【今日の優生思想】
優生保護法は既に廃止され過去の事にみえるが、今も続いている問題である。法律はなくなっても「社会にとって障害のある人はいない方がいい」という考え方はそのまま根強く残っている。 「障害・疾病がない方がいい」は容易に「障害・疾病のある人はいない方がいい」に転換されやすい。再び繰り返さないためには、強制不妊手術の被害について歴史の闇に消えさせず、なぜ起きたか過去を検証する必要がある。そして市民、特に医療・福祉・教育専門職が過去の歴史を学ぶ機会を設けることが必要である。優生思想=ナチスの専売特許ではない。
*優生思想の理想
「人間の淘汰を出生前に完了させることを目ざしてきた」(2019,市野川容孝)
NIPT(新型出生前診断)、PGD(着床前診断) などの技術で実現されようとしている。命を選んでよいのか?
*「すでに生まれている障害者の人権・尊厳は守ろう。だが、これから生まれてくることは防ぐ。この二つはぶつからず、両立できる」というダブル・スタンダードは本当に成り立つのか?
【障害の社会モデル】
ポール・ハント 筋ジス 施設入所者
障害者にとっての真の問題は、身体ではなく社会から隔離されていることだ!
マイケル・オリバー 障害の社会モデルを提唱
障害の個人モデル(個人的悲劇モデル)では、障害を「個人の心身機能の制約」
→解決方法としては個人の身体への介入。
「障害者」が、悲劇の犠牲者にも、スーパーヒーローにもならない道を追求するものとして、障害の社会モデルを提唱した。
障害の社会モデルとは、「あるグループの人々(=障害者とされる人)に制約を強いている物理的・社会的な環境」→解決方法としては社会的環境の改善
身体的差異・機能障害(=インペアメント)と障害(=ディスアビリティ)を認識論的に切り離す。
障害=不幸を否定し、障害者の生を全肯定。個人のインペアメントではなく社会のディスアビリティの解決に焦点をあてる。
【参考文献】
・大橋由香子「〈証言〉優生保護法によって傷ついた女たちの経験から」『世界』2018年4月号(岩波書店)
・科研費研究『障害女性の障害女性をめぐる差別構造への「交差性」概念を用いたアプローチ』http://www.nabe-labo.jp/wwd/index.html
・M..オリバー&B.サーペイ著 野中猛監訳 河口尚子訳『障害学にもとづくソーシャルワーク 障害の社会モデル』 2010年(金剛出版)
DPI日本会議、DPI女性障害者ネットワーク編『障害のある女性の生活の困難 複合差別実態調査 報告書』2012年3月
・名古屋市市民局 『障害を持つ女性の生活実態調査』昭和57年3月
・新里宏二 「〈なぜ訴えたのか〉不妊手術強制 万感の怒りこめた提訴』『世界』2018年4月号(岩波書店)
樋口恵子 「引揚女性の「不法妊娠」と戦後日本の「中絶の自由」」2018年『戦争と性暴力の比較史へ向けて』(岩波書店)所収。
・毎日新聞取材班『強制不妊-旧優生保護法を問う』2019年3月(毎日新聞出版)
・優生手術に対する謝罪を求める会編 『増補新装版 優生保護法が犯した罪』2018年2月(現代書館)
・優生思想を問うネットワーク制作 DVD『忘れてほしゅうない~隠されてきた強制不妊手術』2004年制作
ハンセン病回復者支援センター制作・著作DVD『ハンセン病療養所で受けた私の被害 断種・堕胎』2019年制作・ハンセン病問題に関する検証会議 最終報告書 2005年3月
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/hansen/kanren/4a.html
• 雑誌
「特集 旧優生保護法と現代」,『精神医療』2019,No.93 (批評社)
「特集やまゆり事件から3年のいま 優生思想の源流をたどる」 『精神保健福祉ジャーナル 響き合う街で』 2019年7月号(やどかり出版)
・「特集 優生保護法と女たち」戦後の女性記録継承プロジェクト・福岡女性史研究会編 『福岡 女たちの戦後』第4号2019年8月
• 国連報告書
• OHCHR, UN Women, UNAIDS, UNDP, UNFPA, UNICEF, WHO, 2014“Eliminating forced coercive and otherwise involuntary sterilization”
Special Reporter of the Rights of Persons with Disabilities(Catalina Devandas Aguilar) 2017,“Sexual and reproductive health and rights of girls and young women with disabilities
・ その他 ・レーベンスボルン計画については、 『ヒトラーの子どもたち』(フランス
2017年制作、母親一人で育てられたフランス人男性が老年になって自らがレーベンス
ボルン計画でドイツ兵との間に生まれたことを知るドキュメンタリーがNHK BS世界のド
キュメンタリーでも紹介。
デンマークのミステリー作家ユッシ・エーズラ・オールスンは『特捜部Q―カルテ番号64』
(2010年作。翻訳は2014年ハヤカワ・ミステリ文庫上・下巻) で断種を題材にし、あと
がきで1929年から1967年までに、およそ1万1千人(主に女性)が不妊手術を受け、
その半数が強制と推測、と記している(2019年映画化)
優生保護法は既に廃止され過去の事にみえるが、今も続いている問題である。法律はなくなっても「社会にとって障害のある人はいない方がいい」という考え方はそのまま根強く残っている。 「障害・疾病がない方がいい」は容易に「障害・疾病のある人はいない方がいい」に転換されやすい。再び繰り返さないためには、強制不妊手術の被害について歴史の闇に消えさせず、なぜ起きたか過去を検証する必要がある。そして市民、特に医療・福祉・教育専門職が過去の歴史を学ぶ機会を設けることが必要である。優生思想=ナチスの専売特許ではない。
*優生思想の理想
「人間の淘汰を出生前に完了させることを目ざしてきた」(2019,市野川容孝)
NIPT(新型出生前診断)、PGD(着床前診断) などの技術で実現されようとしている。命を選んでよいのか?
