表示します)。少し上がった展望台では、0.3から0.4マイクロシーベルトまで風の向きと強さで変わりました。

(IRCPの基準値、年に1ミリシーベルトは毎時0.114マイクロシーベルトになります)

 あとで聞いた話ですが、民間団体が海の汚染状況を調べるために船を出して海水を採取していたら、海上保安庁の船がやってきて、海水を採取して放射線量を調べることは禁止されているといって、海水の放射線量を測定するのを許可しなかったということです。

続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/16(金)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<福島の現実 世界に嘘をついた安倍首相> ※2回目の紹介

2015-10-14 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。2回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

 世界に嘘をついた安倍首相

 2013年、IOC(国際オリンピック協会)の総会で、安倍晋三総理大臣が、オリンピックを東京に招致するための演説の中で、「福島原発の汚染水は、0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックしている」と言いました。

 その言葉を聞いて、一番驚き、同時に空しい感じを抱いたのは、福島の漁業関係者たちだったでしょう。

 福島原発は、原発自身を外洋からブロックできる構造に最初から作られていません。

 どうすれば外洋からブロックできるというのですか。

 ブロックしてしまったら、必要な資材を海から原発に運び込むという大事な作業ができなくなってしまうではありませんか。

 安倍首相の演説のあとでも、福島第一原発は何度も事故を起こし、そのたびに汚染水が海洋に漏れ出しています。

 安倍首相は全世界に向かって、福島の現実とはかけ離れたことを公言したのです。

 しかし、誰もその責任を追及しません。マスコミもその件についてなにも批判しない。なぜなのでしょう。


 相馬は福島県の北端です。

 では、福島県の南のいわきの海はどうだったでしょうか。

 まず、有名な小名浜漁港に行ってみました。

 もちろん地震の被害は見えますが、それほど甚大な被害を受けたとも思えません。それなのに人の姿はほとんど見えません。

 漁協の建物の1階に事務所がありました。

 そこで漁協の方からお話を伺って納得しました。

 2011年11月当時、小名浜から漁に出ることは禁止されていて、それでは漁港として機能しません。魚を捕ってくることができなければ、市も開けない。

 岸壁に一艘の漁船が止まって、何か忙しげに作業をしていました。

 漁船の傍らに船主が立っていました。

 話を聞くと「出漁禁止だが、整備をしないと船が駄目になるし、船員たちだってこうして仕事がなかったら困るからね」。

 しばらく港を見て回って、その船のところに戻って来たら、船主が不機嫌な顔で、
 「あれから2回も、海上保安庁の人間が回ってきて、出漁するんじゃないだろうな、としつこく念を押すんだよ。もう、いやになっちゃったよ」といいました。

 あの小名浜港が機能を停止していたのです。

続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/15(木)22:00に投稿予定です。

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える


『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<福島の現実 捕った魚を出荷できない「宝の海」> ※1回目の紹介

2015-10-13 22:00:00 | 【美味しんぼ】

『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。1回目の紹介

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

2 これが福島の現実だ

 出だしがそんなことだったので、私は自分の愛する福島が原発事故にめげず復興していっている様子を描こうと意気込んで、福島取材を始めたのです。

 しかし、実際に福島に入ってみると、その放射線の被害は厳しいものでした。

 新聞、テレビ、雑誌で読んだり見たりするのと、現地で目の前で体験するのとでは大違いです。

 取材を重ねれば重ねるほど、被害の大きさ深さが身にしみてわかってきました。

 捕った魚を出荷できない「宝の海」

 最初に行ったのが、相馬市松川浦でした。

 松川浦は津波で漁港の建物は骨組みだけ残っているものの、周囲の漁協から仕入れた魚介類を加工していた工場すべてが跡形もなく消え去っている、という惨状でした。

 しかし、建物や工場は何とかなる。

 何とかならないのが、目の前の海でした。

 福島で一番価値があったのは、福島から離れた場所ではなく、すぐ目の前で捕れる魚介類でした。

 それを「前浜」とみんなは呼んでおり、福島の前浜で捕れた魚介類は、築地の魚市場でも、特別の売り場が設けられていたそうです。

 福島の海域は、北からは日本海流という寒流、南空は黒潮という暖流がぶつかるところで、世界でも有数の漁場です。

 ところが、原発が流した汚染水によって魚介類が汚染されてしまった。

 放射能汚染された魚介類は捕ることも、売ることも、できません。

 これが、原発周辺だけでなく、福島県沿岸はすべてそうなっている。

 相馬市の漁協「相馬双葉漁協」(相馬と双葉町の漁協が合併して相馬双葉漁協となったのです)では、原発事故以前は、毎日2度入荷があったそうです。

 一度の入荷では、漁協の床が足りず魚がはみだす。それで1日に2回です。

 それも、ヒラメ、アカムツ、キンメなどの価値のある魚が多かったそうです。

 それで、漁協の建物を増築したとたんに、あの大地震でした。

 大地震による津波で施設が破壊されただけならまだしも、肝腎の前浜が放射能汚染で漁業ができなくなった。

 施設の破壊は努力すれば回復することができる。しかし、海の汚染は現在の科学では回復することが難しい。

 現実に、2014年現在、福島の前浜で捕ることができるのは、タコ、ツブ貝などしかなく、あの相馬双葉漁協の繁栄は色あせた昔の夢となってしまっています。

 2012年の11月に訪ねたとき、船だけは津波による賠償で新しくそろいましたが、することといったら、津波によるガレキが海に沈んでいるのを引き上げる、という漁業とは全然関係のない作業しかなく、漁師の皆さんは実に鬱屈していました。

 その時、集まってくれた船頭会の皆さんに「大漁唄い込み」という威勢のいい歌を歌っていただきました。

 これは、事故以前に相馬双葉漁協の皆さんがしょっちゅう歌っていた歌です。福島の前浜は宝の海だから、いつも大漁で、毎日「大漁唄い込み」の日々だったのです。

 このときのことは、『美味しんぼ 福島の真実編2』の第20話に書きました。

 漁もできないのに、私のお願いに答えて「大漁唄い込み」を歌って下さった船頭会の皆さんのあの時の表情を今思い出しても、胸に迫るものがあります。私は、なんという残酷なお願いをしてしまったのでしょうか。

 2014年現在も、相馬双葉漁協の船頭会が「大漁唄い込み」を歌ったという知らせはまだ聞いていません。

 2014年の9月だったか、漁協が試しに網を入れてみたそうです。

 すると、例年の3倍以上の魚が捕れたということです。

 福島の前浜は以前にもまして宝の海なのです。

 しかし、捕れた魚は放射能に汚染されていて、市場には出せません。

 こんな無惨なことがあるでしょうか。

 まるまると肥えて、姿形もよく、食べたら最高の味だとわかっているのに市場に出せない。

 キログラム30ベクレルまで放射能が下がってきた魚もあるが、市場では10ベクレルでも買ってくれないそうです。

 私はそのニュースを呼んで、船頭会の皆さんがどんな思いをしたか、その無念さを察して、本当に口惜しい思いをしました。

続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/14(水)22:00に投稿予定です。

 

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