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脱ネガティブを計るべく、浮きつ沈みつ漂う女の戯言日記

荊の城

2010-02-11 | 本・映画
「半身」に続き、サラ・ウォーターズの「荊の城」を読んだ。

19世紀半ばのロンドンのラント街、泥棒一家に育てられた孤児のスーザン。
ある日詐欺師の”紳士”が儲け話を持ち込んでくる。
田舎の古い城に閉じ込められた少し頭の弱い令嬢をたぶらかして巨万の富を
得る計画に協力する為、彼女はその令嬢の侍女となり城に住む事となる。

令嬢モードには抱えている秘密があり、スーザンは段々その翳りと儚さに
惹かれて行く。
彼女を騙し財産を巻き上げ精神病院に閉じ込めるという計画に、悩みながらも
待っている親方達を裏切る事は出来ずそれしかスーザンには選べる道がない。
逡巡する中での2人の触れ合い。そして大どんでん返し。

余りに意外なストーリー展開に、上下巻一気に読み進んでしまう。
一体どうなっちゃうの?・・と。
さすが英国女性ミステリ作家のナンバー1的存在のサラ・ウォーターズ!
私はビアンの友人の勧めで初めて彼女の作品を手にしたのだけれど、もっと
早くに読んでいれば良かった・・と後悔する事しきり。
ネタバレしちゃうので詳しい内容を書くのは控えるけれど、今回も女性同士の
恋愛が軸になっている。
しかし例えその背景がなかったとしても、この作品は全く完成されたものとして
十分通用する。
読んだ人の感想を幾つか読んでいたら、むしろ一般のミステリーファン達は
彼女の作品に必ず出てくるこの女性同士の恋愛描写に困惑している感が強かった。
余りそれが強くなると読みたいと思わない・・とか、なぜ必要なのか?とか。
確かに今回の「荊の城」は、2人のラブシーンが無かったとしてもただの友愛と
いうだけでお話としては成り立つように思う。
でも、サラは描きたいんだろうなぁ。うん。
そして私はそれを読みたいと思う。
これからも「また?」と言われたとしても、それを含めても読まずにはいられない
その筆力で、ヘテロもセクマイも皆を唸らせる作品を書いて欲しい。

日本で翻訳されていないという処女作”Tipping the Velvet”が、ぜひ読みたい。