ジネンカフェだより

真のノーマライゼーション社会を目指して…。平成19年から続いているジネンカフェの情報をお届けします。

ジネンカフェVOL.139レポート

2020-06-23 20:10:57 | Weblog
令和2年6月6日、久しぶりのジネンカフェである。2月に行った拡大版以来だから、3ヶ月ぶりということになる。しかも今回は非常事態宣言明けということで、本来なら4月に予定していたゲストさんにお話いただくところ、様々な事情で6月のゲストさんをそのままお迎えすることになった。4月に予定していた石井計義さんは7月にご登壇いただくことになっている。だから今回がVOL.139で、7月がVOL.138になるのだ。この方がいかにも緊急事態感があってよいだろう。緊張感の中でもこういう遊び心を失わずにいることは、とても大切だと思う。そこで今回のゲストは、一般社団法人南知多ビーチユニバーサルビーチプロジェクト代表理事の入山淳さん。入山さんが代表をされている法人は、南知多の豊富な観光資源でもある海や浜辺を車いすユーザー、お年寄りや小さな子供のいる家族連れなどみんなが利用できる遊びを作ることにより遊びを通して「地域共生社会の実現」につながると思い取り組まれていらっしゃる。お話のタイトルもズバリ、『車椅子でも、暮らしに楽しみを広げる ~海・外遊びの支援~』

【入山淳さんとはこんなひと】
入山淳さんは1973年、愛知県常滑市に生まれ。幼少期は、知多郡東浦町立緒川小学校にて子どもの興味・関心を大切にした学習指導を受け、常滑市に戻り、海の見える小、中学校で育ち将来は飲食業界に進むことを決め、名古屋の高校及び調理師専門学校と進まれた。株式会社 なだ万で修行したのち、イデックス株式会社、豊田産業株式会社などの業態開発や商品開発、管理業務を経験。そんなある時、福祉旅館のプロデュースを依頼されることになった。これが福祉と向きあう初めての経験で、右も左も解らなかった入山さんは、さる高齢者施設に見学へ行くことになった。しかし、そこで長年飲食業界に関わってきた入山さんには衝撃的な光景を目撃することになる。高齢者になるとどうしても固形物が食べられなくなり、固形物をミキサーで粉砕した上とろみ剤などでドロドロにして、施設によりけりだが、そのドロドロにしたものを一緒にして食べさせていたのだ。施設側にしてみれば食事タイムも時間との闘いだし、どうせお腹に入れば一緒になるのだから…と職員さんは言われるのだが、入山さんは思わず「美味しくないよなあ〜」と思ったという。こういう経験を経て高齢社会における飲食業の先細りを感じた入山さんはキッパリと見切りを付け、一般社団法人南知多ビーチユニバーサルビーチプロジェクトを立ち上げられたのだという。

【ユニバーサルビーチプロジェクトとは?】
ユニバーサルデザインとは、文化や国籍の違いなどに関わらず、だれもが利用することのできるデザインのことを指す用語だが、南知多の豊富な観光資源でもある海や浜辺を使って、これまで車いす利用の障がい者や高齢者や小さな子どもさんをお持ちのご家族などが「できなかった」ことを、みんなの力で「出来ること」に変えてゆくプロジェクトである。そのメニューはユニバーサルビーチに、ユニバーサルファーム、ユニバーサルイベントの三本柱に成っている。

【ユニバーサルビーチ】
ユニバーサルビーチの中には海水浴や、サーフィン、SUP、魚のつかみ取り、地曳き網、BBQなどが入っているが、要するに車いすに乗っていると海辺には行くことはあっても、それらのレジャーを楽しむことは難しいのだ。大体自走式・電動車いすでは、砂浜を進んでゆくことは不可能だ。でも、そのバリアとなっている砂浜にビーチマットを敷けば、車いすでも散策が出来る。そして水陸両用の車いすを使えば、海にも入れるという取り組みなのだ。

