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「実力派俳優」の定義とは? 薄れゆく顔面至上主義と“ごり押し”キャスティング 202205

2022-05-15 22:26:00 | なるほど  ふぅ〜ん

「実力派俳優」の定義とは? 薄れゆく顔面至上主義と“ごり押し”キャスティング
 オリコンNews より 220515


第一線で活躍する人気俳優陣、伊藤沙莉・吉岡里帆・上白石萌音・橋本環奈(C)oricon ME inc.
 枕詞に「実力派」とつく魔訶不思議な職業は、俳優くらいではないだろうか。
それは、“実力派ではない人たち”がいるからこそ成り立っていた言葉である。いわゆる「大根役者」が対義語に当たるのかもしれないが、これまで日本の芸能界では、演技力が乏しくても、ビジュアルさえ良ければメイン抜擢されるケースが少なからずあった。しかし昨今では、そういった風潮が弱まり、「実力派俳優」「大根役者」という言葉が消えつつあるのではないだろうか。

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■男性陣から湧いたバイプレイヤーブームが風潮変えた? 女性陣も“実力”ベースの配役に
 この頃、いわゆる王道イケメン&美人ではないかもしれないが、演技が評価されてメインに抜擢されるという事象が相次いでいる。
 例えば、松下洸平は演劇畑で多くの賞を受賞していたが、ドラマ・映画・舞台でも長らく脇役として存在感を放っていた。だがNHK朝ドラ『スカーレット』(2019)で戸田恵梨香の相手役を務めるや、波瑠、吉高由里子、土屋太鳳など朝ドラヒロインを“沼落ち”させる演技で視聴者も魅了。

 女性俳優では、上白石萌音がいま最も勢いのある1人と言えるだろう。映画『ちはやふる』(2016)では広瀬すずのかるた仲間、『溺れるナイフ』(2016)では小松菜奈の地味なクラスメイト役を演じていたが、主演ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(2020)では佐藤健の恋人役を演じ、一大ブレイク。10年近くの下積みを経て、現在は舞台『千と千尋の神隠し』で、橋本環奈とWキャストを務めるまでに至った。

 NHK朝ドラ『まんぷく』(2019)でヒロイン・安藤サクラの姪、ドラマ『ルパンの娘』(2019)では深田恭子の恋敵、『私たちはどうかしている』(2020)では浜辺美波の恋敵などを演じてきた岸井ゆきのも、映画『やがて海へと届く』(2022)で浜辺美波を親友役に主役抜擢、その後もドラマ『恋せぬふたり』、『パンドラの果実』、映画『ケイコ 目を澄ませて』と、主演作が相次いでいる。

 ほか、この頃勢いを見せる俳優陣を挙げてみると、柄本佑、仲野太賀、山田裕貴、磯村勇斗、伊藤沙莉、三浦透子、古川琴音、蒔田彩珠と、男女ともにいわゆる“実力派”ばかりだ。

 当然今までも演技が評価されての抜擢はあったし、現在、王道イケメン&美人が活躍していないというわけではない。特に女性はビジュアル重視の色が強いように思うが、黒木華や松本まりか、江口のりこなど、若手以外でもこれまで“バイプレイヤー”として活躍してきた俳優陣の主役昇進が見られる。

 その前兆として、男性俳優陣のバイプレイヤーブームがあった。遠藤憲一、松重豊、小日向文世、滝藤賢一など、これまで名脇役と呼ばれてきたミドル・ベテラン俳優陣に注目が集まり、『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)も話題に。俳優は演技力あってこそ、主役たるものビジュアルも華やかであるべき、とされてきた風潮が5年ほど前から少しずつ変わってきた。その流れを受けてか、田中圭や高橋一生、中村倫也、鈴木亮平など、これまで“王道イケメン”の脇を固めてきた“実力派”達が、続々と主役昇進を果たした。

 女性でいわゆる“王道ヒロイン”の道を歩んできた俳優陣と言うと、吉岡里帆、有村架純、橋本環奈、永野芽郁、浜辺美波らだろうか。彼女らも役の幅を広げながら変わらず活躍しているが、揃って“実力派”だ。「ビジュアル先行」「大根役者」といった印象はなく、やはり確かな演技力あってこその人気を確立している。

■SNS、テレビ離れ、VOD乱立… ピンチを迎えた日本の芸能界はますます実力主義へ?

 思えば、昨今トップアイドルや人気モデルの俳優転向も少なくなったのではないか。少し前まで、他業種で人気が出たらとりあえず話題作りにキャスティング、という動きが多く見られた。だが、アイドルやモデル、芸人にしても、演技が下手であればすぐにSNSで叩かれる。元AKBにしても、俳優業を続けているのは、やはり演技力あってこその面々ばかり。他業種からの俳優転向のハードルは高まっているのかもしれない。

 その理由として、「“事務所ごり押し”が通用しない時代になった」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「これまではテレビが甚大な力を持っていたため、とにかくテレビに出ている俳優、よく見る俳優に人気が集中していた。
 つまり、テレビ側がある程度タレントの人気をコントロールできていました。芸能事務所側からしても、場数を踏むことで経験値を積み、演技力は後からついてくればいいとする考えもありました。ですがSNSが発達した今、ネットミームに日本ドラマを“学芸会”と貶める表現があるように、演技力が伴っていないと、逆に“晒し上げられる”危険性が高くなっているのです」(同)

 さらにはテレビ離れが進み、YouTubeやVODで視聴者が好きな俳優、好きな作品を選ぶ時代となった。演技力が乏しい役者が出ようものなら、すぐさまチャンネルは変えられてしまう。実際、前期ドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)では子役オーディションに2年間かけ、300人を審査したという。それにより選ばれた毎田暖乃は、堤真一の妻役・石田ゆり子の生まれ変わりの小学生という難しい設定ながら、見事な演技が話題を呼び、作品の高評価に繋がっていった事例もある。

