観るミステリー小説:相棒V第4話【せんみつ】

①Whodunit =誰が犯人なのか?
②Howdunit=どのように犯行を成し遂げたのか?
③Whydunit=なぜ犯行に至ったのか?


ミステリー小説にはこの三つの分類があるという。

前回の【犯人はスズキ】は①~③が見事にバランスされた良作だった。

今回の第4話は【せんみつ】は完全に③のパターン。
(あらすじはこちらの相棒の公式サイトでどうぞ)

誰が犯人か?ではなく、すでに犯人がわかっていて、
どのような経緯でその犯行を行なったか?
真の犯行の目的は何か?を明らかにしていく過程を楽しむ分野だ。

その犯人がただものではなく、千の話のうち本当のことを話すのは三つといわれる
嘘の天才【せんみつ】だというのがこの作品の大きなミソ。
このアイディアはなかなかいい。
犯人に強烈なキャラクター性を与えた。

その嘘の天才という手ごわい犯人と取り調べにあたる
水谷豊演じる杉下右京警部の取調室での一騎打ち対決はとても見応えがあった。
かなり濃い芝居だった。

今回の犯人役はゲストの芸達者な平田満・・・このVシリーズになってから
ゲストの役者は個性的で渋い演技の役者さんが起用されている。
今回の平田満の犯人役もこの【せんみつ】というキャラにピッタリだった。

このような展開のドラマはいくら脚本が良くても
演技が伴わなければおもしろさは伝わらない。
水谷豊と平田満の掛け合いはまさに絶品。
ドラマのほとんどが取調室という狭い空間で進行する展開が
より二人の役者のうまさを引き出していたような気がする。

セリフ以上に顔の表情とかで演じる部分の芝居が素晴らしかった。
今回は演技で魅せた作品といってもいいかもしれないな。



そして最後の別荘の空き巣犯逮捕といった小さい事件と
12億円宝石強奪事件という大事件が結びつく謎解き。
これはワインを樽ごと買うという仕掛けが効いていた。
このアイディアも凄いのだけど、
それ以上に平田満と水谷豊の演技がすごすぎて
このトリックの凄さがやや霞んだのはちょっともったいなかったかな。


「おみやさん」とか他にも推理モノのドラマはあるのだけど、
やはりこの相棒は濃密さでは他の追随を許さない。

よくテレビのミステリーはサスペンス(緊張)を
カメラワークを含めた映像や音で高めたり、
西村京太郎シリーズのような観光地を舞台にして映像で
旅情感を訴えるものが多いけど、
相棒はまったく違った種類のものだ。

しかしこの話でも犯人が嘘をつくときの琵琶風の音や、
産廃場の雨のシーンなど音も映像もドラマの展開上
より濃密な空間を演出するときにかなり効果的に使われていた。


そして最後に・・・平田満といえば代表作はやはり『蒲田行進曲』のヤスさん役。
その映画の中でヤスさんの「これがこれなもんで」というセリフがある。
(小指を立て、自分の女がお腹が大きくなったというしぐさをしながら)
それがこのドラマの劇中でも使われていた。

わかる人にはわかる的な、なかなか粋な遊び心。
おしゃれな演出だった。

今ひとつ謎のが、このドラマは本によって役者を選んでいるのか
役者を決めて本を書いているのかどっちなんだろう?
どうも後者っぽい気がしてならない。
今週も1時間枠で中味の濃いミステリーが堪能できた。

これでまた来週の第5話がとても楽しみになった。
ハマってます。

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