細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『サンバ』はサンバでも踊ってる場合じゃないよ。

2014年11月16日 | Weblog

11月11日(火)10-00 外苑前<GAGA本社試写室>

M-126『サンバ』" SAMBA" (2014) Quad-Ten Films / Goumont / TF1 films production

監督・エリック・トレダノ+オリヴィエ・ナカシュ 主演・オマール・シー <119分> 配給・ギャガ ★★★☆

ラテン音楽の「サンバ」ではなく、もちろん、ミュージカルでもない。これはセネガルからフランスに不法入国していた陽気な男の名前で、その語感のように陽気。

あの大ヒット作「最強のふたり」の監督が、またしても、あの陽気な黒人を主役にした、実はかなりシリアスな問題。それをあの明るいキャラクターでオマールは演じている。

パリのレストランで皿洗いをしていた彼は、突然にビザの失効で国外退去を命じられる。さあ大変。大した収入もないのに苦心して国の家族に仕送りしていたのに、大ピンチである。

就業ビザなし、預金なし、恋人なし、住所なし。それでもサンバは、あのラテンのリズムのように陽気だ。

空港の外角にある不法入国者の施設に入れられたサンバは、担当の女性係員のシャーロット・ゲンズブールにビザの再発行を頼むのだが、彼女は<燃え尽き症候群>の統合失調症ときた。

同情はするものの、彼女のアンバランスな精神状態では、なかなか業務は進展しない。そのトラブル満載の苦難の日々を淡々と描くので、これは前作のように笑ってばかりもいられないのだ。

20年くらい前にジェラール・ドパルデュが主演した「グリーンカード」と同じような設定だが、あれはラヴストーリーで、アメリカ女性と結婚することでハッピーエンドだが、こちらは多難である。

海に囲まれた日本では、あまり不法入国者のトラブルはテーマにならないが、フランスのパリというのは、どこからでもビザなしの不法入国が出来るので、とくにアフリカやアラブ系も多く滞在している。

だから以前にあったトム・ハンクス主演のリメイク「ターミナル」のように、エアポートに釘付けになる旅行者も居るが、陸路入国できるという状況は、たしかにシリアスな問題も多いだろう。

そのせいか、どうしても「最強のふたり」のような秀逸なコメディ・シチュエイションではなく、ストーリーも挫折が伴いスッキリしないのは困った者ものだ。

おまけにシャーロットのナーバスな情緒不安定が、このトラブルにブレーキをかけて、話はなかなか好転しない。まさに二重苦の貧民ドラマというワケで、オマールの満面の笑顔だけが救いとなるのだった。

 

■レフトがファンブルするヒットで、セカンドを狙うが封殺。

●12月26日より、TOHOシネマズ・シャンテなどでロードショー