ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

若草色のジャケット

2010-05-27 04:00:01 | 白井さん


 まずは前回訂正から。

 ● 信濃屋さんでかつて扱っていた舶来品の件で、

   『べーラムのヘアトニック』 → 『丸善のべーラム』

 ● 信濃屋顧客列伝中最高の洒落者“N様”の件で、

   身長146cm  →  サイズ46

 以上、訂正させていただきます。誠に申し訳ありませんでした。

 

 さて、この日の白井さんの装いのなんと“絵画的”なことか。色をたくさん使った初夏の着こなし、その主役は大柄のペイズリーがあしらわれたブルーのネクタイだ。

 前回の撮影で白井さんがお召しになられていたペイズリーのネクタイに話が及んだ時、白井さんは

『どちらかといえば小ぶりなペイズリーが好だけど大柄のペイズリータイも何本かあるので
今度してくるよ。』

 と仰っていたのだが、早速件のネクタイをこの日の着こなしに取り入れてくださった。更にこの日は敢えてダウンタウンの松ちゃんもびっくりの剣先パンツイン!以前、白井さんは何かのインタビューでネクタイについて、

 『肝心なのは、首もと(襟と結び目の間)にだらしない空きをつくらないことです。その急所さえおさえておけば、あとはそんなにピシッと決めなくても無造作でいいんじゃないですかね。僕も知らずに下(小剣)が出ていることだってあるし。ただ、こういう話をすると、それがイキとか言ってわざとやる人もいますけど(笑)。』

 と仰っていたくらいなので、剣先イン!などは雑作も無いことなのかもしれない。

 

 ジャケットはセントアンドリュース(伊)。グレンチェック柄に淡いブルーのペインが入っている。グリーン系の色が殊にお好きな白井さんは、きっと“お!これいいじゃん!”という感じでこのジャケットを選ばれたのだろうが、凡百がおいそれと選べる色柄ではないのではなかろうか。組み合わせを間違えればとんでもないことになりかねない危険なジャケットだが、上級者の手にかかればご覧のような結果となる。着こなしの妙とは斯くの如しである。

 パンツはギャバディン(伊ガエタノ・アロイジオ)。色は単純なベージュではなく、なんと表現したら良いのか、ほんの少しだけ“赤み”がさしているように感じられ、その赤みのぶんだけ洒落者向けな“大人っぽいパンツだなぁ”という印象を受けた。ギャバディンのパンツかぁ~・・・新たなマストアイテムの名が私のワードローブ(予定表)に追加されたようだ。

   

 以下余談。

 前回白井さんのお話に登場した“Nさん”の、白井さんがこれまでで最も感銘を受けたというその洒落者ぶりについて、私の筆ではどうも上手く書けなかった気がしたので、再び白井さんに伺ってみた。白井さん曰く、

 『とにかく何でも着こなしちゃうんだよ。バルベラのス・ミズーラ、当時は“ニコロ・ダ・ミラノ”って名前でキトンで作らせてたけど、それをビシッと着こなしたかと思えば、国産の何でもない綿のスーツとか、ジャッキーの半袖のポロシャツとかも平気で着ちゃったりするんだけど、何着てもサマになっちゃうんだよなぁ。』

 『ネイビーのダブルのブレザーに黒のホンブルグ被っちゃたりして、それがまたカッコいいんだ(苦笑)。夏の盛りに、出来上がったグレーの分厚いフランネルスーツを取りに来られてそのまま着て帰っちゃったりしたこともあったっけ(笑)。バーバリーの綿コートなんかも腕の辺りが擦り切れるまで着てたよ。袖の辺りがっていうのはよくあることなんだけど、腕の中ほどのところがそうなっちゃうんだから凄いよね。』

 『あと、靴の修理は半張りのみ。同じ木型を使ってじゃないと履き心地が微妙に変わるからオールソールはしないんだって言ってたよ。まあ何しろ“とんでもない人”だったね。』

 因みに、信濃屋さんのHP『白井俊夫のおしゃれ談義』の中で、

 “いつもとてもダンディな着こなしをされていて、フラリと立ち寄られては、サッと好みのものを買っていく。それがまた、私たちをうならせるような品選びをする方がいらっしゃいました。ある日その方が麻のスーツをお求めになられたのですが、そのときに私に向かって「白井君、麻のスーツというのはね、3年くらい着こまないと、本当の麻の良さが出ないんだよ。だから3年目の味わいを出すために、最初の2年間はムダに着るわけだよ」とおっしゃられた。私はこの言葉を聞いて、自分の装いを楽しむゆとりや豊かさ、しゃれ心とはなにかを教えられたと思いました。”

 というたいへん印象深い一文があるが、その、いつもとてもダンディな着こなしをされていたお客様こそ“Nさん”その人なのである。

 



“白井さんならどうする”~4~ Build a basic wardrobe

2010-05-27 04:00:00 | “白井さんならどうする─前編─”
  

“How would Lubitsch have done it?”

 映画『昼下がりの情事』『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』などを手掛けたハリウッド・コメディーの巨匠ビリー・ワイルダー(監督・脚本家)の仕事場には、自身が尊敬する映画監督エルンスト・ルビッチへのオマージュを込めたこの一文が額に飾ってあったそうだ。曰く、“ルビッチならどうする?”

 そして私もまた、毎朝ワードローブの前で一人こう呟く・・・“白井さんならどうする?”と・・・

                                       

 4回目を迎えた“白井さんならどうする”。過去3回は副題に『That's another story 』と付していたが、さしたるこぼれ話もご披露できない状態が続いていたので、今回からは副題を『Build a basic wardrobe』とした。私はこれを少し意訳して“着こなしの基礎を構築せよ”と唱え自らの規範としている。

 最近、以前から是非挑戦してみたいと思っていた故・向田邦子さんの著作を読み始めた。向田邦子さんの作品が如何に素晴らしいかとうことは、私如きが今更申し述べるまでも無いことではあるが、向田作品の影響で文体がすっかり変わってしまった。しばらくこの書き方で書いていきたいと思う。

 “高く積み上げたくば底辺を広げよ”

 “ハンドステッチは後々味が出てくる”

“紳士は白い麻のハンカチを持つべし”

 “アクセサリーの類はとりあえずひと揃え”

 “服を楽しむ人であれ”

 “想像せよ。イマジネーションが大切である”

 “一番大切なのは何をどう組み合わせるか”

 “長年使うからその良さが判る”

 “ブランド云々は卒業すべし”

 “着こなしを楽しむに何をか恐れることやあらん”