ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

荒れる学園・・・リセに、ついに警官が駐在。

2010-09-27 20:04:38 | 社会
リセ、リエアン、リセエンヌ・・・カタカナで書くと、おしゃれに見えますが、実際の高校生たちは勉強に忙しい。落第もありますし、バカロレア(大学入学資格試験)に合格しないといけないし。フランスは何しろ、階級社会。資格がなければ、社会の階段を上っていくことはまず不可能。一生がかかっていると言ってもいいほどで、バカロレアの結果発表の瞬間には、日本の大学入試の発表と同じような光景が繰り広げられています。

そして、高校(リセ)で学ぶ男子生徒(リセアン)や女子学生(リセエンヌ)をめぐる事件も数多く報告されています。薬物使用もありますが、生徒同士の刃傷沙汰、生徒が教師にナイフを振りかざす事件・・・荒れる学園がしばしば報道されています。

内相として強引な手段で治安を改善して男を上げたサルコジ大統領は、荒れる教育機関を黙って見逃すことができない。ついに、警官を派遣することにしました。常駐ではないのですが、専用のオフィスを用意し、校内の巡回を行うようにしたそうです。

もちろん、大統領ですから、自ら直接細部までかかわったわけではなく、直接指示したのは、オルトフー(Brice Hortefeux)内相ですが、大統領と内相は年が近いうえに、共に富裕層が多く住むヌイイ市育ちで、昔からの友達。いわゆる、ツーカーの仲。警官派遣だ!と以心伝心で思ったのかもしれません。

20日のル・モンド(電子版)が高校への派遣第1号となった警官を紹介しています。

第1陣として、全国で53名の警官が高校に派遣されるそうですが、その第1号となったのは、シルヴィ・パンサール(Sylvie Pinsard)という若い女性警官です。強面の男性警官ではなかったのは、高校に武器を携行する警官が駐在することに対して一部にある反対や恐れを和らげるためでしょうか。それとも、女性警官も多いため、たまたまそうなっただけなのでしょうか。たぶん、前者なのではないかと、推測しますが・・・

担当することになった高校は、パリ郊外、Seine-et-Marne県のMoissy-Cramayelという町にあるマール・カレ高校(le lycée de la Mare-Carrée)。正式には24日の金曜日から、毎週1日、高校に駐在することになっているそうですが、すでに、いくつかの教室で生徒たちに紹介されているそうです。

20日(月)午前には、オルトフー内相とシャテル(Luc Chatel)文相がこの高校を訪問し、彼女を激励するとともに、学校側と内密の打ち合わせをしました。何しろ初めが肝心ですから、慎重を期しているのでしょうね。

文相曰くは、各学校長には新指導・危機管理要領も配布した。また、内相は今回の措置の背景を次のように説明しています。目的は、高校における生徒・教師の安全を確かなものにすることだ。何しろ、校内における暴力など軽犯罪に相当する事件の85%が生徒間で起きているのだから。

一方、社会党員で、セーヌ・エ・マルヌ県のあるイル・ド・フランス地方圏議会で高校問題委員会の委員長をしているフィッシャー(Didier Fischer)氏は、両大臣はコミュニケーション・キャンペーンをやっているにすぎない。現状は、教師の定員削減、研修という名の改革など教育をめぐる問題が山積。非常に困難な状況で生徒も教師も新学年のスタートを迎えている。他に優先的に行うべきことがあるではないか、と非難しています。警官一人が週一日在校するだけで解決できるような現状ではない、ということなのでしょうね。

荒れる生徒、人員削減に直面している教師・・・おしゃれな学園生活とは言い難いようです。おしゃれなのは雑誌の中か夢の中だけなのかもしれないですね。現実は厳しい・・・