【ユニバーサルファーム】
これは文字通りの農作業である。田植えや芋掘りや収穫体験、土いじり、BBQなど。車いすでは当然これらの農作業は不可能だ。でも、ビーチマットを畑の中に敷くことによって車いすでも畑に入って行け、マットの上に座ることにより農作業体験が行える。今年は新型コロナの影響で出来なかったのだが、田んぼに入りみんなで泥んこになって遊んじゃおうという取り組みで、来年は絶対にやろうと思っているそうだ。

【ユニバーサルイベント】
地域にはたくさんユニバーサルなイベントがあって、去年体験したのは気球に乗りに行ったという。ハイキングに行ったりとか、出来ないと思っていたことが、実は皆のちょっとした手助けがあれば車いすの方でも、高齢者の方でも、どんな障がいを持っていようが、いなかろうが誰もが楽しめるイベントはたくさんあるので、それに行ってみんなで楽しむという取り組みだ。

【ユニバーサルビーチプロジェクトを立ち上げた背景】
冒頭にも書いたように、入山さんは四半世紀全国のいろいろな飲食店のプロデュースをされてきた。和食、洋食、スパゲッティ、カフェ、天ぷら屋、蕎麦屋、うどん屋などなど…。しかし、いまや高齢化社会真っ只中の日本にあって、高齢者になるとあまり食事を摂らなくなってくる。一日三食食べていた人が二食とか一食でよくなったりするのだ。その中で飲食業はもう先細りで、店舗数が徐々に下がってゆく可能性がある。今回のコロナウィルス過にあってもかなり厳しい状況になっている。そんな時に観光と福祉とを繋ぐ福祉旅館のプロデュースの話が舞い込んできたのだ。2018年4月20日オープンに向けて、せっかくだから障がいのある人も働く場にしてしまおうというコンセプトのもと完成させたという。その施設自体は障がいのある人だけではなく、高齢者も使い易く、宿泊も、観光も、食事も出来て、もちろん刻み食やミキサー食にも対応出来て、お風呂も貸し切りのお風呂にリフト浴も可能なジャグジーもつけた。ミキサー食もマグロならマグロ、イカならイカ、ひとつひとつをミキサーにかけて、ひとつひとつの素材を味わっていただけるような料理を出すような旅館をプロデュースしたという。その旅館を立ち上げるに際して、福祉に関わるのが全く初めてだった入山さんは、高齢者のグループホームや住宅型老人ホームの食事風景を見学に行かせて貰ったのだが、そこで衝撃的な光景を目の当たりにする。ご飯と味噌汁と肉じゃがを一緒にミキサーにかけ、グリーンみたいな色になったものを皆さんが召し上がっていたのである。それを食べさせていた人に「それ、美味しくないんじゃないですか?」と尋ねたところ、「いや、時間がないんです」「お腹に入ったら栄養は一緒なので…」と言いながら食べさせていた。そんな馬鹿な…と入山さんは思ったという。こんな「食」に対して裕福な日本で、高齢者になったら美味しさを味わうという行為が不可能になるのか…と、現実を目の当たりにして哀しくなった。が、長年飲食店に携わってきた入山さんは、〈そんなことは許されない! 旅行に来た時ぐらいその土地の美味しいものを味わっていただきたい!〉そんな想いで時間はかかるけれどひとつひとつの素材をミキサーにかけて、見た目にもキレイだし、素材の味をひとつひとつ確認してもらえる。それが薫りだったり、記憶にもなってゆくのだ。そして認知症を患った方でも、またあそこに行きたいと思って貰えるような旅館をつくったのだ。

