VOL.091のゲストは、名古屋市の障がい者生活介護事業施設で支援員をされながらも、障がい者の生活や福祉の実情などを歌詞に織り込み、ラップにしてステージ活動をされているLot FALCONさん。これはもちろん本名ではない。ミュージシャンとして活動する時の芸名というか、ラッパーネームである。お話のタイトルは、『Limited life〜限られた生命で何が出来るか〜』
【ラップとの出会い】
FALCONさんは、1990年(平成2年)愛知県小牧市で生まれ育った。中学の時にラジオから流れるHIPHOPを耳にしてラップを聴き始める。16才の頃、小牧市が工業地帯ということもあって、ペルー人やブラジル人の子どもたちも多い。その中でも仲の良い日本人と外国人とを集めてストリート集団を築き、やんちゃをしていた時期もあったそうだ。しかし、それによって異国文化に触れる機会も多かったという。その頃からクラブに出入りし始め、生のラップと出会う。
【初めてのステージ】
19歳の時、地元のイベントへ遊びに行ったら、そこでラッパーの先輩・マーキーボーイさんのステージに出会い、その格好良さに思わず〈自分もステージに立ってラップをしたい〉と思い、2MC(ふたりでパフォーマンスをすること)として出演していたマーキーボーイさんの相方にその旨を話すと、気安く「来週もイベントがあるから出てみなよ」と誘われた。FALCONさんはもう嬉しくて1週間で歌詞を書き上げ、仲間と2MCとしてステージに上がり、パフォーマンスをしたのだそうだ。これが初のステージデビューということになる。
【ヒップホップに魅せられた理由】
FALCONさんがヒップホップに魅せられた理由は、自分が表現しやすい音楽だという点にあるそうだ。大概の歌詞付きの音楽は、一曲の中で起承転結があり、そこにストーリーが見える。しかし、唯一歌詞に起承転結が付いていなくても伝わる音楽がヒップホップのラップなのだ。音を立ててメロディーをつけながら歌詞を歌うとレゲィということになるのだが、それがFALCONさんには一番の魅力で、のめり込んで行ったという。つまり音符が読めなくても、伝えたいものがあれば音楽になる…。それがヒップホップというものなのだ。まさにバリアフリーな音楽とも言えよう。
【福祉との出会い】
FALCONさんと福祉との出会いは、至極自然ななりゆきだった。自宅の前に公園があるのだが、その公園が近くにある障がい者施設の余暇活動を行う場として使われていたのである。そしてその公園はもちろんFALCONさんにとって小さな頃からの遊び場でもあり、施設の障がい者たちと同じ空間を共有していたわけだ。その頃はさすがに一緒に遊ぶことはなかったらしいが、それでも日常的に障がい者の方たちの余暇活動の光景を目の当たりにされていたわけで、それがFALCONさんの原風景としてあるのだろう。その当時親御さんからも〈あの人たちには優しくしてあげて、困っているようだったら助けてあげなさい〉と教えられておられたそうで、その頃から〈自分が守ってあげなきゃいけないんだな…〉と思っていたそうだ。それが驚くことなかれ、保育園から小学校にあがる頃のことだという。
【ノーマライゼーションへの想い】
FALCONさん自身は、そのようなバックボーンがあって「障がい者」「健常者」と分けること自体に意味がないと思っているが、これは「社会」が作り上げてきたもので、いまは基準がゆるくなってきているらしいが、障がい児は「特別支援学校」に行き、そうではない児童は地域の「小・中学校」に通う。そのようにして人生のはじめで分けられてしまうのだ。子どもの頃から障がいをもつ子どもたちと接していれば、大人になった時にもし道で困っている人を見かけても気軽に声をかけ、それなりの対処が出来るし、自分の子どもにも教えることが出来る。しかし、小さな頃から分けられてしまうと、大人になって公共の場で出会ってもそのコミュニケーションはぎくしゃくし、困っていたとしてもどう接すればよいのか解らないので、見て見ぬふりをしてしまいがちだ。また、ひょんなことから腕とかを触られることもあり、障がいを持っている人たちに対して恐怖心や不衛生感を抱く方が少なからずおられるようだ。子どもの頃から接してないだけで、「障がい者」と呼ばれる人たちに対して勝手なイメージを作っているのである。それをなくしたいという想いから、「福祉ラッパー」になろうと決意したとか。世間に蔓延っている間違った認識を覆すのが、Lot FALCONの役目かなと思っているそうだ。
【現在の活動】
FALCONさんは現在、ライブやメディア、SNSを通じて〈限られた生命の中で何が出来るのか〉をテーマに発信している。一回きりの人生、100年も生きられない中で、自分に何が出来るのか? 自分のパフォーマンスを観たり聴いたりした人たちに考えてもらおうと思う。(お話の後半にワークショップを行い、参加者がそれぞれ発表して行ったが、それは割愛させていただきます。by大久保)FALCONさんはラッパーとしての自分、福祉の支援員としての自分、そしてひととしての自分をフルに活かして活動をされている。三重県の『希望の園』という福祉施設でライブを行ったり、同じ三重県の障がい者ディサービス施設『ファタカーサ』で〈ラップ教室〉を開催したり(ひとりの利用者さんの「ラップがしたい」とう声からFALCONさんに繋がり、施設でラップを教えているそうだ)、また仲良しになったホームレスの方のことをSNSなどで発信し、福祉の支援を受けられるように応援しておられるそうだ。
