イスラムの戒律に厳格なワッハーブ派が強い影響力を持つサウジアラビアでは、女性は運転してもいけない、外出には男性の同伴か許可が必要。違反しようものなら、むち打ちの刑。運転した咎で、実際にむち打ち10回の刑に処されそうになった女性は、将来的な女性参政権を認めた現国王の計らいで、恩赦になったようですが、他国の女性から見ればやりきれない現状にあるようです。
しかし、他方に目を転ずれば、政界トップに女性が就く国も多くなって来ています。ドイツのメルケル首相、オーストラリアのギラード首相、アルゼンチンのキルチネル大統領、スロバキアのラジチョヴァー首相、アイスランドのシグルザルドッティル首相など、国の舵取りをしている女性も多くなってきています。
日本では、優男の国というイメージがすっかり出来上がっているフランスですが、実際には、“machisme”(男性優位主義)がそこここに顔を出しますし、中には“misogyne”(女性蔑視的)としか言いようがない態度の人もいたりします。従ってというか、女性の大統領はまだ誕生していません。女性首相は、一人。日本人を「黄色いアリ」(fourmis jaunes)呼ばわりした、かの有名なクレソン女史(Edith Cresson)です。『ニューズウィーク』誌との対談では、「黄色いチビ」と呼んでいました。しかし、その人種差別的発言は、イギリス人にも向けられ、「イギリス男は、ゲイだ」と語ったとか。フランス中華思想に凝り固まった人なのでしょうね。
そのクレソン女史と同じ社会党から、ついに女性初のフランス大統領が誕生するかもしれない、という期待が盛り上がっていました。サルコジ大統領の支持率が低迷し、代わりに社会党支持率が増えている。その社会党第一書記は、女性のマルティーヌ・オブリ(Martine Aubry)。また、党の公認候補を選ぶ予備選への立候補を早々と表明したのは、前回、2007年の大統領選挙を社会党公認候補として戦ったセゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Loyal)。2人の女性の戦いか・・・しかし、“machisme”の国の現実は、そう甘くはありません。
10月9日の予備選へ向けて、トップを走っているのは、党の第一書記としてマルティーヌ・オブリの前任者、かつ、セゴレーヌ・ロワイヤルとの間に4人の子供を儲けた前のパートナー、という立場のフランソワ・オランド(François Hollande)。9月下旬の世論調査でも、トップのフランソワ・オランドと2位以下との差はいっそう広がったそうです。その調査結果を、28日の『ル・モンド』が詳しく伝えています。
トップを走るフランソワ・オランドはマルティーヌ・オブリとの差をさらに広げた。3位のセゴレーヌ・ロワイヤルはアルノー・モントゥブール(Arnaud Montebourg)にその差を詰められている。5位のマヌエル・ヴァル(Emanuel Valles)は下から2位に変わりはないが、上位を追いあげている。最下位のジャン=ミシェル・バイレ(Jean-Michel Baylet)は立ち往生したままだ。2012年の大統領選へ向けて、社会党(PS)と左翼急進党(PRG)、両党共通の公認候補を選ぶ予備選まであと10日。“Le Monde”、“France Télévision”、“Radio France”の依頼により、調査会社Ipsos-Logica Business Consultingが行った調査は、上記のような概略を示している。実査は、電話による聞き取り調査で、21日から26日に行われ、対象者は4,742人。年齢・性別など、有権者数に比例した配分になっている。
8月下旬に行われた前回の調査では、予備選に投票すると答えた対象者のうち42%がフランソワ・オランド支持を表明し、31%がマルティーヌ・オブリへの支持を明らかにしていた。それから1カ月、オランドは2ポイント伸ばし44%、一方、オブリは4ポイント減らし27%の支持率となっている。
この変化はとてつもなく大きいわけではなく、オランドが支持率を伸ばし、オブリが支持を減らしたというだけのことだが、それでもやはりある一定の傾向は示しており、定性的な指標がそのことを物語っている。
