ホスピス病棟

2010-01-15 | Weblog
以前このブログにも書きましたhttp://blog.goo.ne.jp/iizuka18/d/20090912先生の奥さんから昨夜メールがきました。
「主人が お正月まで自宅で過ごしておりましたが 先日また入院しました。」と。

私は急いでご自宅に電話してみました。

奥さんが電話口で時々涙声になりながら話してくれました。
息子さん夫婦も暮れに帰省し 楽しそうに会話もしてたのに だんだん食欲が無くなり 背中に痛みもあり 眠れなくなったそうです。
それで正月明けの4日に外来を受診し 痛み止めのお薬を頂いて 「最期は自宅で・・・」と自分の希望をドクターに伝えたそうです。
その日は自宅に戻りましたが やはり殆ど食べれなく 一週間後 再度受診し入院となったと言うことです。

私は 会いに行くべきか 行かない方がいいのか凄く迷いました。
翌日、「後悔するより行ってみよう」と思い 吹雪の中 車で病院に向かいました。
病院の駐車場に車を止めたら 急に涙が溢れて来ました。
手で涙を拭いても 拭いても 流れて来ます。
私は自分に言い聞かせました。
「先生には自然体で そして笑顔で」と涙を拭きながら言い聞かせました。
そんなこと30分ほどしてから車を降りました。

案内された病室はターミナルケア病棟でした。

ドアが半分開いておりましたので そっと入ってみました。
先生は酸素吸入器を付けて眠っておりました。
思ったより痩せてもおらず 優しそうないつもの顔でした。

私は小さな声で
「先生」と耳元で言ったら
「おー、さくらちゃん。」とはっきりした声と大きな目を開けて ゆっくり起き上がりました。
先生は
「一人で来たの」と窓の方を向いて言いました。
私は
「うん」と声は出さずにうなずきました。
先生は
「今日は凄い吹雪だね。外は寒いだろう。」
私は また
「うん」と首を縦に振りました。

何を話せばいいんだろう・・・私は緊張すると とんでもない言葉を発する悪い癖がある。思ってもいない反対の言葉を言ってしまうこともある。

暫く黙って私も窓の外を見てました。
外にはテラスがあり そこには公園のような庭に 丸いテーブルと椅子2脚が雪に埋もれていました。

私は
「苦しくありませんか?」と聞くと
「時々はね」と。
「眠れますか?」と聞くと
「それなりにね」と答えてくれました。
「私に何か出来る事がありましたら 何でも言ってくださいね。」と言ったら
「ありがとう。」と。

そこへ看護師さんが点滴交換に入ってきました。
お昼はどのくらい食べたのか聞いておりましたが 半分も食べていないような言い方でした。
先生は私に
「悪いけど売店に行って自然水を買って来てくれないか」と言うので 
私は すぐに正面玄関脇の売店で月山自然水2本を買って来ました。

又 先生は
「ベット下の加湿器に水を入れてくれないか」と言いました。
加湿器のタンクの水は空っぽになっておりました。
私は水道水を入れセットしたとたん
「ゴボゴボゴボ」と大きな音を出して水は流れ落ちました。

「先生、先生もこのようにゴボゴボゴボと音が出るほど たくさん食べてくださいね。」と言ったら
「アハハハハハ」と笑ってくれました。

私が持って行ったお花を花瓶に挿し冷蔵庫の上に黙って置いて来ました。

帰りに「又来てもいい?」と聞きましたら
「いいよ」と力の無い声で言ってくれました。
なぜか 「もう長くないから・・・」とでも言ってるような気がしました。

病室を出たとたん また涙がこみ上げてきました。


 

ホスピスケア病棟へ

2010-01-15 | Weblog

以前 このブログ(http://blog.goo.ne.jp/iizuka18/d/200909129)にも書きましたが 59歳の先生の奥さんからメールが来ました。
「主人も頑張って正月を迎えましたが 痛みをこらえる事が出来ず また入院しました。」と。

私は急いで奥さんに電話してみました。

息子さん家族も正月に帰省し 楽しそうに話はしておりましたが 食事は進まず 日に日に食べれなくなり 肺に転移したためか 背中に痛みがあり 夜も眠れなくなってきたそうです。
それで正月明けの4日に外来を受診して痛み止めを貰い 一旦自宅に戻ったそうです。
「自宅で療養したい、と言う本人の希望だったの・・・」と奥さんは涙声で話してくれました。
でも自宅では 痛みも治まらず 食べることも出来ず 一週間後 自分から病院に行ったそうです。
そしてドクターと話し合いホスピスケア病棟に入ったのだそうです。

それを聞いた私は 翌日 病院に行ってみました。
病院の駐車場に車を止めて 私は溢れる涙を手で拭きながら 自分に言い聞かせました。
「先生には自然体で会って 涙は禁物だよ」と何度も何度も笑顔を作りながら心に言い聞かせました。
そうこう30分ほどしてから 思い切って車より降りました。

案内された部屋は やはりターミナルケア病棟でした。
半分開いていたドアから そっと入りました。

先生は 鼻から酸素吸入をして寝ておりました。
寝姿は 思っていたほど痩せてはいませんでした。
起こさないで このまま帰ろうか悩みましたが 小さい声で「先生」と言ってみました。
先生は大きな目を開き
「おー、さくらちゃんだぁ」と起き上がり 酸素吸入を外しました。
「一人で来たの?」
私は「うん」と声は出さずうなずきました。
「今日は雪が降るね、外は寒いだろう。」
私は又うなずきました。
「正月は自宅で過ごせて良かったよ。」
また首を縦にふりました。

私は何から話したらよいのか 言葉につまりました。
「苦しくありませんか?」と聞きましたら
「時々ね」
「眠れますか?」
「少しはね」
「何か私に出来ることがありましたら・・・」

そんな会話でしたが 穏やかな表情で いつもの優しいお顔と お声で話してくれました。
10分ほどしたら 看護師さんが点滴の交換に入って来ました。

すると先生は
「すまないが売店から自然水を買って来てくれないか?」と言うのです。
私は正面玄関脇の売店まで行って自然水2本買ってきました。

「もっと何か?」
「そう、じゃ、ベット下の加湿器に水を入れてくれないか。」と言ってくれました。
加湿器のタンクを見たら空っぽになっておりました。
満タンに水道水を入れてセットしました。
「ゴボゴボゴボ」
「先生、この加湿器のようにゴボゴボ音するくらい先生も食べたり、飲んだりしてね。」と言ったら 
「アハハハハ」と笑ってくれました。

私は持って行ったお花を花瓶に入れ 角の冷蔵庫の上にそっと置いて来ました。

「また来ていい?」と聞きましたら
「うん」と小さくうなずきました。
きっと そう長くない事を悟っているような返事でした。

病室を出るなり 涙が溢れました。