ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

フランス人の財布の中身・・・購買力低下。

2010-09-06 19:32:49 | 社会
フランス人の収入・・・いろいろなデータがあると思いますが、8月24日のル・モンド(電子版)が紹介しているのは、1か月の世帯当たり可処分所得。国立消費研究所(l’Institut national de la consommation)が発行している“60 millions de consommateurs”(6,000万人の消費者)という雑誌によると、今年6月の世帯当たり可処分所得の平均は、3,228ユーロ。約35万円ですね。

因みに日本の世帯当たり可処分所得は、直近のデータが見つからないので、ちょっと古いデータになりますが、平成13年でおよそ43万円前後。1980年代以降、ほとんど変化がないということですので(この分野でも、失われた20年)、現在でもほぼ同じ数字なのではないかと思います。

日本のほうが、フランスの家庭より可処分所得が多い、と思ってしまいがちですが、あくまで世帯当たりの数字ですから、単身世帯が多ければ世帯数が多くなり、世帯当たりの可処分所得は少なくなりますね。独立心の強いフランスとパラサイトの増えている日本。世帯当たりの数字では、簡単に比較できないですね。

さて、ル・モンドが伝えているのは、フランスの世帯当たり可処分所得が減少した、ということです。世帯当たりの収入は、1年前と比べて1カ月当たり32ユーロ(約3,500円)増えたそうですが、インフレ分が47ユーロに相当するため、可処分所得は差し引き15ユーロ(約1,600円)のマイナス。「もっと働き、もっと稼ごう」(Travailler plus pour gagner plus)というサルコジ大統領の選挙スローガンは、どこへ行ってしまったのでしょうか。年金受給開始年齢が引き上げられそうですし、週35時間労働も見直され、「もっと働き」は実現されそうですが、「もっと稼ごう」が消えてしまった。この秋、大規模なデモやストが見られるかもしれないですね。それを見越して、国民の関心を外へ向けようと、ロマなどの国外追放をやっているのでしょうか・・・国内問題で行き詰まると、国民の関心を国外へ向けて切り抜けようとするのは、為政者の常ですからね。

フランスは日本と異なりインフレなんだそうですが、もちろん、商品により、消費者物価が上がったものも、下がったものもあります。値上がりのひどかったのは、ガソリン(対前年比12%増)、自動車の補修・修理(3%増)、野菜フルーツ(14%増)。逆に値下がりしたのは、薬(対前年比7%減)、クルマ(2%減)、テレビ(11%減)、IT関連商品(7%減)、牛乳・チーズ・卵(2%減)。

クルマやテレビ、コンピューターの値段が下がったと言っても、しょっちゅう買い換えるものではないですし。それよりも日常の生鮮食品やガソリンの値上げの影響のほうが大きい。台所を直撃しているでしょうね。やはり、デモとストの嵐、でしょうか・・・

一方の我らが日本、世帯当たりの年収では、少なくとも平成11年・12年は600万円を超えていましたが、減少傾向に歯止めがかからず、13年には600万円を切り、平成20年の世帯当たり平均年収は、547万円。8年間で50万円も減少し、デフレ傾向があるとはいえ、「大変苦しい」と「やや苦しい」をあわせると58%。可処分所得が減少しているという人が増えているのではないでしょうか。その反映が、年金の不正受給、家族の離散、路上生活・・・漂流する「日本の家族」はどこへ行くのでしょうか、声も上げずに・・・
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