1か月前、すでにオランドは大統領にふさわしい政治家はという問いに関して、オブリを上回っていた。今回も、次回の大統領選で勝てそうなのは誰かという質問に対し、予備選への投票予定者の55%がオランドと答え、オブリと答えたのは22%だった。オランドは勝てる候補者という点を常に強調していたが、それが功を奏したようだ。前回から7ポイント伸ばし、オブリは6ポイント減らしている。
マルティーヌ・オブリは、選挙戦のはじめから、二つの点に狙いを定めていた。それは、公約内容に見られる。彼女の案がオランド案よりも詳細まで詰めた内容であること、そしていっそう左翼の価値観に根を張った内容となっていること、という2点だ。しかし、世論調査によれば、この戦略は功を奏していない。1か月前と比べて、公約に関する評価で、彼女の提案はポイントを下げている。オランドよりも9ポイント後塵を拝しているのだ。左翼の価値観を実現してくれそうなのは誰かという質問では、今回もオランドを上回ったが、その差は縮まっている。
3位争いに関しては、3位のセゴレーヌ・ロワイヤルと4位のアルノー・モントゥブールの差が縮まっている。2人の発言内容はかなり似ている。経済面に関しては非常に左翼的だが、社会面では非常に共和的だ。1カ月前は、支持率でロワイヤルが13ポイント上回っていたが、今ではわずか3ポイントの差になっている。
予備選の候補者6人の中で、モントゥブールが最も支持率を伸ばした。逆にロワイヤルが最も評価を下げている。2人の3位争いは、上位2名による決選投票に大きな影響を及ぼすものと考えられる。ロワイヤルの伸び悩みは、オブリにとって良いニュースではなく、逆にモントゥブールの支持率アップはオランドの不安を少なくしてくれる。というのも、ロワイヤル支持者の半数が決選投票ではオブリに投票すると述べており、オランドへ投票するのは三分の一に過ぎず、一方、モントゥブール支持者ではオランドへの投票意向が半数で、オブリへの投票は三分の一に過ぎないという調査結果が出ているからだ。
マニュエル・ヴァルは、1カ月で支持率を倍増させたとはいえ、今でも下から2番目であることに変わりはない。5%以上の票を集めたのは、候補者のイメージについての質問だ。最下位のジャン=ミシェル・バイレも、1カ月前よりもイメージの上では良いスコアを得ている。下位3候補への共感は増えた一方、上位3候補へは増えてはいない。
8月末、予備選に投票すると答えた対象者のうち48%が投票する候補者を決めていると答えていたが、今回は54%だった。投票先はまだ最終的に決まってはいない層が半数近くいるということだ。予備選の広報活動については、満足いく結果が出た。投票意向者の77%が投票日を承知しており、64%が投票場所を知っている。
投票まで10日になっても、まだ半数の投票意向者が世論調査で答えた支持者から投票先を変える可能性がある。投票先がまだ最終的に決めた候補者ではないという回答者は、オランドへの支持者よりもロワイヤルやオブリへの支持者の間により多く見られる。選挙戦の最後10日でどう転ぶのか。
この点から、28日と10月5日に予定されているラジオやテレビを通しの候補者討論会がとても重要になってくる。しかし、500万人の視聴者をテレビの前に集めた9月15日の討論会ほどには盛り上がらないのではないだろうか。
・・・ということで、フランソワ・オランドが社会党と左翼急進党の統一公認候補となりそうな趨勢です。しかも、2位以下との差を着実に広げてきている。因みに、2位と3位の候補者が、女性。男女という性差を強調する必要はないのでしょうし、性による違いよりも候補者像によってたまたまこうした順位になっただけなのでしょうが、来年の大統領選挙、今のまま行けば、左派陣営が勝利するだろうと言われているだけに、女性大統領に二の足を踏む有権者もいるのではないかと、勝手に想像を膨らませてしまうわけです。
シモーヌ・ド・ボーヴォワール(Simone de Beauvoir)が『第二の性』(Le Deuxième Sexe)の中で、“On ne naît pas femme, on le devient.”(人は女に生まれるのではない、女になるのだ)と語って62年、フランスにまだ女性大統領は生まれないようです。誕生する日は来るのでしょうか。女性のアメリカ大統領は、そして、日本の女性首相は、はたして・・・
