財政膨張をいつまで続けられるか
2019年12月24日
またまた過去最大です。103兆円という巨額の来年度予算案が決まりました。主要国の中で最悪の財政状態をいつまで続けるつもりなのかと、多くの識者、メディアの大半が懸念しています。それなのに国民に危機感が高まらないのは、予算案に多くの偽装がなされ、危機が隠されているからです。
史上最長、4選もあり得る安倍政権と言われるのですから、財政の実態を率直に示し、「国民に痛みをお願いしたい」と訴えるの筋です。やっていることはその逆です。「最強」の使い方が反対です。
「経済再生と財政健全化の両立」「消費者物価の2%上昇の実現でデフレ脱却」「国民総生産(GDP)600兆円を達成」「原発比率20-22%達成(2030年)」など、政権の主要目標はどれも現実的ではなくなりました。特に年末に決まった国家予算案は偽装の手口が見え透いています。
何度もやってきたことの繰り返し
偽装1。安倍首相、麻生蔵相がいう「経済再生と財政健全化の両立(25年に基礎的財政収支の黒字化)」は口先だけの偽装でしょう。目標達成年度を5年も先のばしている。経済再生に重点を置いても、歳出ばかり膨張し財政再建は遠のく。財政刺激の効果は一過性で、過去20年、国債残高は膨張を続けています。「財政健全化」は唱えているだけのようです。
偽装2。高めに経済成長率を設定しており、税収も増えるから財政赤字を減らせるという理屈です。政府は実質成長率を1・4%(19年度は0・9%)としているのに対し、民間予想は0・5%と低い。税収が増えるというカラクリを作るために、意図的に成長率を高く見積もっている。
偽装3。公共事業関係費は6兆8500億円で、10年ぶりの大きな規模です。国土強靭化、治山治水のためだそうです。建設現場は人手不足が続き、18年度は3・2兆円という大きな繰り越し(未消化)が生じました。では20年度予算で、なぜ削減しなかったのか。公共事業には成長率の押し上げ効果があるため、減らしたら税収見込みも減らさざるを得ないので、そうはさせない。
補正予算で国債増発の抜け道
偽装4。国債発行額は32兆6000千億円で、10年連続で減っています。日銀によるゼロ金利政策で国債の利子負担が減り、国債発行額も減らせてきた。いつまでゼロやマイナス金利が続くのか、何も言わない。さらに来年度についてみると、年度内の補正予算で経済対策(事業規26兆円)を組み、国費は7兆円が投入され、国債が必要(国債増発)になるに違いない。
偽装5。これまでも補正予算がしばしば組まれ、財源をかなり国債に頼ってきました。当初予算で国債発行額を圧縮して「よくやっただろう」と思わせる。年度途中の補正予算を繰り返し、そのたびに国債発行が増える。補正後(決算ベース)で比べてみないと、本当のことは分からない。
偽装6。おかしな財政理論を使って、財政膨張を正当化する勢力が強いのです。財政拡張派が好むMMT(現代貨幣理論)はその好例です。「インフレになったら歳出抑制に乗り出せばよい」ようなことを唱えています。財政は政治経済学であり、経済理論は通用しません。歳出抑制に転換しようとしても、政治がそれを許さない。
一度、緩めた財政節度はまずもとに戻せないのです。「景気が悪いからといって国債発行して歳出を増やす」「景気が好転して税収が増えても、ま回復が不十分だといって、国債償還に回さない」。その繰り返しです。積り積もって、国の借金は1000兆円です。必要なのは政治経済学の理論です。
企業なら決算を粉飾をしたり、偽装工作をしたりすれば、経営者は背任に問われ、追放されるしょう。それに比べ、国家の場合は予算案が国会を通ってしまえば、だれも責任を問われない。予算案は偽装されていますから、国民も「どうにかなるのだろう」と、財政危機に無頓着なのです。
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