9・11。アメリカではテロから10年。心の区切りをつけようとする遺族がグランド・ゼロに集まりました。日本では、東日本大震災から半年。追悼の集い、復興を支援する集まりが全国各地で行われました。
その翌日、日本では「放射能、付けちゃうぞ」発言で辞任した経済産業相の後任が決まりました。原子力行政の舵取りがどうなるのか、注目です。
そして、イランでは、中東初の原発が稼働しました。
イラン南部のブシェール原発が12日、稼働し、電力供給を始めた。中東地域で初めての原発稼働で、トルコやヨルダンなど周辺国の原発建設も加速するとみられる。福島第1原発事故で原発の安全性が問われる中、情勢不安定な中東での原発稼働には懸念も高まる。
原発は加圧水型軽水炉で、出力100万キロワット。イラン国営テレビによると、12日はまだ低出力による運転だが、年内には最大出力での運転が可能になるという。現地であった稼働式典で、イランのアッバシ原子力庁長官は「イランの科学者は福島原発の惨事から教訓を学んだ」と安全性を強調した。
(9月13日:毎日)
あくまで平和利用であってほしい、安全に稼働させてほしいと願っています。
原子力関連のニュースが多いこの日、9・12、もうひとつのニュースが飛び込んできました。フランスの原子力施設で爆発が起き、死者一人、四人が負傷・・・使用電力の約8割を原子力に依存しているフランス。原発だけでなく、核廃棄物のリサイクルや貯蔵を行う施設は、それこそ、全国各地に散らばっているのではないでしょうか。その一つ、南仏・ガール県(Gard:県庁所在地は、ニーム・Nîmes)にあるマルクール核施設(le site nucléaire de Marcoule)で、事故は起きました。どのような状況で、放射能漏れなど、周囲への影響はどうなっているのでしょうか。また、フランス政府の対応は・・・12日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。
12日正午ごろ、ガール県にあるマルクール核施設で、低レベル放射能廃棄物処理施設にある炉が爆発した。この事故で、一人が死亡、四人が負傷した。
午後4時、原子力安全機関(l’Autorité de sûreté nucléaire:ASN)は、「事故は終結し、いかなる核汚染も発見されなかった」と、発表した。また、放射能調査情報独立委員会(la Commission de recherche et d’information indépendantes sur la radioactivité:Criirad)は、「ローヌ渓谷(la vallée du Rhône)に設置した6台の無線観測機はいかなる放射能漏れも観測しなかった」とホームページで公表した。エネルギー担当大臣のエリック・ベソン(Eric Besson)は、「放射能や化学品によるリスクはない」と述べており、処理施設を運営する会社を傘下に持つフランス電力公社(EDF)も、「将来にわたって、放射能漏れのリスクはない」と発表している。
「住民保護が必要になるような事故ではない。ASNは危機対応の組織を立ち上げるのも見合わせている」と、ASNは追加説明している。内務省は、「負傷者が放射能に汚染されておらず、施設で働いている社員の隔離も避難も必要とはなっていない」と公表した。しかも、死亡した社員の死因は、爆発に巻き込まれたことであり、放射能汚染によるものではないという。重傷を負った社員一人は、モンペリエ(Montpellier)の病院へ緊急搬送されたが、他の三人は軽傷で、近くのバニョル・シュール・セーズ(Bagnols-sur-Cèze)の病院へ運ばれた。
爆発はEDFの子会社であるSocodeiがコドレ村(Codolet:2008年の人口691人)で事業展開しているCentraco(le Centre de traitement et de conditionnement des déchets de faible activité:低レベル放射能廃棄物処理センター)で起きたのだが、その原因となった火災は13時頃鎮火した。この施設は放射能レベルが低い、あるいは非常に低い核廃棄物の処理を行っている。
激しい爆発は、電気炉に関係しているのだが、この炉は1999年から使用されており、手袋、作業着、マスクといった繊維類は焼却し、水門やポンプなどの金属は溶融して放射能処理を行っている。
爆発が起きた際には、炉に4トンの金属が入っており、その全放射能は67,000ベクレルで、1kg当たりでは17ベクレルになる。「とても低いレベルの放射能で、原子炉の放射能とは比較のしようもないレベルだ」と、放射線防護原子力安全研究所(l’Institut de radioprotection et de sûreté nucléaire:IRSN)の安全部長、ティエリ・シャルル(Thierry Charles)は語っている。
「炉は建物内の部屋にあり、その部屋は影響を受けたが、建物自体は無傷のままだ。従って、放射能が外部に漏れ出す恐れはない」と、ティエリ・シャルルは続ける。IRSNは現場に対応チームを派遣し、周辺の雑草、土、クルマのボンネット上の埃などを採取して、12日中に分析することになっている。
