ジネンカフェだより

真のノーマライゼーション社会を目指して…。平成19年から続いているジネンカフェの情報をお届けします。

ジネンカフェVOL.083レポート

2014-06-16 19:36:46 | Weblog
VOL.083のゲストは、二度目のご登場、NPO法人くれよんBOXの代表・井上さつきさん。さつきさんのプロフィールに関しては、VOL.006のまとめに詳しく書いてあるので、そちらをご参照下さい。http://www.engawa.ne.jp/project_Jinen-cafe.htm。今回は予定されていたゲストさんの都合が悪くなり、ピンチヒッターとしてお願いしてお話してもらった。さつきさんは私と同じチェアウォーカーだが、時々ご主人と海外旅行を楽しまれておられるので、海外のバリアフリー事情はどうなっているのかお聞きしたいと思い、再度ご登場を願ったわけである。タイトルも、ズバリ『車いすで海外を旅行してー海外のバリアフリー事情』

【ハワイ紀行】
井上ご夫妻は、今年の1月23日から28日までハワイに行ってきたそうだ。当たり前のことだが、中部国際空港では冬のいでたちでハワイ行きの航空機に乗り、ハワイ・ホノルル空港に到着。空港からスロープ付きのバスに乗り、途中、日立グループのCMでお馴染みの〈 この木なんの木〉を見て散策しながら、ヒルトン ハワイアン ビレッジホテルに到着した。ホテルの部屋は広々していたそうだが、サニタリールーム(バスとトイレが一体
化している部屋)のトイレの手すりがなんと便器の後ろにもついていたそうだ。日本の多目的トイレや車いす対応トイレの場合、便器を挟んで片側に固定の手すりが付いていて、もう片方に可動式の手すり(跳ね上げ式・スライド式)が付けられている形状が一般的だ。これは車いすから便器に移乗する時に、車いすの向きを便器と正対して停め、体をスライドさせるように便座に移る人が多いためだが、アメリカでは車いすを便器の向きとは逆向きに停めて、便器の向きとは逆向きのまま移乗する人が多いためらしい。トイレやバスはプライベート空間で、お国によって、障がいによって、ひとによって、それぞれ使い方が違って来る。面白いものだ。また、バスは、浴槽に手すりがいっぱいついていたそうだ。部屋で一休みしてから、ホテル内のビーチに出て夕日を見て、まちに出て夕食 〈ババガンプ〉へ。名物のガーリックシュリンプを食べたそうだ。

【ハワイ二日目】
翌朝 リフト付きの観光バスでオプショナルツアーに参加。日本のリフトはワゴンのようになっていて、それがゆっくり上下する形状のものが多いが、このリフトは自動の折り畳み式になっていたそうだ。向かった先は港である。そう、港から船に乗って、朝食付きのホエールウオッチングを楽しんだのだ。ワイキキビーチのきれいな街並みや、ダイヤモンドヘッドも観た。肝心のクジラは、ほんの少し頭が見えただけだったという…。この船にも車いす対応トイレがあった。そうしてホテルに戻ったところ、バスの浴槽に椅子が用意されていて助かったという。ホテルには、なぜかペンギンも住んでいたとか。
再び、 ツアー会社のリフト付きバスに乗って、市内観光へ。バスの車窓から景色は良く見えた。それは、まぶしいぐらいだったという。〈エッグスンシングス〉のパンケーキを食べ、アラモアナショッピングセンターに行った。ここのトイレの手洗い台は、さつきさんは少し高めだったという。夜はホテルで花火見物をしたそうだ。この花火は、毎週金曜に打ち上げられているらしい。夕食はお酒も飲めるようなところで、アメリカといえば定番のハンバーガーを食べたそうだ。さすがはアメリカ! ポテトを頼んだら山盛りだったとか。

【三日目】
翌日から現地の人も乗るバスに乗車して、観光した。路面バスということたろう。日本の車いす対応路面バスは、乗降口がバスの中程になっていて、運転手が手動でスロープを出し入れして、車いすの固定をすることが多い。時間と手間がかかるのである。しかし、ハワイの路面バスは乗降口が前にあり、スロープ板も運転手が自動で出し入れするハイテクぶりで、車いすの固定も簡単にできたという。そうしてカハラモールに行き、アサイボールというアイスを食べたそうだ。チャイナタウンでクラシックカーをみて、露店が出ていたので揚げパンみたいなものと、シェイブアイスを食べたとか。どうも旧正月のお祭りだったらしい。しかし、アリイオラニ・パレ(最高裁判所)前あたりには人影も少なく、 有名なカメハメハ大王像も寂しげに佇んでいたとか…。夕食は、〈忍者寿司〉のスパム寿司を食べたそうだ。常夏の楽園と云われるハワイだが1月は雨期にあたり、名古屋では5月のような気候でホテルやショッピング センターは冷房がきいて肌寒く感じ、上着が手放せなかったそうだ。バリアフリーに関しては、まちなかは移動しやすく、公衆トイレはあまり見当たらなかったそうだが、ショッピングセンターやホテルといった、まちの主要な施設には車いすのまま使えるトイレが整備されていたとか。