*「すでに生まれている障害者の人権・尊厳は守ろう。だが、これから生まれてくることは防ぐ。この二つはぶつからず、両立できる」というダブル・スタンダードは本当に成り立つのか?
【障害の社会モデル】
ポール・ハント 筋ジス 施設入所者
障害者にとっての真の問題は、身体ではなく社会から隔離されていることだ!
マイケル・オリバー 障害の社会モデルを提唱
障害の個人モデル(個人的悲劇モデル)では、障害を「個人の心身機能の制約」
→解決方法としては個人の身体への介入。
「障害者」が、悲劇の犠牲者にも、スーパーヒーローにもならない道を追求するものとして、障害の社会モデルを提唱した。
障害の社会モデルとは、「あるグループの人々(=障害者とされる人)に制約を強いている物理的・社会的な環境」→解決方法としては社会的環境の改善
身体的差異・機能障害(=インペアメント)と障害(=ディスアビリティ)を認識論的に切り離す。
障害=不幸を否定し、障害者の生を全肯定。個人のインペアメントではなく社会のディスアビリティの解決に焦点をあてる。
【参考文献】
・大橋由香子「〈証言〉優生保護法によって傷ついた女たちの経験から」『世界』2018年4月号(岩波書店)
・科研費研究『障害女性の障害女性をめぐる差別構造への「交差性」概念を用いたアプローチ』http://www.nabe-labo.jp/wwd/index.html
・M..オリバー&B.サーペイ著 野中猛監訳 河口尚子訳『障害学にもとづくソーシャルワーク 障害の社会モデル』 2010年(金剛出版)
DPI日本会議、DPI女性障害者ネットワーク編『障害のある女性の生活の困難 複合差別実態調査 報告書』2012年3月
・名古屋市市民局 『障害を持つ女性の生活実態調査』昭和57年3月
・新里宏二 「〈なぜ訴えたのか〉不妊手術強制 万感の怒りこめた提訴』『世界』2018年4月号(岩波書店)
樋口恵子 「引揚女性の「不法妊娠」と戦後日本の「中絶の自由」」2018年『戦争と性暴力の比較史へ向けて』(岩波書店)所収。
・毎日新聞取材班『強制不妊-旧優生保護法を問う』2019年3月(毎日新聞出版)
・優生手術に対する謝罪を求める会編 『増補新装版 優生保護法が犯した罪』2018年2月(現代書館)
・優生思想を問うネットワーク制作 DVD『忘れてほしゅうない~隠されてきた強制不妊手術』2004年制作
ハンセン病回復者支援センター制作・著作DVD『ハンセン病療養所で受けた私の被害 断種・堕胎』2019年制作・ハンセン病問題に関する検証会議 最終報告書 2005年3月
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/hansen/kanren/4a.html
• 雑誌
「特集 旧優生保護法と現代」,『精神医療』2019,No.93 (批評社)
「特集やまゆり事件から3年のいま 優生思想の源流をたどる」 『精神保健福祉ジャーナル 響き合う街で』 2019年7月号(やどかり出版)
・「特集 優生保護法と女たち」戦後の女性記録継承プロジェクト・福岡女性史研究会編 『福岡 女たちの戦後』第4号2019年8月
• 国連報告書
• OHCHR, UN Women, UNAIDS, UNDP, UNFPA, UNICEF, WHO, 2014“Eliminating forced coercive and otherwise involuntary sterilization”
Special Reporter of the Rights of Persons with Disabilities(Catalina Devandas Aguilar) 2017,“Sexual and reproductive health and rights of girls and young women with disabilities
・ その他 ・レーベンスボルン計画については、 『ヒトラーの子どもたち』(フランス
2017年制作、母親一人で育てられたフランス人男性が老年になって自らがレーベンス
ボルン計画でドイツ兵との間に生まれたことを知るドキュメンタリーがNHK BS世界のド
キュメンタリーでも紹介。
デンマークのミステリー作家ユッシ・エーズラ・オールスンは『特捜部Q―カルテ番号64』
(2010年作。翻訳は2014年ハヤカワ・ミステリ文庫上・下巻) で断種を題材にし、あと
がきで1929年から1967年までに、およそ1万1千人(主に女性)が不妊手術を受け、
その半数が強制と推測、と記している(2019年映画化)