ジネンカフェだより

真のノーマライゼーション社会を目指して…。平成19年から続いているジネンカフェの情報をお届けします。

ジネンカフェVOL.070レポート

2013-03-22 11:52:30 | Weblog
ジネンカフェVOL.070のゲストは、株式会社中電ウイングの社員である豊田麻友子さん。
豊田さんは大学時代に建築やインテリアなどの住環境を学んでいて、福祉にも興味があり、愛知県の〈ひとにやさしい街づくり連続講座〉を受講し、まちづくりにも関心をもつ。大
卒業後、インテリア関係の会社に勤めようとしていたが、景気悪化の煽りを受けてその会社は倒産。現在の会社に入社して4年目である。特例子会社とはいえ、一般企業に勤めておられる方がゲストに来られるのは、豊田さんがはじめてではないだろうか? お話のタイトルもズバリ『「働く」ということ』

【特例子会社とは?】
豊田さんが勤めておられる中電ウイングは、名前の通り中部電力が平成13年に障がい者雇用を通して社会貢献、地域貢献をめざすことを目的として設立した特例子会社で、豊田さんはその会社の業務課に配属されており、社員の労務管理や安全衛生管理をはじめ、経理や広報や社内の環境整備などの仕事をされている。特例子会社とは、障がい者雇用の促進を目的に厚生労働省の認可の上に設立された子会社のことで、平成10年に障害者雇用促進法による当時の法定雇用率は正規従業員に対する1.6%から1.8%に改正された。中部電力本社だけでもそのパーセンテージはクリアしていたものの、重度身体障害者や知的障害者も受け入れるには設備等々が不十分だったため、新たに子会社を設立したのだそうだ。法定雇用率はこの4月から2.0%に引き上げられるが、障がい者を特例子会社で雇用した場合、親会社の法定雇用率として組み込むことができるらしい。しかし、特例子会社として認定されるには、やはり定められた基準をクリアしていなければならないという。車いすの社員を雇用するということで、あらゆる動線をフラットにしたり、多目的トイレや身体障害者用駐車場、床暖房の設置などが義務づけられている。知的障害者を雇用するにあたっても、彼らの障害特性に根ざした同じことを繰り返し行える業務内容も義務づけられている。現在、中部電力とウイングをあわせて1.95%の雇用率だという。

【中電ウイングの理念】
設立の動機が動機なだけに、中電ウイングの基本理念は〈社会貢献とビジネスの両立〉だという。ひとは皆生まれながら幸せに生きる権利がある。共生と人間尊重の精神に基づき、障がいのある方が生き生きと働ける就労の場をつくり、働く喜びを味わう機会を生み出す。
〈力あわせ、心あわせ〉といい、皆で成長して地域に貢献ができる会社を目指している。

【具体的になにをしている会社なのか?】
中電ウイングの仕事は、中電グループのノベルティグッズの箱詰めやチラシやパンブレットのデザインから印刷、本社や関係支社や火力発電所などの花壇のガーデニン作業、中電本社内の文章の集配、ダイレクトメールの配送業務などをしていて、その人の障がいに応じて適正を見極め、配属先を決めてゆくらしい。

【どんな人が働いているのか?】
現在中電ウイングの社員は72名。そのうちの52名が何らかの障がいをもっている。障がい別の内訳は、身体障害者が18名、そのうち重度(車いす・両手切断)が13名。知的障害者が32名。そのうち重度の知的障害者が6名。精神障害者2名。あとの20名が総合スタッフと呼ばれる、障がいをもってない人たちで、仕事の指導や事務などをしている。

【中電ウイングが大切にしていること】
一つ目は、安全と健康をすべてに優先するということ。二つ目は、挨拶やコミュニケーション。朝礼では必ず挨拶の練習をするそうだ。聴覚障がいをもつ社員とのコミュニケーションを取るために手話講座も行っている。その成果もあって、中電ウイングの社員はみな指文字や簡単な手話なら交わせるようになっているという。三つ目が、整理整頓。あとは個人の特性を活かした環境づくりに心懸け、限りある資源を大切にして、力をあわせて、心をあわせて目標を達成してゆく…ことだという。

【今後は…】
仕事という面でいうと、まだまだ少ないので今後も種類を増やして行きたいと思っているという。会社の見学も随時受け入れていて、案内役には知的障がいをもつ社員が担当している。そうして積極的に見学を受け入れることにより、障がいのない人たちに障がい者への偏見をなくしたり、障がいのある人たちに対しては働く喜びや、尊さを感じてもらいたいからだという。

【働く…ということ】とでも
豊田さん自身、〈働く〉ということについて、ふたつのことを感じている。ひとつ目は、お金を稼ぐという現実的なことだ。労働の対価として給料をいただき、経済的にも、精神的にも自立を果たしてゆく…ということ。もうひとつは、仲間をつくる…ということ。同僚や上司や取引先の人たちなどと接することにより、自分自身を豊かに高めてゆける。それが豊田さんが感じている「働く」ということなのだという。

【まとめに代えて】
私ならそれに加えて〈楽しみ〉と〈ひとの役にたつ〉ことのふたつを挙げたい。趣味とは異なり、仕事になるとどんなことでも大変で、それが自分の苦手としていることならなおのこと気苦労が倍になり、それで給料をもらったところで全く嬉しくない。しかし、自分の得意なこと、好きなことを仕事にしていると、どんな大変なことでも平気でやってしまえるのだ。少なくても私はそうだ。それが誰かの役に立つことであるならなおのことで、更にそれにお金がついてくるなら、こんなに素晴らしいことはないであろう。しかし、現実はそれほど甘いものではない。しかし、ひとのライフサイクルがひとりひとり違うように、ワーキングスタイルや考え方が違ってもよいと思うのだ。終身雇用が崩れてきている現代にあって、ひとつの価値観や思想にぶらさがって安心していられる時代は終わった。これからの時代は、ひとりひとりが自分の価値観や思想をもち、自分はどう生きたいのか、どう生きるべきなのか考える〈自己プロデュース〉の時代なのではないだろうか…?