【福祉旅館は完成したのだが…】
こうして福祉旅館は出来たのだが、その旅館のアンケートに答えて下さった《車いすユーザーを兄弟にもつ方》のコメントによれば、「小さな頃は海に行きたいなんていえなかった」とか、「海に連れて行ってあげられずにごめんねと謝る両親の姿を見たくなかった」《車いすユーザーを子どもにもつ親》のコメントにも「兄弟を海に連れて行ってあげたかった」「車いすでも海水浴を経験させたい」「車いすの子どもと、兄弟の遊び方が異なり、親だけで外出は大変」という声が寄せられている。また、《親が車いすユーザーになったお子さん》からの「海が好きだった親を連れて行きたい」とか「昔、釣りが趣味だったから、釣りに連れて行ってあげたい」というコメントもあり、お客さんに気軽に海遊びをしてもらうにはどうしたらよいのか? 海水浴に行くためには何が必要なのかを調べたところ、鎌倉にお住まいでアダクティブサーフィンの日本代表・内田さんと繋がり、その内田さんから須磨のユニバーサルビーチプロジェクトが必要なものをレンタルしていることを教えて下さったという。連絡をすると須磨ユニバーサルビーチプロジェクトの代表の方が南知多に来て下さり、実際に砂浜にビーチマットを敷いて、須磨の代表は車いすユーザーの方なのでビーチマットの上をどれぐらいの力で押せば良いのか体験させてもらったそうだ。須磨の代表の方も南知多のビーチを「こんないいところはない。ぜひこのビーチで《ユニバーサルビーチ》をやらせてほしい」と言って下さり、昨年第一回の南知多ユニバーサルビーチをやってみた。

【ユニバーサルビーチに必要なもの】
その時(ユニバーサルビーチ)に必要なものは、ビーチマット・ヒッポキャンプ(水陸両用車いす)・インストラクターの3点なのだが、インストラクターの人たちは、須磨ユニバーサルビーチプロジェクトの方々から、障がいのある人や高齢者がどういう状態なのか? 何が嬉しくて、何が嫌いなのか、そういうことを事前アンケートで解った上一緒に海に入ってゆくことを、また補聴器を使用している人への対応等々、細かい講習を受けたという。そしてそういうインストラクター制度や活動をされているところが愛知県にはなかったのでこれを形にしようと思い、一般社団法人を立ち上げ、福祉旅館からはコンサルタント期間も終わったので身を引いたのだそうだ。

【南知多ビーチユニバーサルビーチプロジェクトが目指すもの】
入山さんがその法人で目指しているものは、ただ単に「楽しく遊べればよい」ということではない。これによって知多半島が〈誰にでもやさしい観光地〉として全国的に有名になるのではないか? 誰でも気軽に遊びに来られるビーチがある、山がある、ファームがある…という地域になって行けば、車いすユーザーにやさしく遊びやすいということは、障がいのある人や高齢者のみならず、誰にでもやさしく遊びやすいところになるのではないか?  また、日本福祉大学が美浜にあるので、連携して学生の頃から生きた経験をしてもらえればいいなあ〜と思っている。そうすることにより、障がいがあっても不便が少なくなり、外出への意欲に繋がるし、兄弟に障がいのある子がいても、日本福祉大学の学生さんもいるので、分け隔てがない遊び方が出来るのだ。知多半島、特に南知多は企業が少なく、若者は都会に出て行きがちだけれど、そういうことを仕事として出来るようになれば知多半島の若者にとってやり甲斐のある仕事の基盤になるのではないか? 障がい者同士のコミュニティの場が出来、外に出るきっかけが生まれるのではないか? 高齢者にとってもアウトレジャーや、諦めていた体験が出来るようになる。つまりユニバーサルビーチが開催されると、そこにいままで海に来られなかった車いすユーザーやその家族や高齢者が遊びにくるようになり、その人たちと福祉を学ぶ学生さんやボランティアに来る地域の人たちとが出会い、関わりが生まれる。それによって知多半島での観光業(宿泊・飲食・土産)が潤い、いろいろな人たちが観光に訪れることによってまちのバリアフリー化が進んで、ひとにやさしい南知多、知多半島が再開発される…。つまりは南知多ビーチユニバーサルビーチプロジェクト、入山さんが目指されているものは「まちづくり」であり、「地域再生」なのであろう。




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