■タレント独立相次ぐ今も、“事務所の価値”維持する『東宝シンデレラ』の先進性

 そういった“実力主義”が強まっている影響か、昨今、俳優陣の事務所退所や独立が相次いでいる。そんな中でも、事務所としての価値をしっかり担保しているのが東宝芸能だ。
 1984年より、角川映画が原田知世や薬師丸ひろ子などのアイドル女優を輩出していたことに対抗したオーディション『東宝シンデレラ』を開催。沢口靖子、斉藤由貴、長澤まさみ、上白石姉妹、浜辺美波らを輩出してきた。

 その背景には、しっかりと演技の土台を築き上げる事務所の体制がある。彼女らは受賞後すぐに主演抜擢するケースは極めて少なく、コンテストからブレイクまで4~5年かけてじっくり育てる。またブレイク後も、“王道ヒロイン”だけでなく助演としても経験を積みながら、コメディ、シリアス、様々な作品を通してしっかりと実力を培っている印象だ。

 コンテスト自体も形式的に毎年開催するのではなく、3~6年に1回の不定期開催。ビジュアルだけで短期的な可能性を見ているのではなく、しっかりと長年活躍できる逸材を掘り出そうとしている表れであろう。
 そういった事務所の真摯な姿勢あってか、第1回グランプリの沢口靖子、ファイナリストの斉藤由貴、先述の長澤まさみら揃って、コンテスト受賞以来、しっかりと俳優としての立ち位置を形成し、誰1人独立していない。

「そもそも歌舞伎では、人気・実力・華を持つ『一枚目』(主役)、容姿端麗な人物が演じる『二枚目』(色男)、滑稽な役を演じる『三枚目』(道化)、中堅役者で物語に安定感を与える『四枚目』(中軸)などの構造があった。
 トレンディドラマあたりから、この『一枚目』の概念が薄れ、いわゆる『二枚目』が主役を張る傾向に。それでも好評を得ていたのは、当時は“スター”という言葉に現実味があったから。

 しかし00年代半ばあたりから、“人気俳優”の言葉が大安売りになり、これに視聴者はうんざり。メディア多様化・分散の流れもあり、人気が一極集中することがなくなった。天海祐希さんあたりが“スター”の最後でしょう。そしてマスコミが創り上げた“スター”が叩かれやすい現代、本当の実力を持つ者が人気、華を得るようになってきた。つまり、あるべき姿に…原点へと回帰していっているのかもしれません」(衣輪氏)

 VODの普及や韓ドラ人気の勢いなどにより、世界中の名作が横並びとなった今、制作陣も1人1人のキャスティングに慎重なのは当然。今後、“事務所ごり押し”が淘汰され、きちんと“実力”を育てる事務所が重宝されていくだろう。かくして日本のエンタメ界も益々実力主義が強まり、“実力派俳優”という言葉が死語になる日は近いかもしれない。

(文/西島亨)
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⚠️観光地にゴミをポイ捨てする日本人、伝統的倫理観「旅の恥はかき捨て」の末路 202205

2022-05-15 21:59:00 | 気になる モノ・コト

🚯観光地にゴミをポイ捨てする日本人、伝統的倫理観「旅の恥はかき捨て」の末路
 ダイヤモンド onlain より 220515  窪田順生


🚯全国各地の観光地に散乱するゴミ、
    日本人の伝統的価値観のせい?
 3年ぶりの「行動制限なし」の大型連休に浮かれるあまり、「モラルの制限」までなくなった人が続出している。
 全国の観光地で「ポイ捨て」どころではない,ゴミの不法投棄被害が問題になっているのだ。

 例えば、日本テレビが5月9日、神奈川県の海岸で清掃活動を同行取材したところ、バーベキュー食材などのゴミが山積みになっているのは毎度のこととして、なんと「バーベキューコンロ」までが放置されていたのだ。
 アウトドアブームもあって、ホームセンターやネットで手頃なものは2000円程度で購入できるので、「使い捨て」にしているのだ。このようなコンロの不法投棄は、コロナ禍で飲食店が休業してバーベキュー人気が高まった時期から、全国各地の河原やビーチで急速に増えているという。

 また、同様の問題はキャンプ場でも多発している。和歌山県九度山町で、キャンプ場を経営する男性は、3組の家族連れが使用したという区画にゴミが散乱している写真と共に、こんな怒りのツイートをして話題になった。

「二度と来るな。ゴミ箱まで用意してるのにこれはひどい。番号も名前もアカウントも全部晒したいわ」

 あまりにもひどい「観光公害」の実態を耳にすると、怒りでハラワタが煮えくり返るという人も多いのではないか。
 日本人といえば、サッカーワールドカップの試合後にゴミ掃除をして世界から称賛されるなど、自他共に認める「マナーのいい国民」という認識が広まっている。にもかかわらず、この体たらく。もし現場を目撃したら徹底的に糾弾して、性根を叩き直してやりたいと感じる人もいらっしゃるだろう。

 ただ、厳しいことを言わせていただくと、仮に自警団のようなものを結成して、ゴミのポイ捨てをする観光客を捕まえて血祭りにあげたところで、この問題が解決することはないだろう。

 観光地にゴミをポイ捨てしてサクッとその場を立ち去る、という「旅の恥はかき捨て」的な振る舞いは、日本人の伝統的倫理観のひとつだからだ。

🚯「マナーがいい」なんて勘違い?! 
    日本人が世界の観光地を荒らしてきたのはなぜ?
「日本人のマナーは世界一」という話が触れ回られるようになったのは、実はこの20年程度の比較的新しい話である。それまでは観光地でバカ騒ぎをして、ゴミをポイ捨てするといえば、日本人の定番だったのだ。

 詳しくは、『バブル期日本人の「蛮行」に苦しんだハワイに見る観光業の未来』や『石垣島のラーメン店を「日本人お断り営業」に追い込んだ観光公害の深刻』をお読みいただきたいが、バブル期あたりまで日本人観光客は海外でも国内でも「マナー最悪」という評価だった。
 どこへ行っても大声でバカ騒ぎをして、地元住民を悩ました。教会や聖なる場所にもズカズカと土足で踏み入って、「ハイ、チーズ」とバシャバシャ写真を撮って、ゴミをポイ捨てして帰っていく。その傍若無人な振る舞いは、1987年の米タイムス誌に、「世界の観光地を荒らすバーバリアン(野蛮人)」なんて特集されるほどだった。

