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魔女の組曲(下) そんな気持ちでページをめくっていかなければならない

2020年06月22日 | もう一冊読んでみた
魔女の組曲(下)/ベルナール・ミニエ  2020.6.22

誰が犯人で、犯行の理由は。それが早く知りたい。

魔女の組曲/ベルナール・ミニエ』 下巻を読んだ。

楽しく読んだが、その結末に、ぼくは余り心穏やかでない。
クリスティーヌの生き方が、最後まで好きになれなかった。
結末部分は、「最終楽章」を待たずに想像はつくのだが面白くない。

 あの男を見てわかった。あの男の目を見て・・・・・・。あれは悪魔の目だ。

 あら、はたして、それは妄想かしら? 番組に呼んだ弁護士の先生だって言っていたでしょう? 嫉妬とか復讐のためなら、人はなんでもするって。

 相手が既婚者だとピンと来たんです。たぶん、そのうち離婚するからとでも言われたのでしょう。騙されているとも知らずに・・・・・・。そんな言葉に騙されるなんて、まだ子どもだったんです。大事に育てて、せっかく大人になったと思ったのに

 「いいえ、あなたはわたしを忘れないわ」
 「でも、きみは死んだんだ」
 「ええ」
 「もう、きみの顔も忘れている」
 「そうやって、残りも全部、忘れるつもり? わたしたちが交わした言葉も、約束も、キスも、一緒に過ごした時間も。一つひとつの仕草も。相手を待ったことも、愛も・・・・・・。全部忘れるつもりなの?」
 「そうだ、全部だ」
 「だとしたら、生きることに意味はあるの?」
 「死ぬことにも意味はない」
 「それをわたしに言うの?」
 「いや」


 「なんの本ですか?」
 「『星の王子さま』です」
 「『きみにとって、ぼくの住む星は数ある星のうちの一つにすぎないだろう。でも、そのうちのどれかにぼくが住んでいると思ったら、きみはすべての星を眺めたくなる。そうやって、きみはすべての星と友だちになるんだ』」セルヴァズは暗唱した。


 ミラが悩んでいる部分を読むと、しだいに息苦しくなってくるのだ。悲劇に向かって歯車が回り出しているのに、それをどうすることもできないもどかしさ・・・・・・。マーラーの『交響曲第六番』を聞くときと同じだ。どのあたりで不安が芽生え、どのあたりで悲劇が起こるのか、あらかじめわかっていて、曲を聴きはじめるときの気持ち。そんな気持ちでページをめくっていかなければならない。

 やつらの最大のあやまちは、わたしを怒らせたことだ。そのせいで、わたしのなかに眠っていた本当の強さを引き出してしまったことだ。わたしがもう少し弱い人間だったら、やつらの思いどおり、気持ちを揺さぶられ、心を操られて、自殺していただろう。だが最後の最後で、わたしは踏みとどまって、強い人間に生まれ変わった。

 ミラは気持ちを静めるため、書斎でお気に入りのオペラを聴くことにした。ヴェルディの『ドン・カルロ』だ。これもまた障害だらけの恋物語だった。ミラはオペラのそういうところが好きだった。オペラは自分自身の人生を、いや、あらゆる人の人生を映しだしている。きっと人はみんな、ただ一つのことを求めてもがいているのだ。お金や権力や成功を手中に収めるのも、結局はそのただ一つの目的を叶えるためで、誰もが子どもの頃から求めてやまないものを得るためなのだろう。つまり、みんな、愛されることを求めてやまないのだ。

 セルヴァズは急いで言った。
 「私は誰かに噛みついたら、絶対に放さないんです。」


暗い宇宙 宇宙から見た美しい地球の描写 アンドロメダの謂われ 星の王子さま 随所で展開されるオペラの解説など、ミステリの楽しみのみならず実に教養豊かです。いろいろ楽しめました。


  『 魔女の組曲(上・下)/ベルナール・ミニエ/坂田雪子訳/ハーパーBOOKS 』



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