ジネンカフェだより

真のノーマライゼーション社会を目指して…。平成19年から続いているジネンカフェの情報をお届けします。

ジネンカフェVOl.053レポート

2011-08-15 13:56:00 | Weblog

8月のゲストは、あいち旅サポーターの市橋和子さん。あいち旅サポーターとは、愛知県の委託事業として名鉄観光が受託した事業であり、高齢者や障がい者の方など介助が必要な方が愛知県内を旅する場合に、無償で外出のサポートをする方たちである。この旅サポーター6名全員がヘルパー2級、ガイドヘルパー、添乗員の資格を持っている。福祉サービスの外出支援と違うところは、旅サポの場合は外出の目的地が県内の観光地であることだ。無償とはいうものの、交通費とか入場料とかは実費支払うことが原則になる。これは当たり前であろう。

ひとはどうして旅をするのか? 見聞を広めるため、日常からの遊離、リフレッシュ、ストレス解消、その目的は人それぞれであろうが、それは誰もが望んでいることだろう。かくいう筆者も旅好きで、よくあちらこちらに行っている。しかし、高齢者や障がいを持っていて、車いすを使用していたりすると、旅先での多目的トイレや、観光地、あるいは宿泊施設のバリアフリーの状況など、一般のガイドブックに載っていない情報がほしいものだが、あいち旅サポーターではそういう情報もHPで公開し、旅サポ便り等々の紙媒体でも提供している。

市橋さんはもともと旅行業界の人で、長い間添乗員をされてきた。あいち旅サポーターとして活動するようになったのは、厚労省のふるさと雇用創成事業の関係で愛知県が創成した旅サポート事業を名鉄観光が受託したことがきっかけで、市橋さん自身も添乗員としてのキャリアを活かせればいいなと思って関わったのだという。旅行業界は長いけれど、旅自体は好きでも嫌いでもなく、どちらでもよい方で、だからこそ長くこの業界を続けられていられるのではないかと市橋さんはいう。

旅行業界が長いとよく訊かれるのは、どこが一番よかったですか? という質問であるという。しかし、こういう質問ほど答えにくい質問はないだろう。旅の楽しみ方は人それぞれで違うし、いろいろな土地、国によって個性があり、良さも悪さもあるし、その人との相性もあるからだ。同じ場所へ毎日のようにツアーに行く場合も、とても良かったなあ~と思う時もあれば、いまいちだったなあ~と思う日もある。だから旅というものはその場所に行くことが重要なのではなくて、そこでの楽しみ方、人との出会いであったり、自然や動物とのふれあいであったりとか、そのようなコンテンツが重要なのではないかと市橋さんはいう。そういう意味では愛知県にも京都や北海道とは違った楽しさがある観光地だと市橋さんは思っている。そのような愛知県の魅力も、あいち旅サポーターとして発信して行きたいそうだ。

あいち旅サポーターの活動としては、個人の旅のサポートもあるが、高齢者の福祉施設の花見や紅葉狩りなどの行楽のサポート、時には一泊二日の旅行の旅程を企画提案して、当日もご一緒させていただくこともあるそうだ。またツアーの企画も行っている。これは車いすでも参加出来るということが特徴で、リフト付きの大型観光バスで県内の観光地へのツアーを実施している。車いすで参加出来るツアーは他にはなかなかないので、リピーターの方が多いのだそうだ。それに加えてイベント会場でのサポートもされている。例えば一宮の七夕まつり会場で車いすの無料貸し出しをされたり、車いすの方のサポートや、会場のバリアフリーMAPなども手作りで作成し、必要な方に配布されている。今後はHPにもっと写真を多く入れて充実させたいと思っているそうだ。

そうしたバリアフリー調査をしていて思うことは、バリアフリーが完璧に整った観光地はなかなかないという事実で、その中でも比較的に市橋さんがお薦めでき、実際にサポート要請が多いのは安城のデンパークだという。筆者も一度行ったことがあるが、確かに何のストレスも感じずに一日遊べた憶えがある。デンパークでは独自のバリアフリーMAPを作成し、必要な来場者に提供しているという。尾張瀬戸駅から川沿いに続く街並みや、名鉄知多半田駅から半田運河までの街並みも景観的によく、バリアフリーにも配慮されている。半田運河沿いに昨年春にオープンしたお食事処、お土産処『蔵のまち・魚太郎』にはエレベーターもついており、多目的トイレが一階にも二階にも設置されている。

観光地ではないが、名古屋港~仙台港~苫小牧港を結んで運行している太平洋沿海フェリー『いしかり』を使った、〈伊勢湾ランチクルーズ〉も、車いすの利用者から人気が高いらしい。『いしかり』の船内はバリアフリー整備がされて、多少段差があるものの、車いす利用者が自由に動くことが可能なのだという。