【今後の活動】
そんなFALCONさんだが、今後ともラッパーとしての活動を続けつつも、介護事業所の支援員としては、子どもと障がいをもった方が触れあえる機会を増やしてゆきたいと思っているという。FALCONさんがそうだったように、子どもの頃から両者が意識しあえる場をつくりたいと思っている。そうして自分のように主張が出来る人間が出てきてほしいのだ。子どもと障がいをもった方たちを繋げたい…。それが福祉に携わっているFALCONさんの社会的ミッションでもあるのだろう。ラッパーとしての活動は2MCからソロになり、今年の12月には初めてのCDが発売されるそうだ。
【FALCONさんの夢】
FALCONさんの夢は大きい。ラップミュージシャンとして、障がいをもつ仲間たちと一緒に日本武道館の舞台に立つこと。日本武道館の舞台に立つことは、ミュージシャンならば誰もが憧れるものだが、立ちたいと思ってもなかなか立てるところではないだろう。しかし、日本でただひとりの福祉ラッパーであるからこそ、思ってこうして表明していれば必ず夢は叶うのではないかと、FALCONさんは思っている。そして夢は強く抱き続けていれば、必ず叶うものなんだよということを、子どもや障がいをもつ仲間たちに伝えたいのだという。
【大久保的まとめ】
Lot FALCONさんに出会ったのは、いつのことだったろうか? 同じ生活介護支援事業所
の山口未樹さんがゲストに来られた時か、同僚だった西野由里さんがゲストに来られた時か…。ラップで福祉の実情を伝える音楽活動をされていると聞いたのは、その時だったか、その後だったか憶えていないが、その話を聞いた時に〈ユニークな活動をされている若者だなあ~。機会があればぜひジネンカフェのゲストとしてお招きしたいものだ〉と思ってきた。それが今回実現する運びになって、プロデューサーとしては嬉しい限りである。夢は強く抱いていれば、必ず実現するものーとFALCONさんは言ったが、強く思っているだけでは夢は実現しない。強く思うのと同時に、その夢に向かって精進し、チャンスが来たらそれを逃さず自分のものにするぐらいの強い意思の力が必要なのだ。しかし、FALCONさんなら必ずや夢を実現出来るであろう。その日が来ることを楽しみにしていよう。
【ラップとの出会い】
FALCONさんは、1990年(平成2年)愛知県小牧市で生まれ育った。中学の時にラジオから流れるHIPHOPを耳にしてラップを聴き始める。16才の頃、小牧市が工業地帯ということもあって、ペルー人やブラジル人の子どもたちも多い。その中でも仲の良い日本人と外国人とを集めてストリート集団を築き、やんちゃをしていた時期もあったそうだ。しかし、それによって異国文化に触れる機会も多かったという。その頃からクラブに出入りし始め、生のラップと出会う。
【初めてのステージ】
19歳の時、地元のイベントへ遊びに行ったら、そこでラッパーの先輩・マーキーボーイさんのステージに出会い、その格好良さに思わず〈自分もステージに立ってラップをしたい〉と思い、2MC(ふたりでパフォーマンスをすること)として出演していたマーキーボーイさんの相方にその旨を話すと、気安く「来週もイベントがあるから出てみなよ」と誘われた。FALCONさんはもう嬉しくて1週間で歌詞を書き上げ、仲間と2MCとしてステージに上がり、パフォーマンスをしたのだそうだ。これが初のステージデビューということになる。
【ヒップホップに魅せられた理由】
FALCONさんがヒップホップに魅せられた理由は、自分が表現しやすい音楽だという点にあるそうだ。大概の歌詞付きの音楽は、一曲の中で起承転結があり、そこにストーリーが見える。しかし、唯一歌詞に起承転結が付いていなくても伝わる音楽がヒップホップのラップなのだ。音を立ててメロディーをつけながら歌詞を歌うとレゲィということになるのだが、それがFALCONさんには一番の魅力で、のめり込んで行ったという。つまり音符が読めなくても、伝えたいものがあれば音楽になる…。それがヒップホップというものなのだ。まさにバリアフリーな音楽とも言えよう。
【福祉との出会い】
FALCONさんと福祉との出会いは、至極自然ななりゆきだった。自宅の前に公園があるのだが、その公園が近くにある障がい者施設の余暇活動を行う場として使われていたのである。そしてその公園はもちろんFALCONさんにとって小さな頃からの遊び場でもあり、施設の障がい者たちと同じ空間を共有していたわけだ。その頃はさすがに一緒に遊ぶことはなかったらしいが、それでも日常的に障がい者の方たちの余暇活動の光景を目の当たりにされていたわけで、それがFALCONさんの原風景としてあるのだろう。その当時親御さんからも〈あの人たちには優しくしてあげて、困っているようだったら助けてあげなさい〉と教えられておられたそうで、その頃から〈自分が守ってあげなきゃいけないんだな…〉と思っていたそうだ。それが驚くことなかれ、保育園から小学校にあがる頃のことだという。