「それは今の中国人観光客と同じで急速な経済成長で、まだ国際感覚が追いついていなかったから」と言い訳をする人も多いが、そういう表面的な話ではなく、100年以上前から確認されている、伝統的な日本人の「旅先での振る舞い方」なのだ。

 例えば、1899年(明治32年)から1914年(大正3年)まで中国・長江に滞在していた帝国海軍・桂頼三は『長江十年:支那物語』のなかで、国際都市・上海を訪れた日本人たちが河原で「日本式花見」を催した時について触れている。

「飲む、食ふ、歌ふ、三昧や太鼓の楽隊入りの大騒ぎ、果ては踊る、舞ふ、跳る」という「乱痴気」や、「狂ひ廻はる有様」を見た外国人が珍しそうに眺めていて、「赤面の至り」だったと記述している。

 100年以上前から日本人は「旅の恥はかき捨て」と言わんばかりに観光地でハメを外してきたのだ。「久々の制限なしのGWでついはしゃいじゃった」とか「にわかキャンパーが増えている」という話ではなく、シンプルにこれが日本人の伝統的な観光地での立ち振る舞いなのだ。

 では、なぜこうなってしまうのか。

🚯周りの目を過度に気にする日本人 
    解放されるとリミッター崩壊
 いろいろな考えがあるだろうが、筆者は「自分が周囲にどう見られるか」ということを過度に気にする日本人の国民性が関係しているような気がする。

 20年8月、同志社大学の研究チームが年齢や居住地が日本の縮図になるように1000人を選んで、なぜマスクを着けるのかということを調査をした。その結果、『感染が怖いからでも他の人を守るためでもなく「みんなが着けているから」』(日本経済新聞20年8月11日)ということが明らかになった。

 つまり、「あの人、みんなが着けているマスクをなぜしないんだ」と周囲の人に思われたくなくてマスクを着けているというのだ。

 このように「自分が周囲にどう見られているか」を過度に気にする日本人は、自分の生活圏ではあまり悪さをしない。家の前で、ゴミの不法投棄をしたり、バーベキューコンロを道路に放置すれば、「あそこの家はヤバい」と白い目で見られてしまう。「周囲の目」が抑止力になっているのだ。

 しかし、ひとたび生活圏から離れた海外や観光地に行くと、その抑止力が一気にパアになってしまう。周囲は知らない人ばかりだし、ヘタすれば二度と訪れないので、心おきなくゴミもポイ捨てできるし、バーベキューコンロの不法投棄もできる。酔っ払って人の家の前で吐くこともできる。

 普段は「周囲の目」を気にしながらビクビク生きているので、そこから解放されると反動で急に気が大きくなって、「旅の恥はかき捨て」のフィーバー状態に陥ってしまうのである。

 だから、観光地のゴミ問題で精神論を振りかざしたところで意味はない。日本人が自分の行動を律するのは、「周囲の目」を気にした時だけなので、「マナーが悪い」「モラルがない」と精神面を注意されたところで、馬の耳に念仏なのだ。

🚯「観光公害」はモラルで解決できない 
    日本の観光地を救う手はタイにあり!?
「観光公害」という問題が、モラルやマナーという観光客側の精神論で解決できないというのは、実は日本だけではなく、世界の常識となっている。

 世界中から観光客が押し寄せるような観光地では、「呼びかけ」や「お願い」をいくらしてもまったく意味がない。そこで続々と「有料化」や「規制」というシステムを導入している。例えば、混雑やゴミ問題が深刻なっているイタリアの世界的観光地ベネチアでは、街の清掃や補修費用にあてるために観光客から「入場料」を徴収するようになる。

 では、それを踏まえて、不法投棄が深刻な日本の観光地はどうすればいいのか。個人的には、日本人が最も恐れる「自分が周囲にどう見られるか」ということを逆手にとったシステムを導入をするべきだと考えている。

 例えば、キャンプ場などの場合、利用前に身分証明書を提示して、自分が借りた区画にゴミの不法投棄などがあった場合、自宅に着払いで送り届けてもいいという誓約書にサインをさせるようにしてはどうか。

「自分が周囲にどう見られるか」を過度に気にする日本人にとって、自宅に大量のゴミが送りつけられるなんて事態は絶対に避けたい。「旅の恥はかき捨て」ができないシステムだ。

「そんなマンガのようなアイディアは現実的ではない」と思う人もいるかもしれないが、アジアを代表する観光立国では、すでにこれは実現化されている。タイだ。

 タイのカオヤイ国立公園は、絶滅の危機に瀕した動植物が多く生息しており、2005年には世界自然遺産に登録された。そのため多くの観光客が訪れているのだが、やはりそれだけ多くなるとマナーの悪い人間も出てくる。
 そこで、対策として、ポイ捨てをしたことが判明した場合、「カオヤイ国立公園での忘れ物です」と書かれたメモをつけて、自宅にゴミが送り返されるようになっている。

 日本では国立公園というのは、タダで好き勝手に入れてゴミも捨て放題というイメージだが、海外のナショナルパークは入場料をとって、身分証明書などの提示を求められる場合も少なくない。タイもそのひとつで、利用時に住所を登録するのだ。

 日本がこういうシステムを導入するという話になると、どうせ「プライバシーがない」「公園は誰もが楽しめる憩いの場だ」とかいう反対運動が起きるので、国立公園は難しいが、民間のキャンプ場ならば、自分たちでルールを決めることができる。

 観光地にゴミを散乱させたまま帰るような人たちというのは基本的に、見ず知らずの土地でどんな非常識なことをしても、自分の日常生活が脅かされることがない、という慢心がある。ゴミを送りつけることで、それが大間違いだということをわからせていくのだ。

🚯「お客様は神様です」の勘違い
    観光地は無料という常識を変えよう
 という話をすると決まって出てくるのが、「そんなに規制を厳しくしたらゴミは減るけど観光客も減ってしまう」という慎重論だ。

