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円安・物価高にはまったのは安倍・黒田氏の失政による

2023年10月21日 | 経済

 

日本窮乏化の為替政策との酷評

23年10月21日

 岸田首相の経済政策が酷評を浴びています。内閣支持率が政権発足以来の最低を続け、衆参の補欠選挙(長崎、徳島・高知)の情勢も厳しく、焦った挙句、1年限りらしい所得減税(対象者は同じ金額の定額減税)をすることを表明しました。経済理論的にも矛盾だらけです。

 

 物価上昇が続いている時に減税すれば、需要が刺激され、物価が上がる要因になる。財政が赤字の時は、税収増を国債減額に充てるべきなのに、減税に回してしまったらいつまでも財政状態は改善しない。物価対策減税をするのなら、本当に困っている対象者を絞ってやるべきです。

 

 景気が悪ければ、財政の出番だといって財源として国債を発行する。景気が好転し税収が増えれば、国債減額に回さず、使ってしまう。20年も30年もそんなことを続けてきた結果が今日です。

 

 令和国民会議(令和臨調)は経済界や学識経験者らで構成されています。今月「国の財政状況を長期的に分析する新組織を設立し、中立性を確保するために、政府から独立した形にし、国会内に置く」ことを提言しました。重要な試みです。野党あたりが率先して支持すればいいのに、動きはありません。放漫財政は野党にとっても選挙対策になると考えている。

 

 物価が上がっているのに、日銀は金利を上げない。欧米は何度も引き上げ、高金利が高止まりしている。内外金利差が開くから、円安・ドル高(1㌦=150円、20日)が常態化する。金利を上げようにも、国債金利も上がって財政が悪化するから政治が反対するのです。株価が下落すれば、株式に投資している年金基金の財源が減ってしまう。

 

 株価が3万円割れに近づいた時、慌てて日銀はETF(上場投資信託)を買い増しし、株価を下支えしました。株式市場の7%を日銀が保有し、主要国では中央銀行がこれほど株式投資をしている国はない。「日銀による株価操作」まがいのことをやっているのに、岸田首相は「日本を資産運用立国にする」と張りきる。海外投資家は官製相場の日本に来ないでしょう。

 

 日経新聞の人気コラム(大機小機)は「通貨安はかつては、他国を苦しめる近隣窮乏化政策と批判された。日本の為替レート(実質為替レート)は過去最低で、円の通貨としての実力は地に堕ちた。今や円安は自国窮乏化政策と化し、国民生活を圧迫している」(19日)とまで酷評しました。

 

 新聞各紙は「所得減税で遠のく財政再建」「効果に疑問符、インフレ助長」、「選挙対策と野党が一斉批判」、「補選2日前に表明」の見出しが並びます。恐らく自民党内の次期総裁候補らは、岸田首相が経済失政で退陣に追い込まれれば、「自分らの順番が回ってくる」とでも思い、首相をけしかけているのだと想像します。

 

 何から何まで矛盾だらけの経済政策を続けています。特に安倍派の議員は、安倍氏を神格化し、アベノミクスの火を絶やすなという構えです。「積極財政を推進する議員連盟」などが岸田氏に圧力をかけている。

 

 10月の内閣支持率は毎日新聞25%、朝日新聞29%、読売新聞34%、NHK36%などで、政権発足以来の最低を更新しているか、横ばいです。内閣支持率の低下に歯止めがかからないのは、私はずっと「異次元金融緩和と財政膨張をセットにしたアベノミクスの失政→身動き取れない財政・金融政策→止まらない円安・物価高」という連鎖の結果だと思ってきました。

 

 世論調査(読売、16日)では、「物価高による家計負担を感じていますか」の問いに「大いに感じている49%、多少感じている37%」と、86%が物価高に不満を覚えています。支持率低迷の原因をメディアは当初、旧統一教会の反社会性、マイナンバーカードに対するトラブル、長男らの幼稚な振る舞いなどと考えていました。

 

 最近になって「物価高が国民生活を脅かしている。それが岸田不信の最大の理由」と、メディアも国民も思い始めたようです。消費者物価は22年4月から17か月連続で2%(政府の補助金政策を除くと3%以上)を上回っています。食料品の値上がりは10%を超え、国民の実感では「15%のインフレ」のようです。そのうちにスタグフレーション(不況下の物価高)になる。

 

 インフレは主に海外資源高、円安による輸入物価の高騰による。安倍元首相、黒田前日銀総裁が懸命に推進した異次元緩和・財政膨張政策(マネタリズム)の結果ではなかった。「10年以上にわたる異次元緩和は間違っていたようだ。身動きがとれない迷路にはまりこんだらしい」と、黒田氏は今ごろは気が付いてくれなければ困る。

 

 良識のある経済専門家はアベノミクスの危険性に早くから気が付いていました。国民の安倍人気が高く、「歴代最長の宰相」とあって、本気で歯止めをかけようする動きが顕在化しなかったのです。どうにも見動きがとれなくなってきたのに、岸田首相はさらに事態を悪化させよとしています。

 

 初期の段階でアベノミクスの功罪を検証し、早期に軌道修正しておくべきでした。そうしておけば、もっと金融財政政策に身動きできる余地があったはずです。大きなプロジェクトほど、結果を検証せず、ずるずると続けてしまうのが日本の姿です。

 

 あまりもの不人気に首相は焦っている。世論調査で解散・総選挙の時期について聞いたところ、「来年度以降33%、再来年秋の任期満了までしない31%」(読売)です。有権者はやっと「選挙をやろうとすると、財政は膨張するし、金融政策も正常化しようとしない」ことに危機感を覚え始めているのだと、思います。

 

 岸田首相が今回の所得減税を手土産に、解散総選挙に打って出るなどという愚を冒さないよう願っています。

 

 

 


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