【ノーマライゼーションへの想い】
FALCONさん自身は、そのようなバックボーンがあって「障がい者」「健常者」と分けること自体に意味がないと思っているが、これは「社会」が作り上げてきたもので、いまは基準がゆるくなってきているらしいが、障がい児は「特別支援学校」に行き、そうではない児童は地域の「小・中学校」に通う。そのようにして人生のはじめで分けられてしまうのだ。子どもの頃から障がいをもつ子どもたちと接していれば、大人になった時にもし道で困っている人を見かけても気軽に声をかけ、それなりの対処が出来るし、自分の子どもにも教えることが出来る。しかし、小さな頃から分けられてしまうと、大人になって公共の場で出会ってもそのコミュニケーションはぎくしゃくし、困っていたとしてもどう接すればよいのか解らないので、見て見ぬふりをしてしまいがちだ。また、ひょんなことから腕とかを触られることもあり、障がいを持っている人たちに対して恐怖心や不衛生感を抱く方が少なからずおられるようだ。子どもの頃から接してないだけで、「障がい者」と呼ばれる人たちに対して勝手なイメージを作っているのである。それをなくしたいという想いから、「福祉ラッパー」になろうと決意したとか。世間に蔓延っている間違った認識を覆すのが、Lot FALCONの役目かなと思っているそうだ。
【現在の活動】
FALCONさんは現在、ライブやメディア、SNSを通じて〈限られた生命の中で何が出来るのか〉をテーマに発信している。一回きりの人生、100年も生きられない中で、自分に何が出来るのか? 自分のパフォーマンスを観たり聴いたりした人たちに考えてもらおうと思う。(お話の後半にワークショップを行い、参加者がそれぞれ発表して行ったが、それは割愛させていただきます。by大久保)FALCONさんはラッパーとしての自分、福祉の支援員としての自分、そしてひととしての自分をフルに活かして活動をされている。三重県の『希望の園』という福祉施設でライブを行ったり、同じ三重県の障がい者ディサービス施設『ファタカーサ』で〈ラップ教室〉を開催したり(ひとりの利用者さんの「ラップがしたい」とう声からFALCONさんに繋がり、施設でラップを教えているそうだ)、また仲良しになったホームレスの方のことをSNSなどで発信し、福祉の支援を受けられるように応援しておられるそうだ。
【今後の活動】
そんなFALCONさんだが、今後ともラッパーとしての活動を続けつつも、介護事業所の支援員としては、子どもと障がいをもった方が触れあえる機会を増やしてゆきたいと思っているという。FALCONさんがそうだったように、子どもの頃から両者が意識しあえる場をつくりたいと思っている。そうして自分のように主張が出来る人間が出てきてほしいのだ。子どもと障がいをもった方たちを繋げたい…。それが福祉に携わっているFALCONさんの社会的ミッションでもあるのだろう。ラッパーとしての活動は2MCからソロになり、今年の12月には初めてのCDが発売されるそうだ。
【FALCONさんの夢】
FALCONさんの夢は大きい。ラップミュージシャンとして、障がいをもつ仲間たちと一緒に日本武道館の舞台に立つこと。日本武道館の舞台に立つことは、ミュージシャンならば誰もが憧れるものだが、立ちたいと思ってもなかなか立てるところではないだろう。しかし、日本でただひとりの福祉ラッパーであるからこそ、思ってこうして表明していれば必ず夢は叶うのではないかと、FALCONさんは思っている。そして夢は強く抱き続けていれば、必ず叶うものなんだよということを、子どもや障がいをもつ仲間たちに伝えたいのだという。
【大久保的まとめ】
Lot FALCONさんに出会ったのは、いつのことだったろうか? 同じ生活介護支援事業所
の山口未樹さんがゲストに来られた時か、同僚だった西野由里さんがゲストに来られた時か…。ラップで福祉の実情を伝える音楽活動をされていると聞いたのは、その時だったか、その後だったか憶えていないが、その話を聞いた時に〈ユニークな活動をされている若者だなあ~。機会があればぜひジネンカフェのゲストとしてお招きしたいものだ〉と思ってきた。それが今回実現する運びになって、プロデューサーとしては嬉しい限りである。夢は強く抱いていれば、必ず実現するものーとFALCONさんは言ったが、強く思っているだけでは夢は実現しない。強く思うのと同時に、その夢に向かって精進し、チャンスが来たらそれを逃さず自分のものにするぐらいの強い意思の力が必要なのだ。しかし、FALCONさんなら必ずや夢を実現出来るであろう。その日が来ることを楽しみにしていよう。