 最近も多くのバーベキュー客でにぎわう埼玉の人気スポット・飯能河原が、ゴミや騒音が問題になっているので実験的に有料化にしたところ、利用客が大幅に減って、周囲の観光業者が悲鳴をあげている、というニュースがあった。

 しかし、神奈川県川崎市の多摩川河川敷のように、バーベキュー場を有料化したことでゴミも減って、河川の自然環境も守られるようになったというケースは山ほどある。
 当初は利用者も減るだろうが、それにともなって「カネを払わずバカ騒ぎをしたい」というマナーの悪い客も減っていく。有料化で清掃などの環境整備も進むので、観光池としての満足度が上がっていく。長い目で見れば、有料化は観光客と観光地の質を向上していくことになるのだ。

 そこに加えて、筆者はそのような、「無料観光地」こそが日本人観光客のマナーを悪くさせた「真犯人」だと思っている。ただでさえ、「旅の恥はかき捨て」という倫理観があるところに、「観光地はタダが当たり前」ということが、マナーの悪い輩をさらにつけあがらせてしまったのだ。

 というのも,日本の「客」というのは、ちょっとでも甘い顔を見せると,「オレはお客様だぞ」とでかい顔をするようになってしまう傾向があるからだ。
 それを象徴するのが,浪曲師・三波春夫さんの名言「お客様は神様です」だ。ご存じの方も多いだろうが,これはもともと三波さんの「歌」に対する心の持ち方について語ったものだ。

「歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです」(三波春夫オフィシャルサイト)
 しかし、いつの間にやらこの言葉は「顧客至上主義」の文脈で使われるようになる。モンスタークレーマーたちが王様のように振る舞って、店側に土下座を迫るような場面でも、「客は神様だろ!」なんてすごむことがある。

 実はこれとまったく同じことが、「旅の恥はかき捨て」でも起きている。

🚯自国の観光客を甘やかしすぎ
     傍若無人な振る舞いに終止符を
「旅の恥はかき捨て」という言葉の本来の意味はこうだ。その土地にはそこにしかない風習や文化があり、旅人はそれを知らないので、行く先々で恥をかくこともある。でも、旅というのはそういうものなので、そんなに気に病むものではない、というものだ。実際、「Weblio辞書」の中にはこう解説されている。

<旅先で恥をかいても、それをネタに後々まで馬鹿にされるようなことにはならないので、その場かぎりと思って忘れるがよい、という意味合いのことわざ>
 しかし、今多くの人は「旅の恥はかき捨て」というのは、これまで本稿で述べてきたように、旅先では誰も知らないから少しくらい非常識なことをしても大丈夫、というような意味だと解釈をしている。

 つまり、「お客様は神様です」とまったく同じで、観光する側がサービス提供側に対して、非常に優位な立場にいて、傍若無人に振る舞ってもいいというような「免罪符」的な意味合いに変えられてしまったのだ。

 モンスタークレーマーのような問題が増えていることからもわかるように、日本は「客」を甘やかし過ぎてきた。観光も同じで、これまで「無料」や「安くてうまい」で観光客をチヤホヤしてきた。それが「旅の恥はかき捨て」という伝統的倫理観を持つ一部の日本人観光客をつけあがらせてきたのではないか。

 近年、外国人観光客が増えていたので、ゴミ問題など観光地のトラブルはすべて彼らのせいという風潮があった。それがコロナ禍で外国人観光客が消えてしまったことで、罪をなすりつける相手がないので、これまで目立たなかった日本人観光客の「悪行」が一気に表面化してきている。

 裏を返せば、外国人観光客の受け入れを再開したら、またこの問題は「マナーの悪い外国人が悪い」という話にすり替えてウヤムヤにされるということだ。

 そういう意味では今がチャンスだ。観光公害はマナーやモラル、そして民度などの精神論で解決できるものではない、という現実としっかり向き合う。そして、世界の観光地を見習って、有料化やペナルティなど観光客側にも一定の負担があるシステムを導入するのだ。

「日本人のマナーは世界一」なんて夢みたいなことを言っていないので、マナーの悪いお国柄ならではの、現実的な観光公害対策を考えていくべきだ。

(ノンフィクションライター 窪田順生)



💋いつのまにか、公衆道徳・道徳と言う言葉が死語に。
  これも日教組のおかげ?
   道徳がモラル・マナー・エチケットに置き換わり、有名無実化…
     外来語が主になれば、本当の意味が消える様な、ただの音
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🚶‍♀️…向島清水:渡シ場 220515

2022-05-15 17:27:00 | 🚶 歩く
🚙〜24号線〜伏見Std〜左岸堤防道〜隠元橋〜>
🚶‍♀️…右岸河川敷…隠元橋…左岸堤防道…同:47km碑+…伏見区向島(清水町⇆渡シ場町⇆)…左岸堤防道47.4km碑…隠元橋…駐屯地沿〜>
🚶‍♀️10768歩2kg

⛅️:隠元橋20℃>19℃:肌寒い曇天
 十五夜月望み薄…

🚙パンフ運び:未熟な日曜ドライバー多し!曲る直前に指示器!法定以下で延々と…今日は参った。

左岸堤防道47.4km碑付近では綿の様な種子が舞う

夕食)魚缶詰とミニ🥐,生卵







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⚠️ 戦場で武器・弾薬を運搬! ニュース報道では分からない「軍事ロジスティクス」の深淵 202205

2022-05-15 13:25:00 | 気になる モノ・コト

戦場で武器・弾薬を運搬! ニュース報道では分からない「軍事ロジスティクス」の深淵
 Melkmal より 220515 石津朋之(歴史学者)


