ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

フランス国民、豹変す・・・これ以上のギリシャ支援にはNON!

2011-09-22 20:19:17 | 社会
ヨーロッパの財政危機、特にギリシャ問題は世界に、そして歴史的円高や新興国の成長鈍化による輸出減少というカタチで、日本にも大きな影を落としています。

ギリシャをどのように救うのか・・・欧州金融安定ファシリティ(EFSF=European Financial Stability Facility:仏語ではFESF=Fonds européen de stabilité financière)の拡充が必要だと言われていますが、ドイツ国民が反対。これ以上、自分たちの税金をギリシャ支援に回してほしくない!

分かるような気がします。ギリシャ国債のデフォルト(債務不履行)が危惧されている背景の一つに、ギリシャの徴税の非効率さ、つまり、脱税の多さがあります。以前、ドキュメンタリー番組で観ましたが、開業医や法律事務所を経営している弁護士が非課税扱い! 農家も、東欧からの出稼ぎ労働者を安く雇って、自分たちは日がな一日カフェでコーヒーやワインを飲んでは世間話。それでいて、これまた非課税。そして、インタビューに答えて曰く、自分たちギリシャ人は頭が良いから、このように楽して良い暮らしができるのだ!!  もちろん、公務員の数の多さと言ったら、改めて言うまでもありません。

こうした国、国民を救うために、自分たちが額に汗して働き、納めた税金を使うのは止めてくれ! ドイツ国民の気持は、良く分かります。エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)による家族型の分類(『世界の多様性』・“La Diversité du monde”、日本社会とドイツ社会は同じ直系家族・la famille soucheに分類されています)を持ち出すまでもなく、ドイツ人と日本人には近い所があるのですから。例えば、サッカー。どんなに日本人選手がスペインやイタリアのサッカーに憧れようと、日本人選手のよさを評価してくれているのはドイツ人監督たち。典型的なのが、現VfLヴォルフスブルク監督のフェリックス・マガト。長谷部を育て、シャルケ04では内田を積極的に使いました。日本人選手の良さは、そのテクニック、走力、そしてなかんずくその規律性だそうです。

納税逃れをする他国民のつけを、同じ通貨圏だからとはいえ、自分たちが尻拭いする。しかも、最も重い負担になる・・・これでは、黙っていられませんね。しかも、ギリシャの次には、同じような南欧の国々、イタリア、スペイン、ポルトガルが続いているわけですから。

因みに、欧州金融安定ファシリティへの国別保証負担額(2010年11月現在)は、
ドイツ :27.13%
フランス:20.38%
イタリア:17.91%
スペイン:11.90%
オランダ: 5.71%
などとなっています。

これ以上のギリシャへの支援は止めてほしい・・・こうした声が、ドイツ以外からも聞こえています。例えば、フィンランド政府は、ギリシャ政府に担保を求めましたが、その背景にはフィンランド国民の声があったのではないかと思われます。

そして、ギリシャ第2次支援に反対する声が、フランスでも上がっています。どのような声で、どのような大きさなのでしょうか・・・17日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

フランス人の多く(68%)は、ギリシャ支援としてフランスが150億ユーロ(約1兆5,600万円:ユーロ圏全体では公的支援も含め総額1,590億ユーロ)の追加支援を行うことに反対している。地域日刊紙“Ouest-France”の依頼に基づき、調査会社“Ifop”が行った調査(9月13日から15日に、ネット上で、18歳以上を対象に実施。1,009人が回答)がそういう結果を示している。

絶対反対と答えたのが30%、どちらかというと反対が38%だったのに対し、どちらかといえば賛成は32%、絶対賛成はわずか5%だった。左派支持者にはギリシャ第2次支援を容認する層が42%いるが、右派支持者では30%。一方、極右政党・国民戦線(Front national:FN)支持者では、90%が反対している。

しかし、ギリシャ危機の影響については、圧倒的多数(84%)が、ギリシャ国債への支援がなければ、ユーロ圏の問題は危機的なレベルにまで達するだろう、と予想している。また、87%の人たちが、ギリシャへ支援したとしても、その額は決して戻ってこないだろうと考えている。

Ifopは、2010年5月には3分の2のフランス人がギリシャ危機に備えて、ヨーロッパの連帯を表すためにフランスが支援することに賛成だと述べていたことと比較し、フランス世論の急変ぶりを指摘している。2010年12月には、69%のフランス人がギリシャとアイルランドへの支援を支持していた。そして今年の6月でも、59%がギリシャ支援に賛同をしていたのだが・・・

・・・ということで、今年の6月頃までは、ギリシャ支援に好意的だったフランス国民が、豹変。今では、68%が反対を表明しています。同じ調査会社・Ifopの調査による変化だそうですから、調査手法による変動幅はそれほど大きくないものと思われます。

では、どうしてこうも急変したのでしょうか。思うに、ギリシャのデフォルトの可能性が高くなり、支援した額がギリシャから戻ってこないだろうという見解が大勢を占めるようになったことが背景にあるのではないでしょうか。ギリシャ支援に際し、サルコジ大統領は以前、確か、ギリシャへ支援をするが、その支援額には利息が付いて帰ってくる。投資するようなものだ、と言って、国民を納得させていたと思います。それが、元本さえ償還されない支援になりそうだ!

お金にはシビアなフランス人のことですから、このことがターニング・ポイントになったと考えることはあながち誤りではないのではないかと思っています。投資だっていうから賛成したのに、何、元本さえ戻って来ないだ・・・絶対、反対だ!

しかし、そのフランスもギリシャ危機の影響を受け始めています。ギリシャへのエクスポージャーが大きいとして、フランスの銀行、特に3行の格付けが見直されそうになっていますし、ドイツのシーメンスはその3行の中の1行から預金を引き出し、欧州中央銀行(ECB)に預け替えしたと言われています。

戻って来ないなら、支援などお断りだ。しかし、支援しないと、その「つけ」がブーメランのように戻って来て、自国の銀行が危ない。しかも、その影響は、銀行だけにとどまらないはず。さあ、どうする、フランス。知恵の見せ所だ!

しかし、対岸の火事と面白がってはいられないのが、国際金融の時代。どこまで進展するのか、円高。産業の空洞化は、大丈夫か。日本の知恵も、試されています。
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