【ヨーロッパトイレ紀行】
先ずは2008年にフランスとスペインに行った時の話である。目的地はパリとバルセロナ。ドイツを経由してフランスの空港に降り立った井上ご夫妻だったが、旅の出だしからアクシデントが…。パリに着くなり、日本から乗って行った手動車いすのタイヤがパンクしてしまったのだ。ご主人がはじめての異国の街を走りまわり、空気入れや修理用品を探したそうだ。なんとか車いすの修理を終えて、いざ観光へ。パリといえば先ずはこれでしょう! ということで、憧れのパリのエッフェル塔を観に行く。添乗員同行のツアーで行ったので、移動は基本的に普通の観光バスと飛行機でまわったのだが、フリーの日にパリでトラム(路面電車)に乗ったそうだ。乗車口はフラットで、車内は広めだったそうだ。パリの街には公衆の車いすトイレもあった。フランスへの経由地ドイツの空港のトイレは立派だった。バルセロナ空港トイレ、バルセロナのホテルの部屋のトイレとバスルームも広々としていた。

【ローマ・パリ旅行】
2011年には ローマ・パリへ行った。ローマのホテルの部屋はもちろん、有名なコロッセオにも車いすトイレがあり,コロッセオにはエレベーターもあったそうだ。オードリー・ヘップバーンの『ローマの休日』で知られているスペイン広場は、見上げるだけ。ローマには三越があった。三越は入り口に階段昇降機がついており、車いすトイレもあった。   ローマの街は石畳が多く、前回の旅行で壊れて補強した手動車いすがまたもや壊れそうだったという。ローマの特徴的なトイレ便座は・・・。驚くことに便器はあっても、便座がついていないところが多かった。その事実をネットで調べて知っていた井上夫妻は、日本から便座シートを持って行き、対応したという。はじめはついていたのだが、不逞の輩に壊されたり、持って行かれたりするのだろう。ローマに住んでいる人達はどうしているのだろう? ローマ駅案内所で、何とかしてと交渉したという。ローマからパリに行くのに列車を利用した。パリまで寝台列車で約14時間の長旅である。車内の通路は狭く 車いすでは動けない。座席を倒すとベッドになる。列車内のトイレは、非常に狭かった。パリに着き、バスに乗る。パリのバス 自動でスロープが出てきた。勝手に乗って、自由に降りるみたいな感じだ。ルーヴル美術館には車いすトイレもあった。〈フニクレール〉という乗り物に乗って、有名なモンマルトルの丘へ。フニクレールとは、坂道を上り下りするための乗り物で、日本でも長崎にある。この乗り物の乗降口もフラットだった。サクレ・クール寺院にも行ったが、寺院の中には入れなかったそうだ。この旅行は添乗員なしで、ホテルと飛行機、寝台列車の予約以外はフリーで無謀な旅でしたが、ご主人が下調べをしてくれて、ベリーリトルな英語でも何とか通じたそうだ。

【これまでの海外旅行を通して感じたこと】
これまでの海外旅行体験で感じたことは数々ある。電圧や車いすの高さ、バッテリーの種類の問題などにより、電動車いすでの海外旅行は乗り越えなければならないハードルが高いものの、介助者がいるならば手動車いすでも楽しめるということ。ただし、タイヤがパンクする危険性も考慮して、ノーパンクタイヤに替えておくとよいそうだ。また、例え電動車いすがハードルが高いとはいえ、やはり電動ユーザーは電動車いすではないと困る時もある。これは私(大久保)も海外ではないが、経験しているのでよくわかる。電動車いすのユーザーは、手動車いすではひとりで移動することが難しいから、電動を使っているわけで、自由に動けないということほど、ストレスがかかることはない。それが例え夫婦の間柄であったとしても。いや、近しいからこそ余計に気を遣わねばならない部分もあるのだろう。車いすトイレはヨーロッパが充実しているとのことだ。手すりはハワイ、ヨーロッパ共に少し高めの位置につけられている。これはおそらく欧米人と日本人の身長の違いが関係しているのだろう。便器の大きさは、ハワイ便器はさつきさんには少し大きすぎたようだが、日系人も多く、日本語も通じるところも多いので、海外デビューするにはハワイが一番適しているのではないかという。ツアーなどで日本人の添乗員が同行しているなら、なおさらのことだそうだ。