ジネンカフェだより

真のノーマライゼーション社会を目指して…。平成19年から続いているジネンカフェの情報をお届けします。

ジネンカフェVOL.035レポート

2010-01-18 13:05:19 | Weblog
今年に入って最初のゲストは、NPO法人 生態教育センターの河野慶子さん。河野さんは現在、岐阜県各務ヶ原市にある〈河川環境楽園・自然発見館〉で野生生物の生態を子どもたちにワークショップを通じて教える指導員として勤務されている。
ジネンカフェは、真のノーマライゼーションを広める目的で始まったプロジェクトであり、これまで障がい当事者や福祉系・子育て支援系のゲストが多かったのだが、今年の秋に名古屋で〈生物多様性条約第10回締約国会議〉が開かれることに因み、河野さんにゲストをお願いした。ノーマライゼーションと生物多様性、切り口は社会福祉と環境との分野の違いこそあれ、その目指す方向性は同じであるといえよう。お話のタイトルは、そのまますばりの『となりの野生生物こんにちは』。
河野慶子さんは、1973年神奈川県川崎市の工業地帯に生まれ育った。70年代前半と言えば日本の高度成長期が終焉を迎えた頃である。とはいうものの、まだまだ鉄鋼業や造船業などの第二次産業が栄えていた時代で、公害などという言葉も普通に使われていた覚えがある。特に工業地帯であった川崎や四日市の公害訴訟は有名だ。(因みに乳幼児がかかる「川崎病」という急性の病気があるが、それと川崎市とは無関係である)
そのことと関係があるのかないのか、ご本人は語らなかったけれど、ひとと野生生物の軋轢に関心をもった河野さんは、NPO法人 生態教育センターで活動をはじめ、活動1年目で縁あって現在の勤め先で働くことになった。古い二軒長屋の一軒を借りて住み始めたのだが、古家にはムカデやらゲジゲジなどの招かれざる客がよく姿をみせるものだ。はじめのうちは嫌な思いをされていた河野さんだったが、そこは生物の生態に関心をもつ人だけあってしばらく観察し、対処法を見いだした。そのような招かれざる客たちは、隙間が空いているから姿を現すのであり、その隙間を埋めてやれば家の中には入って来ない。入ってきたとしても、すぐにお引き取り願えるのだ。
人に忌み嫌われているハチやカラスや蛾などの対処法も同じで、相手の習性をよく知り、こちらがそれなりの対応をしていればカラスやハチを怒らせて攻撃されることはないし、人とそれら野生生物との共存・共生は可能なのだ。これはひと対野生生物という図式だけではなく、人間同士の関係性にも言えることだ。対人関係を円滑にしてゆくには、先ずは相手を理解する努力が必要なのである。
それとは逆に現在ペットとして人と近しい関係にある犬や猫は、もともと野生の動物だったオオカミや山猫を、人間が相手の習性を利用する形で飼い慣らした動物たちであり、人間に飼い慣らされる課程で人々の生活にあうよう、その習性が歪められたり誤解されているのだ。例えば日本では猫といえば魚が大好物だと信じられているが、元来彼らは肉食で、たまたま漁師の家で飼われているケースが多く、肉よりも魚の方が手に入りやすかったためだとも言われている。何世代も飼われ続けているうちに魚好きになった種族もいないとも限らないけれど…。人と共に暮らすことが彼らにとって幸せなのか? ストレスを感じていないか? という疑問が河野さんの中には絶えずあるという。しかし、それも人間関係に絶えずつきまとっている疑問のように思える。友人同士、恋人同士、親子関係、家族、そしてその地域に住む住民同士…。自分の周りにいて、自分と親しくしてくれている人たちは、自分との関係性の中でストレスを感じていないだろうか…? 自分はきちんと相手のことを理解した上で接しているだろうか…? 
 結局、人と野生生物、人と人、その親和性を持続させるためには、双方にとって〈心地よい距離感と関係性〉が必要なのかも知れない。そしてその双方にとって〈心地よい距離感と関係性〉とは、当人同士にしか解らないものがあるのだ。
 野生生物や自然界の営みを知り、理解することは、人間をも知り、理解することでもある。自然界からみれば人間も他の生物たちと同じで〈ヒト〉という種族にしか過ぎないのだから。
コメント
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