⚫︎ウクライナ報道で広まった専門用語

ウクライナ領内に乗り捨てられていたロシア軍の燃料タンク車

 2月下旬のソ連軍によるウクライナ侵攻以降、世界各国のメディアはその実相を詳細に伝えている。そうした報道の中で、

【写真】ロシア軍の苦戦原因は「中国製の安いタイヤ」だった? タイヤが破損したロシア軍の車両を見る

・ロジスティクス
・兵站(へいたん)
・補給

といった、やや耳慣れない専門用語が見受けられるようになった。
 そこで、この小論では軍事ロジスティクスについて分かりやすく説明してみたい。

⚫︎戦争のプロはロジスティクスを語る

 マーチン・ファン・クレフェルト『増補新版 補給戦――ヴァレンシュタインからパットンまでのロジスティクスの歴史』(画像:中央公論新社)
 イスラエルの歴史家マーチン・ファン・クレフェルトは、その主著『増補新版 補給戦――ヴァレンシュタインからパットンまでのロジスティクスの歴史』で、ロジスティクスをめぐる術(アート)を、
「軍隊を動かし、かつ軍隊に補給する実際的方法」
と定義した。

 端的に言えば、ロジスティクスをめぐる術(アート)とは指揮下の兵士に対して、それなくしては兵士として活動できない「1日当たり3000kcal」を補給できるか否かの問題である。彼はまた、戦争をめぐる問題の
  「90%」はロジスティクスに関係するとも述べている。

 もとより、ロジスティクスという言葉が意味するところについては、論者によって見解は大きく異なるが、この小論では、物資の「流れ(フロー)」――物流――を中心に考察を進めたい。
「戦争のプロはロジスティクスを語り、戦争の素人は戦略を語る」
との格言がある。

 1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争でもそうだったが、テレビなどメディアでは最前線の戦いの場面ばかりが話題にされ、アメリカ本土やヨーロッパなどから中東地域まで軍隊を移動させ、兵士に糧食や水を提供し、必要な武器および弾薬を運搬するという、戦いの基盤となるロジスティクスの側面はほとんど注目されなかった。

 だが、仮にロジスティクスが機能不全に陥れば、いかに世界最強のアメリカ軍や多国籍軍(有志連合軍)といえどもほとんど戦えないのである。

⚫︎ロジスティクスの重要性

ウクライナと国境を接するロシア南部ロストフ州の道路を進むロシア軍車両(画像:)

 ロジスティクスの歴史を振り返ってみれば、例えば中世ヨーロッパの戦争では、基本的に侵攻した地域を「略奪」することによってのみ、軍隊は維持され得た。だが、略奪を基礎とする中世のロジスティクスのあり方は、19世紀の新たな戦争を賄うには問題が多過ぎた。

 その結果、この時期には組織管理上の変化が見られたが、その最も重要なものが、ロジスティクスという業務が正式に軍隊の中に組み込まれたことであり、こうした変化をイギリスの歴史家マイケル・ハワードは
「管理革命」
と表現した。この時期、現地調達を徹底することによって戦いの規模と範囲を劇的に変えたナポレオン・ボナパルトの戦争でさえ、ロジスティクスをめぐる問題がその戦略を規定したのである。

 こうした略奪の歴史が1914年の第1次世界大戦を契機として消滅したのは、戦争が突如として人道的なものに変化したからではない。戦場での物資の消費量が膨大になった結果、もはや軍隊はその所要を現地調達あるいは徴発することが不可能になったからである。

 ロジスティクスの重要性を一言で表現すると、古代から今日に至るまで戦争の様相は「戦略」よりも「ロジスティクスの限界」――兵站支援限界――によって規定されてきたとなろう。つまり、ロジスティクスこそ戦いの様相、そして用いられる戦略などを規定する大きな、時として最も大きな要因なのである。

 戦略を策定する行為を、あたかも真っ白なカンバスに絵を描くように捉える論者が多数存在する。ビジネスの世界であれば経営者が大きな目標を掲げ、それに向かってトップダウンで戦略を下位の部署に落としていくとの発想である。

 なるほどこれは外部から見て理解しやすく、格好の良いものである。しかしながら、たとえ戦略家が地図を広げてどれほど壮大な構想を練ったとしても、それを支える基盤――ロジスティクス――がなければ、しょせんは白昼夢にすぎない。つまり、カンバスの大きさを規定するのがロジスティクスなのである。

 実際、歴史を振り返ってみれば、戦いの場所や時期、規模を少なからず規定してきたのはロジスティクスの限界あるいは制約であったことが理解できる。湾岸戦争やイラク戦争で、とりわけアメリカ軍はいとも簡単に最前線まで兵士や物資を移送させたように見えるが、それが可能であったのは同国軍が中東地域へと至るロジスティクスの線(ライン)――例えばシーレーン――を確保し、それを維持し得たからである。

 もちろん、ロジスティクスの限界は時代と共に変化する。例えば、有名な古戦場の位置を地図で確かめてみれば、ほとんどが河川や運河の近くである事実に直ちに気が付くであろう。大量の兵士や物資を移送するには昔は河川や運河に頼るしか方法がなかったからである。河川沿いにロジスティクス拠点を設けて、そこから行動可能な範囲内で戦ったのである。

⚫︎鉄道とコンテナの活用
 ロジスティクスの観点から近代の戦争の様相を変えた大きな転換点は、疑いなく鉄道の登場であった。

 大量の兵士や物資を絶え間なく内陸部へと送り込め、しかも最前線で負傷した兵士を迅速に後送し治療を施すことが可能になった。その後のトラックの登場――自動車化――によっても、やはり戦争は変化した。

 また、20世紀後半でその代表的な事例はコンテナである。コンテナ化、さらにはパレット化の結果、必要な物資の迅速かつ大量の移送が可能になった。「軍事ロジスティクスにおける革命」のひとつと評価されるゆえんである。

 アメリカを中心として各国の軍隊でコンテナ――国際基準規格(ISO)コンテナ――が広く使用され始めたのは1980年代であり、前述の湾岸戦争では4万ものコンテナが用いられたという。だが、その半分は収納品を把握できず、現地で開梱(かいこん)し確認する作業が必要であった。その後のイラク戦争では、RFIDという電子タグの導入によってこの問題が解決された。

