ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

ギャバディンのウェスタンスーツ

2010-05-08 04:00:00 | 白井さん


 いきなり冒頭から前回訂正を(汗)。

 ● 服飾評論家・遠山周平さんのお名前に一部誤りがありましたので訂正させていただきました。“遠山さんって~遠藤周作に漢字が似てるなぁ~気をつけよう”と思いつつ執筆していたにも拘らずこのていたらく(汗)。我ながら今後が心配です。

  

 ● LBJハットの件でご紹介した上掲左の写真のコートは正しくは“ランチコート”。因みに間違ってご紹介した“サバーバンコート”は右の写真の右側の男性が着ているシングルブレストのコートのことです。因みに左の男性が着ているのは“ゴールコート”というそうです。襟の形に特徴があるのだとか。今回も大変貴重な白井さん秘蔵のスクラップブックの写真を撮らせていただけましたが、それがミス訂正でお手を煩わせてしまうという無礼なお願いになってしまい恐縮至極です。

 遠山さん、白井さん、大変失礼をいたしました。心よりお詫び申し上げます。

 では、本日の着こなしをご覧下さい。



 今日は遂にウェスタンスーツの登場!

 以前、白井さんが大好きなカントリーウェスタンの伝説的ミュージシャン、ハンク・ウィリアムスのお話に花が咲いた時にこのウェスタンスーツも話題に上り、白井さんが『今度着てこようか!でも電車に乗って来るのがなぁ~・・・いや、もうこの歳になったら怖いものは無い!』と仰って登場を約束されていた特別な一着。前回、服飾評論家の遠山さんからもリクエストがあったそうで、陽気も今が一番!とのことで満を持しての登板となりました。

   

 着こなしのテーマは“テキサスの石油○○”。テキサスで油田を掘り当てちゃった方だそうです(汗)。肉厚のギャバディン素材を使ったスーツの色は『タン(Tan)。シアーズなんかにはそう書いてあったよね。』(白井さん談)というカラー。シアーズとは“シアーズローバック社”が全米に展開した通信販売のカタログのこと。白井さんのお話に頻繁に登場するこのカタログは、『なにしろ何も無い時代だったから、一日中眺めても飽きなかったよ。』と仰るほどに少年時代の白井さんを魅了し続けたまさに“消費者の聖書”。横浜正金銀行(現在は神奈川県立歴史博物館。信濃屋馬車道店さんのご近所にあるあのごつい建物です。)に勤められていた白井さんの叔母様が戦後GHQのお仕事に携われていた関係でこのカタログを白井さんに持ってきてくれていたのだそうで、その中には今日白井さんがお召しのようなウェスタンスーツもいっぱい掲載されていたそうです。因みに白井さんが最初に買った靴はシアーズに載っていた黒い編み上げだったそうです。

 ついでですが今回初登場の素材“ギャバディン”、間違っても“ウールギャバディン”と呼んではいけません。白井さん曰く『ギャバディンはウールが当たり前!だからわざわざ“ウールギャバディン”って言うのはおかしい。蕎麦のことを“日本蕎麦”って言うのと同じこと。』とのことです(笑)。更に余談ですが、この日はT様というたいへんお洒落なお客様がご来店されて、たまたまT様もギャバディンのスーツをお召しでした。色んな服を経験されてきた方がちょっとリラックスした感じで着こなされていると実に良い雰囲気で“ギャバディン・・・大人の服地だなぁ”というのが私の感想です。

  

 シャツも当然ながらウェスタンシャツ。襟元には紐状のネクタイ“ストリングボウ”をきりりと結ばれています。

 白井さんはウェスタンシャツもお好きなようで、たくさんの種類をお持ちなのだとか。なんと母上様に作ってもらったこともあるそうです!『袖の切り替えしのところは苦労していたみたいだったよ(笑)。』とのこと。以前白井さんに伺ったのですが、白井さんの母上様は東京・目黒にあるドレスメーカー女学院、通称“ドレメ”の卒業生だったそうなのです。ですからお裁縫は大変な上手だったそうで、詳しいことは忘れてしまいましたが色んなお仕事(主に洋服のお直し)をお引き受けされていたそうです。少年時代の白井さんもたまに“きりびつけ”や“ほどきもの”などのお手伝いをしていたそうです。

 

 今日はディティール要チェックです!左手にチラッと見えるのは“おお~!白井さんがブレスレット!?”とびっくりしましたが実は腕時計。時計本体よりもこのベルトがポイント!とのこと。いつも通り細かいところも抜かり無しです!

