Moving

脱ネガティブを計るべく、浮きつ沈みつ漂う女の戯言日記

遭遇

2009-10-10 | 本・映画
先日出勤途中の電車の中で、中山可穂の「ケッヘル」をカバーを
かけずに読んでいた男性がいて、思わず見つめてしまった。
(ちなみにハードカバーの上巻)
ケッヘルは同性愛色が強くない作品なので男性が読んでいても
それ程不自然ではないのだけれど、中山可穂ファンの男性(勝手に
そう解釈する(笑))と間近に遭遇出来たのは私にとっては何だか
嬉しい出来事であった。

中山さんと言えば自身もビアンと公言されており、その作品も女性
同士の濃密な世界を描いたものが多い。
かくいう私も初めて読んだ「白い薔薇の淵まで」にすっかりやられて
しまい、以来彼女の作品にはまっている。
ファンの中には彼女のビアン作品を望む気持ちの人が大多数のように
思うのだが、レビューを読んでいて女性同士の恋愛話でないと評価が
低いのは果たしてどうなのだろうか・・と思うところがある。
ビアンの話でない作品は手を抜いて書いている・・といった意見には、
正直賛成しかねる。
女性同士の愛の情念を描くのは中山さんの真骨頂でありライフワークで
あると思うのだけれど、彼女がそれ以外の世界を描くのは決して息抜きや
手抜きではなく、純粋に作家としての本能なのではないだろうか。

最新作「悲歌」で私も一番印象に残ったのは蝉丸だったものの、他2編の
同性愛的エピソードが薄い作品でも十分その世界観を堪能出来た。
むしろもっとビアン世界から離れた次元での、彼女の描く究極の愛の
物語を読んでみたいとそう思う。
もっともっとあの崖っぷちのヒリヒリした中山ワールドを、世の一般
男性やヘテロの方々にも味わって貰いたいと願う。