爆発の原因はまだ明らかになっていないが、政府関係者によると、人的ミスがあったと思われる、ということだ。「どこからか漏れ出した水が溶融中の金属と反応を起こした可能性や、金属に含まれている核廃棄物が引き起こした可能性も考えうる」と、ティエリ・シャルルは語っている。
IAEA(仏語では、AIEA:l'Agence internationale de l'énergie atomique)の事務局長は、爆発に関する情報の提供を通常の手続き通りフランス政府に依頼したと語った。一方、EUは、事故は欧州委員会がフランス政府と協力しながら仔細に調査することになると、発表している。
多くの環境団体と同じく、グリーンピースも、事故に関する迅速で透明性のある情報公開を求めている。「地元住民に現状と将来的な放射能漏れについて十分な情報を提供することが不可欠だ」と、グリーンピース・フランスの原子力担当者、ヤニック・ルスレ(Yannick Rousselet)は述べている。
エコロジー相のナタリーコシウスコ=モリゼ(Nathalie Kosciuscko-Morizet)は現場に赴き、「事故の後、不安に陥るような理由はまったく見当たらない。これは産業事故だ。ただし場所が原子力関連施設なので、さまざまな感情や警戒が呼び起こされるのだが」と語った。エコロジー相は、こう語る前に、死亡した社員の家族に直接会い、また重症の大やけどを負った社員の父にもコンタクトを取っている。
・・・ということで、フランス政府は、発生したのが核廃棄物処理施設ではあるが、あくまでも産業事故であり、決して原発事故ではなく、しかも事故はすでに終結している、と強調しています。
原発の輸出国でもあるフランスは、原発の危険性に繋がるようなことは、どうしても言及しなくてはならない状況に追い込まれない限り、なかなか言わないでしょうが、今回の事故は、今後の推移を見守らなければ断言はできませんが、どうも放射能汚染につながるような事故ではなさそうです。
しかし、フクシマから半年。その危険性がフランス国民の記憶にも残っている状況下での事故だけに、周辺住民はパニックに。しかも、『ル・モンド』の記事では、エコロジー相が現地に飛んだり、多くの機関がさまざまなコメントを出していますが、現地住民にはうまく伝わらなかったようで、子どもたちを避難させるとか、いろいろな混乱も生じたようです。
原発のない社会へ――。しかし、今すぐ、すべての原発を廃止するわけにはいかない。原発のない日本社会の実現へ向けた工程表を、ぜひとも公表してほしいと思います。洋上風力発電にも力を入れるという報道がありました。太陽光発電もあります。どのようなスケジュールで、いつまでに自然エネルギー社会に移行できるのでしょうか。その実現に、協力を惜しむ国民はいないと思います。ぜひ、一日も、早く!
その翌日、日本では「放射能、付けちゃうぞ」発言で辞任した経済産業相の後任が決まりました。原子力行政の舵取りがどうなるのか、注目です。
そして、イランでは、中東初の原発が稼働しました。
イラン南部のブシェール原発が12日、稼働し、電力供給を始めた。中東地域で初めての原発稼働で、トルコやヨルダンなど周辺国の原発建設も加速するとみられる。福島第1原発事故で原発の安全性が問われる中、情勢不安定な中東での原発稼働には懸念も高まる。
原発は加圧水型軽水炉で、出力100万キロワット。イラン国営テレビによると、12日はまだ低出力による運転だが、年内には最大出力での運転が可能になるという。現地であった稼働式典で、イランのアッバシ原子力庁長官は「イランの科学者は福島原発の惨事から教訓を学んだ」と安全性を強調した。
(9月13日:毎日)
あくまで平和利用であってほしい、安全に稼働させてほしいと願っています。
原子力関連のニュースが多いこの日、9・12、もうひとつのニュースが飛び込んできました。フランスの原子力施設で爆発が起き、死者一人、四人が負傷・・・使用電力の約8割を原子力に依存しているフランス。原発だけでなく、核廃棄物のリサイクルや貯蔵を行う施設は、それこそ、全国各地に散らばっているのではないでしょうか。その一つ、南仏・ガール県(Gard:県庁所在地は、ニーム・Nîmes)にあるマルクール核施設(le site nucléaire de Marcoule)で、事故は起きました。どのような状況で、放射能漏れなど、周囲への影響はどうなっているのでしょうか。また、フランス政府の対応は・・・12日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。
12日正午ごろ、ガール県にあるマルクール核施設で、低レベル放射能廃棄物処理施設にある炉が爆発した。この事故で、一人が死亡、四人が負傷した。
午後4時、原子力安全機関(l’Autorité de sûreté nucléaire:ASN)は、「事故は終結し、いかなる核汚染も発見されなかった」と、発表した。また、放射能調査情報独立委員会(la Commission de recherche et d’information indépendantes sur la radioactivité:Criirad)は、「ローヌ渓谷(la vallée du Rhône)に設置した6台の無線観測機はいかなる放射能漏れも観測しなかった」とホームページで公表した。エネルギー担当大臣のエリック・ベソン(Eric Besson)は、「放射能や化学品によるリスクはない」と述べており、処理施設を運営する会社を傘下に持つフランス電力公社(EDF)も、「将来にわたって、放射能漏れのリスクはない」と発表している。