また、宿泊施設の方も最近〈シルバースター〉マーク制度というものが出来た。洋式トイレ・浴室に手すりが設置してあったり、高齢者に配慮した食事メニューの提供とか、いろいろな項目をクリアして申請をすると〈安心の宿・シルバースター〉の看板を掲げることが出来るというもので、このシルバースターの宿を探して宿泊地を決める方も増えてきている。しかし、実際にシルバースターの宿に泊まってみると、車いす用トイレがなかったり、浴場が階段でしか上れない屋上にあったり、必ずしも車いすで不自由なく利用できるというわけでもない。それはシルバースターという制度が、そうしたハード面のバリアを、従業員の人たちが階段を車いすごともちあげて運ぶなどのソフト面でカバーしていればOKという側面もあるからで、人間的な温かみが味わえる宿も多い。

愛知県内で車いすのまま入浴できる宿泊地を探してほしいという相談も多い。市橋さんが行った中では西浦温泉の銀波荘には貸し切りのバリアフリー浴場もあり、多目的トイレも完備されていたそうだ。知多半島の美浜温泉の美舟というホテルにもハンディ・キャップの方用のシャワールームがあり、ソフト面も行き届いた宿になっているそうだ。大府のあいち健康プラザの宿泊棟も、バリアフリールームや大浴場以外にハンディ・キャップの方用の浴室もあり、市橋さんがお薦めしたい宿だという。最近、閉鎖された施設を改修してオープンした『吉良の庄』というNPO法人が運営している宿も、車いす利用者用に考えられたと言っても過言ではないぐらいにハード面的に配慮された設計になっているらしい。

探すことの大変さという意味では、昼食会場も同じだ。最近はファミレスに多目的トイレが設置されているところも増えてきたが、名物料理を食べさせてくれるところでハード的に整ったところを探すことは大変に難しい。ホテルであれば整っているところが多いけれど、それ以外では瀬戸の瀬戸蔵ミュージアムなどのような公共的な施設とか、本当に数えるほどしかない。その点、道の駅は瀬戸に新しく出来た〈瀬戸しなの〉や立田村の<道の駅・立田>など、施設的にバリアフリーが整っていて、安心して食事も買い物も楽しめるという。

これまでツアー企画で車いす利用者といろいろなところへ行ったが、市橋さんが一番印象に残っているのは、〈蟹江〉に行ったツアーであるという。蟹江といってもあまり観光地のイメージはないけれど、町のボランティアガイドさんがついて案内して下さり、ツアー自体も和気藹々と進めることができたので、お客様にも満足いただけたのではないかと思っている。こうしたあいち旅サポートセンターでは、同行者さんもいつもは車いすを押しているのだけど、旅サポのスタッフが車いすを押してまわるということで、たまにはゆったりと観光気分で楽しめるのではないでしょうか?

しかし、この〈あいち旅サポート〉の事業委託期間は平成24年3月までで、その後の継続は不透明である。市橋さんたち、あいち旅サポートの方たちはこの3年間で確実に実績を積んできていて、愛知県の観光に寄与してきている。少子高齢化時代を迎えている昨今、ニーズは高まるばかりだと思う。それでなくても〈旅〉というものは、誰もが等しく楽しめなければならない。必要な活動なのだ。あいち旅サポートの活動が今後も継続され、愛知県へ観光に訪れるハンディ・キャップをもたれた方、県内のより多くの高齢者・障がい者の方たちが旅を楽しめると良いなあ~と願ってやまない。

ジネンカフェVOL.054のご案内

2011-08-07 16:35:54 | Weblog
ジネンカフェVOL.054 『暮れゆく夏のケーキ交流会』

未曾有の大震災が東日本を襲い、原発への不安が日本列島を覆いつくしています。政治も、経済も、社会も混迷を深めている現代。人々があらゆる困難に立ち向かう時、一番必要なものはひとりひとりの想いの集積であり、地域コミュニティの力です。それには土の人、風の人、多様なる人々があらゆる属性を越えて混ざりあい、語りあい、その地域と繋がってゆくことが大切です。今回のジネンカフェは愛知淑徳大学CCCのご協力の下、障がいのある人も、ない人も、学生さんも一緒にケーキを作り、食べながら語りあう交流会を企画しました。暮れゆく夏のひとときを、みなさんも私たちと共に過ごしませんか

.日時::9月11日(日)11:30~16:00
.場所:くれよんBOX(名古屋市昭和区小桜町3-11 羽ね屋敷1階)
    TEL:052-733-5955
内容:・カップケーキづくり
   ・焼きあがったケーキを思い思いにデコレーション
   ・サイコロお茶会
参加費:おとな600円、学生・子ども300円、
    淑徳大学ケーキつくり隊学生150円
    
定員:20名(先着順)

※参加される方は、ケーキの上にトッピングしたいお菓子を持って来て下さい。
※ケーキのデコレーションは、14:00からのお茶会の中で行います。
※ケーキづくりから参加されたい方は、11:30頃から作り始めますので
 それに間に合うようお越し下さい。その際のお昼ご飯は自前でお願いします。
※お茶会のコーヒー、紅茶、お茶はこちらで用意します。


主催・共催:NPO法人まちの縁側育くみ隊/かたひらかたろう
      NPO法人くれよんBOX
協力:あいち淑徳大学CCC
      
お問い合わせ/お申し込み先

NPO法人まちの縁側育くみ隊
名古屋市中区丸の内2-18-13
丸の内ステーションビル2F
まちの会所
TEL/FAX:052-201-9878
E-mail:ookubo@engawa.ne.jp