しかし、他方に目を転ずれば、政界トップに女性が就く国も多くなって来ています。ドイツのメルケル首相、オーストラリアのギラード首相、アルゼンチンのキルチネル大統領、スロバキアのラジチョヴァー首相、アイスランドのシグルザルドッティル首相など、国の舵取りをしている女性も多くなってきています。
日本では、優男の国というイメージがすっかり出来上がっているフランスですが、実際には、“machisme”(男性優位主義)がそこここに顔を出しますし、中には“misogyne”(女性蔑視的)としか言いようがない態度の人もいたりします。従ってというか、女性の大統領はまだ誕生していません。女性首相は、一人。日本人を「黄色いアリ」(fourmis jaunes)呼ばわりした、かの有名なクレソン女史(Edith Cresson)です。『ニューズウィーク』誌との対談では、「黄色いチビ」と呼んでいました。しかし、その人種差別的発言は、イギリス人にも向けられ、「イギリス男は、ゲイだ」と語ったとか。フランス中華思想に凝り固まった人なのでしょうね。
そのクレソン女史と同じ社会党から、ついに女性初のフランス大統領が誕生するかもしれない、という期待が盛り上がっていました。サルコジ大統領の支持率が低迷し、代わりに社会党支持率が増えている。その社会党第一書記は、女性のマルティーヌ・オブリ(Martine Aubry)。また、党の公認候補を選ぶ予備選への立候補を早々と表明したのは、前回、2007年の大統領選挙を社会党公認候補として戦ったセゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Loyal)。2人の女性の戦いか・・・しかし、“machisme”の国の現実は、そう甘くはありません。
10月9日の予備選へ向けて、トップを走っているのは、党の第一書記としてマルティーヌ・オブリの前任者、かつ、セゴレーヌ・ロワイヤルとの間に4人の子供を儲けた前のパートナー、という立場のフランソワ・オランド(François Hollande)。9月下旬の世論調査でも、トップのフランソワ・オランドと2位以下との差はいっそう広がったそうです。その調査結果を、28日の『ル・モンド』が詳しく伝えています。
トップを走るフランソワ・オランドはマルティーヌ・オブリとの差をさらに広げた。3位のセゴレーヌ・ロワイヤルはアルノー・モントゥブール(Arnaud Montebourg)にその差を詰められている。5位のマヌエル・ヴァル(Emanuel Valles)は下から2位に変わりはないが、上位を追いあげている。最下位のジャン=ミシェル・バイレ(Jean-Michel Baylet)は立ち往生したままだ。2012年の大統領選へ向けて、社会党(PS)と左翼急進党(PRG)、両党共通の公認候補を選ぶ予備選まであと10日。“Le Monde”、“France Télévision”、“Radio France”の依頼により、調査会社Ipsos-Logica Business Consultingが行った調査は、上記のような概略を示している。実査は、電話による聞き取り調査で、21日から26日に行われ、対象者は4,742人。年齢・性別など、有権者数に比例した配分になっている。
8月下旬に行われた前回の調査では、予備選に投票すると答えた対象者のうち42%がフランソワ・オランド支持を表明し、31%がマルティーヌ・オブリへの支持を明らかにしていた。それから1カ月、オランドは2ポイント伸ばし44%、一方、オブリは4ポイント減らし27%の支持率となっている。
この変化はとてつもなく大きいわけではなく、オランドが支持率を伸ばし、オブリが支持を減らしたというだけのことだが、それでもやはりある一定の傾向は示しており、定性的な指標がそのことを物語っている。