「住民保護が必要になるような事故ではない。ASNは危機対応の組織を立ち上げるのも見合わせている」と、ASNは追加説明している。内務省は、「負傷者が放射能に汚染されておらず、施設で働いている社員の隔離も避難も必要とはなっていない」と公表した。しかも、死亡した社員の死因は、爆発に巻き込まれたことであり、放射能汚染によるものではないという。重傷を負った社員一人は、モンペリエ(Montpellier)の病院へ緊急搬送されたが、他の三人は軽傷で、近くのバニョル・シュール・セーズ(Bagnols-sur-Cèze)の病院へ運ばれた。
爆発はEDFの子会社であるSocodeiがコドレ村(Codolet:2008年の人口691人)で事業展開しているCentraco(le Centre de traitement et de conditionnement des déchets de faible activité:低レベル放射能廃棄物処理センター)で起きたのだが、その原因となった火災は13時頃鎮火した。この施設は放射能レベルが低い、あるいは非常に低い核廃棄物の処理を行っている。
激しい爆発は、電気炉に関係しているのだが、この炉は1999年から使用されており、手袋、作業着、マスクといった繊維類は焼却し、水門やポンプなどの金属は溶融して放射能処理を行っている。
爆発が起きた際には、炉に4トンの金属が入っており、その全放射能は67,000ベクレルで、1kg当たりでは17ベクレルになる。「とても低いレベルの放射能で、原子炉の放射能とは比較のしようもないレベルだ」と、放射線防護原子力安全研究所(l’Institut de radioprotection et de sûreté nucléaire:IRSN)の安全部長、ティエリ・シャルル(Thierry Charles)は語っている。
「炉は建物内の部屋にあり、その部屋は影響を受けたが、建物自体は無傷のままだ。従って、放射能が外部に漏れ出す恐れはない」と、ティエリ・シャルルは続ける。IRSNは現場に対応チームを派遣し、周辺の雑草、土、クルマのボンネット上の埃などを採取して、12日中に分析することになっている。
爆発の原因はまだ明らかになっていないが、政府関係者によると、人的ミスがあったと思われる、ということだ。「どこからか漏れ出した水が溶融中の金属と反応を起こした可能性や、金属に含まれている核廃棄物が引き起こした可能性も考えうる」と、ティエリ・シャルルは語っている。
IAEA(仏語では、AIEA:l'Agence internationale de l'énergie atomique)の事務局長は、爆発に関する情報の提供を通常の手続き通りフランス政府に依頼したと語った。一方、EUは、事故は欧州委員会がフランス政府と協力しながら仔細に調査することになると、発表している。
多くの環境団体と同じく、グリーンピースも、事故に関する迅速で透明性のある情報公開を求めている。「地元住民に現状と将来的な放射能漏れについて十分な情報を提供することが不可欠だ」と、グリーンピース・フランスの原子力担当者、ヤニック・ルスレ(Yannick Rousselet)は述べている。
エコロジー相のナタリーコシウスコ=モリゼ(Nathalie Kosciuscko-Morizet)は現場に赴き、「事故の後、不安に陥るような理由はまったく見当たらない。これは産業事故だ。ただし場所が原子力関連施設なので、さまざまな感情や警戒が呼び起こされるのだが」と語った。エコロジー相は、こう語る前に、死亡した社員の家族に直接会い、また重症の大やけどを負った社員の父にもコンタクトを取っている。
・・・ということで、フランス政府は、発生したのが核廃棄物処理施設ではあるが、あくまでも産業事故であり、決して原発事故ではなく、しかも事故はすでに終結している、と強調しています。
原発の輸出国でもあるフランスは、原発の危険性に繋がるようなことは、どうしても言及しなくてはならない状況に追い込まれない限り、なかなか言わないでしょうが、今回の事故は、今後の推移を見守らなければ断言はできませんが、どうも放射能汚染につながるような事故ではなさそうです。
しかし、フクシマから半年。その危険性がフランス国民の記憶にも残っている状況下での事故だけに、周辺住民はパニックに。しかも、『ル・モンド』の記事では、エコロジー相が現地に飛んだり、多くの機関がさまざまなコメントを出していますが、現地住民にはうまく伝わらなかったようで、子どもたちを避難させるとか、いろいろな混乱も生じたようです。
原発のない社会へ――。しかし、今すぐ、すべての原発を廃止するわけにはいかない。原発のない日本社会の実現へ向けた工程表を、ぜひとも公表してほしいと思います。洋上風力発電にも力を入れるという報道がありました。太陽光発電もあります。どのようなスケジュールで、いつまでに自然エネルギー社会に移行できるのでしょうか。その実現に、協力を惜しむ国民はいないと思います。ぜひ、一日も、早く!