   

 この日の一押しアイテムは腰のウェスタンベルト。『ここまでの仕事が施されているモノはなかなか無いよ。』と、白井さんが絶賛するハンドカービング(手彫り)で彩られた模様には職人魂が感じられて迫力満点!純銀製のバックルの着脱方式は2段階になっていて“レンジャースタイル”と云う凝った造作になっていました。普段は如何なる服や小物であってもその価格についてお話しすることは皆無の白井さんが、珍しくこのベルトについてだけは『これは高かったよ~。』と目を丸くされていたのは、このベルトが余程の逸品という証です。一昨年の暮れに行われた信濃屋さんのクリスマスパーティーで、白井さんが愛用のギターに装着していたストラップも同じ職人さんの手でハンドカービング(白井さんのイニシャルも見えます)が施されたもので、更に貴重な品なのだそうです(上の写真右下)。

 この日の陽気からストロー製のウェスタンハットにしようかな?とも思われたそうですが、今日はこのフェルト製のテンガロンハット(米・ステッソン)。この帽子も一昨年前のパーティーでお召しになられていたもので、純銀のバックルが付いたハンドカービングの革ベルトが巻かれています。今回初めて触らせていただいたのですが、もの凄く硬いフェルトが使われていて驚きました。私は“西部の荒くれ男のへヴィーユースに耐えられるようにとのことか?”などと考えながらついつい開拓時代に想いを馳せてしまったのが災いし、あろうことか白井さんに『顎紐は付いてないんですね。』と口走ってしまいました。余りに無知な質問に白井さんがガックリと肩を落とされたのは言うまでもありません(汗)。

   

 ブーツは“ほんの”トニーラマ(米、Tony Lama)。同席されていたお客様方は『ああ~トニーラマ・・・懐かしいですね~』と口を揃えて仰っていました(汗)。ただ、白井さんは“ほんの”と仰っていましたが私は初耳の名前なのでその意味するところがイマイチ判りませんでした(涙)。情けないことに私はウェスタンブーツを見るのが今回が“ほんの”2回目なのです(因みに1回目は一昨年前のパーティーで白井さんが履かれていた黒のウェスタンブーツ)。

 ですが、何処かの首相の発言のようですが、それよりも(ごめんなさいトニーラマ)私が驚いたのはパンツの裾がシングルだったこと。白井さんがシングル!?白井流といえば基本はダブル!在り得ない光景に戸惑う私でしたが、白井さんはこのスーツなれば当然のことと仰っていました。そういえば昔観た西部劇の映画で、確か村のお祭りのシーンだったでしょうか、今日の白井さんと同じような着こなしをした紳士達が晴れやかな表情で登場していたような記憶があります。今日の白井さんの着こなしは当時、いえいえ、もしかしたら現代でもフロンティアでの盛装ということでしょうか。

 

 白井さん秘蔵のスクラップブックの中の、外国の紳士服飾誌の切り抜きの記事に

“BUILD A BASIC WARDROBE" という言葉がありました。大変奥深い言葉でこのブログにぴったりのキーワードでもあります。

 そしてまた時には、今日の白井さんのように遊び心溢れる着こなしも洋服の世界の魅力の一つ。今回私は『自分の装いを楽しむゆとりや豊かさ、しゃれ心とはなにかを教えられた』(信濃屋HP“白井俊夫のおしゃれ談義”より)という白井さんの言葉と全く同じ想いを抱きました。