 つまり今日では、コンテナそのものはもとより、そこに収納された個々の物資についてもその所在を正確かつリアルタイムで把握可能な態勢が整っている。ロジスティクスの「可視化」が実現したのである。なお、不定形の物資を移送する際はコンテナではなく、パレットを用いるのが一般的である。「箱」ではなく「板」に載せて移送するとの発想である。

⚫︎ロジスティクスを制する者はビジネスを制する
 ビジネスの世界には「ロジスティクス4.0」という概念がある。これは、人工知能(AI)、 モノのインターネット(IoT)、ロボティクスといった近年の新たな技術イノベーションとそれらの応用が、物流のあり方を根本的に変えつつあることを意味する。

 実際、こうした最先端技術の活用の結果、物流の「省人化」や「標準化」、さらには「装置産業化」が生じつつある。そして、こうした技術イノベーションの活用は、軍事ロジスティクスの領域でも大きな可能性を秘めている。

 民間企業であれ軍隊であれ、伝統的にロジスティクスに関わる大きな課題のひとつは、「ラストワンマイル」の移送であった。鉄道を用いても航空機を用いても、最前線までの「最後の行程」は、トラック、馬、最悪の場合はヒトに頼らざるを得ないとの事実は、歴史を通じてロジスティクス担当者を悩ませてきたのである。

 だが今後、このラストワンマイルは自動配達ロボットやドローンなどの運用によって、無人化が可能になるかもしれない。

⚫︎プロセスとしてのロジスティクス
 また、民間企業であれ軍隊であれ、ロジスティクスとは組織の物流部署だけに任せておくことは許されず、組織全体で対応すべき領域である。

 実にロジスティクスは、装備品もしくは商品の企画段階に始まり、その廃棄に至るまでライフサイクル全般について顧客(ユーザー)を支援することに他ならないからである。

 つまり装備品の移送にとどまることなく、顧客が継続的に使用可能なことを保証する必要がある。装備品の企画、設計、サービス、補修部品といった一連の業務は、決して独立したものでなく、相互に密接に関係しているのであり、ロジスティクスとはまさに
「プロセス」
である。

 確認するが、ロジスティクスについて真に理解しようとすれば、装備品の企画段階からその後の支援(サービス)や補修部品に至るまでのプロセス全般を視野に入れることが求められる。

 当然ながら、戦争の遂行にはいわゆる「シューター」(兵器など)の確保だけでは不十分であり、兵士や物資、情報などの「流れ(フロー)」を維持する必要がある。

 さらに、装備品もしくは商品の性能を最大限に発揮するためには教育および訓練も不可欠であり、こうしてみると、ロジスティクスの意味するところをさらに広範に捉えることが求められる。

⚫︎「軍事ロジスティクスにおける革命」
 イラク戦争では、軍事ロジスティクスの部外委託(アウトソーシング)が大きく進んだとされる。その理由のひとつは、大量の物資――とりわけ現地では調達できないハイテク装備品など――を遠く海外へと移送するノウハウに関して、民間企業の方が優れていたからである。

 湾岸戦争でアメリカ軍は、約2か月間継続して戦えるための物資を事前に準備したが、イラク戦争では約1週間分の備蓄で攻撃を始めたとされる。そして、こうした状況を可能としたのが、衛星もしくは軍事衛星を用いた通信ネットワークの発展であった。最前線の部隊とロジスティクス担当の部隊が衛星で結ばれれば、どの部隊がいかなる物資を必要としているかを容易に把握できるからである。

 実は、戦争においてロジスティクスとインテリジェンス(情報)は相互補完関係にある。また、歴史的に主要諸国の参謀本部制度が確立される過程では、そのロジスティクス部署とインテリジェンス部署が、オペレーション(作戦)部署よりも重要とされた。

 さらに踏み込んで言えば、参謀本部制度とは元来、ロジスティクスに関する機能を強化する目的で生まれたものである。当然ながら、戦略、作戦あるいは戦術の策定とその実施を支える基盤が、ロジスティクスであり、インテリジェンスだからである。

 また近年、軍事の領域では突発的なテロやゲリラ攻撃などに迅速に対応できるよう、現場あるいは最前線の部隊への権限委譲――民間では「アダプティブ」として知られる――の必要性が改めて認識されており、軍事ロジスティクスの領域も例外ではない。

 なるほど今日の軍隊は主として情報通信技術(ICT)の発展の結果、最前線の状況が本国中央でもリアルタイムで把握できるようになった。それにもかかわらずアメリカ軍などは、一部に「任務戦術」の概念を採り入れて最前線の部隊への権限の委譲を進めているが、その狙いのひとつはもちろんテロやゲリラ対応である。戦いが始まって、その度に中央に指示を求めていたら、対応が後手に回ってしまう。

⚫︎「ジャストインケース」から「ジャストインタイム」へ
 ビジネスの世界で「ジャストインタイム」という発想が採用されてから久しいが、その核心は、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」であり、これは今日の軍事ロジスティクスの領域にも広く導入されている。

 冷戦から湾岸戦争にかけての時期は「ジャストインケース」といった発想でロジスティクスが運用された結果、その副産物として大量の物資を集積する「アイアン・マウンテン」が随所で構築された(詳しくは、江畑謙介著『軍事とロジスティクス』日経BP社、2008年を参照)。

 だが、最前線とロジスティクス担当の部隊が通信ネットワークで結ばれ、さらにはRFIDタグが導入された結果、物資の流れをリアルタイムで把握することが可能になった。

 なお、イラク戦争に先立って開始されたアフガニスタン戦争(2001年~2021年)では、最前線に移送した物資のうち70~80%が燃料および水であり、その水の75%が兵士のシャワー用であったとされるが、これは、アメリカ軍だけに許された「特権」である。同国軍の優れたロジスティクス能力の証左であるが、これは「水を制した」古代ローマ帝国(軍)をほうふつとさせる。

 また、民間企業も軍隊も「ジャストインタイム」の発想は同じであるものの、仮に相違があるとすれば、軍隊には戦時あるいは緊急時の物資不足など絶対に許されないため、多少の備蓄が必要とされ、許されるとの点であろう。その象徴的な事例が、いわゆる「RO-RO船」に代表される海上事前集積部隊(MPS)である。

