細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『魔女と呼ばれた少女』は戦場のガーディアン・エンジェル。

2013年02月08日 | Weblog

●2月7日(木)13−00 六本木<シネマートB−1試写室>
M−015『魔女と呼ばれた少女』"Rebelle" item 7 / shen studio /カナダ
監督/キム・グエン 主演/ラシェル・ムワンザ <90分> 配給/彩プロ ★★★☆☆☆
アフリカのコンゴ。政府軍と紛争の絶えない僻地に住む12歳の少女ラシェルは、ゲリラに襲われて両親を殺された。
彼女には不思議な霊感があって、死者たちの徘徊する白い姿が見え、政府軍の存在も察知できる。
そこでゲリラの一員として自動小銃も与えられ、前線で銃砲火を浴びるが、なぜか彼女には当たらない。
13歳で部族の少年と戦闘中に恋をして、妊娠したが、彼もトラブルで処刑される。
どうしてこんな野蛮なことが日常的に展開するのだろう。
かなりリアルな臨場感溢れる演出の、鋭い描写を見ていて、不快だが、同時にアルジェリアの現実とダブってくる。
文化的な生産性のまったくない世界でも、こうして生き延びようとする人間がいる。という事実。
ことしのアカデミー外国語映画賞にノミネートされたのも、その異常な違和感がハートに響くからだろう。
それは、アメリカの作品賞候補にもなっている「ハッシュパピー」にも共通している。
救われるのは、このふたりの少女の共通した瞳の輝きと、生きる事への強烈なパワーが見れるからだろう。
そして残酷な現実とは裏腹に、死者たちの姿を見れる超能力は、視覚的に救いとなるのだ。
朴訥なコンゴのリンガラ語による独白のナレーションが、これもまるで音楽のように美しい。
日常的に、植物も動物たちも、そして人間も、親も恋人も、こうして確実に死ぬ。
魔女と呼ばれた少女は、実はガーディアン・エンジェル。「戦場の守護天使」だったのだ。

■前進守備のライトの頭上を越えるツーベース。
●3月9日より、シネマート新宿ほかでロードショー