朝日新聞の書評(2008/8/03)で読んでみたいと思った。まずパソコンで図書館の在庫を検索する。あれば借りて読む。身近に置いておきたい本はそれから買っても遅くない。ないのを確認。近くの本屋にも多分ないだろう。無職の僕としては2200円は高価だ。Amazonで頼むことにする。日曜日の昼過ぎに注文をして、火曜日の夕方に届いた。1500円以上は送料が無料だ。書店で手に取らずに注文するのは一種の賭である。本は往復書簡である。第一信から、第十信まで。第一信は3度読んだ。多田富雄さんの手紙である。免疫学の世界的権威らしい。本人が病気のデパートというように、脳梗塞に倒れ、右半身麻痺と構音障害・嚥下障害等を背負っている。決して他人事ではない。明日、私が同じ境遇になってもおかしくない。右半身麻痺になった時は、毎日死を考えたが、色んな病気が重なり、苦が増すにつれ、自殺への願望が湧いてこなくなる。「私にとって、日常とは本能的な死との闘いです」。次に浄土という言葉が出てくる。尿道カテーテルが抜けて、自力で用が足せる時、久しぶりに家に帰って、風呂につかる時。ささやかな幸福感を浄土と呼びたいくらいですと。「苦界に生を受けていることを受容するとき、初めて見えてくる世界があります。それが浄土なのではないかと思っていますが…」。受苦に対抗してなんとか魂のほうが優位にたつことが、私のささやかな生きがいと書く。毎日の勝利宣言、それも浄土かなと。読むに従って新しい世界が開かれる。買ってよかった。栞紐が付いているのも嬉しい。毎日一信ずつ丁寧に読み進めていこう。