⚫︎軍隊の「アキレス腱」
 もちろん、今日までのこうした「軍事ロジスティクスにおける革命」は大きな問題を解決する一方で、新たな課題も多々生じさせた。

 例えば、イラク戦争では部隊の侵攻があまりにも早かったため、必要な物資を必要な時に必要な数量だけ提供するとの「ジャストインタイム」ですら、その欠点が表面化した。また、この戦争でアメリカ軍の犠牲者の3分の2以上がロジスティクス担当の部隊から出ており、ロジスティクスが軍隊の「アキレス腱(けん)」であるとの事実は、技術イノベーションが大きく進んだ今日でも変わらない。

 さらに冷戦終結後、今日に至るまでの戦争の多くは「テロとの戦い」の様相を呈しており、主権国家間の戦争を想定し構築された従来のロジスティクスの態勢が通用し難くなってきている。

 実はこれは今日、各国の軍隊が抱えた大きな課題のひとつである。従来の正規軍同士の戦争――国家間戦争――では、敵の位置が比較的特定しやすかったため、どこが戦場か、そのためにロジスティクスの線(ライン)をどう確保すべきか、などある程度は予測可能であった。

 ところが、テロやゲリラとの戦いでは戦場の位置すら不明確である。そのため、各国の軍隊は今日、必要な物資をできる限り自ら携行する方策に「回帰」しているようにも思える。

⚫︎「テロとの戦い」の時代のロジスティクス
 先にも触れたように、国家の正規軍同士の戦争を想定した従来のロジスティクスのあり方は、今日、その有用性を徐々に失いつつあるように思われる。

 併せて、自己完結を旨とする従来のロジスティクスの態勢も、大きな見直しを迫られている。テロやゲリラとの戦いに象徴される「新しい戦争」の時代の要請に応じた、新たなロジスティクスのあり方が求められる。

 つまり、従来、自己完結を旨とした主権国家の軍隊が、今日の国家の枠組みを超えた紛争や活動――例えば非通常戦争(非対称戦争)や国連平和維持活動(PKO)――にいかに対応できるか、また、ロジスティクス業務の多くを民間企業に委託せざるを得ない今日の社会状況に軍隊がいかに対応できるかが問われている。

 さらには、伝統的な事態対応型のロジスティクス態勢から、事前対応型のものへの移行も求められるであろう。テロやゲリラに象徴される非通常戦争が多発する今日、最前線と後方地域の境界(線)はますます曖昧になってきており、時としてこうした区分は無意味ですらある。

 ある軍人の言葉を借りれば、ロジスティクスは決して「魅惑的(グラマラス)」な領域ではない。それにもかかわらす、戦争に勝利するためには必要不可欠な領域である。

 近年、食糧安全保障やエネルギー安全保障、さらには経済安全保障をめぐって活発な議論が展開されている。例えば、日本の食料自給率はカロリーベースで37%とされ、エネルギー全般の自給率は12%とされる。
 半導体の不足も大きな問題となった。だが、例えば船舶や航空機などの移送手段が使用できず、鉄道や道路に代表される交通インフラが遮断された場合、東京の食料自給率は1%にとどまるという。

 ここに、今日のグローバリゼーションという時代状況下でのサプライチェーンの確保をめぐる問題が出てくる。物資の流れ(フロー)は「経済の血脈」とされる。だからこそ、生産あるいは調達から小売り消費に至るまでのサプライチェーン全般を円滑に統合することが重要となる。確認するが、ロジスティクスとは人々の生活の基盤であり、インフラである。軍事ロジスティクスは、戦いの基盤である。

 日本は今後、そもそも「後方」と表現されあまり注目されることのない軍事ロジスティクスの領域に、どれだけのヒトや資源を充てることができるのであろうか。

 ウクライナでのロシア軍の軍事行動から推測するに、同国軍は限られた国防予算の中でミサイルや航空機などの「正面装備」に資源を投入し過ぎ、弾薬や補修部品に代表されるロジスティクス、さらには「継戦能力」に対する施策がおろそかになっていたと感じざるを得ないからである。



💋日露戦争(露艦隊の補給譚含め)以降の日本の軍部の致命的な欠点、不作為で以前から指摘されてきたのに…更に精神論が跋扈…
 近代戦争でもいつも問題視され、鉄道でも狭軌広軌問題、鉄道網、アウトバーンの意義とか色々問題視されたのに…
  まだこんな警告文が… 歴史に学ばない…
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近鉄の値上げ申請に反対する奈良県「納得いく説明求める」…1キロあたり料金、阪急の2・5倍に 202206

2022-05-15 13:24:00 | 気になる モノ・コト

近鉄の値上げ申請に反対する奈良県「納得いく説明求める」…1キロあたり料金、阪急の2・5倍に
 読売新聞 onlain より 220515


 近畿日本鉄道の運賃値上げ申請に反対し、奈良県が国土交通省に開催を求めた公聴会を巡り、荒井知事は12日の定例記者会見で、同省に公述書を提出したことを明らかにした。
 公聴会は、国交省が諮問する運輸審議会で、7月14日に大阪市内で開かれることが決定。知事は「県の代表として、近鉄に納得する説明を求めたい」と自ら陳述する意向だ。(平野和彦)

 近鉄は4月、新型コロナウイルスによる業績悪化を理由に、国交省に平均17%増の運賃改定を申請。
 認可されると、来年4月から、近鉄奈良―大阪難波が680円(110円増)、近鉄奈良―京都は760円(120円増)になる。知事は記者会見で、「県内利用者の負担は、試算で約60億円も増える」と反発した。

 公述書では、経営やサービスを関西大手私鉄などと比較。1キロあたりの料金では、
阪急の京都河原町―大阪梅田(48キロ、400円)の「8・3円」に対し、
近鉄奈良―大阪難波(33キロ)は値上げ後、約2・5倍の「20・6円」と差が拡大するとした。