1か月前、すでにオランドは大統領にふさわしい政治家はという問いに関して、オブリを上回っていた。今回も、次回の大統領選で勝てそうなのは誰かという質問に対し、予備選への投票予定者の55%がオランドと答え、オブリと答えたのは22%だった。オランドは勝てる候補者という点を常に強調していたが、それが功を奏したようだ。前回から7ポイント伸ばし、オブリは6ポイント減らしている。
マルティーヌ・オブリは、選挙戦のはじめから、二つの点に狙いを定めていた。それは、公約内容に見られる。彼女の案がオランド案よりも詳細まで詰めた内容であること、そしていっそう左翼の価値観に根を張った内容となっていること、という2点だ。しかし、世論調査によれば、この戦略は功を奏していない。1か月前と比べて、公約に関する評価で、彼女の提案はポイントを下げている。オランドよりも9ポイント後塵を拝しているのだ。左翼の価値観を実現してくれそうなのは誰かという質問では、今回もオランドを上回ったが、その差は縮まっている。
3位争いに関しては、3位のセゴレーヌ・ロワイヤルと4位のアルノー・モントゥブールの差が縮まっている。2人の発言内容はかなり似ている。経済面に関しては非常に左翼的だが、社会面では非常に共和的だ。1カ月前は、支持率でロワイヤルが13ポイント上回っていたが、今ではわずか3ポイントの差になっている。
予備選の候補者6人の中で、モントゥブールが最も支持率を伸ばした。逆にロワイヤルが最も評価を下げている。2人の3位争いは、上位2名による決選投票に大きな影響を及ぼすものと考えられる。ロワイヤルの伸び悩みは、オブリにとって良いニュースではなく、逆にモントゥブールの支持率アップはオランドの不安を少なくしてくれる。というのも、ロワイヤル支持者の半数が決選投票ではオブリに投票すると述べており、オランドへ投票するのは三分の一に過ぎず、一方、モントゥブール支持者ではオランドへの投票意向が半数で、オブリへの投票は三分の一に過ぎないという調査結果が出ているからだ。
マニュエル・ヴァルは、1カ月で支持率を倍増させたとはいえ、今でも下から2番目であることに変わりはない。5%以上の票を集めたのは、候補者のイメージについての質問だ。最下位のジャン=ミシェル・バイレも、1カ月前よりもイメージの上では良いスコアを得ている。下位3候補への共感は増えた一方、上位3候補へは増えてはいない。
8月末、予備選に投票すると答えた対象者のうち48%が投票する候補者を決めていると答えていたが、今回は54%だった。投票先はまだ最終的に決まってはいない層が半数近くいるということだ。予備選の広報活動については、満足いく結果が出た。投票意向者の77%が投票日を承知しており、64%が投票場所を知っている。
投票まで10日になっても、まだ半数の投票意向者が世論調査で答えた支持者から投票先を変える可能性がある。投票先がまだ最終的に決めた候補者ではないという回答者は、オランドへの支持者よりもロワイヤルやオブリへの支持者の間により多く見られる。選挙戦の最後10日でどう転ぶのか。
この点から、28日と10月5日に予定されているラジオやテレビを通しの候補者討論会がとても重要になってくる。しかし、500万人の視聴者をテレビの前に集めた9月15日の討論会ほどには盛り上がらないのではないだろうか。
・・・ということで、フランソワ・オランドが社会党と左翼急進党の統一公認候補となりそうな趨勢です。しかも、2位以下との差を着実に広げてきている。因みに、2位と3位の候補者が、女性。男女という性差を強調する必要はないのでしょうし、性による違いよりも候補者像によってたまたまこうした順位になっただけなのでしょうが、来年の大統領選挙、今のまま行けば、左派陣営が勝利するだろうと言われているだけに、女性大統領に二の足を踏む有権者もいるのではないかと、勝手に想像を膨らませてしまうわけです。
シモーヌ・ド・ボーヴォワール(Simone de Beauvoir)が『第二の性』(Le Deuxième Sexe)の中で、“On ne naît pas femme, on le devient.”(人は女に生まれるのではない、女になるのだ)と語って62年、フランスにまだ女性大統領は生まれないようです。誕生する日は来るのでしょうか。女性のアメリカ大統領は、そして、日本の女性首相は、はたして・・・