 また,「鉄軌道部門の従業員1人あたりの営業収益額」は,関西大手私鉄で最も低い2149万円。
「旅客営業1キロあたりの設備投資額」でも、2番目に少ない5268万円というデータを示し、観光特急への過剰な投資の一方、バリアフリー化が進んでいない点を問題視した。

 知事はこの日,「もともと高い運賃がさらに上がる」と不満を漏らし、「生産性や快適性、安全性の投資はどうなのか。
(運賃値上げの前に)経営効率化の説明責任がある」と申請に疑問を呈した。

 公聴会では、近鉄側と知事が主張を交わし、運輸審議会が値上げ申請について、国土交通相に答申する予定だ。

 知事は、地元への丁寧な説明が不足しているとして、「鉄道事業者は地域と共存共栄すべきで、対話は必須。利用者に納得してもらうのが企業の基本であり、安易に運賃に転嫁されては困る」と改めて争う構えを見せた。


※※※※※※※※※※※  ※※※※※※※※※※※追補 まいどなニュース より

「ひのとり」が新幹線よりも高くなる!? 平均17%…近鉄値上げ発表の衝撃 乗客減の中、設備投資を見据える
 まいどなニュース より 220515

⚫︎近鉄は改定率平均17%の運賃改定に踏み切った
 近畿日本鉄道は4月15日に運賃改定を発表しました。JR各社に次いで路線距離が長い鉄道会社だけに、注目が集まりました。今回の運賃改定は利用者にどれほどの影響をもたらすのでしょうか。

【写真】特急「ひのとり」…運賃が上がっても、サービス面で勝機を探ります

 近鉄の運賃改定は端的にいうと運賃値上げです。消費税率引き上げを除くと、運賃の値上げは1995(平成7)年以来となる27年ぶり。
 改定率は平均17.0%、通勤定期券が18.3%、通学定期券が9.2%となり、通学定期券も値上げの対象となったことが注目ポイントです。実施予定日は2023年4月1日です。

 普通運賃では初乗り(1~3キロ)は160円から180円へ値上げ。
大阪難波~近鉄奈良間は570円から680円へ110円アップします。
参考までにJR大和路線(関西本線)JR難波~奈良間の現在の運賃は570円です。

 特急料金(特別車両料金・個室料金)、鋼索線の運賃は改定の対象外となりました。
いずれにせよ、普通運賃や定期券が値上げとなるため、利用者のインパクトは大きいように思われます。

⚫︎サービス面で勝機を見出す近鉄特急
  サービス面では負けない特急「ひのとり」
 特に気になるのは大阪~名古屋間の運賃ではないでしょうか。
現在、大阪難波~近鉄名古屋間における特急「ひのとり」の運賃は
プレミアム車両が5240円、レギュラー車両が4540円です。運賃改定後は
プレミアム車両5690円、レギュラー車両4990円になります。

 東海道新幹線新大阪~名古屋間の運賃は「のぞみ」指定席(通常期)で6680円、「ひかり」「こだま」指定席(通常期)で6470円となるため、これだけ見ると運賃面では「ひのとり」の勝ちに思えます。
 ところがJR東海ツアーズが販売する旅行商品「ぷらっとこだま」を使うと話は変わります。この商品を使うと、新大阪~名古屋間の「こだま」普通車指定席は4600円(通常期)となり、運賃改定後のレギュラー車両よりも安くなります。

 SNSでは特急「ひのとり」よりも「ぷらっとこだま」の方が安くなる、ということで話題になりましたが、新大阪~難波間の距離・費用を考慮する必要があります。
 難波~新大阪間はOsaka Metro御堂筋線で約15分・280円。
時刻表によるとOsaka Metro新大阪駅から新幹線ホームまでは17分を要します。

大阪難波~近鉄名古屋間の所要時間は「ひのとり」で2時間程度、
「こだま」は地下鉄や乗換えも含めて1時間40分程度、
難波~名古屋間の運賃は「こだま」普通車指定席(「ぷらっとこだま」使用)は「ひのとり」レギュラーシートよりも計110円安い、という結果になります。

 一方、サービス面では難波から乗換不要、さらに後ろの利用客に気兼ねなくリクライニングできるバックシェル付きシートを持つ「ひのとり」に軍配が上がります。このように見ると、サービス面で近鉄が勝機を見出すという格好です。

 ところで週末利用で便利な切符が土日を含む連続3日間近鉄全線乗り放題の「近鉄週末フリーパス」です。現在の価格は大人4200円となり、大阪難波~近鉄名古屋間を往復するだけでも元が取れます。ただし特急料金は含まれていません。
運賃改定後の「近鉄週末フリーパス」の価格は不明ですが、企画切符を上手に使うこともより一層求められます。

⚫︎バリアフリー対策、通勤車更新など待ったなし
   通勤車両新造への期待が高まる
 今回の運賃改定の理由としてもちろん新型コロナウイルス感染症による利用客の減少もありますが、それ以外にも原因が挙げられています。

 近鉄によると、1991年度から2018年度のコロナ禍前まで多くの関東大手私鉄は利用者数が増加したにも関わらず、関西では利用者数が2割以上も減少。
 特に近鉄は減少幅が大きく、2018年度の旅客運賃収入は1996年度の約4分の3まで落ち込みました。

 一方、ホームドアの設置やバリアフリー対策は今後の超高齢化社会を考えると待ったなしの状態。近鉄も順次エレベーターや多機能トイレの設置を進めています。

 乗客減の傾向にコロナ禍の追い打ちを考えると、何の手も打たずにバリアフリー対策等の設備投資を行うことが厳しいのは目に見えています。また近鉄の場合は通勤車の更新も喫緊の課題といえます。

 関東ではバリアフリー対策に特化した一律10円増の運賃改定が目立ちます。また東急も消費税を除くと2005(平成17)年以来の運賃改定を発表しましたが、改定率は近鉄よりも低い平均12.9%です。

 近鉄は消費税を除くと27年にわたり運賃を据え置いてきましたが、ついに大幅なアップとなりました。運賃改定をとっても、関東私鉄と関西私鉄で違いが生じていることに気づきます。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)
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